機体を買うと、リモートIDはたいてい最初から入っています。だから「もう済んでいる」と思いやすい箇所です。
ところが現場でつまずくのは、機器そのものではなく、その周辺です。登録記号を書き込んでいない。外付型を別の機体に付け替えたまま設定を直していない。飛行前点検でランプを見ていない。
講習では、ここを見落とす方が少なくありません。この記事は、機器の選び方と、搭載してから飛ばすまでに何をするかを整理します。手続きの流れ全体は別の記事に譲り、ハードウェア側に絞ります。
リモートID機器は、機体の付属品ではなく登録制度の一部
教則第5版 3.1.2(1)2)は、重量100グラム以上の無人航空機は国の登録を受けたものでなければ原則として航空の用に供することができず、登録の有効期間は3年であるとしています。そのうえで、機体に登録記号を表示し、一部の例外を除きリモートID機能を備えなければならないと定めています。
つまりリモートIDは、登録記号の表示と並ぶ「機体を識別させるための措置」の片方です。物理的な表示が目で見る識別、リモートIDが電波による識別、という組み立てになっています。
なぜ識別させるのかは、制度の目的を見るとはっきりします。教則 3.1.2(1)1)は、登録制度の目的を3つ挙げています。事故発生時などにおける所有者把握、事故の原因究明など安全確保上必要な措置の実施、そして安全上問題のある機体の登録を拒否し安全を確保することです。リモートIDは1つめを飛行中にも成り立たせるための仕組み、と捉えると位置づけを間違えません。
注意したいのは、この義務が特定飛行かどうかとは無関係だという点です。許可や承認が不要な飛行、たとえば自宅の庭で飛ばす場合でも、航空の用に供するなら登録記号の表示とリモートIDは必要です。「申請が要らない飛行だから」という理由で外れる義務ではありません。
登録記号の表示側の要件も押さえておきます。教則 3.1.2(1)4)は、容易に取り外しができない外部から確認しやすい箇所に、耐久性のある方法で鮮明に表示し、表示する地色と鮮明に判別できる色で表示しなければならないとしています。文字の高さは機体の重量区分で分かれます。
| 重量区分 | 文字の高さ | 出どころ |
|---|---|---|
| 最大離陸重量25kg以上 | 25mm以上 | 教則第5版 3.1.2(1)4) |
| 最大離陸重量25kg未満 | 3mm以上 | 教則第5版 3.1.2(1)4) |
搭載義務と、免除される4つの場合
リモートID機能の搭載が免除されるのは、教則 3.1.2(1)5)が挙げる次の4つだけです。「小さい機体だから」「屋内だから」といった理由はここに入りません。
| 免除される場合 | 条件のポイント |
|---|---|
| 事前登録期間中に登録手続きを行った機体 | 登録制度の施行前(2022年6月19日)までに手続きしたもの |
| リモートID特定区域の上空での飛行 | あらかじめ国に届け出た区域で、飛行を監視する補助者の配置、区域の範囲の明示などの措置を講じたうえで行う飛行 |
| 十分な強度を有する紐などで係留して行う飛行 | 紐などの長さが30m以内であること |
| 警察庁、都道府県警察又は海上保安庁の秘匿を要する業務 | 警備その他の特に秘匿を必要とする業務のために行う飛行 |
特定区域の届出は、ドローン登録システムの案内では飛行開始の5開庁日前を目安に行うものとされています。思いついた日に使える制度ではありません。
何が発信され、何が発信されないのか
教則 3.1.2(1)6)は、リモートID機能が発信する情報を静的情報と動的情報に分けています。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 静的情報 | 無人航空機の製造番号及び登録記号 |
| 動的情報 | 位置、速度、高度、時刻などの情報 |
| 含まれないもの | 所有者や使用者の情報 |
発信は1秒に1回以上です。国土交通省の技術規格書「リモートID機器等及びアプリケーションが備えるべき要件」(令和3年12月1日制定、令和4年11月28日改正)も同じ周期を定め、動的情報は情報を取得してから1秒以内を目安に発信することとしています。
この「所有者の情報は含まれない」という点は、飛行を見ていた方から問われたときに説明できるようにしておくと役に立ちます。発信されているのは機体の識別と飛行の状態で、操縦している人の氏名や住所ではありません。
発信された情報は受信もできます。ドローン登録システムの案内には、DIPS APPで周辺の機体が発信しているリモートIDの情報を確認する手順が用意されています。Bluetooth 5.x Long RangeやWi-Fiに対応した端末があれば、自分の機体が実際に発信できているかを目で確かめられるということです。仕様上そうなっているはずだ、で止めずに受信してみると、取り付け位置の影響もわかります。
内蔵型と外付型|実務での違い
教則は、リモートID機能に内蔵型と外付型があるとしています。技術規格書の定義では、内蔵型は無人航空機と一体のもの、外付型は無人航空機と独立したものです。発信する情報や周期の要件は、どちらでも同じです。違うのは運用の手間とリスクの置き場所です。
| 観点 | 内蔵型 | 外付型 |
|---|---|---|
| 電源 | 機体から供給される | 機器側の電池を持つものがあり、残量管理が増える |
| 設定 | 機体と一対一で固定しやすい | 付け替えるたびに登録情報の設定をやり直す必要がある |
| 重量・空力 | 影響しない | 重量が増え、取り付け位置によっては気流に影響する |
| 向く場面 | 届出済みの機体をそのまま使う | 内蔵していない機体を運用し続ける |
国土交通省が公表している「適合しているとして届出があったリモートID機器等の一覧」(最終更新 令和8年7月8日)を見ると、備考欄の多くは「機体へ内蔵、専用アプリケーション同梱」です。外付型も掲載されていますが、選択肢の数では内蔵型が中心だと読み取れます。
外付型を選ぶときに確認する5点
特定の製品を挙げることはしません。確認する順番だけ示します。上から順に見て、ひとつでも引っかかったら次へ進まないほうが安全です。
| 確認項目 | 見る場所 |
|---|---|
| 届出された機器か | 国土交通省が公表する届出機器等の一覧に、製造者名と型式名が載っているか |
| 技適マークがあるか | 機器本体の表示。教則3.2.2(2)は、免許不要の小電力無線局も技術基準適合証明等を受けた適合表示無線設備でなければならないとしている |
| 書き込みの手段 | 登録記号などの書き込みに使うアプリが、手持ちのスマートフォンで動くか |
| 電源と稼働時間 | 機器側の電池か機体給電か。電池式なら稼働時間と充電方法 |
| 動作確認の見え方 | 作動中であることをランプなどで外から判別できるか |
最後の項目は見落としやすいところです。技術規格書は、操縦者が飛行前点検において動作確認を可能とする設計であることを求めています。外から状態が読めない機器は、点検のたびに困ります。
取り付け場所の決め方
外付型の取り付け位置について、技術規格書は具体的な寸法や場所の要件を定めていません。耐環境性や電源の仕様も書かれていません。ここはメーカーのマニュアルに従う領域です。そのうえで、原則から言えることを挙げます。
リモートIDの発信に使われる方式は、技術規格書ではBluetooth 5.x Long Range、Wi-Fi Neighbor Awareness Networking、Wi-Fi Beaconの3つです。いずれも機体の金属部や積載物で遮られれば届きにくくなります。機体の内側に押し込む取り付けは避け、外側に向いた面を選ぶのが筋です。
もうひとつは、ほかの機能を邪魔しない場所という条件です。教則4.5の「飛行環境において磁気に注意すべき構造物や環境」は、地磁気の検出に鉄や電流が影響を与えるとしています。コンパスの近くに機器や配線を這わせれば、方位の取得に影響する余地があります。GNSSアンテナの直上をふさぐのも避けたいところです。
帯域の重なりも頭に入れておきます。教則4.5の「電波の特性」は、周波数の近い電波が重なると電波干渉が発生しお互いを減衰させる性質があるとし、2.4GHzの電波は回折しにくく直進性が高いため障害物の影響を受けやすいとしています。無人航空機の操縦や画像伝送にも2.4GHz帯が使われることを踏まえると、同じ場所で複数機を飛ばす日や市街地での飛行では、リモートIDも含めた電波環境として見ておく価値があります。教則4.5の「電波の特性に伴って発生する運航上のトラブルの調査・分析」〔一等〕は、スペクトラムアナライザを用いて現地の電波の状況を確認する方法を挙げています。
登録記号の書き込みと、付け替え・譲渡の手続き
機器を付けただけでは、その機体のリモートIDになりません。登録記号などを機器に書き込む作業が必要です。ドローン登録システムの案内では、DIPS APPの機体一覧から所有機体詳細に進み、リモートID書込を選ぶ手順が示されています。作業時はスマートフォンのBluetoothと位置情報をONにします。
外付型を複数の機体で使い回す場合、同じ案内にその都度リモートID機器に機体毎の登録情報を設定しなおす必要があると明記されています。付け替えたら設定も付け替える、と覚えてください。
機体を譲渡するときは順番があります。譲渡の前にDIPS APPから削除し、登録システムからもリモートIDの削除を行ったうえで渡す、という流れです。渡してから気づくと手戻りになります。
外付型を使う場合は、機器の製造者名、型式、製造番号を登録・変更する手続きも伴います。機器を買い替えたら、この情報も直す必要があります。
飛行前点検でのリモートID確認
教則は2か所でリモートIDの確認を求めています。3.1.2(3)1)b.の飛行前の確認では(e)としてリモートID機能の作動状況(搭載の例外となっている場合を除く)を挙げ、5.1.2(2)の飛行前の点検では⑦として、リモートID機能が正常に作動しているかを挙げ、その例として作動していることを示すランプが点灯していることの確認を示しています。
そのまま使える形にしておきます。現場ではこの5行を順に見てください。
| # | 確認すること | 見方 |
|---|---|---|
| 1 | 機体の登録記号の表示 | かすれ・剥がれがなく、地色と判別できるか |
| 2 | リモートIDが作動している | ランプの点灯など、機器の仕様どおりの表示 |
| 3 | 書き込まれた登録記号が今日の機体のもの | 付け替え後や複数機運用の日は必ず |
| 4 | 外付型の電源 | 電池式なら残量。飛行時間に足りるか |
| 5 | 受信して確認 | DIPS APPの発信情報画面で実際に受信できるか |
5行目まで通すかどうかは現場の時間次第ですが、付け替えた日と新しい機器を初めて使う日は、受信まで見ておくと安心です。
よくある誤解の整理
| よくある理解 | 実際 |
|---|---|
| 100グラム未満でもリモートIDが要る | 登録の対象は100グラム以上。100グラム未満は模型航空機に分類される(教則3.1.1(1)) |
| リモートIDからは操縦者の氏名もわかる | 発信情報に所有者や使用者の情報は含まれない(教則3.1.2(1)6)) |
| 係留すればいつでも免除になる | 免除は紐などの長さが30m以内の係留。移動しながらのえい航は係留に当たらない |
| 登録記号を貼れば電波の措置はしなくてよい | 表示とリモートIDは別の義務。どちらを欠いても罰則の対象 |
| 外付型は1台買えば何機でも回せる | 回せるが、付け替えのたびに登録情報の設定をやり直す必要がある |
| 発信は数秒おきで十分 | 1秒に1回以上(教則3.1.2(1)6)、技術規格書) |
まとめ
リモートID機器の選定で国の制度が決めているのは、届出された機器であること、技適を受けた適合表示無線設備であること、発信する情報と1秒に1回以上という周期です。ここは教則と技術規格書に書かれています。
一方で、取り付け位置、稼働時間、耐環境性はメーカーの領域です。両者を混ぜずに、制度で決まっている部分を先に満たし、残りをマニュアルで埋めてください。
そして現場で効くのは、書き込みと飛行前の作動確認という2つの動作です。機器選びより地味ですが、落としたときに効いてくるのはこちらです。
登録講習機関講師 フライトデスク 監修



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