機体は買った。申請も通った。あとは現場に持って行くだけ、のつもりで着いて、最初に手が止まるのが設営です。
機体をどこに置くか。コーンをどこまで広げるか。看板は何枚要るのか。
この判断は、現場の感覚で決めるものではありません。国が数字で示している部分が、思っているよりずっと多いのです。
設営の起点は、機材ではなく区画
教則第5版は、立入管理措置の中身をこう書いています。第三者の立入りを制限する区画(立入管理区画)を設定し、当該区画の範囲を明示するために必要な標識の設置等。例として挙げられているのが、関係者以外の立入りを制限する旨の看板、コーン等による表示、補助者による監視及び口頭警告です(3.1.2(2)4)b)。
つまりコーンと看板は、あると親切な備品ではありません。立入管理措置そのものの構成要素です。これを講じるかどうかで、その飛行がカテゴリーⅡになるかカテゴリーⅢになるかが分かれます。
もう一つ。飛行計画の通報項目には「立入管理措置の有無及びその内容」が入っています。設営の中身は現場に着いてから決めるものではなく、通報の時点ですでに宣言済みだということです。
そして飛行が終わったあとにも残ります。飛行日誌の飛行記録には、飛行の年月日と並んで離着陸場所を記載することが求められています。設営した場所は、通報で申告し、記録で残す。前後を書類に挟まれた作業だと考えてください。
区画の広さは、国が3通りの決め方を示している
「どこまで広げればいいのか」に対する答えは一つではありません。飛行の形態によって、根拠になる文書と数字が変わります。
| 場面 | 区画の広さ | 根拠 |
|---|---|---|
| 一般の飛行 | 飛行領域に危険半径を加えた範囲。危険半径は高度と同じ数値か30mのいずれか長い方 | 教則第5版 6.1.1 |
| 催し場所の上空 | 飛行高度に応じて外周から30mから70m(下表) | 標準マニュアル01 3-6 |
| 補助者なし目視外 | 飛行範囲の外周から落下距離の範囲内 | 教則第5版 6.4.2〔一等〕 |
催し場所の上空については、標準マニュアルが高度別の表を持っています。マニュアルはここで「立入禁止区画」という語を使っており、教則の「立入管理区画」とは表記が違います。引くときは、その文書の語に合わせてください。
| 飛行の高度 | 立入禁止区画 |
|---|---|
| 20m未満 | 飛行範囲の外周から30m以内の範囲 |
| 20m以上50m未満 | 飛行範囲の外周から40m以内の範囲 |
| 50m以上100m未満 | 飛行範囲の外周から60m以内の範囲 |
| 100m以上150m未満 | 飛行範囲の外周から70m以内の範囲 |
実際に当てはめると、こうなります。高度20mで飛ばすなら危険半径は30m。高度50mなら50m。高度100mなら100mです。飛行領域そのものが半径30mあるなら、外周はさらにその外側に取ることになります。地図の上で先に円を描いておかないと、現場で巻尺を持って途方に暮れます。
看板とコーンが、補助者の代わりになった
ここが今回いちばん大きい話です。航空局標準マニュアル01・02の令和7年12月26日版で、3-1(5)にこういう一文が入りました。
塀やフェンス等を設置することや、第三者の立入りを制限する旨の看板やコーン等を飛行範囲や周辺環境に応じて設置することにより立入管理区画を明示し、第三者の立入りを確実に制限することができる場合は、これを補助者の配置に代えることができる。
同じ趣旨の追記が、人口集中地区や30mを保てない飛行(3-5)、夜間飛行(3-7)、目視外飛行(3-8)、危険物輸送・物件投下(3-9)にも入っています。従来は補助者を必ず置く前提だった場面で、設営の作り込みが人員配置の代わりになり得るということです。
ただし条件は「確実に制限することができる場合」。コーンを何本か置いただけでは足りません。ここを判断するとき、私は次の3点で見ています。マニュアルが基準として明示しているわけではなく、条文を現場に落とすための整理です。
- 境界が一周つながっているか。どこか一辺が抜けていれば、そこは制限できていません
- 出入口をだれかが管理しているか。開いたままの通用口があれば、区画の内側は無人地帯ではありません
- 入られたときに飛行を止められるか。気づく手段と止める手順がなければ、明示しただけです
逆にいえば、屋上や施錠された敷地内のように、そもそも第三者が入れない場所であれば、この条件は自然に満たされます。
離着陸地点の距離は、機体の種類で数字が違う
教則第5版は、離着陸地点と人・物件との距離を機体種類別に書き分けています。ここで「メーカーによる」と流してしまうと、国が示している数字を落とします。
| 機体の種類 | 操縦者・補助者との距離 | 周囲の物件との距離 |
|---|---|---|
| 回転翼(マルチローター) | 離陸地点は3m以上 | 30m以上 |
| 回転翼(ヘリコプター) | 20m以上を推奨 | 30m以上 |
| 飛行機 | 20m以上を推奨 | 30m以上(滑走範囲も考慮) |
いずれも教則6.3の〔一等〕項目です。取扱説明書に推奨距離が書かれている場合はその指示に従うこと、距離が確保できない場合は補助者を配置するなどの安全対策を講じることも、あわせて書かれています。
場所を特定しない申請で標準マニュアル02を使う場合は、3-1(13)で「人又は物件との距離が30m以上確保できる離発着場所を可能な限り選定する」ことが求められます。離着陸場所そのものに条件が付く形です。
そして立入管理措置を講じないカテゴリーⅢ飛行では、離着陸について別の注意点が示されています。第三者や第三者の物件と機体が接触しないようにすること。ローターの風で物が飛ばされ、第三者や物件に危害を加えないようにすること。家屋の壁面など構造物が近く、吹きおろしの跳ね返りで機体が不安定になりそうな環境は、あらかじめ離着陸エリアから除外すること。電線などの障害物がない空域をあらかじめ選んでおくこと。カテゴリーⅢに限らず、狭い場所で離着陸するときの視点としてそのまま使えます。
パッドの位置と、人・機材の置き方
パッドを敷く前に、地面を見ます。教則が離着陸地点の選定条件として挙げているのは、水平であること、滑りやすい場所を避けること、砂または乾燥した土の上を避けることです。砂の上を避ける理由は、ダウンウォッシュで砂埃が飛散し、視界を遮るおそれがあるためと明記されています。飛行機の場合は、草が伸びていない水平な場所で、向かい風方向に滑走できることが条件になります。
パッドが効くのはまさにこの砂埃の抑制と、着陸目標の明示です。逆に言えば、パッドを敷いたからといって傾斜地が水平になるわけではありません。地面の条件を満たせない場所を、道具で埋めることはできません。
人の位置は、補助者から決めます。標準マニュアルは補助者の立ち位置を「飛行経路全体を見渡せる位置」と定めています。操縦者の隣ではありません。教則も、補助者の役割として離着陸場所や飛行経路周辺の安全確認、危険予知の警告、緊急着陸地点への誘導、着陸後の機体回収や安全点検の補助を挙げています。
人数についても、標準マニュアルは「安全を確保するために必要な人数」とだけ書いており、何人という数字は示していません。決め方は教則の側にあります。飛行経路や範囲に応じて、補助者の数や配置、各人の担当範囲や役割、異常運航時の対応方法を決めておくこと。つまり経路図を引いてから人数が出るのであって、先に人数が決まるわけではありません。通信手段も、あらかじめ決めた方法で常時連絡が取れることが条件です。
操縦者に加えて、操縦と安全管理の役割を分けるために安全管理者(運航管理者)を配置することが望ましい、とも書かれています。1人で機体を見ながら周囲も見る体制は、教則が想定しているかたちではありません。
看板に何を書き、どこまで周知するか
教則が看板の記載事項として示しているのは、関係者以外の立入りを制限する旨です。補助者なし目視外の項では、さらに踏み込んでいます。立入管理区画に立看板等を設置するとともに、インターネットやポスター等により、問い合わせ先を明示した上で上空を無人航空機が飛行することを第三者に対して周知する、と書かれています(6.4.2(3)〔一等〕)。
看板は現場に立てるもの、周知はその外側に届けるもので、役割が別だという整理です。同じ項には、立入管理区画に道路、鉄道、家屋等、第三者が存在する可能性を排除できない場所が含まれる場合には、追加の立入りを制限する方法を講じることも書かれています。
催し場所の上空で飛ばす場合は、区画の設定そのものを主催者等とあらかじめ調整することが求められます。こちらで線を引いて済む話ではなく、調整した結果は申請書の参考事項欄に記載することになっています。会場の動線を持っているのは主催者側なので、当日の朝に話を始めても間に合いません。
なお、看板の寸法・文字の大きさ・色については、教則と標準マニュアルを検索した範囲では基準が見つかりませんでした。読める大きさで、というのが実務の落としどころだと考えていますが、根拠となる数値は確認できていません。この点は断定を避けておきます。
夜間・目視外・催しで、設営はこう変わる
| 飛行の形態 | 設営で追加になること | 根拠 |
|---|---|---|
| 夜間飛行 | 車のヘッドライトや撮影用照明機材等で離発着場所に十分な照明を確保する。経路と障害物件は日中に事前確認しておく | 標準マニュアル01 3-7 |
| 目視外飛行 | 飛行前に飛行ルート下に第三者がいないことを確認する。双眼鏡等を有する補助者のもとで実施する | 標準マニュアル01 3-8 |
| 催し場所の上空 | 主催者等とあらかじめ調整して高度別の区画を設定する。プロペラガードを装備し、風速5m/s以上では飛行しない | 標準マニュアル01 3-6 |
夜間の照明は、機体を照らすためだけのものではありません。離発着場所そのものが暗いと、着陸位置の目測を誤ります。マニュアルが照明の対象として名指ししているのは機体ではなく離発着場所のほうです。
また、夜間飛行と目視外飛行については、令和7年12月26日版で補助者の項に「立入管理措置を講じる場合は補助者の配置に代えることができる」旨が加わりました。夜だからといって、必ず人を立たせなければならないわけではなくなっています。ただし夜間は境界そのものが見えにくいので、代替するなら区画の明示は昼より手厚く要ります。
現場でそのまま使える設営チェックリスト
| 順 | やること | 確認の目安 |
|---|---|---|
| 1 | 飛行範囲と最高高度を確定する | 通報した飛行計画と一致しているか |
| 2 | 危険半径を計算し、区画の外周を決める | 高度と30mの長い方。催しは高度別表 |
| 3 | 外周を歩いて、切れ目と侵入口を数える | 道路・通路・出入口が含まれていないか |
| 4 | コーンと看板を配置する | 境界が途切れず、外から線が見えるか |
| 5 | 離着陸地点を決める | 水平・非砂地・物件から30m以上 |
| 6 | 操縦者と補助者の立ち位置を決める | 機体との距離と、経路全体の見通し |
| 7 | 緊急着陸地点を確保する | 離着陸場とは別の場所を1か所以上 |
| 8 | 周知と連絡手段を確認する | 問い合わせ先の掲示、補助者との通信 |
| 9 | 飛行日誌に離着陸場所を記録する | 飛行記録の必須項目 |
よくある誤解の整理
| よく聞く理解 | 実際 | 根拠 |
|---|---|---|
| 立入管理区画は30m取ればよい | 高度と同じ数値か30mの長い方。高度が上がれば広がる | 教則6.1.1 |
| コーンや看板は補助者の代わりにならない | 確実に制限できる場合は代えられる。令和7年12月26日版で明記された | 標準マニュアル01・02 3-1(5) |
| 離着陸地点の距離はメーカー次第 | 教則が機体種類別に数値を示している。取扱説明書に記載があればそれに従う | 教則6.3〔一等〕 |
| パッドを敷けば地面の条件は問わない | 水平・滑りにくさ・砂埃は地面側の条件。道具では埋められない | 教則5.2.1 |
| 看板は現場に立てれば足りる | 補助者なし目視外では、外部への周知と問い合わせ先の明示も求められる | 教則6.4.2〔一等〕 |
まとめ
離着陸場の設営は、道具の話に見えて、実際は区画の話です。飛行範囲と高度が決まれば区画の外周が決まり、外周が決まれば必要なコーンと看板の数が決まり、そこでようやく機体と人の置き場所が決まります。
そして2025年12月の標準マニュアル改正で、その設営が人員配置の代わりになり得るところまで来ました。逆に言えば、設営の質が問われる度合いが上がったということでもあります。
当日いきなり測るのではなく、飛行計画を立てる段階で外周の数字を出しておく。それだけで、現場に着いてからの迷いはかなり減ります。
設営に使う道具そのものの選び方はドローンの現場装備リストに、離着陸場所をどう選ぶかの判断はドローンの離陸地点の選び方にまとめてあります。立入管理措置は申請書にも書く項目なので、手続きの流れはDIPS2.0 飛行許可・承認申請ガイドもあわせてどうぞ。
教則第5版で何が変わったかを20問で確かめたい方は、教則第5版 改正点チェック20問(無料)をご利用ください。
登録講習機関講師 フライトデスク 監修



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