一等の学科試験には計算問題があります。二等にはありません。
国土交通省が公開している一等のサンプル問題は3問ですが、そのうち2問が計算問題です。旋回半径と、フレネルゾーン半径。どちらも教則に式がそのまま書かれていて、数字を入れるだけで答えが出ます。
それでも「計算が出ると聞いて身構えている」という声を、講習のたびに聞きます。身構える必要はありません。出題の型は5つしかなく、5つとも教則第5版の本文に式と例題が載っています。
この記事では、5つの型を順に、教則の式と手順で解けるようにします。最後に公式サンプルの2問を、実際に数字を入れて解きます。
計算問題は教則4.3「飛行原理と飛行性能」に4つ、4.5「機体以外の要素技術」に1つ、あわせて5つの型が示されています。どれも〔一等〕のマークが付いた項目で、二等の出題範囲ではありません。
出るのはこの5つ
| 型 | 問われること | 根拠 |
|---|---|---|
| ① 重量・高度と揚力/推力 | 重さや高度が変わると、速度・回転数・パワーが何倍になるか | 教則4.3(1) |
| ② 旋回半径 | 速度とバンク角から旋回半径を出す | 教則4.3(2) |
| ③ 滑空距離 | 揚抗比と高度から、どこまで滑空できるか | 教則4.3(3) |
| ④ 水平到達距離 | 揚力を失って落ちたとき、どこまで飛んでいくか | 教則4.3(4) |
| ⑤ フレネルゾーン半径 | 周波数と距離から、必要なアンテナの高さを出す | 教則4.5(6) |
この5つ以外の式は、教則に出てきません。 範囲を広げて心配する必要はないということです。
① 重量・高度が変わると、何が何倍になるか
教則が示している関係は、次の4つです。
- 飛行機の水平定常飛行:機体重量W=揚力L、そして L ∝ ρV²(ρは空気密度、Vは飛行速度)
- 回転翼の推力:T ∝ ρω²(ωは回転角速度)
- ホバリング時:W = T
- 回転翼の消費パワー:P ∝ ρω³ ∝ Tω
試験で問われるのは式そのものではなく、「○倍になったら、何が何倍か」です。教則はそれを例で示しています。
重量が2倍になったら
| 対象 | 必要になるもの | 倍率 |
|---|---|---|
| 飛行機 | 飛行速度 | √2 ≒ 1.4倍 |
| 飛行機 | 最低速度(失速速度) | √2 ≒ 1.4倍 |
| 回転翼 | プロペラ回転角速度 | √2 ≒ 1.4倍 |
| 回転翼 | 消費パワー | √2³ ≒ 2.8倍 |
覚え方は「重さ2倍なら、速度も回転数も1.4倍。パワーだけ2.8倍」です。揚力も推力も速度(回転数)の2乗に比例するので、2倍にするには√2倍。パワーは推力×回転数なので、2×1.4で2.8倍になります。
高度が上がったら
教則には標準大気の表が載っていて、高度が1,000m上がるごとに空気密度は約0.9倍になります。高度3,000mでは0.74倍です。
空気密度が0.74倍になると、同じ速度なら揚力も0.74倍。もとに戻すには√(1/0.74)≒1.16倍の速度(回転角速度)が必要で、そのときの消費パワーも約1.16倍になります。この「3000mで0.74倍、そこから1.16倍」は教則の本文にそのまま書かれている数字なので、そのまま覚えて構いません。
「空気が薄いと機体が軽くなる」わけではありません。 重さは変わらず、それを支える力のほうが減ります。だから速度か回転数を上げる必要が出てきます。
もう一つ。ペイロードを積んで重くなると、最低速度(失速速度)も上がります。 「重いと遅く飛べる」は逆です。
② 旋回半径
教則4.3(2)の式です。バンク角(ロール角)を𝜙とすると、
V² / r = g tan 𝜙 したがって r = V² ÷ (g tan 𝜙)
V=飛行速度[m/s]、r=旋回半径[m]、g=重力加速度(≒9.8m/s²)、𝜙=バンク角
教則が挙げている例は、飛行速度10m/s・バンク角20°(tan20°≒0.36)の場合です。
r = 10² ÷ (9.8 × 0.36) = 100 ÷ 3.528 ≒ 28m
あわせて、教則は「定常旋回には水平飛行の 1/cos𝜙 倍の揚力が必要」とも書いています。cos20°≒0.94なので、1.06倍です。
手順は3つだけ
- 速度Vを2乗する
- 9.8 × tan𝜙 を計算する(tanの値は問題文に与えられます)
- 割る
バンク角が大きいほど旋回半径は小さくなります。 tanが大きくなって分母が増えるからです。数字を入れ間違えたときの検算に使えます。
③ 滑空距離
推力がない状態で滑空するときの角度を滑空角𝛾といい、揚抗比 L/D との間にこの関係があります。
tan 𝛾 = 1 ÷ (L/D) 高度hからの滑空距離は d = h × (L/D)
教則の例は揚抗比15です。𝛾 = tan⁻¹(1/15) ≒ 3.8°、高度100mからの滑空距離は d = 100 × 15 = 1,500m。
滑空距離は「高度 × 揚抗比」。 割り算も三角関数も要りません。ここはいちばん簡単な型です。
④ 水平到達距離
飛行中に揚力を失って落下を始めたとき、どこまで飛んでいくかを求める式です。機体を質点とみなし、空気抵抗を無視した場合。
x = v × √(2h ÷ g)
x=水平距離[m]、v=飛行速度[m/s]、h=高度[m]、g=重力加速度
この型は他の4つに比べて解説記事が少ないのですが、教則4.3(4)に独立した項目として載っています。 高校物理の水平投射そのままです。
実務では、これが立入管理措置の考え方につながります。「真下に落ちる」のではなく、速度が乗っていれば前に飛んでいく。だから立入管理区画を機体の真下だけに取ってはいけない、という話です。計算問題としてだけでなく、リスク管理の設問としても問われうる論点だと考えています。
⑤ フレネルゾーン半径と、必要なアンテナの高さ
教則4.5(6)の式です。
R = √( λ × (D/2)² × 1/D ) = √( λD ÷ 4 )
R=第1フレネルゾーン半径[m]、D=送受信アンテナ間距離[m]、λ=波長[m]
波長は λ = 光速(3×10⁸ m/s) ÷ 周波数f[Hz]
教則の例は、D=100m・f=2.4GHzの場合です。
- 波長 λ = (3×10⁸) ÷ (2.4×10⁹) = 0.125m
- 半径 R = √(0.125 × 100 ÷ 4) = √3.125 ≒ 1.77m
- したがって理想的なアンテナの高さは1.77m以上
ここで終わりではありません。教則は続けて、「実際にはフレネルゾーン半径の60%以上のアンテナ高さが確保できていれば、障害物がない場合と同等の通信品質を確保できるといわれている」と書いています。1.77 × 0.6 ≒ 1.1m以上。
「フレネルゾーン半径を求めよ」なのか「必要なアンテナの高さを求めよ」なのかで、答えが変わります。 後者なら60%を掛けます。公式サンプルの問2は、まさにこの60%まで求めさせる問題です。
半径だけ出して選択肢を見ると、それらしい数字が並んでいるので気づけません。設問の最後の一文を必ず読んでください。
覚えておく性質は2つです。周波数が高い(波長が短い)ほど、フレネルゾーンは小さくなる。距離が短いほど小さくなる。 教則は「2.4GHz帯・5.7GHz帯で2地点が100m離れたケースでは2m以下」とも書いています。
公式サンプルの2問を、実際に解く
国土交通省が公開している一等のサンプル問題のうち、計算問題2問を解いてみます。与えられている数値だけで解けることを確かめてください。
サンプル問1:旋回半径
与えられている条件は、飛行速度25m/s、バンク角30°、重力加速度9.8m/s²、tan30°≒0.58。②の式に入れます。
r = 25² ÷ (9.8 × 0.58) = 625 ÷ 5.684 ≒ 109.9
選択肢は105m・110m・115mで、正答は110mです。tanの値まで問題文に書かれているので、電卓でできるのは2乗と割り算だけです。
サンプル問2:フレネルゾーン
与えられている条件は、周波数2.4GHz、送受信距離1,400m、光速3×10⁸m/s。加えて√2≒1.41、√3≒1.73、√5≒2.24、√7≒2.65が添えられています。
- λ = (3×10⁸) ÷ (2.4×10⁹) = 0.125m
- R = √(0.125 × 1400 ÷ 4) = √43.75
- 43.75 = 6.25 × 7 なので、√43.75 = 2.5 × √7 ≒ 2.5 × 2.65 = 6.625m
- 必要なアンテナの高さは、その60% 6.625 × 0.6 ≒ 4.0m
選択肢は4.0m・4.5m・5.0mで、正答は4.0mです。
√の値が問題文に与えられていることに注目してください。√43.75 をそのまま出そうとすると手が止まりますが、43.75 を 6.25×7 に分けて √7 を使う、という道筋が用意されています。与えられた√の値は「この形に分解しなさい」というヒントです。
覚える数字のまとめ
| 論点 | 値 | 根拠 |
|---|---|---|
| 重量2倍のときの速度・回転角速度 | √2 ≒ 1.4倍 | 教則4.3(1) |
| 重量2倍のときの消費パワー | √2³ ≒ 2.8倍 | 教則4.3(1) |
| 高度1,000mごとの空気密度 | 約0.9倍 | 教則4.3(1) |
| 高度3,000mの空気密度と必要速度 | 0.74倍/1.16倍 | 教則4.3(1) |
| 重力加速度 | ≒9.8m/s² | 教則4.3(2) |
| 滑空距離 | 高度 × 揚抗比 | 教則4.3(3) |
| 光速 | 3×10⁸ m/s | 教則4.5(6) |
| アンテナ高さの実用値 | フレネルゾーン半径の60% | 教則4.5(6) |
| 標準大気の海面上の気圧 | 1013hPa | 教則6.2 |
二等を受ける方へ
二等の学科試験に計算問題は出ません。 上の5つはすべて〔一等〕の項目です。
ただし、考え方だけは二等でも効きます。 「荷物を積むと必要な力が増える」「高いところでは空気が薄くて力が出ない」「速度が乗っていれば、落ちるときは前に飛んでいく」——この3つは、飛行計画を立てるときの判断そのものです。式を覚える必要はありませんので、方向だけ持ち帰ってください。
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一等 演習261問/模試70問×10セット/演習261問+模試10セット
ドローン学科試験に過去問はない|公式サンプルは一等3問・二等4問だけ
教則第5版をやさしく読む15|4.3 飛行原理と飛行性能【全文+講師の解説】
出典
- 国土交通省「無人航空機の飛行の安全に関する教則(第5版)」令和8年7月7日公布・令和8年7月14日適用(4.3 飛行原理と飛行性能/4.5 機体以外の要素技術)
- 国土交通省「操縦ライセンス制度 学科試験(一等)サンプル問題」
本記事の内容は2026年9月時点のものです。制度は改正されることがありますので、最新の情報は必ず国土交通省の公式サイトでご確認ください。数値は教則第5版の本文と照合していますが、計算結果は四捨五入の位置によって末尾が変わることがあります。
登録講習機関講師 フライトデスク 監修



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