教則第5版をやさしく読む13|4.1 無人航空機の機体の特徴(機体種類別)【全文+講師の解説】

教則第5版をやさしく読む13|4.1 無人航空機の機体の特徴(機体種類別)【全文+講師の解説】 ストック記事

ここから第4章、機体そのものの話に入ります。とはいえ最初の節は、部品でもプログラムでもありません。「マルチローターと、ヘリコプターと、飛行機は、どこがどう違うのか」——それだけの話です。

ドローンを飛ばしている方の多くは、4枚や6枚のプロペラが付いたマルチローターしか触ったことがないと思います。私もそうでした。ではなぜ、教則はわざわざ飛行機やヘリコプターの説明に紙面を割いているのか。理由ははっきりしていて、技能証明が「機体の種類ごと」に分かれているからです。種類が変われば、できることも、危ないところも、必要な資格も変わります。今回はその違いを、なるべく体感に近いところまで噛み砕いていきます。

教則第5版 4.1 無人航空機の機体の特徴(機体種類別)(全文)

出典:国土交通省「無人航空機の飛行の安全に関する教則(第5版)」(令和8年7月7日公布・令和8年7月14日適用)。読みやすさのためレイアウトを再構成し、原本で混在している英数字の全角・半角を半角にそろえています。本記事は国土交通省の公式なものではありません。

無人航空機の種類と特徴

回転翼航空機(マルチローター)、回転翼航空機(ヘリコプター)及び飛行機などが該当する。回転翼航空機(マルチローター)及び回転翼航空機(ヘリコプター)は、垂直離着陸や空中でのホバリングが可能という特徴がある。一方で、飛行機は、垂直離着陸やホバリングはできないが、回転翼航空機に比べ、飛行速度が速く、エネルギー効率が高いため、長距離・長時間の飛行が可能という特徴がある。さらに、回転翼航空機のように垂直離着陸が可能で、巡行中は飛行機のように前進飛行が可能となる、両方の特徴を組み合わせたパワードリフト機(Powered-lift)もある。

飛行機

  • (1) 機体の特徴

飛行機は回転翼航空機と比べ高速飛行、長時間飛行、長距離飛行が可能であるが、一般に、安全に飛行できる最低速度が決められており、それ未満での低速飛行ができない。水平離着陸には広いエリアが必要であり、高度な操縦技能と飛行制御技術が必要である。一方、適切な機体設計によって無操縦・無制御でも飛行安定が達成でき、仮に故障などによって飛行中に推力を失っても滑空飛行状態になれば、すぐには墜落しない。

飛行機は、翼に揚力を発生させて自重を支えることができるのが特徴である。このため比較的少ないエネルギーで飛行し、長距離飛行が可能になる。エレベーター(上下ピッチ方向)、エルロン(左右ロール方向)、ラダー(左右ヨー方向)、スロットル(推進パワー)の複合的な操縦で飛行する。離着陸には機体のサイズに合わせた滑走路が必要となる。滑空するため墜落、不時着する場合の落下地点を狭い範囲に抑えることができない。推力により前進し空気を掴み揚力が生まれるので、回転翼航空機とは違いホバリングや後退、横移動はできない。横方向の移動はバンクターン(旋回)で行う。姿勢安定装置を使用しない場合はバンクターンの操作はエルロンとエレベーターの複合である。過度の低速飛行や過度の上昇角度、過度の旋回半径小により翼面から空気が剥離する失速という状態に陥ることがある。失速時は舵の操作が効かなくなる。これは飛行機にとって極めて危険な状態である。失速を回避するためにも操縦には高い技能が求められる。特に技能が必要なのは手動操縦における離着陸である。

離着陸含めて自動飛行を行う場合は、発射装置や回収装置などの地上設備が必要となる場合がある。

  • (2) 大型機(最大離陸重量 25kg 以上)の特徴

大型機(最大離陸重量 25kg 以上)は主翼面積が大きくなるため、よりペイロード(積載可能重量)を大きくすることができる。ガソリンエンジンなど推進動力の選択肢も広がるのでより長距離・長時間飛行も可能になる。25kg 未満の飛行機に比べて風の影響も受けにくくなる。大型機は、事故発生時の影響が大きいことから、操縦者の運航への習熟度及び安全運航意識が十分に高いことが要求される。大型機は機体の慣性力が大きいことから、増速・減速・上昇・降下などに要する時間と距離が長くなるため、障害物回避には特に注意が必要である。緊急着陸地点の選定も小型機より広い範囲が必要となる。一般に小型の機体よりも騒音が大きくなるため、飛行ルート周囲への配慮が必要である。

回転翼航空機(ヘリコプター)

  • (1) 機体の特徴

回転翼航空機(ヘリコプター)は、垂直離着陸、ホバリング、低速飛行が可能であるが、これには大きなエネルギー消費がともない、風の影響を受けやすい。同じ回転翼航空機であるヘリコプター型とマルチローター型で比べると、ヘリコプター型は1組のローターで揚力を発生させるため、回転翼航空機(マルチローター)に比べローターの直径が大きく、空力的に効率良く揚力を得る事が出来る。

回転翼航空機(ヘリコプター)においては以下に示すような機構が必要であり、構造的に複雑となっている。

  • ⚫ ローターの回転面を傾けたり(機体を前後左右に運動させる場合)、ローターピッチ角を変えたり(上昇・降下させる場合)するために必要な機構(スワッシュプレート等)
  • ⚫ ローターの反トルクを打ち消したり、向き(ヨー方向)を変える操縦に用いたりするテールローター
  • (2) 大型機(最大離陸重量 25kg 以上)の特徴

回転翼航空機(ヘリコプター)において最大離陸重量 25kg 以上の大型機では慣性力が大きく操舵時の機体挙動が遅れ気味になるため、特に定点で位置を維持するホバリングでは早めに操舵することが必要となる。また一般的に小型の機体よりエンジン騒音やローター騒音が大きくなる。

回転翼航空機(マルチローター)

  • (1) 機体の特徴

回転翼航空機(マルチローター)は機体外周に配置されたローターを高速回転させ、上昇・降下や前後左右移動、ホバリングや機体を水平回転させることが出来る。大きなエネルギー消費により、複数のローターを高速回転させ揚力を得て飛行するが、風の影響を受けやすく飛行の安定性を高めるため、フライトコントロールシステムを用いローターの回転数を制御し、機体の姿勢や位置を安定させている。

操縦は送信機に備わるコントロールスティック等を操作して行う。ローターの数によってそれぞれ呼称が異なる(ローターの数 4:クワッドコプター、6:ヘキサコプター8:オクトコプター)。

モーター性能を同一とした場合、ローターの数が多いほど故障に対する耐性が向上し、ペイロード(積載可能重量)が増える。

ローターの回転方向は、時計回転(CW:クロックワイズ)と反時計回転(CCW:カウンタークロックワイズ)の方向で構成され、反トルクによりの機体の回転バランスを保っている。

  • 1) 上昇、ホバリング、降下

機体に備わる全てのローターを回転させ回転数を増加させていくと、機体重量以上の揚力を得ると上昇し始める。機体重量と揚力が釣り合い、対地高度が安定した状態を継続するとホバリングとなる。

ホバリング状態からローター回転数を下げると降下する。

  • 2) 前後、左右移動

機体の前後左右移動は、その指示した側のローターの回転数を下げ、反対側のローター回転数を上げることで機体が傾き、ローター推力の合力が、指示した方向に傾くので、傾いた方向に機体が移動する。

  • 3) 水平回転

ローターの反トルクバランスを崩すと機体の水平回転が始まる。揚力を得ている状態で、右もしくは左回転を指示すると、指示した回転方向のローターの回転数が下がりトルクバランスが崩れ回転が始まる。

  • 4) 回転翼航空機(マルチローター)と機体の動き

回転翼航空機(マルチローター)を操縦する際に、機体の動きを指示するために用いられる用語として以下のものがある。

  • ⚫ スロットル:上昇・降下
  • ⚫ ラダー:機首方向の旋回
  • ⚫ エルロン:左右移動
  • ⚫ エレベーター:前後移動
  • (2) 大型機(最大離陸重量 25kg 以上)の特徴

回転翼航空機(マルチローター)の最大離陸重量 25kg 以上の大型機の特徴としては、以下のものが挙げられる。

  • ⚫ 機体の対角寸法やローターのサイズやモーターパワーも大きくなり、飛行時の慣性力も増加し、上昇・降下や加減速などに要する時間と距離が長くなる。
  • ⚫ 離着陸やホバリング時の地面効果等の範囲が広がり、高度な操縦技術を要する。
  • ⚫ 飛行時機体から発せられる騒音も大きくなり周囲への影響範囲も広がる。

ここからは私の解説です

この節がいちばん言いたいこと

ひとことで言うと、「ドローン」とひとまとめにできるのは呼び名だけで、飛び方はまったく違うということです。

マルチローターはその場で止まれます。飛行機は止まれません。この一点だけで、離着陸の場所も、事故の起き方も、必要な技能も全部変わります。教則がこの節を第4章の最初に置いているのは、あとに出てくる飛行原理も、点検も、リスク管理も、全部「どの種類の機体か」で答えが変わるからだと思っています。

まず、3つ+1つの全体像

種類 得意なこと 苦手なこと・注意
回転翼航空機
(マルチローター)
垂直離着陸、ホバリング、前後左右の移動、その場での水平回転 大きなエネルギー消費。風の影響を受けやすく、フライトコントロールシステムで安定させている
回転翼航空機
(ヘリコプター)
垂直離着陸、ホバリング、低速飛行。1組のローターで揚力を出すため直径が大きく、マルチローターより空力的に効率よく揚力を得られる エネルギー消費が大きく、風の影響を受けやすい。構造が複雑
飛行機 速い、長い、遠い。翼で自重を支えるのでエネルギー効率が高い 垂直離着陸もホバリングもできない。最低速度がある。滑走路が要る
パワードリフト機 垂直離着陸ができて、巡航では前進飛行 ——(教則は両方の特徴を組み合わせた機体、とだけ書いています)

この表の右端が、そのまま「なぜ資格が種類ごとに分かれているのか」の答えです。飛行機の操縦者にホバリングはできませんし、マルチローターの操縦者に着陸進入はできません。同じ「飛ばす」でも中身が違うので、証明も別々になっています。

飛行機——いちばんの特徴は「止まれない」ことです

教則の飛行機の説明で、私がいちばん大事だと思っているのはこの一文です。

一般に、安全に飛行できる最低速度が決められており、それ未満での低速飛行ができない。

飛行機は翼に空気を当てて揚力を作るので、空気が十分に流れていないと浮いていられません。だから遅くなりすぎると落ちます。ここから先の話は全部、この1点から出てきます。

  • ホバリングも後退も横移動もできない。 横に動くときはバンクターン(旋回)で向きを変えて進みます
  • 滑走路が要る。 離着陸には機体のサイズに合った距離が必要です
  • 落ちるときも滑る。 教則は「滑空するため墜落、不時着する場合の落下地点を狭い範囲に抑えることができない」と書いています。真下に落ちてくれないので、立入管理の考え方が変わります
  • 失速。 過度の低速飛行、過度の上昇角度、過度の旋回半径小——この3つで翼面から空気が剥離します。教則は「失速時は舵の操作が効かなくなる」とはっきり書いています

そして操縦は4つの操作の組み合わせです。エレベーター(上下ピッチ方向)、エルロン(左右ロール方向)、ラダー(左右ヨー方向)、スロットル(推進パワー)。姿勢安定装置を使わない場合、バンクターンはエルロンとエレベーターの複合になります。「1つのスティックで1つの動き」ではないところが、マルチローターとの体感の差です。

もう1つ、実務で効く一文があります。「離着陸含めて自動飛行を行う場合は、発射装置や回収装置などの地上設備が必要となる場合がある」。飛行機は自分で止まれないので、飛ばすための道具と、受け止めるための道具が要ることがある。マルチローターしか知らないと想像しにくいところだと思います。

ヘリコプター——なぜ「構造的に複雑」なのか

教則は、ヘリコプターについて「構造的に複雑となっている」と書き、その理由として2つの機構を挙げています。

機構 何のためにあるか
スワッシュプレート等 ローターの回転面を傾ける(機体を前後左右に動かす)/ローターピッチ角を変える(上昇・降下させる)
テールローター ローターの反トルクを打ち消す/向き(ヨー方向)を変える操縦に使う

ここが分かると、マルチローターの理解も一段深まります。ヘリコプターは、羽根1組で全部やろうとしているから複雑なのです。1組しかないので、傾けるための機構が要る。1組しかないので、回転の反作用(反トルク)を打ち消す尻尾が要る。

対してマルチローターは、回る向きの違うローターを複数並べて、回転数の差だけで全部やっています。可動部が少ないぶん壊れにくく、安くなる。そのかわり、常に全部のローターを回し続けるのでエネルギーを食う——教則がマルチローターの説明で「大きなエネルギー消費により」とわざわざ書いているのは、この構造の裏返しです。

マルチローター——操作の名前は、飛行機から借りています

教則が挙げているマルチローターの用語は4つです。

用語 指示する動き
スロットル 上昇・降下
ラダー 機首方向の旋回
エルロン 左右移動
エレベーター 前後移動

お気づきでしょうか。4つとも、さきほど飛行機のところで出てきた言葉と同じです。ただし意味は少しずれています。飛行機のエルロンは機体を「傾ける」舵ですが、マルチローターでは「左右に移動する」指示です。エレベーターも、飛行機では機首を上下させる舵、マルチローターでは前後移動。言葉は借りているけれど、結果として起きることが違う——ここは取り違えやすいので、表のまま覚えてしまうのが早いと思います。

マルチローターは、どうやって動いているのか

教則の説明は短いのですが、読み解くと全部「回転数の差」の話に還元できます。

  • 上昇・ホバリング・降下:全部のローターの回転数を上げていくと、機体重量以上の揚力が出て上昇します。機体重量と揚力が釣り合って対地高度が安定した状態がホバリング。回転数を下げれば降下します
  • 前後左右の移動:行きたい側のローターの回転数を下げ、反対側を上げる。機体が傾き、推力の合力が傾いた方向に向くので、そちらへ進みます
  • 水平回転:反トルクのバランスを崩す。右または左の回転を指示すると、その回転方向のローターの回転数が下がってバランスが崩れ、機体が回り始めます

「行きたい方向の回転数を上げる」ではなく「下げる」——ここは直感と逆なので、声に出して覚えておくとよいと思います。下げた側が沈み、機体が傾き、その方向へ進む。傾いた分だけ揚力の一部が横向きに使われるので、前に進むと少し高度が落ちやすいのも、この仕組みから説明できます。

この節の隠れた主役は「反トルク」です

教則は反トルクを2か所で使っています。ヘリコプターのテールローターの説明と、マルチローターの回転バランスの説明です。

ローターの回転方向は、時計回転(CW:クロックワイズ)と反時計回転(CCW:カウンタークロックワイズ)の方向で構成され、反トルクによりの機体の回転バランスを保っている。

ローターを回すと、機体はその逆向きに回ろうとします。これが反トルクです。ヘリコプターは尻尾のローターで打ち消し、マルチローターは回る向きの違うローターを組み合わせて打ち消し合わせています。だからこそ、わざとバランスを崩せば機首が回る。打ち消す仕組みが、そのまま向きを変える仕組みになっているわけです。

ちなみに、ローターの数による呼び名も教則に出てきます。4枚がクワッドコプター、6枚がヘキサコプター、8枚がオクトコプター。そして教則は「モーター性能を同一とした場合、ローターの数が多いほど故障に対する耐性が向上し、ペイロードが増える」としています。産業用の機体に6枚や8枚が多いのは、力が要るからだけでなく、1つ止まっても余裕が残るようにという設計だからです。

25kg以上になると、3種類とも同じ悩みを抱えます

教則は3つの種類それぞれに「大型機(最大離陸重量25kg以上)の特徴」という項を立てています。並べてみると、言っていることがほとんど同じです。

共通して起きること 教則の書き方
慣性力が大きくなる 飛行機=増速・減速・上昇・降下に要する時間と距離が長くなり、障害物回避に注意/
ヘリコプター=操舵時の機体挙動が遅れ気味になり、ホバリングでは早めに操舵/
マルチローター=上昇・降下や加減速に要する時間と距離が長くなる
騒音が大きくなる 飛行機=飛行ルート周囲への配慮が必要/マルチローター=周囲への影響範囲も広がる
着陸の余裕が要る 飛行機=緊急着陸地点の選定も小型機より広い範囲が必要/マルチローター=離着陸やホバリング時の地面効果等の範囲が広がる

大きくなると、機体は「言うことを聞くのが遅くなる」。これが25kg以上の共通項です。だから操作は早めに、小さく。教則がヘリコプターのところで書いている「早めに操舵することが必要」は、そのまま3種類に通じる話だと思っています。

そして飛行機の項には、もう一段重い一文があります。「大型機は、事故発生時の影響が大きいことから、操縦者の運航への習熟度及び安全運航意識が十分に高いことが要求される」。技能ではなく意識にまで踏み込んで書いてあるのは、教則の中でも珍しい書き方です。

パワードリフト機は、資格が2つ要ります

教則はこの節でパワードリフト機を紹介するだけですが、資格の話とつなげると意味がはっきりします。第10回で読んだとおり、技能証明の種類の限定は6つ(マルチローター/ヘリコプター/飛行機の3種類 × 重量制限なし・25kg未満)。パワードリフト機はその6つの中に自分の枠を持っていません。

そのため、パワードリフト機を飛ばすには回転翼航空機(マルチローター)と飛行機の両方の限定が必要になります。垂直に上がって、前へ飛ぶ。2つの飛び方をするから、資格も2つ——理屈で覚えられるところです。

実際に型式認証を取った機体を、種類別に数えてみました

ここからは教則の外の話です。「3種類ある」と言われても実感が湧かないので、国土交通省が公表している「型式認証を取得している無人航空機一覧」(令和8年6月19日現在)を種類別に数えてみました。

機体の種類 件数 中身
回転翼航空機(マルチローター) 8 第一種は1件(ACSL式 PF2-CAT3型)。第二種にソニー、センチュリー、イームズ、Prodrone、DJIなど
回転翼航空機(ヘリコプター) 5 すべてヤマハ発動機(FAZER R型、YANMAR YF390AX型ほか)。5件とも25kg以上
回転翼航空機(その他) 1 エアロセンス式 AS-VT01K型
飛行機 0 ——

合計14件。読み取れることが3つあります。

1つ目。ヘリコプターは全部25kg以上で、しかも1社です。産業用ヘリの世界は、農薬散布を中心にヤマハ発動機がずっとやってきた分野で、その延長にあることがそのまま数字に出ています。教則が「ヘリコプターは構造が複雑」と書く相手は、趣味の機体ではなくこの規模の機械だと思って読むと、書きぶりが腑に落ちます。

2つ目。飛行機は0件です。教則はきちんと1項を割いて説明していますが、型式認証の世界ではまだ実例がありません。制度は3種類ぶん用意されていて、実物の広がりはこれからという段階です。

3つ目。身近な機体も入っています。DJI Mini 4 Pro型とDJI Matrice 4D/4TD型は4kg未満で第二種型式認証を取っています。「型式認証は大きな産業機の話」と思いがちですが、手に取れるサイズの機体も対象です。

実地試験も、種類ごとに分かれています

資格が種類ごとなので、当然ながら実地試験も種類ごとです。指定試験機関(一般財団法人 日本海事協会)は「実地試験は、機体の種類(回転翼航空機(マルチローター)、回転翼航空機(ヘリコプター)、飛行機)ごとに試験を実施します」としています。

項目 内容
試験の構成 机上試験・口述試験・実技試験
採点 100点の持ち点からの減点式
合格 各試験科目終了時に、一等は80点以上/二等は70点以上の持ち点を確保

減点式なので、大きなミスを1つしないことが、小さく上手に飛ぶことより効きます。国土交通省が出している実施細則(回転翼航空機(マルチローター)・令和7年12月5日改正)を読むと、飛行経路からの逸脱を見るための減点区画と不合格区画をあらかじめ地面に示しておくこと、各科目に制限時間があること、口述試験には飛行前点検と飛行後の点検と記録があることまで決められています。「うまく飛ばす試験」ではなく「決められた枠から出ない試験」だと考えたほうが近いです。

なお、試験機関のサイトには「現在予約が大変取りづらくなっており、手数料をお支払いいただいてもご希望の日程の予約が取れないことがあります」という注記が出ています(2026年8月時点)。学科と違って、実地は日程が読めない前提で計画したほうがよさそうです。

この回の数字まとめ

  • 機体の種類=マルチローター/ヘリコプター/飛行機の3つ。加えてパワードリフト機
  • 技能証明の種類の限定=6つ(3種類 × 重量制限なし・25kg未満)。パワードリフト機はマルチローターと飛行機の2つの限定が必要
  • ローターの数=4:クワッドコプター/6:ヘキサコプター/8:オクトコプター。多いほど故障への耐性が向上し、ペイロードが増える(モーター性能が同一の場合)
  • 回転方向=CW(時計回転)とCCW(反時計回転)で構成し、反トルクで回転バランスを保つ
  • マルチローターの操作=スロットル(上昇・降下)/ラダー(機首方向の旋回)/エルロン(左右移動)/エレベーター(前後移動)
  • 前後左右の移動=指示した側の回転数を下げ、反対側を上げる
  • 飛行機=最低速度がある/ホバリング・後退・横移動ができない/横移動はバンクターン/失速すると舵が効かない
  • ヘリコプターの機構=スワッシュプレート等(回転面を傾ける・ピッチ角を変える)とテールローター(反トルクを打ち消す・ヨー方向の操縦)
  • 大型機=最大離陸重量25kg以上。慣性力が大きく、時間と距離が伸び、騒音も大きくなる
  • 型式認証を取得している機体=14件(マルチローター8/ヘリコプター5/その他1/飛行機0)。2026年8月時点
  • 実地試験=100点の持ち点からの減点式。合格は一等80点以上・二等70点以上

おわりに

この節は、丸暗記しようとすると細かい用語が並ぶだけに見えます。でも、「その場で止まれるか」「羽根は1組か複数か」——この2つの問いを置くと、ほとんどの記述がそこから導けます。

止まれないから飛行機には最低速度があり、滑走路が要り、落ちるときも滑る。羽根が1組だからヘリコプターにはスワッシュプレートとテールローターが要る。羽根が複数だからマルチローターは回転数の差だけで動けて、そのかわり食う。覚えるのではなく、たどれるようにしておくのが、この節との付き合い方だと思います。

次回は「4.2 無人航空機の機体の特徴(飛行方法別)」。同じ機体でも、飛ばし方が変わると何が変わるのか——夜間、目視外、そして自動飛行の話に入っていきます。

出典

  • 国土交通省「無人航空機の飛行の安全に関する教則(第5版)」令和8年7月7日公布・令和8年7月14日適用
  • 国土交通省「型式認証を取得している無人航空機一覧」令和8年6月19日現在(機体の種類・重量区分・型式認証保有者を種類別に集計)
  • 国土交通省「無人航空機の第二種型式認証を行いました~エアロセンス式AS-VT01K型の認証について~」令和6年6月5日(第一種・第二種型式認証の位置づけ)
  • 無人航空機操縦士試験案内サイト(指定試験機関 一般財団法人 日本海事協会)「実地試験」(機体の種類ごとの実施、減点式の合格基準、予約状況の注記)
  • 国土交通省航空局安全部無人航空機安全課「一等無人航空機操縦士実地試験実施細則 回転翼航空機(マルチローター)」「二等無人航空機操縦士実地試験実施細則 回転翼航空機(マルチローター)」令和7年12月5日改正(持ち点80点・70点、減点区画と不合格区画、制限時間、口述試験の構成)

本記事の内容は2026年8月時点のものです。制度や公表資料は更新されることがありますので、最新の情報は必ず国土交通省・指定試験機関の公式サイトでご確認ください。

この章を、問題で確認する

ここは学科試験では「無人航空機のシステム」の分野にあたります。読んだ直後に解くと、取り違えていた箇所がその場で分かります。

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