ドローンのSDカードとデータ管理|記録を失わない運用と飛行日誌との紐づけ

現場の実務

撮り終えて帰ってきたら、カードの中身が空だった。

点検の納品直前になって、どのフライトがどの日のものか分からなくなった。

SDカードは、機材のなかでいちばん小さくていちばん安い部品です。それでいて、失うと取り返しがつかないものが、そこに集まります。

この回は、買う前・現場に出る前に決めておきたい記録の扱い方を整理します。

最初に一番大事なこと法令が義務づけているのは「飛行日誌」であって、SDカードの中身ではありません。一方で、事故の原因究明で実際に効くのは飛行ログと映像です。義務の記録と、自分を守る記録。この二つは別物として、別の場所に残してください。

ドローンの記録は三層に分かれている

「記録を残す」とひとことで言っても、法令上の位置づけがまったく違うものが混ざっています。まずここを分けないと、義務を果たしたつもりで肝心のデータが消えている、ということが起きます。

記録の種類 法令上の扱い 中身と根拠
飛行日誌 特定飛行では義務 飛行記録・日常点検記録・点検整備記録の三つ。航空法と「無人航空機の飛行日誌の取扱要領」が様式まで定めている
飛行ログ(フライトデータ) 義務ではない 機体が自動で残す飛行軌跡や機体の状態。教則は事故の原因究明のために記録を残すことを求めている
撮影データ 義務ではない 写真・動画。納品物であると同時に、プライバシーへの配慮が要る対象でもある

SDカードに入るのは、多くの場合いちばん下の撮影データだけです。飛行ログがどこに残るかは機体によって違い、飛行日誌にいたっては自分で書かなければ存在しません。

飛行日誌は「機体ごと」に「登録されている間ずっと」

飛行日誌の具体的な書き方は、国土交通省航空局の「無人航空機の飛行日誌の取扱要領」(令和4年12月1日制定)に定められています。現場で効いてくるのは次の四点です。

機体ごとに備える。操縦者ごとではありません。要領は、過去の飛行実績や点検・整備・改造の記録を時系列で確認できるようにするため、機体毎に備えて記載すると定めています。

保存は「登録されている間」。何年で捨ててよい、という定めではありません。要領は「飛行日誌の記載及び保管は、無人航空機が登録されている間は継続しなければならない」としています。機体を手放すときは、総飛行時間の情報と点検の記録を当事者間で確実に受け渡すことも求められています。

紙でなくてよい。要領は、様式の記載内容を網羅することを前提に、電磁的な記録および保管を行うことができるとしています。教則も、飛行日誌は紙又は電子データの形態を問わないと書いています。

携行する範囲が種類ごとに違う。紙で管理している場合、飛行記録と日常点検記録は直近の点検整備以降の分を携行すれば足ります。一方、点検整備記録は全てを他の記録とともに携行するとされています。

三つのうち見落とされやすいのが点検整備記録です。要領は、定期的な点検整備や改造を行った都度、実施の年月日と場所、実施者、点検・修理・改造・整備の内容、実施の理由、最近の機体認証後の総飛行時間を記載するとしています。記載例として挙げられているのは、装備品等の交換記録、定期点検の実施記録、そして空撮用カメラや薬剤散布装置の取付け・取卸しの記録です。カメラを載せ替えた、散布装置を外した、というのは点検整備記録に書く事柄だ、ということです。書式の細かい決まりもあり、前回との区別をつけるために上下各1行を空け、その空行には「〆」を記載するとされています。

罰則の重さ飛行日誌を備えずに特定飛行を行った場合、記載をしなかった場合、虚偽の記載をした場合は、いずれも10万円以下の罰金の対象です。技能証明を持っている方はさらに行政処分の点数が付き、教則の点数表ではどちらも6点。処分等区分表では6〜8点が技能証明の効力の停止3月にあたります。

「1飛行」の切り方と、書く粒度

講習でよく質問をいただくのが、離着陸を繰り返したときにどこで1行にするか、という点です。要領は1飛行を、電源を作動させた後に出発地から離陸させ、目的地に着陸後、電源を停止させたときまでと定義しています。バッテリー交換などで電源を落とせばそこで1飛行。電源を入れたまま別の地点へ移動した場合は、最終目的地で電源を停止させるまでが1飛行で、途中の地点は経由地として記載します。

項目 書式 要領の定め
離陸・着陸時刻 24時間制/1分単位 日本標準時(JST)で00:00〜23:59。日をまたいだ場合はそれが分かるように書く
飛行時間 1分単位 離陸から着陸までに要した時間。総飛行時間は積算を1分単位で
離着陸場所 緯度経度または地名 緯度経度は世界測地系。地名なら都道府県+市区郡+町村、固有名称なら○○運動場など
飛行目的 例示から選ぶ 空撮、測量、インフラ点検・保守、輸送・宅配、事故・災害、趣味などの例が挙げられている

様式1の飛行記録には、飛行の実績だけでなく「飛行の安全に影響のあった事項」の欄があります。要領は、安全に影響を及ぼした場合、または及ぼすおそれのあった場合には、その内容に加えて、その事象に関わる飛行前後の機体の状況についても書くとしています。さらに「記事」の欄では、不具合の発生年月日と内容、処置の年月日と内容、そして処置を確認した者の記名までが求められます。ヒヤリとした飛行こそ、あとから読み返せる形で残す。事故の原因究明で効いてくるのは、まさにこの欄です。

よく聞く誤解通報した飛行計画と飛行日誌を厳密に一致させなければならない、と思っている方が講習では多くいらっしゃいます。要領は「通報した飛行計画との整合性(厳密な所要時間の一致等)は必ずしも取る必要はなく、あくまで飛行記録には飛行の実績を記録する」としています。ただし一つの飛行計画で複数回飛んだ場合は、1飛行ごとに記載します。

飛行ログは事故のときに効く。だから先に出せるようにしておく

教則は、事故が起きたときの対応として「事故の原因究明、再発防止のために飛行ログ等の記録を残す」ことを挙げています。さらに一等の範囲では、飛行軌跡や機体の情報を記録している機種があることに触れ、事故や故障の原因調査は安全性を向上させる重要な要素であるとして、フライトデータを記録することを推奨しています。

ここで押さえておきたいのは、飛行ログは機体のSDカードには入っていないことが多いという点です。DJI社の公表している手順では、フライトログはアプリ側(端末内のFlightRecordフォルダ)や送信機の内部ストレージに保存されるとされています。機体のカードを抜いて渡しても、ログは渡っていません。

つまり、端末を買い替えたりアプリを入れ直したりすると、飛行ログだけが静かに消えます。事故が起きてから探すのでは間に合いません。書き出しの手順は、事故が起きる前に一度試しておいてください。手順はメーカーと機種で異なるため、必ず自分の機体の公式マニュアルで確認するのが確実です。

SDカードの規格は、容量・ファイルシステム・速度の三つで読む

カードの表記は記号が多くて分かりにくいのですが、実際に見るのは三つだけです。国が示している基準はこの領域にはなく、規格の出どころはSDアソシエーションです。

規格 容量 ファイルシステム
SD 2GBまで FAT12/FAT16
SDHC 2GB超〜32GB FAT32
SDXC 32GB超〜2TB exFAT
SDUC 2TB超〜128TB exFAT

容量の区分が変わるとファイルシステムも変わります。手持ちのカードリーダーやPC、そして機体そのものがその規格に対応しているかは、容量だけを見ていると見落とします。大容量のカードを買ったのに機体が認識しない、というときは、まず対応している規格の上限を確認してください。

速度は、表示ごとに保証される「最低持続書き込み速度」が決まっています。4K動画を扱うならビデオスピードクラスを見るのが早道です。

表示 最低持続書き込み 備考
C2/C4/C6/C10 2/4/6/10MB毎秒 いちばん古い区分。C10はU1と同じ10MB毎秒
U1/U3 10/30MB毎秒 UHSスピードクラス。Uの中の数字がそのまま速度ではない
V6/V10/V30/V60/V90 6/10/30/60/90MB毎秒 ビデオスピードクラス。数字がそのまま速度になる

A1・A2という表示も見かけますが、これはアプリを動かすときのランダム読み書きの性能を示すもので、動画を途切れずに書き続ける性能とは別の指標です。録画用途の判断材料にはなりません。

そのうえで、規格を満たしていることと、その機体で使えることは別です。選ぶ順番は、機体の取扱説明書とメーカーの対応カード一覧が先、規格表は後。対応一覧に載っていないカードは、規格上は条件を満たしていても避けるのが無難です。容量も、大きい1枚にまとめるほど、失ったときの被害が大きくなります。

記録が消える典型パターンと、その防ぎ方

起きること 主な原因 防ぎ方
録画が途中で止まる 書き込み速度が足りない 記録する解像度・ビットレートが要求するクラスを満たすカードにする
ファイルが壊れる 書き込み中の電源断 録画停止の操作をしてから電源を切る。撤収を急ぐ場面ほど省略されやすい
中身が全部消える 機体側でのフォーマット 挿す前に空であることを確認する。抜いたら、その日のうちにコピーする
古い分が上書きされる ループ録画・カードの使い回し 現場ごと・案件ごとにカードを分け、コピーが済むまで再投入しない
飛行ログだけ消える 端末の買い替え・アプリ再導入 飛行日ごとに書き出す。書き出し先は機体のカードとは別にする

現場でそのまま使える運用チェックリスト

バックアップの一般的な原則として、コピーを3つ、媒体を2種類、うち1つは別の場所に置く、という考え方が広く使われています。ドローンの現場に落とすと、次のような形になります。

タイミング やること 確認するもの
出発前 カードを空にして機体側でフォーマット。予備を1枚以上入れる 空き容量/予備の有無
離陸前 録画が始まっているかを送信機の画面で確認 録画表示/残量表示
撤収時 録画停止→電源断→カード回収。日付と現場名をラベルに書く 停止操作の実施/ラベル
帰着後 PCへコピーし、外付けドライブかクラウドにもう一部残す ファイル数とサイズの一致
当日中 飛行日誌に遅滞なく記載。飛行ログを書き出す 飛行記録/日常点検記録/点検整備記録
納品前 飛行日誌の日時と、映像のタイムスタンプを突き合わせる 撮影日時の整合
講習で見かける落とし穴機体の時計がずれたまま運用していて、映像のタイムスタンプと飛行日誌の時刻が合わない、ということが起こります。飛行日誌は日本標準時の1分単位です。機体側の日時設定は、ファームウェア更新のあとに一度確認しておくと安心です。

撮影データは、納品物であると同時にプライバシーの対象

空撮データの扱いについては、総務省の「『ドローン』による撮影映像等のインターネット上での取扱いに係るガイドライン」(平成27年9月策定、平成29年5月最終改定)が目安になります。要点は次のとおりです。

住宅にカメラを向けたりズームしたりしない。顔、車のナンバープレート、表札、住宅の外観など、個人が特定されうるものが写り込んだ場合は、ぼかしや削除の処理をする。住宅地での撮影をそのままリアルタイム配信するのは、ぼかしをかけられないため避ける。削除の申し出があったときの窓口をはっきりさせておく。

これは記録の管理とも直結します。ぼかし処理を入れる前の元データと、納品する処理済みデータを同じ場所に置いていると、取り違えます。元データと納品データは、フォルダを分ける。地味ですが、これがいちばん効きます。

あわせて、教則はセキュリティの確保にも触れています。機体や操縦のための機器は、盗難や運航の妨害、コントロールの奪取といった危険にさらされうるため、適切に管理することが求められています。撮影データの入ったカードも、同じ扱いで持ち歩いてください。

よくある誤解の整理

よくある理解 実際のところ
飛行日誌は3年で処分してよい 年数の定めではない。取扱要領は、機体が登録されている間は記載と保管を継続しなければならないとしている
飛行日誌は紙でなければならない 記載内容を網羅すれば電磁的な記録・保管ができる。教則も紙又は電子データの形態を問わないとしている
操縦者ごとに1冊用意する 機体ごとに備えて記載する。操縦装置単体で管理する必要がある場合は、様式の内容を網羅した独自様式で管理してもよい
飛行ログは機体のSDカードに入っている DJI社の公表手順では、アプリ側や送信機の内部ストレージに保存される。機種・メーカーによって異なるため公式マニュアルで確認する
教則にSDカードの選定基準が書いてある 教則第5版に、SDカードやメモリーカードの記載はない。規定があるのは飛行日誌と、飛行ログを残すことの推奨まで

まとめ

SDカードの管理は、突き詰めると「義務の記録」と「自分を守る記録」を取り違えないことに尽きます。

飛行日誌は、機体ごとに、登録されている間ずっと。遅滞なく書く。これは法令の義務で、備えなければ、書かなければ、10万円以下の罰金と技能証明の停止3月が視野に入ります。

飛行ログと映像は義務ではありませんが、事故が起きたときに自分の側に立ってくれるのはこちらです。飛行ログは機体のカードとは別の場所にあることが多く、書き出しの手順を知らないまま端末を替えると消えます。撤収の一手間と、帰着後の15分。守るものの大きさに比べれば、安いほうだと思います。

ご注意本記事は、無人航空機の飛行の安全に関する教則 第5版(公布 令和8年7月7日/適用 令和8年7月14日)、国土交通省航空局「無人航空機の飛行日誌の取扱要領」(令和4年12月1日制定)、総務省「『ドローン』による撮影映像等のインターネット上での取扱いに係るガイドライン」(平成29年5月最終改定)、およびSDアソシエーションの公表資料に基づく解説です。製品の仕様・法令・各社のルールは変更されることがあります。実際の取り扱いは、お使いの機体のメーカー公式マニュアルと最新の法令をご確認ください。
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登録講習機関講師 フライトデスク 監修

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