無人航空機操縦士の難易度|一等は正答率90%・二等は1問36秒の壁

ストック記事

「無人航空機操縦士って、どのくらい難しいんですか」

講習の申込前に、いちばん多く聞かれる質問です。

検索すると「合格率◯%」という数字がたくさん出てきます。ただ、その数字を突き合わせると、互いに矛盾しています。 一方のサイトは一等の合格率を30〜40%と書き、別のサイトは一等学科を約75%と書いている。どちらも出典は示されていません。

登録講習機関で学科を教え、修了審査を担当している立場から、確かめられる数字と、確かめられない数字を分けて整理します。そのうえで、実際にどこで落ちているのかを書きます。

先に結論

難易度を数字で言うと、こうなります。いずれも指定試験機関が公表している値です。

  • 一等 学科:三肢択一70問・75分・正答率90%程度
  • 二等 学科:三肢択一50問・30分・正答率80%程度(1問36秒)
  • 一等 実地:100点の持ち点から減点し、80点以上
  • 二等 実地:同じく70点以上

そして合格率は公表されていません。 ネットの数字は全部、誰かの推定です。

  1. まず、流通している「合格率」は当てになりません
    1. 上位に出てくる数字が、互いに食い違っています
    2. 指定試験機関も国土交通省も、集計を公表していません
    3. それでも困らない理由
  2. 公表されている数字が、難易度の実体です
    1. 学科試験
    2. 二等の本当の難所は、合格ラインではなく時間
    3. 実地試験
  3. 学科は、分野によって難しさがまるで違います
    1. いちばん量が多いのは「規則」です
    2. 一等だけに乗るのは、2つです
    3. 「過去問で対策する」ができない試験です
  4. 実地(修了審査)で、実際に落ちる場所
    1. 機体に触れる前に決まることがあります
    2. 操縦で多いのは、この3つです
    3. 風の日は、別の試験になります
  5. 難易度は「ルート」で大きく変わります
    1. 制度側にある、もう一つの難所
  6. 一等と二等、どちらが難しいか
  7. 独学でどこまでいけるか
    1. 学科は独学で十分に届きます
    2. 実地は、独学という選択肢が実質ありません
  8. どのくらい勉強すればいいか
  9. 2026年7月14日から、学科試験の中身が変わりました
  10. 難易度を下げる方法
  11. よくある質問
    1. 合格率は本当に分からないのですか
    2. 一等の学科は70%で合格ではないのですか
    3. 二等の学科は簡単だと聞きました
    4. 実地は合計点で判定されますか
    5. スクールに通っても実地試験を受けるのですか
    6. 学科と実地はどちらを先に受けますか
    7. 年齢や視力で不利になりますか
    8. 落ちたらすぐ受け直せますか
  12. まとめ
  13. 出典
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まず、流通している「合格率」は当てになりません

上位に出てくる数字が、互いに食い違っています

「ドローン国家資格 難易度」で上位に表示されるページを見比べると、こうなります。

区分 あるサイトの記載 別のサイトの記載
一等(全体) 約30〜40% —
一等 学科 — 約75%
二等(全体) 約60〜80% —
二等 学科 — 約90%
出典の書き方 記載なし 「業界平均」「業界調査」

一等を30〜40%とする記述と、一等学科を75%とする記述は両立しません。 少なくとも片方は外れています。それでも両方が上位に出てくるのが現状です。

指定試験機関も国土交通省も、集計を公表していません

本記事を書くにあたって、指定試験機関である一般財団法人日本海事協会の試験案内サイトを確認しました。試験案内・手続き案内・試験日程・お知らせはありますが、受験者数や合格者数をまとめた統計のページはありません(2026年9月時点)。国土交通省の技能証明関連ページにも、試験の実施状況を集計した資料は見当たりません。

つまり「合格率は◯%」と書けるだけの一次データが、そもそも公開されていないということです。分からない、が正確な答えです。

それでも困らない理由

合格率は「他の受験者がどうだったか」の話です。合格ラインは「自分が何点取ればいいか」の話です。準備の役に立つのは後者だけで、そして後者は公表されています。

公表されている数字が、難易度の実体です

学科試験

項目 一等 二等
形式 三肢択一式 70問 三肢択一式 50問
試験時間 75分 30分
必要な正答率 90%程度 80%程度
1問あたりの時間 約64秒 約36秒
合格証明番号の有効期間 2年 2年

正答率90%は、70問なら63問正解が必要な水準です。国家資格の学科試験としてはかなり高い部類に入ります。「70%取れれば合格」と書いている解説を見かけますが、公式の記載とは一致しません。

二等の本当の難所は、合格ラインではなく時間

二等は合格ラインが80%と一等より低いのに、1問あたりの時間は一等の半分近くです。

36秒というのは、問題文を読んで、選択肢を3つ読んで、選ぶまでの全部です。1問でも「考え込む」と、その分がまるごと後ろに効いてきます。

教えていて感じるのは、二等で落ちる方の多くは知識が足りないのではなく、知識の取り出しが遅いということです。「考えれば分かる」では間に合いません。見た瞬間に答えが出る状態まで持っていく必要があります。

実地試験

項目 一等 二等
採点方式 100点の持ち点からの減点式
合格ライン 80点以上 70点以上
減点できる余地 20点 30点
構成 机上試験・口述試験・実技試験

ここで重要なのは、「各試験科目終了時に」その点数を確保している必要があるという点です。全体の合計ではありません。科目ごとに持ち点が管理されるので、どこか1科目で崩れると、他が良くても取り返せません。

学科は、分野によって難しさがまるで違います

学科試験の出題範囲は、国土交通省の「無人航空機の飛行の安全に関する教則」です。全6章19節、PDFで87ページあります。この87ページが均等に難しいわけではありません。

分野 つまずき方 対処
規則(第3章) 量が最も多く、数字と分類が延々と続く 先に特定飛行とカテゴリーの分かれ目だけ固める
システム(第4章) 何を覚えるのかが見えにくい バッテリー・センサー・電波の3つに割って読む
運航体制(第5章) 読めば分かるので後回しにされ、直前に落とす 短いので最初に片付ける
リスク管理(第6章) 気象は二等範囲、リスク評価は一等中心 自分の受ける区分の範囲を先に切り分ける
心得(第2章) 取りこぼすと痛い。問題数は少ないが確実に出る 1日で終わる。最初に済ませる

いちばん量が多いのは「規則」です

教則の第3章「無人航空機に関する規則」は、それだけで全体の3分の1近くを占めます。ここで手が止まる方がとても多い。

理由ははっきりしていて、細かい規則から読み始めてしまうからです。100グラム、150メートル、30メートル、3年、1年……と数字が並ぶところから入ると、何のための数字か分からないまま暗記することになります。

先に「特定飛行とは何か」「カテゴリーⅠ・Ⅱ・Ⅲの分かれ目は何か」だけを押さえると、残りは細部の確認になります。

一等だけに乗るのは、2つです

一等と二等で教則そのものは同じもので、〔一等〕というマークが付いた項目が二等の出題範囲から外れる、という作りです。第5版では31箇所に〔一等〕が付いています。

そのうち、独学でつまずきやすいのはこの2つです。

  • カテゴリーⅢ飛行の運航リスク評価(教則第6章)。暗記ではなく考え方の理解が要ります
  • 計算問題。旋回半径・滑空距離・水平到達距離・フレネルゾーン・重量と高度の関係の5つで、式はすべて教則に書かれています

計算問題は「出るかもしれない」ではなく、国土交通省の公式サンプル問題3問のうち2問が計算問題です。身構える必要はありませんが、無視もできません。

▶ 一等学科試験の計算問題は5パターンだけ|教則の式と公式サンプルの解き方

「過去問で対策する」ができない試験です

学科試験はCBT方式で、公開された過去問はありません。 公式に手に入るのは国土交通省のサンプル問題だけで、一等3問・二等4問の合計7問です。

ここが難易度の一部だと私は思っています。他の国家資格のように「過去問を10年分回す」という王道が使えない。 教則を根拠にした問題を自分で集めるしかありません。

▶ ドローン学科試験に過去問はない|公式サンプルは一等3問・二等4問だけ

実地(修了審査)で、実際に落ちる場所

機体に触れる前に決まることがあります

審査は実技だけではありません。机上試験・口述試験・実技試験の3つで構成されていて、飛行前点検の漏れや飛行記録の記載漏れでも点が引かれます。

一等は減点の余地が20点しかないので、この2つを落とすだけで、機体を飛ばす前に不合格が確定することがあり得ます。操縦の練習ばかりしてきた方ほど、ここで足をすくわれます。

▶ ドローン修了審査で落ちる理由|審査員が見る減点票の中身

操縦で多いのは、この3つです

審査員として見ていて、繰り返し起きるのはここです。

スクエア飛行のCD間

奥行きがつかめなくなり、奥の減点区画に収まりきらず不合格区画まで入ってしまうのが最多のパターンです。横方向のズレは自分で見えますが、奥行きは見えません。

目視外飛行での機首方角

カメラを下に向けて回転させると、機首がどちらを向いているか分からなくなります。 そこから進む方向を見失う。モニターだけを見ていると必ず起こります。

GNSS OFFでの着陸

接地の直前でためらうと、スライディングしながらの接地になります。高度50cm以下まで来たら、躊躇せず下ろしたほうが結果は良くなります。

共通しているのは、スティック操作が大きすぎることです。大きく入れるとリカバリーが効かなくなります。小刻みが基本です。

風の日は、別の試験になります

正直に言うと、その日の風の強さが難易度をかなり左右します。 同じ課題でも、風次第で別物です。

コツは、風と喧嘩しないことです。追い風には「押してもらう」、向かい風には「減速させてもらう」。機体挙動の一部として受け入れると、急な修正が減ります。

難易度は「ルート」で大きく変わります

技能証明の取り方には2つのルートがあり、受ける試験の数が違います。

項目 登録講習機関ルート 直接受験ルート
学科試験(CBT) 必要 必要
実地試験(指定試験機関) 免除 必要
代わりに必要なもの 講習の受講+修了審査 —
身体検査 必要 必要
費用 高い 安い
難易度の体感 下がりやすい 上がりやすい

登録講習機関で講習を受け、修了審査に合格すれば、指定試験機関での実地試験は免除されます。 一等・二等とも同じです。

修了審査も新規取得時の実地試験と同等の内容なので、審査そのものが甘いわけではありません。 違うのは、そこに至るまでに練習と指導があるかどうかです。

制度側にある、もう一つの難所

試験の中身とは別に、直接受験ルートを選ぶ人がぶつかる壁があります。指定試験機関の公式サイトには、こう書かれています。

現在予約が大変取りづらくなっており、手数料をお支払いいただいてもご希望の日程の予約が取れないことがあります

実地試験のマルチローター(基本・夜間・目視外)は集合試験方式で、会場と日程が限られます。ヘリコプター・飛行機・25kg以上は出張試験方式なので、機体も場所も自分で用意し、日程を調整する必要があります。

「安く取れるから直接受験にしよう」と決めた人が、実際には半年動けない、ということが起こります。技術の難易度ではなく段取りの難易度ですが、受験する側にとっては同じ壁です。

一等と二等、どちらが難しいか

数字上は一等が明確に上です。ただ、それだけでは判断を誤ります。

観点 一等が難しい理由 二等が難しい理由
学科 正答率90%程度。カテゴリーⅢのリスク評価と計算問題が加わる 1問36秒。知識の取り出しが遅いと時間切れ
実地 合格ライン80点。減点の余地が20点しかない 合格ライン70点で余地は30点
その他 25kg以上に対応する場合は身体検査が厳しくなることがある。登録免許税も必要 —
迷っているなら

一等が必要なのは、立入管理措置を講じずに第三者上空を飛ばす場合(カテゴリーⅢ飛行)です。いまの業務でそこまで必要ないなら、二等で足ります。 難易度で選ぶのではなく、やりたい飛行から逆算してください。

▶ 一等無人航空機操縦士でできること・できないこと
▶ 二等無人航空機操縦士でできること・できないこと

独学でどこまでいけるか

学科は独学で十分に届きます

学科試験は誰でも申し込めるCBTで、受験に講習の受講は要りません。教則は国土交通省のサイトから無料で手に入ります。費用をかけずに合格まで行けるのは学科だけです。

詰まるとすれば、教則がPDF87ページの「読み物」で、どこが問われるのかが書かれていない点です。読むだけで終わらせず、読んだ直後に問題で確かめる形にしないと、範囲を一巡しても点になりません。

実地は、独学という選択肢が実質ありません

直接受験ルートなら講習を受けずに実地試験へ進めますが、練習する場所と機体を自分で用意する必要があります。 GNSSを切った飛行や目視外飛行を安全に練習できる環境は、そう簡単には作れません。

加えて、上に書いたとおり予約が取りにくい。費用を抑えたいという理由だけで直接受験を選ぶと、時間で払うことになります。

どのくらい勉強すればいいか

必要な時間は人によって違うので、教則の分量から逆算するのが確実です。

段階 やること 目安
1周目 教則を通して読み、範囲の地図を作る 19節。1日1〜2節で2週間
2周目 節ごとに問題を解き、間違えた節へ戻る 同じく2週間
仕上げ 本番と同じ問題数・同じ制限時間で通す 数回。時間切れを先に経験しておく

「何時間やればいい」より、この3周目に入れているかどうかのほうが結果に直結します。1周目で止めた方が落ちています。

2026年7月14日から、学科試験の中身が変わりました

学科試験は教則に準拠します。この教則が第5版になり、2026年7月14日から学科試験に適用されています(公布は令和8年7月7日)。7月13日までは第4版でした。

覚え直しが必要なのは3点だけですが、そのうち2点は答えが逆になります。 古い教材や、それ以前に書かれた対策記事のままだと、そこを間違えて覚えることになります。

▶ ドローン教則 第5版の変更点|覚え直すのは3つだけ

難易度を下げる方法

試験の難易度は変えられませんが、自分の側の条件は変えられます。

  • 教則第5版に対応した教材で学習する(手元の教材の発行時期を確認する)
  • 学科は「考えれば分かる」ではなく「見た瞬間に答えが出る」まで反復する
  • 模試を本番と同じ時間制限で解き、時間切れを先に経験しておく
  • 読んだ節の問題をその場で解き、間違えた節へ戻る
  • 実地は登録講習機関ルートを選び、練習と指導の時間を確保する
  • 直接受験を選ぶなら、予約が取れない前提でスケジュールを組む
  • 学科合格証明番号の有効期間は2年。実地までの計画を先に立てる

よくある質問

合格率は本当に分からないのですか

公表されていません。指定試験機関の試験案内サイトにも国土交通省の技能証明ページにも、受験者数・合格者数の集計は見当たりませんでした(2026年9月時点)。分からない、が正確です。

一等の学科は70%で合格ではないのですか

公式サイトの記載は「90%程度」です。70%という記述は、他資格の一般的な合格ラインと混同したものだと思われます。

二等の学科は簡単だと聞きました

合格ラインは一等より低いです。ただし50問30分=1問36秒で、時間切れが起こりやすい試験です。「簡単」と聞いて準備を薄くすると、そこで落ちます。

実地は合計点で判定されますか

いいえ。各試験科目終了時に持ち点を確保している必要があります。1科目で崩れると取り返せません。

スクールに通っても実地試験を受けるのですか

受けません。登録講習機関の修了審査に合格すれば、指定試験機関での実地試験は免除されます。

学科と実地はどちらを先に受けますか

順番の決まりはありませんが、学科の合格証明番号は2年、身体検査は1年と有効期間が違います。身体検査を先に取りすぎると期限に追われます。

年齢や視力で不利になりますか

身体検査の基準は公表されています。視力や色覚などの基準を満たすことが必要で、25kg以上の限定変更に対応する場合は求められる内容が変わります。 詳しくは指定試験機関の案内を確認してください。

落ちたらすぐ受け直せますか

学科はCBTなので比較的受け直しやすい試験です。実地(直接受験)は予約の取りにくさがそのまま再挑戦の壁になります。修了審査の再審査の扱いは講習機関ごとに違うので、申し込む前に確認してください。

まとめ

  • 合格率は公表されていない。ネットの数字は互いに矛盾しており、根拠がない
  • 公表されているのは合格ライン。一等学科90%程度/二等学科80%程度/一等実地80点/二等実地70点
  • 二等の難所は知識量ではなく1問36秒という時間
  • 一等に上乗せされるのはカテゴリーⅢのリスク評価と計算問題5パターン
  • 実地は機体に触れる前(点検・記録)で決まることがある
  • 難易度はルートで変わる。直接受験は安いが、予約という別の壁がある

修了審査を担当していて思うのは、落ちる人と受かる人の差は才能ではなく、準備の具体性だということです。「だいたい分かった」で止めた人が落ち、「この場面でこう動く」まで落とし込んだ人が受かります。

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▶ 教則第5版 改正点チェック20問(無料)——第4版で覚えた知識が残っていないかの確認に

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二等 演習250問/演習250問+模試5セット  一等 演習261問/演習261問+模試10セット

出典

  • 一般財団法人日本海事協会(指定試験機関)「無人航空機操縦士試験案内サイト」学科試験/実地試験のページ
  • 国土交通省「無人航空機の飛行の安全に関する教則(第5版)」令和8年7月7日公布・令和8年7月14日適用
  • 国土交通省「操縦ライセンス制度 学科試験(一等)/(二等)サンプル問題」
  • 国土交通省「無人航空機操縦士実地試験実施細則」(令和8年6月5日施行)

合格ライン・試験形式は指定試験機関の公表値に基づきます。合格率は公表されていないため本記事では推定値を掲載していません。実地審査についての記述は、登録講習機関の修了審査員としての実務にもとづく所見であり、試験問題そのものには触れていません。本記事の内容は2026年9月時点のものです。制度は改正されることがありますので、最新の情報は必ず国土交通省および指定試験機関の公式サイトでご確認ください。

登録講習機関講師・修了審査員 フライトデスク 監修

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