ドローンバッテリーの廃棄と事故対応|膨張・発火の処置と産業廃棄物としての捨て方

現場の実務

飛ばすほうの手順は、講習でも本でも繰り返し出てきます。

ところが、使えなくなったバッテリーをどうするかは、どこにも書いていないことが多い。

膨らんだバッテリーが棚の奥に何本も溜まっている。捨て方が分からないから置いてある。現場の方から、この話は本当によく聞きます。

置いてあるだけの状態が、実は一番危ない。今回はそこを整理します。

最初に一番大事なこと膨らんだバッテリーは、リサイクル回収に出せません。小型充電式電池のリサイクルを担うJBRCの回収基準では、破損・膨張・水濡れした電池は回収対象外です。しかも事業者は協力店・協力自治体に持ち込むこと自体ができません。つまり「膨らんでから捨て方を調べる」と、出口が塞がっています。膨らむ前に交換し、事業用は産業廃棄物として処理する経路をあらかじめ決めておく。これが順序です。

教則が書いている廃棄のルールは、たった2行

教則第5版の4.6(4)リチウムポリマーバッテリーの廃棄方法は、次の内容だけです。

無人航空機の運航で生じる廃棄物は、各地方自治体のルールに従って廃棄しなければならない。事業で用いたリチウムポリマーバッテリーを廃棄する場合は、法律に則り「産業廃棄物」として廃棄する。

短いですが、ここに二つの分岐が入っています。ひとつは、捨て方の基準が国ではなく自治体にあること。もうひとつは、事業で使ったものは家庭ごみの経路に乗らないことです。

この二つを混ぜると、自治体のごみ分別表を見て「これでいいはず」と判断してしまいます。分別表が想定しているのは家庭から出るものです。事業活動に伴って出た廃棄物は、そもそも別の枠組みで動いています。

試験にも出ます学科試験では「自治体のルールに従う」「事業で用いたものは産業廃棄物」という2点がそのまま問われます。どちらか一方だけを覚えていると取りこぼします。

「事業で使った」の線引きを自分で決めておく

仕事で撮影した、点検業務で飛ばした、農薬を散布した。これらは事業です。判断に迷うのは、講習の練習機と趣味の機体が同じ棚に並んでいる場合や、副業で年に数回だけ有償の撮影をしている場合でしょう。

法令上の廃棄物区分は排出者が事業者かどうかで決まるため、ここは個別判断になります。私は保険の専門家でも廃棄物処理の専門家でもないので、線引きに迷う場合は自治体の廃棄物担当窓口に確認してください、としか言えません。

ただし実務としては、迷ったら事業側に寄せて処理業者に委託するほうが安全です。産業廃棄物として出したものが家庭ごみに混ざって問題になることはありませんが、逆は問題になります。

委託先は、事業所のある都道府県・政令市が公開している産業廃棄物処理業者の名簿から探せます。問い合わせるときに聞くことは三つです。リチウムイオン電池を扱えるか。膨張・変形したものも受けてもらえるか。収集運搬と処分のどちらの許可を持っているか。

実際に委託するときは、書面による委託契約と、マニフェスト(産業廃棄物管理票)の運用が必要になります。年に数本しか出ないのであれば、機体を買った販売店が回収の窓口を持っていることもあるので、まずそこに聞くのが早いです。

買うときに聞いておく機体やバッテリーを買う段階で、販売店に「使い終わったバッテリーは引き取ってもらえますか」と聞いておくと、あとで探す手間がなくなります。講習でも、この一言を勧めています。

JBRCの回収に出せるもの・出せないもの

一般社団法人JBRCは、小型充電式電池の回収・リサイクルを広域認定に基づいて行っている団体です。家電量販店などの協力店に置かれている回収ボックスがこれにあたります。

区分 条件 出せるか
対象の電池 JBRC会員企業製のニカド電池・ニッケル水素電池・リチウムイオン電池 出せる
状態 破損・膨張・水濡れがなく、電池パックから取り出されていないもの 出せる
破損・膨張・水濡れ 打痕や圧壊、液もれ、変形・膨張した電池パック 出せない
解体したもの 電池パックを分解してセルを取り出したもの 出せない
会員企業製以外 非会員メーカー製、メーカー不明の非純正品 出せない
事業者からの排出 協力店・協力自治体への持ち込みは不可。事前にJBRCの排出者登録が必要 要登録

ドローンのバッテリーは、この基準で見ると引っかかりやすい位置にあります。膨らんでから持ち込もうとすると断られ、非純正品を使っていれば最初から対象外です。

事業者向けには、排出者として事前に登録したうえで回収を依頼する仕組みが用意されています。回収に使う缶は屋内で使用し屋外に放置しないこと、梱包は上限20キログラムとすることなどが、JBRCの安全回収ハンドブックに定められています。まずは自社の機体メーカーがJBRCの会員かどうかを確認してください。

だから「膨らむ前」に判断する

教則第5版の4.6(3)は、リチウムポリマーバッテリーが膨らんでいる場合は、過充電などでバッテリー内部に可燃性ガスが発生している可能性があるため、早めに交換を行う、としています。

これは安全のための記述ですが、出口の話としても効いてきます。膨らんだ時点で通常のリサイクル経路から外れるので、その一歩手前で入れ替えるほうが、処理の選択肢が多い。

膨張の原因については、教則4.4(2)2)が過放電や過充電の状態では通常利用時よりも多くのガスがバッテリー内部に発生し、バッテリーを膨らませる原因となると書いています。飛行後の放電状態のまま放置する運用が、そのまま膨張につながります。

では何サイクルで替えるべきか。教則には具体的な回数は書かれていません。ここはメーカーが定める整備内容に従う領域で、教則4.6(1)も、各機体メーカーが設定する整備内容を熟知し、必要なタイミングで修理等の整備を行う必要があると述べるにとどめています。機体のアプリで充電回数とセルごとの電圧が見られる機種であれば、その数値を交換判断の材料にできます。

触って分かる兆候は、膨らみのほかに、飛行後の異常な発熱と、装着時のがたつきです。修了審査の飛行前点検でも、バッテリーは装着して発熱や膨張を確認する項目になっています。審査のためだけの手順ではなく、そのまま日常の判断に使えます。

講習でよく見かけます飛行後にバッテリーを機体から外さず、そのまま持ち帰る方がいます。教則4.6(2)は機体コネクタとバッテリーを接続したままにしないことと明記しています。短絡の危険に加えて、待機電流で少しずつ放電が進みます。

膨らんだバッテリーが出たときの手順

すでに手元にある場合は、次の順で進めます。

順 やること 理由・注意
1 充電・使用をやめ、機体と充電器から外す 膨らんだものに充電すると、ガス発生がさらに進みます
2 端子にテープを巻いて絶縁する JBRCの回収基準は、テープを挟み込む被覆では不十分で、巻きつけるよう求めています
3 不燃性の容器に単独で入れ、屋内の涼しい場所に置く 他の電池と接触させない。直射日光と高温を避けます
4 メーカーまたは正規販売店に処分方法を問い合わせる DJIの安全ガイドラインは、膨張・漏れ・損傷があるバッテリーは使用せず、DJIまたは正規販売店に連絡するよう案内しています
5 事業用は産業廃棄物処理業者に委託する 教則4.6(4)のとおり。委託契約とマニフェストの扱いは業者に確認します
6 点検整備記録に交換を書く 飛行日誌の点検整備記録には、交換した部品名を含む整備内容を記載します
やってはいけない塩水に漬けて放電させる方法が個人のブログなどで紹介されていますが、DJIの安全ガイドラインにもJBRCの回収基準にも、その手順は書かれていません。濡らしてしまうと「水濡れ電池」としてリサイクル回収の対象からも外れます。自己流の処理で、出口をさらに狭めることになります。

発熱・発煙・発火が起きたときの対処

製品評価技術基盤機構(NITE)は、リチウムイオン電池搭載製品の事故について、2020年から2024年までの5年間に通知された事故1860件のうち約85パーセント(1587件)が火災事故に発展したと公表しています。

NITEが示している対処は明快です。煙や炎が噴き出しているときは絶対に近寄らない。小型のものであれば、火花が収まってから大量の水を掛けることで消火でき、可能な限り水没させた状態で消防機関に通報する。対応が難しければ、身の安全の確保を第一に119番通報する。

飛行中の墜落については、教則2.3が、機体が墜落した場合には、地上又は水上における交通への支障やバッテリーの発火等により周囲に危険を及ぼすことがないよう、機体が通電している場合は電源を切るなど速やかに措置を講ずる、プロペラがまだ回転している場合は不用意に機体に接近せず十分に注意する、としています。

順番を間違えない墜落現場では、まず人の安全確認が先です。教則2.3は、慌てず落ち着いて、ケガの有無や程度など人の安全確認を第一に行うと書いています。機体の回収はその後です。

発生頻度も上がっています。東京消防庁がまとめたリチウムイオン電池に起因する火災は、平成26年の19件から令和5年には167件へ増えました。令和5年中の内訳では、充電中に出火したものが82件(49.1パーセント)を占めています。

現場で覚えておきたいのは、目を離している時間に起きやすいということです。車内で予備バッテリーを充電しながら移動する、昼休みに充電器につないだまま離れる。この時間帯が空白になります。充電は人がいる場所で、見える範囲でおこなってください。

保管容器と置き場所は、教則の条件から決まる

容器選びで迷ったら、商品説明ではなく教則4.6(2)の条件に当てはめます。

教則の条件 容器・置き場所に求めること
充電60パーセントを目安に保管 保管用の充電量に落とす作業を挟める運用にする。満充電のまま棚に戻さない
端子を短絡させない 複数本をむき出しで重ねない。仕切りがあるか、1本ずつ袋に入るもの
発火しても安全を保てる不燃性のケース 金属製または不燃素材。樹脂製の工具箱は条件を満たしません
突起物で傷つけない、衝撃を与えない 内部に緩衝材があり、移動時に中で踊らないもの
水に濡らさない 屋外に置かない。JBRCも回収缶は屋内で使うよう求めています
高温(35度超)で保管しない 夏の車内と物置は不可。室内の直射日光が当たらない場所

なお、メーカーの数値は教則より厳しい場合があります。DJIの安全ガイドラインは、理想的な保管環境温度を22度から28度とし、60度を超える環境内では絶対に保管しないでくださいと記載しています。また10日以上使用しない場合は40パーセントから65パーセントまで放電するよう案内しています。試験の基準は教則、日々の運用はメーカーの指示、と使い分けてください。

廃棄までの一時保管チェックリスト

退役させたバッテリーを、業者に引き渡すまで預かる期間の確認項目です。現場の棚に貼って使えます。

項目 確認すること
隔離 使用中のバッテリーと同じ箱に入れていないか
絶縁 端子にテープを巻いてあるか。挟み込みではなく巻きつけか
容器 不燃性で、ふたが閉まり、中で動かないか
場所 屋内で、35度を超えず、水がかからない場所か
表示 「廃棄待ち・使用禁止」と書いてあるか。誤って充電器につながれないか
本数 何本預かっているか把握しているか。溜め込んでいないか
期限 次にいつ引き渡すか決まっているか
記録 点検整備記録に交換と理由を書いたか

よくある誤解の整理

よくある理解 実際
家電量販店の回収ボックスに入れれば済む 事業者は協力店・協力自治体に持ち込めません。JBRCの排出者登録が必要です
膨らんだものも回収ボックスに入れてよい 破損・膨張・水濡れした電池は回収対象外です
廃棄方法は国が一律に決めている 教則は各地方自治体のルールに従うとしています。自治体ごとに異なります
塩水に漬けてから捨てるのが正しい メーカーの安全ガイドラインにもJBRCの基準にも、その手順はありません
保管は満充電でよい 教則は充電60パーセントを目安とし、満充電での保管は行わないとしています
バッテリー交換は記録しなくてよい 点検整備記録には交換部品名を含む整備内容を記載します

行政の側も動いています。環境省は令和7年3月に一般廃棄物処理システム指針を改訂し、リチウム蓄電池を標準的な分別収集区分に追加しました。家庭系の分別が変わっていく流れなので、お住まいの自治体の案内は定期的に見直してください。

まとめ

ドローンのバッテリーは、膨らんだ瞬間に「危険物」であると同時に「行き場のないもの」になります。

教則が書いているのは、自治体のルールに従うこと、事業で使ったものは産業廃棄物として処理することの2点だけです。そこから先は、自分で経路を用意しておくしかありません。

買った時点で、退役後の引き渡し先を決めておく。棚に溜めない。これだけで、現場の火種がひとつ減ります。

そしてもうひとつ。膨らんだものを見つけたら、その日のうちに使用中のバッテリーから隔離してください。判断を先送りにしても状態は良くなりません。処分先を調べるのは、隔離したあとでも間に合います。

ご注意本記事は、無人航空機の飛行の安全に関する教則 第5版(公布 令和8年7月7日)、一般社団法人JBRCの回収基準および安全回収ハンドブック、製品評価技術基盤機構(NITE)の注意喚起(2025年6月26日)、DJIインテリジェント・フライト・バッテリー安全ガイドライン、環境省の一般廃棄物処理システム指針に関する資料に基づく解説です。製品の仕様・法令・各社のルールは変更されることがあります。実際の取り扱いは、お使いの機体のメーカー公式マニュアルと最新の法令、およびお住まいの自治体の案内をご確認ください。廃棄物処理の個別の判断は、自治体の廃棄物担当窓口または許可を受けた処理業者にご確認ください。
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登録講習機関講師 フライトデスク 監修

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