「過去問はどこにありますか」。講習の休憩時間に、いちばん多く受ける質問です。
先に結論だけ申し上げます。無人航空機操縦士の学科試験に、公開された過去問はありません。 国土交通省が公開しているのはサンプル問題だけで、その数は一等3問・二等4問です。合計7問。これが「公式に手に入る問題」のすべてです。
では、検索すると出てくる「過去問」「再現問題」は何なのか。そこに、いま最も注意してほしい落とし穴があります。 2026年7月14日から学科試験は教則第5版に切り替わりました。第4版の時期に作られた問題が、まだそのまま残っています。
登録講習機関で学科を教えている立場から、出回っているものを4種類に分けて、どれをどう使えばよいのかを整理します。
公式に存在するのは「サンプル問題」だけ
国土交通省が公開しているサンプル問題は、この2つです。
| 区分 | 問題数 | 公開元 |
|---|---|---|
| 一等 | 3問 | 国土交通省(PDF) |
| 二等 | 4問 | 国土交通省(PDF) |
7問しかありません。これは「演習するための問題集」ではなく、「どんな形式で問われるかを見せるための見本」です。 解き終えたあと、何を練習すればよいのか分からなくなるのは当然で、そもそもそういう用途の資料ではないからです。
二等のサンプル4問は、何を聞いているか
問題文そのものは上のPDFで読んでいただくとして、4問がどの分野から出ているかを並べると、試験の設計がよく分かります。
| 問 | 科目 | 問われている論点 |
|---|---|---|
| 1 | 規則 | 技能証明も機体認証もない場合に、許可・承認なしで飛ばせる飛行はどれか |
| 2 | システム | 夜間飛行で機体に必要な装備は何か |
| 3 | 操縦者及び運航体制 | 操縦者の義務として誤っているものはどれか |
| 4 | リスク管理 | 気象条件が飛行に与える影響 |
4科目から1問ずつ。 本番の50問も、この4科目に配分されます。「規則ばかり勉強していたらシステムで落とした」という方が毎年いますが、サンプルの時点で配分は示されています。
サンプル問題は制度開始のころに公開されたもので、教則はその後、第5版まで改訂されています。ただしこの4問に関しては、第5版でも正答は動きません。
問1は「人口集中地区に該当しない地域での高度150m未満の飛行」が正答で、これは特定飛行に当たらないため許可・承認が不要です(教則3.1(2))。問2の灯火は標準飛行マニュアル①3-7。問3は保険加入は義務ではないという点が答えで、第5版でも保険は任意のままです(教則2.3.3。第5版で変わったのは付保範囲の記載で、総重量25kg以上の機体を飛行させる場合の記載が加わりました)。問4の「気温が低いとバッテリーの持続時間が短くなる」は教則6.2にそのまま書かれています。
一等のサンプル3問は、2問が計算問題
一等のサンプルは3問で、そのうち2問が計算問題です。1問目が飛行機の旋回半径、2問目がフレネルゾーン半径から必要なアンテナの高さを出す問題。3問目はリスク管理からの出題で、計算ではありません。
1問目は飛行速度25m/s・バンク角30°・tan30°≒0.58が与えられ、教則4.3(2)の式に入れるだけで答えが出ます。2問目は2.4GHz・送受信距離1,400mから波長を出し、フレネルゾーン半径を求め、その60%を答える問題です。式はどちらも教則に書かれているものがそのまま使われています。
ここが一等を受ける方にとって重要なところで、計算問題は「出るかもしれない」ではなく、出題のパターンが教則の中に列挙されています。 解き方は別の記事にまとめました。
▶ 一等学科試験の計算問題は5パターンだけ|教則の式と公式サンプルの解き方
サンプルが3問中2問とも計算問題だからといって、本番70問のうち3分の2が計算問題ということではありません。 本番の科目別・形式別の出題数は公表されていません。私も知りません。サンプルは「一等には計算問題があります」ということを示すために、あえて計算問題を多めに載せたものだと考えるのが自然です。
なぜ過去問が公開されないのか
学科試験はCBT(Computer Based Testing)で、全国のテストセンターのパソコンで受けます。一等は三肢択一式70問・75分、二等は三肢択一式50問・30分です。
この方式では、試験問題は試験場のパソコンの中にしかありません。 紙の問題冊子を持ち帰るということがなく、終了と同時に画面から消えます。指定試験機関も国土交通省も、本試験の問題そのものは公開していません。
年に1〜2回の一斉試験なら、終了後に問題を公開しても次の試験に影響しません。しかしCBTはほぼ毎日どこかで実施されています。 公開すれば、明日受ける人が答えを知っている状態になります。構造的に、公開できないのです。
つまり「探せば見つかる過去問がどこかにあるはずだ」という前提そのものが成り立ちません。 ここを早めに切り替えたほうが、勉強は進みます。
「過去問」として出回っている4種類
検索で出てくるものは、だいたいこの4つに分かれます。
| 種類 | 出どころ | 使うときの注意 |
|---|---|---|
| 公式サンプル | 国土交通省 | 信頼できるが合計7問。形式の確認にしか使えない |
| 予想問題 | スクール・書籍・ブログ | 教則のどこが根拠か書かれているかで質が分かれる |
| 再現問題 | 受験者の記憶 | 受験時期が古いと、教則の版がずれている |
| AI生成問題 | 個人・サイト | もっともらしい誤答が混ざる。根拠の確認が必須 |
どれも「使ってはいけない」わけではありません。ただし、どれも過去問ではありません。 予想問題も再現問題も、作った人が教則を読んで書いたものです。そうであれば、判断すべきは「過去問かどうか」ではなく、「教則第5版のどこを根拠にしているか」です。
いま危ないのは、第4版のまま止まっている問題
2026年7月14日から、学科試験は教則第5版(令和8年7月7日公布)に基づいて出題されています。7月13日までは第4版でした。
ここで問題になるのが、第4版の時期に作られた問題が、いまも大量に残っていることです。受験者の再現問題も、市販教材も、AIが学習した内容も、多くは第4版のままです。
第4版と第5版を全文で突き合わせると、実質的な差分は限られています。しかしそのうち3点は、覚え直さないと答えが逆になります。
| 論点 | 第4版 | 第5版 |
|---|---|---|
| 小型無人機等飛行禁止法のイエロー・ゾーン | おおむね300m | おおむね1,000m |
| イエロー・ゾーンでの飛行 | 退去命令に従わなかった場合に処罰 | 飛行そのものが処罰の対象(6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金) |
| 技能証明の更新申請期間 | 満了日以前6月以内 | 満了日の6月前から1月前まで |
「300m」と書いてある問題を見たら、それは第4版世代のものです。 作られた時期を判断する目印として使えます。
加えて、第5版で新しく入った論点があります。市販の問題集にはまだ載っていないものが多いところです。
- 工業専用地域は人口集中地区(DID)の規制対象から外れる(教則3.1.2(2)1))。ただし外れるのはDIDを理由とする許可だけで、夜間飛行や目視外飛行は別に手続きが必要です
- 農薬散布等について、承認が不要となる例外が新設された(教則3.1.2(2)3))。催し場所上空は含まれません
- 保険の付保範囲に「総重量25kg以上」が明記された(教則2.3.3)。保険が義務化されたわけではありません
「第5版で懲役が拘禁刑に変わった」と書いている解説を見かけますが、全面的に変わったわけではありません。 拘禁刑になったのは小型無人機等飛行禁止法の罰則だけで、教則の航空法の罰則表は第5版でも「2年以下の懲役」「1年以下の懲役」と書かれたままです。
ここを取り違えた問題を解いて覚えてしまうと、本番で逆に答えることになります。第4版と第5版を1文ずつ突き合わせて確認しました。
▶ ドローン教則 第5版の変更点【2026年7月14日適用】覚え直すのは3つだけ
では、過去問の代わりに何をするか
やることは3つです。
1. 根拠が教則第5版であることを確かめる
問題を選ぶ基準は「過去問かどうか」ではなく、解説に教則のどの節が書かれているかです。節が書かれていれば、原本に当たって自分で確かめられます。書かれていなければ、正しいかどうかを確かめる方法がありません。
教則第5版は全文をこのサイトに載せ、節ごとに解説を付けてあります。問題を解いていて根拠が気になったときは、該当の節を開いてください。
2. 本番と同じ形式・同じ時間で解く
二等は50問30分です。1問あたり36秒しかありません。一等は70問75分で、1問あたり約64秒です。
学科試験で落ちる方の相談を受けると、「分からなかった」より「時間が足りなかった」のほうが多いのが実感です。三肢択一なので、読んで迷わなければ解けます。迷う時間をなくすには、本番と同じ画面・同じ時間で通し練習をするしかありません。
3. 間違えた論点を、教則に戻って潰す
三肢択一は、同じ論点を角度を変えて何度も聞いてきます。 1問間違えたら、その論点を別の聞かれ方でも答えられるかを確認してください。数をこなす意味はここにあります。
よくある質問
市販の問題集を買えば足りますか
形式に慣れる目的なら十分です。ただし2026年7月14日より前に出た本は教則第4版準拠です。奥付の発行年月と、上の3点(1,000m・直罰化・更新申請期間)を確かめてから使ってください。
受験した人の再現問題は役に立ちますか
出題の雰囲気をつかむ役には立ちます。ただし記憶から書き起こしたものなので、選択肢が不正確なことがあります。 それを「正解」として覚えるのは危険です。根拠の節が付いていない再現問題は、答え合わせの材料にしないでください。
AIに問題を作らせるのはどうですか
手軽ですが、AIは第4版で学習している部分があります。 実際、第5版で変わった3点をそのまま第4版の内容で出力する例を確認しています。作らせるなら、教則第5版の本文を読み込ませたうえで、根拠の節を必ず書かせてください。
サンプル問題は本番と同じ難しさですか
分かりません。 本番の難易度分布は公表されていないので、7問から推測するのは無理があります。少なくとも「サンプルが解けたから大丈夫」とは言えない、とお伝えしています。
学科に合格したら、いつまで有効ですか
学科試験の合格は2年間有効です。身体検査の合格は1年間なので、受ける順番を間違えると期限に追われます。
まとめ
- 公開された過去問は存在しない。あるのは公式サンプル 一等3問・二等4問だけ
- CBTはほぼ毎日実施されるため、構造的に問題を公開できない
- 出回っている「過去問」は、予想問題・再現問題・AI生成のいずれか。判断基準は教則第5版のどこが根拠か
- 第4版世代の問題が残っている。「300m」は第4版の目印
- やるべきは、根拠が確かな問題を、本番と同じ形式・時間で解いて、間違えた論点を教則に戻って潰すこと
教則第5版を根拠に作った問題を、無料で解けます
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出典
- 国土交通省「無人航空機の飛行の安全に関する教則(第5版)」令和8年7月7日公布・令和8年7月14日適用
- 国土交通省「操縦ライセンス制度 学科試験(一等)サンプル問題」「同(二等)サンプル問題」
- 国土交通省「無人航空機 飛行マニュアル(場所を特定した申請について適用)」令和4年6月20日版
- 指定試験機関 一般財団法人日本海事協会「学科試験」
本記事の内容は2026年9月時点のものです。制度は改正されることがありますので、最新の情報は必ず国土交通省の公式サイトでご確認ください。
登録講習機関講師 フライトデスク 監修



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