教則第5版を開くと、第1章「はじめに」があります。制度の説明が続くだけに見えるので、飛ばして第2章から読み始める方がとても多いところです。もったいない、と私は思っています。
私は登録講習機関で学科を教えています。この連載では、教則第5版を節ごとに全文そのまま載せ、そこに私の解説を付けていきます。1本目は、その第1章です。ここには「学科試験で何が問われるのか」の答えが書かれています。
教則第5版 1 はじめに(全文)
出典:国土交通省「無人航空機の飛行の安全に関する教則(第5版)」(令和8年7月7日公布・令和8年7月14日適用)。読みやすさのためレイアウトを再構成し、原本で混在している英数字の全角・半角を半角にそろえています。本記事は国土交通省の公式なものではありません。
無人航空機は、「空の産業革命」とも言われ、既に空撮、農薬散布、測量、インフラの点検等に広く利用されている。今後は、都市部も含む物流や災害対応、警備への活用等、さらに多様な分野の幅広い用途に利用され、多くの人々がその利便性を享受し、社会が抱える様々な課題を解決に導くことで、産業、経済、社会に変革をもたらすことが期待されている。
他方で、上空を飛行するという無人航空機の特性から、衝突や墜落といった事故が発生した場合には、重大な被害を生じさせる可能性がある。実際に、人への墜落事故や、航空機との接近といった人命への危険を生じさせるおそれのある事態や、空港付近での目撃情報に基づき、国際空港が一時的に閉鎖されるといった事態が発生している。
無人航空機の飛行の安全を確保しつつ、上記のような役割を果たしていけるようにするための制度の一つとして、無人航空機操縦者技能証明制度が創設された。この制度は、学科試験、実地試験及び身体検査により無人航空機を飛行させる者の知識と能力を判定し、これらに合格した者について無人航空機を飛行させるのに必要となる一定の技能を有していることを国が証明するものである。
無人航空機操縦者技能証明(技能証明)を受けるためには、原則として学科試験、実地試験及び身体検査に合格することが必要であるが、登録講習機関(国が登録する民間機関)において無人航空機の操縦に係る必要な講習を受講し、講習の修了審査に合格した場合には実地試験が免除される。
この教則は、無人航空機を飛行させるのに必要な最低限の知識要件及び学科試験において求められる最低限の知識要件を記載することを目的として作成されたものである。技能証明を取得しようとする者を含む無人航空機を飛行させる者にあっては、この教則を常に参照し、安全な飛行を行うために必要な知識を身に付けていただきたい。
また、登録講習機関においては、この教則を参考にしたうえで、これまでの知見やノウハウを活かし、創意工夫を凝らした独自の講習用テキストを作成し、講習に活用されることが期待される。
このように、無人航空機の飛行に最低限必要となる知識要件が記載されており、登録講習機関における講習用テキストの土台としての役割を担うことになるこの教則が、技能証明の取得を目指す皆さまを安全な飛行へと導く道しるべとなることを願う。
ここからは私の解説です
この節は「教則の自己紹介」です
第1章には、覚えるべき数字がひとつも出てきません。それでも私が最初に読むことをすすめるのは、ここに「この教則が何のためにあるのか」が書いてあるからです。
とくに、この一文に線を引いてください。
この教則は、無人航空機を飛行させるのに必要な最低限の知識要件及び学科試験において求められる最低限の知識要件を記載することを目的として作成されたものである。
つまり、学科試験で問われる知識の範囲は、この教則の中にあると国が明言しているということです。だから、教則を読むのがいちばんの近道になります。参考書を何冊も買うより、まず教則を通しで読んだほうが早い——私が講習でいつもお伝えしていることの根拠が、ここにあります。
実地試験が免除される、という大事な話
第1章には、制度の骨格もさらっと書かれています。技能証明を受けるには原則として学科試験・実地試験・身体検査の3つに合格する必要があります。ただし——
登録講習機関(国が登録する民間機関)において無人航空機の操縦に係る必要な講習を受講し、講習の修了審査に合格した場合には実地試験が免除される。
スクールに通う方の多くが進むのがこのルートです。実地は免除されても、学科試験は免除されません。 ここを勘違いされている方に、私は毎年お会いします。スクールを修了しても、学科は自分で受けに行く必要があります。
「重大な被害を生じさせる可能性」は、数字で確かめられる
第1章は、無人航空機の利便性を語ったすぐあとに、事故が起きたときの重大さに触れています。これは抽象的な注意喚起ではありません。
航空法では、事故や重大インシデントが起きたときに国土交通大臣へ報告することが義務づけられていて、その件数が公表されています。国土交通省航空局の資料「事故・重大インシデントについて」によれば、令和5年度は、事故65件・重大インシデント21件・非該当事案361件の、合計447件が報告されています(令和5年度末時点)。
1年でこれだけの数が、実際に国へ報告されています。第1章の「重大な被害を生じさせる可能性がある」という一文は、この数字の上に立っています。
試験対策としての読みどころ
第1章から数字を問われることは、まずありません。押さえるとすれば、次の3つの言い回しです。
- 教則は「最低限の知識要件」を記載したもの。網羅的な教科書ではない
- 技能証明は学科試験・実地試験・身体検査で判定する
- 登録講習機関の修了審査に合格すると実地試験が免除される(学科は免除されない)
もうひとつ、教則自身が「登録講習機関は、この教則を参考にしたうえで独自の講習用テキストを作成することが期待される」と書いている点も、知っておくと役に立ちます。スクールのテキストと教則の書きぶりが違っていても、それは想定された姿だということです。迷ったときの基準は、いつも教則の側にあります。
この連載の読み方
この連載は、教則第5版を節ごとに全文そのまま載せ、そこに私の解説を付けていきます。全25回の予定です。順番に読んでいただいてもいいですし、苦手な節だけ拾い読みしていただいても構いません。
次回は「2.1 操縦者の役割と責任」です。
出典
- 国土交通省「無人航空機の飛行の安全に関する教則(第5版)」令和8年7月7日公布・令和8年7月14日適用
- 国土交通省航空局無人航空機安全課「事故・重大インシデントについて」(令和5年度末時点の件数)
- 国土交通省「無人航空機の事故等の報告及び負傷者救護義務」
本記事の内容は2026年8月時点のものです。制度は改正されることがありますので、最新の情報は必ず国土交通省の公式サイトでご確認ください。
この章を、問題で確認する
教則は読むだけだと入りません。学科試験は三肢択一なので、読む→解く→間違えた節へ戻るを回すのがいちばん早く仕上がります。
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