リモートIDは、ドローンの手続きの中でいちばん「よくわからないまま済ませてしまう」項目です。
機体を買って登録して、届いた登録記号をシールで貼って、アプリで何かを書き込んで、飛ばす。多くの方はこの流れをなぞるだけで終わります。
ところが、リモートIDには搭載義務の例外が4つあり、機器には国が定めた技術規格があり、書き込みには決まった手順があり、免除を受けるための届出には5開庁日という締切があります。飛行前点検の項目にも入っています。
この記事では、リモートIDとは何を発信しているのかという話から、搭載義務の範囲、4つの免除、DIPS2.0とDIPS APPでの書き込み手順、リモートID特定区域の届出の全手順までを、一次情報だけを根拠にして一本でたどれるようにまとめます。
リモートIDとは何か──「登録記号を電波で名乗る機能」
リモートIDを一言で言えば、飛行中の機体が自分の登録記号を電波で発信し続ける仕組みです。
機体に貼った登録記号のシールは、地上で手に取れば読めます。しかし飛んでいる機体の登録記号は、地上からは読めません。そこで、登録されている機体かどうかを飛行中でも判別できるようにするために、電波で名乗らせることにした。これがリモートIDの目的です。
教則第5版の3.1.2(1)6)は、リモートID機能を次のように説明しています。
リモート ID 機能は、識別情報を電波で遠隔発信するためのものであり(内蔵型と外付型がある)、当該機器は技術規格書に準拠して開発・製造される。
ここで押さえておきたいのは、リモートIDが登録制度の一部だということです。飛行の許可・承認とも、技能証明とも、機体認証とも、系統が違います。だからこそ手続きの窓口はDIPS2.0の「登録機能」であり、根拠は航空法第132条の5と航空法施行規則第236条の6になります。
発信されるのは4種類の情報
教則第5版の3.1.2(1)6)は、発信される情報を次のように整理しています。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 静的情報 | 無人航空機の製造番号、登録記号 |
| 動的情報 | 位置、速度、高度、時刻など |
| 含まれないもの | 所有者や使用者の情報(個人情報は発信されない) |
これらは1秒に1回以上発信されます。技術規格書ではさらに厳しく、位置や時刻などの動的情報は「情報を取得してから1秒以内を目安に発信」することが求められています。
「リモートIDを付けると自分の名前や住所が飛んでいくのでは」と心配される方がいますが、そうではありません。飛んでいくのは登録記号と製造番号、そして位置・速度・時刻です。所有者の氏名や住所は、登録システムの中にあるだけで、電波には乗りません。
登録記号には「JA.」が付いて発信される
細かい話ですが、実機の挙動を理解するうえで知っておくと役に立ちます。技術規格書は、基本IDメッセージについて登録記号の先頭に「JA.」を付した形で発信することと定めています(例:JA.JU12345ABCDE)。
受信アプリで自分の機体を見たときに、登録システムに表示されている記号と少し違って見えるのはこのためです。
搭載義務の範囲──どの機体に、いつ必要か
教則第5版の3.1.2(1)2)は、登録制度の概要をこう述べています。
全ての無人航空機(重量が100グラム未満の模型航空機は除く。)は、国の登録を受けたものでなければ、原則として航空の用に供することができない。登録の有効期間は3年である。登録記号を表示し、一部の例外を除きリモート ID 機能を備えなければならない。
つまり、登録が必要な機体には、原則としてリモートIDも必要です。この2つは別々の判断ではありません。
100gの判定に外付けリモートID機器の重量は含めない
実務でよく問題になるのが、100g前後の機体です。国土交通省のよくある質問は、この点を明確にしています。
外付のリモートID機器を重量に含める必要はありません。登録の対象となる重量は、機体本体の重量とバッテリーの重量が100g以上の機体です。
登録対象かどうかは、あくまで機体本体とバッテリーの合計で判断します。外付け機器を付けた結果100gを超えても、それだけで登録対象にはなりません。
屋内飛行、海外購入機、一時入国での飛行
登録とリモートIDの要否について、国土交通省のよくある質問が答えている代表的なケースを整理します。
| ケース | 取扱い |
|---|---|
| 屋内でのみ飛行させる | 航空法の適用対象外のため、登録は不要 |
| 海外から通販で購入した内蔵型リモートID搭載機 | 国内で飛行させるなら、日本のリモートID技術規格書に適合している必要がある |
| 海外在住者が一時入国して持ち込んだ機体で飛行 | 航空法上の無人航空機に当たるなら、機体の登録とリモートIDの搭載が必要 |
| 外国で登録済みの機体 | 日本で飛行させるなら、日本の航空法に基づく登録が必要 |
海外機については、機体メーカーが「Remote ID対応」と表示していても、それがアメリカのFAA向けの対応であって日本の技術規格書への適合ではない、という食い違いが起こり得ます。航空局が公表している「適合しているとして届出があったリモートID機器等の一覧」に、その製造者名・型式名が載っているかどうかで確認してください。
登録記号の表示義務は別に残る
リモートIDを積んだからといって、機体へのシール表示が不要になるわけではありません。国土交通省のよくある質問も、次のように明言しています。
機体への登録記号の表示に加え、リモートID機能の搭載が必要です。
教則第5版3.1.2(1)4)が定める文字の高さは、最大離陸重量25kg以上の機体は25mm以上、25kg未満の機体は3mm以上です。容易に取り外しができない、外部から確認しやすい箇所に、耐久性のある方法で、地色と鮮明に判別できる色で表示します。
搭載が免除される4つの場合
ここが、この記事でいちばん誤解が多いところです。教則第5版の3.1.2(1)5)は、免除される場合を4つ挙げています。
| 免除される場合 | 条件 |
|---|---|
| 事前登録した機体 | 登録制度の施行前(2022年6月19日)までの事前登録期間中に登録手続きを行った無人航空機 |
| リモートID特定区域での飛行 | あらかじめ国に届け出た特定区域の上空で行う飛行であって、飛行を監視するための補助者の配置、区域の範囲の明示などの必要な措置を講じた上で行う飛行 |
| 係留飛行 | 十分な強度を有する紐(ひも)など(長さが30m以内のもの)により係留して行う飛行 |
| 警察等の秘匿業務 | 警察庁、都道府県警察又は海上保安庁が警備その他の特に秘匿を必要とする業務のために行う飛行 |
注意していただきたいのは、資料によって挙げられている数が違うことです。国土交通省の無人航空機登録ポータルサイトの「搭載免除の条件」の図は、事前登録・安全確保措置(特定区域)・係留飛行の3つを示しています。DIPS2.0のよくある質問は、事前登録と特定区域の2つしか挙げていません。
いちばん広く4つを挙げているのが教則第5版です。学科試験の根拠は教則ですから、試験対策としては4つで覚えてください。実務では、自分が使おうとしている免除がどれなのかを個別に確認するのが確実です。
事前登録の免除は更新後も続く──ただし失効させたら終わり
2022年6月19日までに登録申請を済ませた機体は、リモートIDを積まずに飛ばせます。この免除は今も生きています。
問題は、登録の有効期間が3年だということです。2022年6月に登録した機体は2025年6月に、その次は2028年6月に満了を迎えます。ここで「更新したら免除は消えるのか」という疑問が出てきます。
国土交通省の無人航空機登録ポータルサイトのよくある質問が、この点を明確に答えています。
Q 事前登録をした機体の登録更新をした場合、リモートID機器の搭載は不要のままになりますか?
A 事前登録期間中(2021年12月20日から2022年6月19日までの間)に登録申請を完了した機体は、登録更新後もリモートIDの搭載は不要のままとなります。
さらに、更新が満了日に間に合わなかった場合についても答えがあります。
Q 事前登録をした機体の登録更新手続きが登録有効期間満了までに完了しなかった場合はどうなりますか?
A 登録更新手続きは継続して実施することが可能です。また、更新手続き完了後はリモートIDの搭載は不要のままとなります。ただし、更新手続きが完了するまでは機体を飛行させることはできません。
一方で、同じポータルサイトには次の警告も掲げられています。
事前登録期間(2021年12月20日~2022年6月19日)に機体登録申請を行った機体は、登録を更新しなかった場合、リモートID搭載義務の対象となります。ご注意ください。
この3つは矛盾しません。更新の連続性が保たれている限り免除は続き、更新せずに登録を失効させて新規に登録し直すと免除が消える、ということです。失効した場合は登録記号も変わります。
内蔵型と外付型──どちらを選ぶか
リモートID機能には、機体に組み込まれた内蔵型と、機体に取り付ける外付型の2種類があります。国土交通省のよくある質問は、両者の違いをこう説明しています。
機能における違いはありません。基本的に外付け型はバッテリーにより作動するのに対し、内蔵型は機体電源により作動します。
発信する情報も、通信方式も、義務の満たし方も同じです。違うのは電源の取り方だけ、というのが公式の説明です。
実務上の選択は、ほぼ機体側で決まります。2022年6月の制度開始以降に発売された主要な機体は、ファームウェアで内蔵型のリモートID機能を持っています。制度開始前から使っている機体、自作機、産業用の古い機体では、外付型を買うことになります。
外付型を使うときに気をつけること
| 論点 | 公式の回答 |
|---|---|
| 取り付け場所の指定 | 基本的に機体の機能や性能に影響を与えない箇所に取り付ける。取付け方法の詳細は機体メーカーに問い合わせる |
| GPSの有無 | 位置情報等のため、基本的に外付型にはGPSが内蔵されている |
| 複数機体での使い回し | 可能だが、その都度リモートID機器に機体ごとの登録情報を設定し直す必要がある |
| 機体を買い直した場合 | 同じ型の機体を買い直しても、機器に登録情報を設定し直す必要がある |
| 操縦者が携帯するだけ | 認められない。機体に搭載して発信させる必要がある |
「使い回し」については、システム側でも制御が入っています。メーカーアプリ仕様書によれば、暗号鍵情報の取得時に、同じ外付け機器の製造番号で既に書き込み済みの機体がないかがチェックされ、ある場合はデータブロックを取得できません。物理的に付け替えるだけでは足りず、前の機体の情報を削除してから書き込む、という順序が必要になります。
リモートID機器が満たすべき要件
リモートID機器は、どこのメーカーが作ってもよいわけではありません。航空局が定める「リモートID機器等及びアプリケーションが備えるべき要件」と、その別添である「リモートID技術規格書」に従って開発・製造されたものである必要があります。
購入する側が細部まで理解する必要はありませんが、次の点は知っておくと機器選びとトラブル対応の役に立ちます。
通信方式は3つのうちいずれか
技術規格書は、リモートID信号の無線方式を次の3つに限定しています。
| 通信方式 | EIRPの下限 |
|---|---|
| Bluetooth 5.x Long Range | +5dBm以上 |
| Wi-Fi Aware(Neighbor Awareness Networking) | +11dBm以上 |
| Wi-Fi Beacon | +11dBm以上 |
いずれも、受信機能を持つ端末が直接受信する「直接放送方式」です。インターネット経由でサーバーに位置を送る方式ではありません。だから、携帯電話の圏外でもリモートIDは機能します。
3つを同時に発信する必要はなく、いずれか1つで足ります。逆に言えば、自分の機体がどの方式で発信しているかによって、受信できるスマートフォンが変わります。取扱説明書か航空局の機器一覧で確認しておいてください。
電波の強さについては、技術規格書に「理想的な環境下において水平距離で300m以上離れた地点から受信可能であることが望ましい」という記述があります。あくまで望ましい水準であって、保証された到達距離ではありません。
飛行中はオフにできない設計になっている
技術規格書の性能要件には、次の一文があります。
RID 信号の発信は、無人航空機の飛行中、操縦者等の操作により停止することができないものでなければならない。
「電池を節約したいのでオフにしたい」という質問に対して、国土交通省のよくある質問が「原則、リモートID機能を搭載し、情報を発信しなければなりません」と答えているのは、制度としての義務であると同時に、機器がそもそもそういう設計になっているからです。
電波法の技術基準適合証明が必要
技術規格書の製造要件は、リモートID機器等について電波法に基づく技術基準適合証明等を受けたものであることを求めています。海外から個人輸入した機器が国内で使えるかどうかは、まずここで決まります。
また、位置情報の精度は「理想的な環境下においてGNSS単独測位の精度(±30m以内が望ましい)以上」とされています。
飛行前に作動を確認できる設計であること
製造要件には、次の規定もあります。
RID 機器等は、無人航空機の操縦者が飛行前点検において RID 機器等が動作していることの確認を可能とする設計としなければならない。
教則第5版の飛行前点検の例示でも、「リモートID機能が作動していることを示すランプが点灯していることの確認」が挙げられています。機器のランプの意味を取扱説明書で確認しておくと、点検が形だけになりません。
DIPS APPでリモートID情報を書き込む
リモートID機器は、買ってきて取り付けただけでは義務を満たしません。その機体の登録記号と暗号鍵情報を、機器に書き込む必要があります。
書き込みは、国が提供するスマートフォンアプリ「DIPS APP」か、機器メーカーが提供するアプリ(メーカーアプリ)で行います。パソコンからはできません。
事前に用意するもの
- DIPS2.0のログインIDとパスワード
- 登録記号が発行済みの機体(登録手続きが完了していること)
- DIPS APPをインストールしたスマートフォン
- リモートID機器(外付型の場合。内蔵型なら機体本体)
DIPS APPの推奨OSは、Androidが9・10・11・12・13・14・15、iOSが17・18・26です(2026年8月時点の国土交通省の案内)。推奨バージョンであっても動作しない機種があるため、その場合は機種のメーカーに問い合わせることになります。
書き込みの手順
- スマートフォンのBluetoothと位置情報をONにする。どちらかがOFFだとアプリが確認ダイアログを出します
- App Store(iOS)またはGoogle Play(Android)からDIPS APPをインストールする
- DIPS2.0のログインIDとパスワードでログインする
- ボトムメニューの「機体一覧」を開く
- 書き込む機体を選び、「所有機体詳細」を開く
- 「リモートID書込」をタッチする
- 接続可能機体一覧から対象のリモートID機器を選び、書き込みを実行する
- 書き込み完了後、機体一覧でリモートID書込状況が更新されていることを確認する
削除する場合も同じ画面から「リモートID削除」で行います。
書き込みは毎回必要ではない
飛ばすたびに書き込み直す必要はありません。国土交通省のよくある質問は「登録情報やリモート機器に変更がなければ、毎回設定する必要はありません」と答えています。あわせて「事前に設定しておくことを推奨します」ともあります。現場に着いてから書き込もうとして電波が入らない、という事態を避けてください。
書き込みでつまずいたときの確認点
| 症状 | 確認すること |
|---|---|
| 接続可能機体一覧に機器が出てこない | 短時間にBluetooth通信の開始・終了を繰り返すと受信が開始できなくなることがある。時間を置いて再試行する |
| 発信情報画面に自分の機体が表示されない | 機体または外付け機器の電源が入っているか。スマートフォンが機器の通信方式に対応しているか |
| Wi-Fi Beaconの受信が遅い | 受信に2分程度かかる場合がある。仕様の範囲内 |
| 停止したはずの機体が表示され続ける | 「発信情報クリア間隔」の設定による。初期値は10秒で、5秒から30秒の間で調整できる |
| 余っていた外付け機器を別の機体に付けたい | 元の所有者が自分なら登録システム側でリモートID機器の情報を修正する。他人なら、その所有者に変更または削除をしてもらう |
機体を譲渡するときの手順も決まっています。まずDIPS APPからリモートID機器に書き込み済みの情報を削除し、次にDIPS APPまたは登録システムから登録済み機体のリモートID削除を実施し、そのうえで機器を譲渡します。
リモートID特定区域の届出——手続きの全手順
決まった場所で、決まった機体だけを、監視しながら飛ばすのであれば、遠隔から識別する必要性は乏しい。この考え方で用意されているのがリモートID特定区域の届出です。届出要領は、その趣旨を次のように書いています。
必要な措置を講じた上で、あらかじめ届け出られた区域(以下「特定区域」という。)の上空に限り、あらかじめ届け出られた機体のみを飛行させる場合には、リモートIDにより遠隔から識別する必要性に乏しいと認められることから、(中略)リモートIDの搭載義務の適用を除外するものとしている。
訓練場や自社のテストフィールドを持っている事業者、ラジコンクラブの飛行場などが主な利用者です。手数料はかかりません。本人確認も不要です。
届出の基本条件
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提出期限 | 飛行を開始したい日の少なくとも5開庁日前まで |
| 手数料 | なし |
| 本人確認 | なし |
| 対象機体 | DIPS2.0で登録済み(登録記号が発番されている)機体。無効となった機体は対象外 |
| 期間 | 開始日時は入力日から6か月先まで指定可能。終了日時は開始日から3年以内 |
| 機体数 | 1届出あたり最大1000機体。超える場合は届出を分ける |
| 区域の広がり | 最大3都道府県にまたがる区域まで |
| 代表者 | 1届出あたり1名。ログインユーザ本人である必要はない |
| 提出方法 | DIPS2.0(登録機能)によるオンライン、または郵送 |
郵送で出す場合の提出先は、区域の所在地に応じて東京航空局保安部運航課または大阪航空局保安部運航課です。公海上の場合は国土交通大臣あてになります。郵送でも、飛行開始希望日の5開庁日前までに必着させる必要があります。
届出に必要な情報
- 代表者の情報——氏名または名称、住所、電話番号、電子メールアドレス。法人・団体の場合は代表者の氏名、所属部署名、事務所の所在地も
- 登録記号——特定区域で飛ばす機体すべての登録記号。オンラインではカンマ区切りで入力
- 飛行の日時——開始日時と終了日時
- 区域および高度——所在地、区域の端点の緯度・経度、飛行する高度の上限
- 地図資料——区域の範囲を示した画像(jpg・jpeg・png、最大2MB)と地図データ(GeoJSONファイル)
- 許可・承認の取得状況——特定飛行に当たる場合の許可等の取得状況
- 安全措置を講じることの申告——後述の措置をすべて行う旨のチェック
- 登録システムのログインID
緯度・経度は世界測地系の度単位の十進数表記で、東西南北の端点4点を入力します。小数点以下は必ず6桁です。GeoJSONファイルは国土地理院のサイトで作成・取得できます。
飛行のときに講じなければならない措置
届出だけでは免除になりません。実際の飛行で、次の2つの措置を講じる必要があります。
1つめ:飛行を監視するための補助者の配置その他の措置
- 届出済みの機体の飛行状況を監視し、区域から逸脱しそうになった場合に操縦者へ必要な助言を行う
- 無届または未確認の機体が飛来した場合に、必要に応じてその操縦者へ飛行中止等の指示を行う
- それができない場合や、届出済みの機体と飛来した機体の判別が困難になった場合は、補助者の指示に従って届出済みの機体を飛行中止にする
2つめ:区域の範囲を明示するための標識の設置その他の措置
次のいずれかを満たす必要があります。
- 操縦者からの目視内において、塀、柵、縁石、土地上の境界線の表示、またはそれらによる目印で、区域の外縁がすべて示されていること
- 標識(コーン、看板、既存の構造物、地面上の表示など)を、それぞれの設置位置から両隣の標識が操縦者から視認できるように設置し、外縁が判別可能であること
目視内飛行に限り、外縁が河川や草地であるなどの理由で物理的に標識を設けることが困難な場合には、求めに応じて届出書の写しを提示することで範囲を明示する旨を、届出時に付記することができます。
届出書の写しの携帯義務
特定区域で飛行させる者は、次のいずれかを携帯し、求めに応じて提示しなければなりません。
- 登録システムにログインして届出内容と届出番号を表示できる端末、またはその表示を印刷したもの
- 届出後に国から返信される届出番号が記載された届出書の原本の写し
- 提出した届出書の写しと、登録システムから送信された届出番号が記載された電子メールを表示できる端末、またはその印刷
DIPS2.0では、届出完了後に届出詳細画面から「届出書の一括ダウンロード」ができます。現場に紙で持っていく場合はここから出してください。
変更したいとき、期間が終わったとき
届出事項を変更する場合は、変更のない事項も含めてすべてを記載した届出書を提出します。DIPS2.0では届出一覧画面の「変更届出」から行います。ただし、機体の追加と削除を同時に行うことはできません。追加の変更届出を完了させてから、削除の変更届出を出す、という順序になります。開始日時は変更できません。
飛行期間が満了した届出は、一覧画面で「無効」と表示されます。過去の届出は「複写」ボタンで内容を引き継いで新しい届出を作れますが、飛行の期間と安全確保措置の確認はクリアされるので、改めて設定します。
なお、特定区域の届出をしても、飛行の許可・承認が免除されるわけではありません。DIPS2.0のよくある質問も「飛行の許可・承認が必要な飛行を行う場合は、別途申請を行っていただく必要があります」としています。免除されるのはリモートIDの搭載義務だけです。
飛行前点検とリモートID——壊れたらどうなるか
リモートIDは、機体に積んで書き込んだら終わりではありません。飛行前点検の項目に入っています。
教則第5版5.1が挙げる飛行前確認の項目には、次のものが含まれます。
(e) リモート ID 機能の作動状況(リモート ID 機能の搭載の例外となっている場合を除く。)
教則の巻末にある飛行前の点検項目一覧では、より具体的に書かれています。
⑦ リモートID機能が正常に作動しているか(リモートID機能を有する機器を装備する場合)
(例)リモートID機能が作動していることを示すランプが点灯していることの確認
ランプで確認する方法のほか、DIPS APPの受信機能で自分の機体の発信を確認する方法もあります。ただし受信には、Bluetooth 5.x Long Range、Wi-Fi Aware、Wi-Fi Beaconのいずれかに対応した機種が必要です。飛行前点検をアプリの受信で行うなら、対応機種を用意してください。
飛行中に壊れた場合
「空中でリモートID機能が壊れたり、機器が外れたりした場合は違反になるか」という質問に対して、国土交通省のよくある質問は次のように答えています。
発信情報等の遮断が意図的に行われなかったとしても、航空法違反に問われる可能性があるので、飛行前におけるリモートID機能の健全性、リモートID機器の取付け状況の確認を徹底して頂くようお願いいたします。
「意図的でなければ大丈夫」とは書かれていません。飛行前点検を確実にやることが、そのまま自分を守ることになります。外付型の場合は、取付けの緩みや脱落のしやすさも点検対象です。
講習を担当していると、飛行前点検の記録を「毎回同じ内容をコピーしている」方に出会うことがあります。リモートIDのランプは、電池切れや接触不良で普通に消えます。見ずに書いた記録は、事故が起きたときに何の助けにもなりません。
違反したときの罰則
教則第5版が示す罰則の一覧では、登録記号の表示またはリモートIDの搭載をせずに飛行させたときは50万円以下の罰金です。参考までに、周辺の罰則と並べておきます。
| 違反行為 | 罰則 |
|---|---|
| 事故が発生した場合に飛行を中止し負傷者を救護するなどの措置を講じなかったとき | 2年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
| 登録を受けていない無人航空機を飛行させたとき | 1年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
| 登録記号の表示またはリモートIDの搭載をせずに飛行させたとき | 50万円以下の罰金 |
| 飛行計画を通報せずに特定飛行を行ったとき | 30万円以下の罰金 |
なお、リモートIDを搭載せずに飛行させた場合の責任について、国土交通省のよくある質問は「登録記号の表示等の義務違反となり、所有者が罰則の対象となります」としています。操縦者ではなく所有者、という点に注意してください。会社の機体を社員が飛ばすケースでは、責任の所在が変わってきます。
よくある誤解の整理
講習や問い合わせで実際によく出てくる誤解を、一次情報の回答と並べて整理します。
| よくある誤解 | 実際 |
|---|---|
| 登録記号を機体に貼っていればリモートIDは要らない | 表示に加えてリモートIDの搭載が必要。両方が義務 |
| バッテリーを節約したいのでリモートIDをオフにして飛ばす | 免除に当たる場合を除き認められない。機器も飛行中に停止できない設計が求められている |
| 機体に取り付ける場所がないので操縦者が持って飛ばす | 認められない。機体に搭載する必要がある |
| 外付け機器を付けたら100gを超えたので登録が必要になった | 外付け機器の重量は含めない。機体本体とバッテリーの合計で判断する |
| 事前登録機は登録を更新するとリモートIDが必要になる | 更新後も不要のまま。更新せずに失効させると必要になる |
| リモートIDを積めば目視外飛行ができる | できない。リモートIDは機体を識別する制度で、飛行の方法を承認するものではない |
| 特定区域の届出をすれば許可・承認も不要になる | 免除されるのはリモートIDの搭載義務だけ。許可・承認は別途必要 |
| リモートIDから所有者の氏名や住所が発信される | 発信されない。登録記号、製造番号、位置・速度・時刻、認証情報のみ |
| 1つの外付け機器を複数の機体で使い回してよい | 使い回せるが、その都度書き込み直す。同時に2機で書き込み済みにはできない |
| 海外でRemote ID対応と書かれた機体ならそのまま使える | 日本のリモートID技術規格書への適合が必要。航空局の機器一覧で確認する |
まとめ
リモートIDの要点を、もう一度短く整理します。
- リモートIDは登録記号を電波で名乗る機能で、登録記号の表示義務とセット。搭載せずに飛ばすと50万円以下の罰金(所有者が対象)
- 発信されるのは登録記号、製造番号、位置・速度・高度・時刻、認証情報。所有者や使用者の情報は含まれない。1秒に1回以上発信される
- 教則第5版が挙げる免除は4つ。事前登録機、リモートID特定区域、30m以内の係留、警察等の秘匿業務
- 事前登録による免除は登録更新後も続く。更新せずに失効させると免除が消え、登録記号も変わる
- 通信方式はBluetooth 5.x Long Range、Wi-Fi Aware、Wi-Fi Beaconのいずれか1つ。機器は電波法の技術基準適合証明等が必要
- 書き込みはDIPS APPまたはメーカーアプリから。Bluetoothと位置情報をONにする。登録情報や機器に変更がなければ毎回は不要
- 特定区域の届出は5開庁日前まで、手数料なし、期間は最長3年、1届出で最大1000機体。補助者配置と外縁の明示が必須で、届出書の写しの携帯義務がある
- 飛行前点検の項目にリモートIDの作動状況が入っている。飛行中の故障も違反に問われる可能性がある
リモートIDは、制度の中では地味な位置づけです。取得に試験があるわけでも、更新のたびに講習があるわけでもありません。けれども、義務違反の罰則があり、飛行前点検の項目であり、免除には期限のある手続きが必要です。「なんとなく付いているもの」で済ませず、自分の機体がどの方式で、どこに書き込まれていて、免除に当たるのかどうかを、一度だけでいいので確かめておいてください。
リモートIDの前提になる機体登録そのものの手順は、DIPS2.0 機体登録ガイドで通してたどれます。まだアカウントがない方はDIPS2.0 アカウント開設から始めてください。
この記事で繰り返し出てきた「登録を失効させない」という話は、機体登録の有効期間の更新ガイドに手順をまとめています。事前登録機をお持ちの方は、必ず先に読んでおいてください。
リモートIDを積んでも特定飛行の許可・承認は別に必要です。その全体像はDIPS2.0 飛行許可・承認申請ガイドと飛行カテゴリーⅠ・Ⅱ・Ⅲで整理できます。飛ばす前の通報は飛行計画の通報(DIPS2.0)完全ガイド、飛んだ後の記録は飛行日誌の書き方完全ガイドです。
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