ドローン飛行前点検チェックリスト完全版|法令上の義務と現場でそのまま使える項目表

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機体を買い、機体登録を済ませ、いよいよ現場へ。その前に、毎回必ず通る関門があります。飛行前点検です。

「点検はやったほうがいいもの」と思っている方が、実は少なくありません。

実際には、飛行前の確認は航空法に定められた義務であり、怠れば罰則の対象です。そして特定飛行では、点検した結果を記録に残すところまでが義務です。

この記事では、飛行前点検の法令上の位置づけを最初に整理したうえで、教則第5版と国土交通省の様式に沿った、そのまま現場で使えるチェックリストの形にまとめました。

最初に一番大事なこと飛行前の確認は、飛行の場所や目的にかかわらず、無人航空機を飛行させる人全員の法律上の義務です(航空法第132条の86第1項第2号)。確認をせずに飛行させると50万円以下の罰金の対象になり、技能証明を持っている場合は行政処分の点数14点も定められています。さらに特定飛行では、日常点検記録を含む飛行日誌の携行と記載まで義務になります(同法第132条の89)。

飛行前点検は「推奨」ではなく法律上の義務

まず、位置づけをはっきりさせます。

航空法第132条の86は、無人航空機を飛行させる者が守るべき飛行の方法を定めた条文で、その第1項第2号が「飛行前の確認」です。教則第5版の言葉では、「無人航空機が飛行に支障がないことその他飛行に必要な準備が整っていることを確認した後において飛行させること」。つまり、確認が済むまで飛ばしてはいけない、という構造です。

ここで大事なのは、この義務が特定飛行に限らないことです。許可や承認が要らない飛行、たとえば人口集中地区の外で日中に目視内で飛ばすだけの場合でも、重量100グラム以上の無人航空機である以上、飛行前の確認は毎回の義務です。

教則第5版の罰則の表では、「飛行前の確認をせずに飛行させたとき」は50万円以下の罰金の欄に置かれています。

さらに、技能証明を持っている方にはもうひとつ効いてきます。「無人航空機操縦者技能証明に係る行政処分に関する基準」の点数表では、「飛行前確認・衝突予防措置を行わないこと」は14点。最高が15点(事故時に危険防止措置を講じない、アルコール・薬物の影響下での飛行など)ですから、点検の省略は、そのすぐ下に並ぶ重い違反として扱われています。

よくある勘違い「点検が義務なのは特定飛行だけ」ではありません。特定飛行に限られるのは飛行日誌(記録)のほうの義務です。点検の実施そのものは、すべての飛行で毎回義務です。この整理は記事の後半でもう一度出てきます。

法律が求める「飛行前の確認」は5つある

機体の点検だけが飛行前の確認ではありません。教則第5版(第3章 3.1 航空法全般)は、飛行前の確認として次の5つを挙げています。

確認事項 具体的な中身
機体の状況 外部点検と作動点検。各機器の取付状況(ネジ等の脱落やゆるみ)、モーター等の異音、プロペラ・フレームの損傷やゆがみ、通信・推進・電源・自動制御系統の作動状況
空域と周囲の状況 航空機や他の無人航空機の飛行状況、第三者や障害物の有無、必要な手続きの状況、緊急用務空域・飛行自粛要請空域の該当の有無、立入管理措置等の準備状況
気象情報 天候・風速・視程など、その機体の飛行に適した天候かどうか
燃料・バッテリー 燃料の搭載量またはバッテリーの残量
リモートID リモートID機能の作動状況(搭載の例外に当たる場合を除く)

つまり「機体」「空域」「気象」「電源」「リモートID」の5本柱です。現場で自分用のチェックリストを作るときも、この5本柱を骨組みにすると抜けが出にくくなります。

運航は6つの点検プロセスで回す

教則第5版の第5章(5.1 運航時の点検及び確認事項)は、安全に運航するために点検プロセスを定め、プロセスごとに点検項目を設定することを求めています。プロセスは次の6つです。

プロセス 目的
1 飛行前の準備 装置や設備の設置と、許可・承認や機体登録などの有効期間の最終確認
2 飛行前の点検 機体を飛ばす前に都度行う最終点検。バッテリーや機体の異常の確認
3 飛行中の監視 機体の状態と周囲の状況の継続的な確認
4 飛行後の点検 着陸後に行う点検。各部品の摩耗などの状態確認
5 運航終了後の点検 機体・バッテリーの安全な保管と、飛行日誌の作成
6 異常事態発生時の点検 危機回避行動と、安全に着陸するための確認

「点検」と聞くと現場での機体チェックだけを思い浮かべがちですが、教則の設計では、前日までの準備から帰宅後の保管・記録までがひとつながりのプロセスです。以下、この流れに沿ってチェックリストにしていきます。

補足教則は、点検プロセスを機体メーカーの指示する内容に従って実施することとしています。以下の表は教則と国土交通省の様式に基づく共通部分です。お使いの機体のマニュアルにある固有の項目を足して使ってください。

前日までに終わらせる「飛行前の準備」チェックリスト

現場に着いてから機体登録の有効期間切れ(登録の有効期間は3年)に気づいても、その日はもう飛ばせません。教則第5版が「飛行前の準備」に挙げている確認は、実質的に前日までの宿題です。

区分 確認すること
機体 機体登録の有効期間。機体認証を受けている場合はその有効期間と使用の条件(運用限界)。整備状況
操縦者 技能証明の等級・限定・条件と有効期間。その飛行に見合う操縦能力・飛行経験・訓練状況
空域 第三者の有無、住宅・学校・病院・道路・鉄道等の状況。空港・ヘリポートや管制区域等。高圧線・変電所・電波塔などの障害物。小型無人機等飛行禁止法の対象空域、緊急用務空域・飛行自粛要請空域の該当の有無
気象 最新の気象情報(天気・風向・警報・注意報)
手続き 国の飛行の許可・承認の取得。技能証明書・飛行日誌・許可承認書など必要書類の携帯・携行の準備。航空法以外の法令等(条例など)の手続き
体制 立入管理措置・安全確保措置。飛行マニュアルの作成。補助者等の配置と役割。緊急着陸地点や安全にホバリング・旋回できる場所の設定
飛行計画 上記を踏まえた飛行計画の策定と、ドローン情報基盤システム(飛行計画通報機能)への通報

特定飛行の場合、飛行計画の通報は義務です(通報せずに特定飛行を行うと30万円以下の罰金)。特定飛行に当たらない場合でも、通報することが望ましいとされています。

現場での飛行前点検チェックリスト(7項目)

機体を離陸させる直前の点検です。教則第5版(第5章 5.1)の点検項目と、国土交通省の標準飛行マニュアルの「飛行前の点検」は、次の7項目で一致しています。

番号 点検項目 見るポイント
1 各機器の取付け ネジ等の脱落やゆるみがないか
2 モーター・発動機 異音がないか
3 機体の外観 プロペラ・フレーム等に損傷やゆがみがないか
4 燃料・バッテリー 搭載量・充電量はその日の飛行に十分か
5 各系統の作動 通信・推進・電源・自動制御の各系統が正常に作動するか
6 登録記号の表示 機体に表示されているか(試験飛行の場合は届出番号と「試験飛行中」の表示)
7 リモートID 正常に作動しているか。作動を示すランプの点灯確認など(搭載する場合)

7項目それぞれは、慣れれば短時間で確認できるものです。逆に言えば、これを省く理由は「時間がない」くらいしかなく、その数分の節約は、罰則と行政処分14点にはとても見合いません。

標準マニュアルで飛ぶ方へ国土交通省の標準飛行マニュアルを添付して許可・承認を受けている場合、上の7項目はマニュアル「1.無人航空機の点検・整備」の遵守事項そのものです。省くと、単なる点検漏れではなく、承認の前提にしたマニュアルからの逸脱になります。

点検した結果は「日常点検記録」に書く(国交省様式2)

点検は、やって終わりではありません。国土交通省「無人航空機の飛行日誌の取扱要領」は、飛行前点検等の日常点検の結果を日常点検記録(様式2)に記載することとし、点検項目として次の9つを挙げています。

点検項目 様式2の着眼点
機体全般 機器の取付け状態(ネジ、コネクタ、ケーブル等)
プロペラ 外観、損傷、ゆがみ
フレーム 外観、損傷、ゆがみ
通信系統 機体と操縦装置の通信品質の健全性
推進系統 モーター又は発動機の健全性
電源系統 機体及び操縦装置の電源の健全性
自動制御系統 飛行制御装置の健全性
操縦装置 外観、スティックの健全性、スイッチの健全性
バッテリー・燃料 バッテリーの充電状況、残燃料表示機能の健全性

結果欄には項目ごとに「正常」「異常」などと記入し、実施場所・実施年月日を書いて実施者が記名します。飛行後点検を行った場合は、特記事項に「飛行後点検:異常なし」などの結果も書き添えます。

機体の設計製造者が日常点検の項目を指定している場合は、それに従います。設計製造者指定の日常点検様式があるなら、様式2の代わりにそれを日常点検記録とすることもできます。

「実施」はすべての飛行で義務、「記録」は特定飛行で義務

ここが、この記事でいちばん混同されやすい整理です。

飛行日誌は、飛行記録・日常点検記録・点検整備記録の3つをまとめた呼び名で、機体ごとに備えます。特定飛行、つまり空港等周辺・150m以上・人口集中地区上空・夜間・目視外・人や物件から30m未満・催し場所上空・危険物輸送・物件投下といった飛行をする場合には、飛行日誌を携行し、遅滞なく記載することが義務です(航空法第132条の89、同法施行規則第236条の84)。

飛行日誌を備えずに特定飛行を行った場合や、記載をしない・虚偽の記載をした場合は、10万円以下の罰金の対象です。行政処分の点数も、それぞれ6点が定められています。

一方、特定飛行をしない日でも、飛行前の確認そのものは毎回の義務です。取扱要領も、記載が義務にならない場合であっても飛行日誌による記録を行うことを推奨しています。不安全事象が起きたときの原因特定に使える、というのがその理由です。

行為 特定飛行の場合 特定飛行でない場合
飛行前の確認の実施 義務 義務
日常点検記録など飛行日誌への記載 義務 義務ではない(推奨)
飛行日誌の携行 義務 義務ではない

飛行後・運航終了後の点検と、20時間ごとの整備

着陸したら終わり、ではありません。

教則第5版と標準飛行マニュアルは、飛行後の点検として、機体へのゴミ等の付着、各機器の取付け(ネジ等の脱落やゆるみ)、機体(プロペラ、フレーム等)の損傷やゆがみ、各機器の異常な発熱の4点を挙げています。飛行中に受けたダメージがいちばん見つけやすいのは、飛行直後です。

運航終了後は、機体とバッテリーを安全な状態で適切な場所に保管したか、そして飛行日誌(飛行記録・日常点検記録・点検整備記録)を作成したかを確認します。

さらに、標準飛行マニュアルでは、20時間の飛行ごとに、交換の必要な部品の有無、各機器の取付け、機体の損傷やゆがみ、各系統の作動を点検し、点検・整備記録(マニュアル様式1)を作成することとされています。教則第5版(4.6 機体の整備・点検・保管・交換・廃棄)も、飛行前後だけでなく、無人航空機ごとに定められた一定の期間や総飛行時間ごとの整備点検を求めており、その中身は各機体メーカーが設定する整備内容に従います。

バッテリーの保管は別記事で運航終了後の保管のうち、リチウムポリマーバッテリーは教則に具体的な数値(長期間使わないときは充電60%を目安に保管、35℃を超える環境で保管しない等)が書かれている論点です。詳しくはシリーズ第1回のバッテリー管理ガイドにまとめています。

よくある誤解の整理

よくある誤解 実際
点検が義務なのは特定飛行だけ 飛行前の確認はすべての飛行で毎回義務。特定飛行で義務になるのは飛行日誌への記載・携行のほう
飛行日誌は運航者ごとに1冊でよい 飛行日誌は機体ごとに備える。1つの操縦装置で複数機を使う場合も機体ごと
日誌は月末にまとめて書けばよい 飛行記録は1飛行ごと、日常点検記録は飛行させる都度、遅滞なく記載する
点検はアプリの自己診断で完結する ネジのゆるみ、プロペラの損傷、登録記号の表示などの外部点検は、操縦者が機体を見て確認する項目として挙げられている
送信機は機体ではないので点検対象外 様式2の点検項目には操縦装置(外観・スティック・スイッチの健全性)が含まれる
飛行日誌は紙でなければならない 紙でも電子データでもよい。ただし特定飛行では、必要に応じ速やかに参照・提示できる状態にしておく

講習の場で見かける、見落としがちなポイント

登録講習機関で講習と修了審査を担当していると、点検について受講生の方に共通する傾向がいくつかあります。特定の製品の話ではなく、どの機体でも起きる話です。

機体は見るのに、送信機を見ない。様式2の点検項目に操縦装置が入っていることは、意外なほど知られていません。スティックの動き、スイッチの位置、外観の損傷。機体側が完璧でも、操縦装置の異常は同じように飛行の安全に直結します。

プロペラは「付いているか」しか見ない。見るべきは取付けの確実さと、損傷・ゆがみです。小さな欠けやひびは、飛行中の振動や異音の出どころになります。プロペラとモーターの見方は、このシリーズで回を改めて扱う予定です。

リモートIDの作動確認を飛ばす。教則は、作動していることを示すランプの点灯確認を例に挙げています。登録記号の表示確認とあわせて、機体を手に取る流れの中に組み込んでしまうのが確実です。

点検はするのに、結果を書かない。記録がなければ、あとから「あの日どこまで確認したか」を示す手立てがありません。不具合の原因をたどるときにも、点検の記録は効いてきます。

習慣にするコツチェックリストを機材ケースの内側に貼る。点検の順番を毎回同じにする(機体の右前から時計回りに一周して、最後に送信機、など)。順番を固定しておくと、抜けたときに違和感で気づけるようになります。

異常が見つかったら、その日は飛ばさない

点検は、異常を見つけるためにやっています。見つけたときの行動まで決めておいて、はじめて意味があります。

飛行前点検で異常が見つかったら、その機体はその日は飛ばさない。これが原則です。「これくらいなら飛ぶだろう」という判断は、点検を実質的に無効にします。

見つけた不具合は日常点検記録の特記事項に記入し、修理や部品交換などの是正を行ったら、その内容を点検整備記録に記載します。登録を受けた機体の使用者には、機体を安全な状態に維持する整備の義務もあります(教則第5版 第3章)。

不具合と対応の記録は、次にその機体を使う人への引き継ぎでもあります。複数人で機体を共有している現場ほど、記録の価値は上がります。

まとめ

飛行前点検の全体像を、法令上の義務の線でもう一度整理します。

1. 飛行前の確認は全員・毎回の義務。航空法第132条の86。確認せずに飛ばすと50万円以下の罰金、技能証明保有者には行政処分14点も定められています。

2. 確認は5本柱。機体・空域・気象・電源(燃料またはバッテリー)・リモートID。機体だけ見ても「飛行前の確認」にはなりません。

3. 現場の機体点検は7項目。取付け・異音・外観・電源・各系統の作動・登録記号・リモートID。教則と標準飛行マニュアルで共通です。

4. 特定飛行なら記録まで義務。日常点検記録(様式2・9項目)を含む飛行日誌を機体ごとに備え、携行し、都度記載します。

5. 異常が出たら飛ばさない。特記事項に書き、直したら点検整備記録に残す。ここまでが点検です。

点検は、慣れれば数分の作業です。その数分が、機体と、現場の第三者と、あなたの技能証明を守ります。

ご注意本記事は、無人航空機の飛行の安全に関する教則(第5版・公布 令和8年7月7日/適用 令和8年7月14日)、航空法及び同法施行規則、国土交通省「無人航空機の飛行日誌の取扱要領」(令和4年12月1日制定・国空無機第236963号)、国土交通省の標準飛行マニュアル(場所を特定した申請について適用)に基づく解説です。法令・様式・各社のルールは変更されることがあります。実際の点検項目は、お使いの機体のメーカー公式マニュアルと最新の法令をご確認ください。
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登録講習機関講師 フライトデスク 監修

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