飛ばすか中止か|ドローンの気象判断 Windy・SCW・GPVの使い分けと中止基準

飛ばすか中止か|ドローンの気象判断 Windy・SCW・GPVの使い分けと中止基準のアイキャッチ画像 現場の判断

飛行許可は下りている。機体の点検も済んでいる。あとは飛ばすだけ——のはずが、当日の朝、空を見上げた瞬間に迷う。

この迷いをどう処理するかは、申請書のどこにも書いてありません。

気象判断は「予報アプリを開いて風速の数字を見ること」だと思われがちですが、実務ではそうではありません。数字は判断の材料のひとつであって、判断そのものではないからです。

この記事では、飛ばすか中止かを決めるときに何を見て、どう考えるのかを順に言語化します。一律の数値を配るのではなく、判断の枠組みを渡すことが目的です。

最初に一番大事なこと気象判断とは、風速の数字を基準と比べる作業ではなく、「この気象がこれからどう変わるか」を見積もり、変わったときに機体と自分が対応できるかを判断する作業です。予報の数字は出発点にすぎません。数字が基準を下回っていても中止する日はありますし、その逆を安易にやってはいけません。

予報を見ただけでは判断にならない理由

予報の風速と、機体が実際に受ける風は、同じものではありません。ずれる理由は大きく3つあります。

ずれの種類 中身 実務上の意味
空間のずれ 数値予報は格子(メッシュ)で計算される。格子より小さい地形の影響は表現されない 谷筋、堤防、建物の裏、河川敷といった局所の風は予報に出てこない
時間のずれ 気象庁の「風速」は10分間平均風速。瞬間の値ではない 平均値が基準内でも、瞬間的にはるかに強い風が吹きうる
高度のずれ 一般の予報が示すのは地上付近の風。無人航空機が飛ぶ高度の風ではない 離陸地点が無風でも、高度50mでは全く違うことがある

この3つを頭に入れずに数字だけを見ると、「予報は4m/sだったのに現場では機体が流された」という事態になります。予報が外れたのではなく、予報が答えている問いと、こちらが知りたい問いが違っただけです。

判断を3段階に分けると崩れない

気象判断を一度で決めようとすると、迷いが残ります。前日・当日朝・現地の3段階に分け、それぞれで見るものと決めることを変えると、判断が安定します。

段階 主に見るもの そこで決めること
前日(〜24時間前) 天気図、気圧配置、等圧線の間隔、広域の予報 実施するか、予備日に振るか。関係者への一次連絡
当日朝 短時間の数値予報、アメダス実況、警報・注意報、ナウキャスト 現地へ向かうか。到着後の判断ポイントと時刻を決める
現地 実際の風、雲、機体の挙動、周囲の障害物 離陸するか。離陸後も継続するか、切り上げるか

大事なのは、前日の判断は「実施の可否」ではなく「現地まで行くかどうか」だと割り切ることです。前日の予報で飛行の可否まで決めようとすると、現地で条件が悪くても「昨日OKと言ったから」という力が働きます。段階を分けるのは、その力を切るためでもあります。

講習でよく出る質問「何日前から予報を見ればいいですか」と聞かれたときは、「3日前から見るのはいいが、3日前の予報で可否を決めてはいけない」と答えています。理由は次の章のとおりで、数日先の予報は粗い格子のモデルしか使えないからです。

予報サイトの使い分け ― 何が違うのか

Windy、SCW、GPV気象予報、気象庁のサイト。どれも風を表示しますが、性格が違います。

ここで断っておくと、各サービスが内部でどの数値予報モデルをどの設定で使っているかは、提供側の都合で変わることがあります。私はそれを常に追い切れているわけではないので、断定はしません。実務では「元になっているモデルが明示されているか」を、サービスを選ぶ基準にしています。

一方、気象庁の数値予報モデル自体は一次情報として公表されています。ここは根拠にできます。

モデル 水平格子・実行頻度 予報期間
局地モデル(LFM) 2km/1日24回 9時間先まで
メソモデル(MSM) 5km/1日8回 39時間先まで(09時・21時初期値は78時間先まで)
全球モデル(GSM) 約20km/1日4回 最大11日先まで

この表が、前の章の「3日前の予報で決めてはいけない」の根拠です。3日先を見ようとすれば、使えるのは約20km格子の全球モデルだけになります。20km格子は、東京駅から立川あたりまでが1マスに入る粗さです。その1マスの代表値で、河川敷の離陸地点の風を決めるのは無理があります。

逆に、当日朝から数時間先を見るなら2km格子の局地モデルが効いてきます。時間が近づくほど予報の解像度が上がるので、判断も後ろ倒しにするほど精度が上がる。段階を分けるのは、この性質を利用するためでもあります。

実務での組み合わせ広い時間軸の傾向をつかむのに1つ、直前の細かい予測に1つ、そして実況と警報の確認に気象庁。この3点セットで足ります。同じ性格のサービスを何個も開いても、判断は速くなりません。

風速の数字をどう読むか ― 平均と瞬間

ここが、気象判断でいちばん誤解されるところです。

気象庁の定義では、「風速(平均風速)」は10分間平均風速を指します。しかも観測時刻までの10分間で、たとえば15時の平均風速は14時50分から15時00分の平均です。教則でも風速は観測時の前10分間の平均風速と説明されています。

一方の瞬間風速は、風速計の測定値(0.25秒間隔)を3秒間平均した値です。そして気象庁は、瞬間風速は平均風速の1.5倍から3倍程度に達することがあるとしています。

この意味を、具体的な数字に落としてみます。

平均風速 瞬間風速の目安(1.5〜3倍) 実務上の見え方
3m/s 4.5〜9m/s 機体は姿勢を保つが、微妙な位置ずれが出はじめる
5m/s 7.5〜15m/s 瞬間値が小型機の耐風性能に迫る領域に入る
8m/s 12〜24m/s 多くの民生機で、瞬間的に能力を超えうる

平均5m/sという数字は、決して穏やかな条件ではありません。瞬間的には15m/s級の風が吹きうる状態だと読むのが正しい読み方です。

気象庁の予報用語も押さえておくと、判断が速くなります。

予報用語 平均風速 無人航空機の運航から見ると
やや強い風 10m/s以上15m/s未満 この時点で標準飛行マニュアルの基準の2倍以上
強い風 15m/s以上20m/s未満 飛行を検討する段階ではない
非常に強い風 20m/s以上30m/s未満 同上
猛烈な風 およそ30m/s以上、または最大瞬間風速50m/s以上 同上
ここは覚えておく天気予報に「やや強い風」という言葉が出た時点で、平均風速は10m/s以上です。予報用語のいちばん弱い区分ですら、標準飛行マニュアルの基準の倍を超えている。「やや」という語感に引きずられないことが、この用語を知っておく実益です。

「風速5m/s」という数字の正体

現場でいちばん頻繁に使われる数字が5m/sですが、これがどこから来た数字かを正確に押さえている人は多くありません。

これは国土交通省の標準飛行マニュアル①②の「3-1 基本的な体制」にある記載で、「風速5m/s以上の状態では飛行させない」という運航条件です。航空法の条文に書かれた一律の上限ではありません。標準飛行マニュアルを使って許可・承認を受けた場合に、自分が守ると宣言した条件、という位置づけです。

出典 要件 適用
2-8(2)
遵守事項
飛行前に、気象、機体の状況及び飛行経路について、安全に飛行できる状態であることを確認する すべての飛行
2-8(3)
遵守事項
5m/s以上の突風が発生するなど、無人航空機を安全に飛行させることができなくなるような不測の事態が発生した場合には即時に飛行を中止する すべての飛行
3-1
基本的な体制
風速5m/s以上の状態では飛行させない すべての飛行
同上 雨の場合や雨になりそうな場合は飛行させない すべての飛行
同上 十分な視程が確保できない雲や霧の中では飛行させない すべての飛行
①3-6
催し場所上空
飛行速度と風速の和が7m/s以上の状態では飛行させない 催し場所上空の飛行

表の出典欄は標準飛行マニュアルの節番号です(2-8=無人航空機を飛行させる者が遵守しなければならない事項、3-1=無人航空機を飛行させる際の基本的な体制)。このうち「2-8」「3-1」の各項目は、標準飛行マニュアル②(場所を特定しない申請に適用・令和4年6月20日版)の原文で確認したものです。催し場所上空の要件は場所を特定する申請に適用される標準飛行マニュアル①に置かれており、②には催し場所の規定自体がありません。

そのうえで、催し場所上空では5m/sと7m/sの両方が有効です。7m/sは催し場所固有の追加要件であって、3-1の5m/sを置き換えるものではありません。教則第5版でも催し場所上空の項に「風速5m/s以上の場合は飛行を中止すること」と明記されています。ここを片方だけで説明している解説をときどき見かけるので、注意してください。

もうひとつ、表の一行目は見落とされがちですが重要です。飛行前に気象を確認することは、心がけではなく手順として定められている。気象判断は任意の慎重さではなく、運航者の義務の一部だという位置づけになります。

読み違えやすい5m/sは「ここまでは飛ばしてよい」という推奨値ではなく、「ここを超えたら飛ばしてはいけない」という上限です。上限ぎりぎりで飛ばす計画は、少しの変動で違反側に落ちます。上限と、自分の運用上の中止ラインは、別に持つべきものです。

カタログの耐風性能は何を保証しているか

「うちの機体は12m/sまで耐えられるから、5m/sなら余裕」という言い方を耳にしますが、この2つの数字は比べられるものではありません。

メーカー公表値を見てみます。

機体 最大風速抵抗 最大ピッチ角/動作環境温度
DJI Mini 4 Pro 10.7m/s 35°/-10〜40℃
DJI Matrice 4シリーズ 12m/s(離着陸時の最大耐風速) 35°/-10〜40℃

注目してほしいのは、Matrice 4シリーズの12m/sに「離着陸時の最大耐風速」という注記が付いていることです。仕様表の数値には測定条件があり、条件が書かれている場合はそれを読まないと意味を取り違えます。

そのうえで、耐風性能の数字が意味するのは「その風で機体が姿勢と位置を維持できる」ということであって、「その風で予定した作業が安全にできる」ということではありません。この差は実務では大きい。

  • 耐風性能ぎりぎりの風では、機体は姿勢維持に出力を使い切っている。余力がない
  • 余力がないということは、突風が来たとき、障害物を避けるとき、帰投するときに使える分が残っていない
  • 加えて、姿勢維持のためにモーターが回り続けるので、バッテリーの減りが想定より速くなる

そして前の章の数字と組み合わせると、こうなります。平均5m/sの状況では、瞬間的に15m/s級が吹きうる。耐風10.7m/sの機体にとって、それは瞬間的に能力を超える風です。カタログ値10.7m/sと基準値5m/sを並べて「半分だから余裕」と考えるのが、なぜ危ないかがここでわかります。

ご注意ここで挙げた数値はメーカーの公表仕様です。実際の許容範囲は、搭載物、バッテリーの劣化、気温、高度、機体の整備状態によって変わります。公表値は「この条件で測ったらこうだった」という一点の情報であり、現場での安全余裕を保証するものではありません。

地上の風と上空の風はなぜ違うのか

教則では、風について次のように整理されています。

  • 風は地面の摩擦を受けるため、一般に上空では強く、地表に近づくにつれて弱くなる
  • その変化の度合いは地表の粗度(樹木や建物などによる凸凹の程度)や風速の大きさによって異なり、地表の粗度が大きいほど、高さによる風速の変化は大きくなる
  • 天気図で等圧線の間隔が狭いほど、風は強まる

この3つは試験のための知識ではなく、そのまま現場で使えます。とくに2つめが実務的です。地表が凸凹しているほど、地上と上空の風の差は大きくなる。つまり、市街地や林の中の離陸地点で「地上が静かだから大丈夫」と判断するのは、開けた河川敷で同じ判断をするより危ないということになります。

離陸地点で風を感じないからといって、上空も同じとは限りません。とくに次のような場所では、地上と上空の差が大きく出ます。

場所 起きやすいこと
建物や塀の風下 地上は無風に近いが、建物の高さを超えた瞬間に一般風にさらされる
河川敷・堤防の内側 堤防が風を遮っている。堤防の高さを超えると急に流される
林・防風林の内側 樹高を超えるまでは静か。超えた直後に姿勢が変わる
谷筋・尾根 地形に沿って風が加速する。予報の格子では表現されない

等圧線の間隔は、前日の判断で効いてきます。天気図を開いて、日本付近の等圧線が混んでいれば、その日は地上の体感がどうであれ上空は強いと考えておく。逆に等圧線がゆるく、気圧の傾きが小さい日は海陸風のような局地的な風が明瞭に出やすくなります。海岸部での撮影なら、朝なぎ・夕なぎの時間帯が狙い目になるのはこのためです。

現地では機体に風を教えてもらう

現地に着いてから離陸するまでの間に、風を読む手がかりはいくつもあります。

離陸前に見るもの:旗、のぼり、木の葉と枝の揺れ方、煙、水面のさざ波、雲の流れる速さと向き。とくに雲の流れは上空の風向を教えてくれるので、地上の風向と食い違っていないかを見ます。食い違っていれば、高度によって風が変わっているサインです。

離陸後に見るもの:ここが本題です。低い高度で一度ホバリングさせて、機体そのものを風速計として使います。

見る対象 読み取れること
機体の傾き(ピッチ・ロール) 姿勢維持にどれだけ舵を使っているか。傾きが大きいほど余力が減っている
位置保持の揺れ幅 GNSSで位置を保とうとしても押し戻される幅。風の変動の大きさが出る
機首の振れ(ヨー) ふらつくときは、乱れた風が当たっている可能性がある
バッテリーの減り方 同じ時間・同じ動作で普段より減りが速ければ、それだけ風と戦っている

そして、飛行計画では帰りが向かい風になる可能性を必ず織り込みます。追い風で軽快に遠ざかったあと、同じ距離を向かい風で戻ることになるからです。往路と復路で必要な電力は同じではありません。

ただし「何パーセント残せば安全か」という数字を、私は一律には出しません。機体、距離、風速、気温、バッテリーの劣化度合いで変わるからです。出せるのは考え方までで、「往路にかかった時間・電力を計測し、復路はそれより多くかかる前提で残量を判断する」という枠組みまでです。

講習で伝えていること受講者には、風のある日に一度、低高度でホバリングさせたまま画面の姿勢表示とバッテリー残量だけを1分間見てもらいます。数字を教えるより、「今日の風はこの機体にとってこのくらいの負荷だ」という感覚を一度作ってもらうほうが、その後の判断が安定します。

風以外に見る4つ ― 雨・視程・雷・気温

風にばかり注意が向きますが、標準飛行マニュアルは雨と視程についても明確に定めています。

:「雨の場合や雨になりそうな場合は飛行させない」。雨になりそうな場合が含まれている点が重要です。降り出してから中止するのでは遅い、という前提で書かれています。

雲・霧・視程:「十分な視程が確保できない雲や霧の中では飛行させない」。目視内飛行は、機体が見えていることが成立の条件です。霧や靄は風がなくても発生し、しかも短時間で広がります。

雷・突風:ここは気象庁のナウキャストが直接使えます。

情報 解像度・更新 予測範囲
高解像度降水ナウキャスト 250m四方/5分毎 30分先まで(35〜60分先は1km四方)
雷ナウキャスト 1km格子/10分毎 10〜60分先
竜巻発生確度ナウキャスト 10km格子/10分毎 10〜60分先

積乱雲が近くにあるときは、雨が降っていなくても危険側に倒します。積乱雲に伴う現象は、無人航空機にとって回避が難しいものばかりだからです。

現象 気象庁の説明
ダウンバースト 積雲や積乱雲から生じる強い下降流。地面に衝突して周囲に吹き出す突風となる
マイクロバースト ダウンバーストのうち、水平方向の風の広がりが4km未満のもの(4km以上はマクロバースト)
ガストフロント 積雲や積乱雲から吹き出した冷気の先端と周囲の空気との境界。突風と風向の急変、気温の急下降を伴う

いずれも短時間で風向が急変するのが特徴です。定常的な風なら機体は姿勢を保てますが、風向が反転するような変化には追従が間に合いません。

気温:メーカーが定める動作環境温度の範囲内かを確認します。先ほどの2機種はいずれも-10〜40℃でした。夏の直射日光下のアスファルトや、冬の早朝は、この範囲の端に近づきます。低温時のバッテリー、高温時のモーターとカメラは、それぞれ別のテーマなので、このシリーズの後の回で扱います。

積乱雲を見たら遠くに積乱雲が見えている状態は、「まだ大丈夫」ではなく「これから急変しうる」というサインです。作業を切り上げる判断は、雨が降り出す前に済ませておくのが原則です。

よくある誤解の整理

よくある誤解 実際
風速5m/sまでなら飛ばしてよい 5m/sは標準飛行マニュアルが定める上限であって推奨値ではない。運用上の中止ラインは別に設定するもの
耐風性能12m/sの機体なら5m/sは余裕 平均5m/sでも瞬間風速は1.5〜3倍に達しうる。カタログ値は測定条件つきの値で、安全余裕を保証しない
予報が3m/sだったから安全 予報は格子の代表値かつ10分間平均。局所の地形と瞬間の変動は表現されない
地上で無風なら上空も穏やか 風は一般に上空ほど強い。障害物の風下では特に差が大きい
催し場所上空は7m/sが基準 7m/sは「飛行速度と風速の和」の基準。3-1の5m/sも同時に有効で、両方を満たす必要がある
雨が降り出したら降ろせばよい 標準飛行マニュアルは「雨になりそうな場合」も飛行させないとしている
飛行許可が下りているから飛べる 許可・承認は特定飛行を可能にするもので、当日の気象条件の適否とは別。最終判断は機長の責任

中止基準は現場で決めない

気象判断でいちばん難しいのは、風を読むことではありません。すでに現場に着いていて、依頼主が待っていて、機材を広げた状態で「やめます」と言うことです。

だから、中止基準は現場で決めてはいけません。感情が動かない場所で、数値と条件で先に決めておく。これが最も実効性のある対策です。

紙に落とすときの項目は、たとえば次のようになります。

  • 離陸を見送る平均風速(予報値・実測値それぞれ)
  • 飛行中に切り上げる条件(機体の傾き、位置保持の揺れ幅、バッテリー消費の速さ)
  • 降雨・霧に関する条件(降り出す前に降ろす、視程が◯m を下回ったら降ろす)
  • 雷・積乱雲に関する条件(雷ナウキャストで活動度が出た場合の扱い、積乱雲の見え方)
  • 気温に関する条件(機体の動作環境温度の範囲、警告表示が出た場合の扱い)
  • 判断のタイミング(現地到着時、離陸前、離陸後◯分、以降◯分ごと)
  • 判断する人(機長。合議にしない)

数値は各自の機体と現場に合わせて埋めてください。ここに私が一律の数字を書かないのは、書いた瞬間にそれが「安全な値」として一人歩きするからです。枠組みは共通でも、線を引く位置は運航者ごとに違います。

依頼主への伝え方この表を受注時に共有しておくと、中止の連絡が一段軽くなります。「今日は風が強いので中止します」は個人の主観に聞こえますが、「事前にお渡しした基準の◯番に該当したため中止します」は運用ルールの適用になります。予備日の設定も、この段階で一緒に決めておくのが実務的です。

まとめ

この記事の要点をまとめます。

  • 予報の数字と現場の風は、空間・時間・高度の3つでずれる。数字は出発点であって結論ではない
  • 判断は前日・当日朝・現地の3段階に分ける。前日に決めるのは「現地へ行くかどうか」まで
  • 数値予報は時間が近づくほど解像度が上がる。数日先を粗い格子で見て可否を決めない
  • 気象庁の「風速」は10分間平均。瞬間風速は平均の1.5〜3倍に達することがある
  • 標準飛行マニュアルの5m/sは上限であって推奨値ではない。催し場所上空では7m/sの要件も同時に有効
  • カタログの耐風性能は測定条件つきの値で、作業の安全余裕を保証しない
  • 現地では機体そのものを風速計として使う。姿勢、揺れ幅、バッテリー消費を見る
  • 雨・視程・雷・気温も基準として決めておく。とくに「雨になりそうな場合」は飛ばさない
  • 中止基準は現場ではなく事前に、数値と条件で決める。依頼主にも先に共有する

申請が通ることと、その日その場所で安全に飛ばせることは別の問題です。前者は書類で決まりますが、後者を決められるのは現場にいる機長だけです。その判断を毎回ゼロから考えなくて済むように、自分の枠組みを持っておく。それがこのシリーズで伝えたいことです。

ご注意本記事は、無人航空機の飛行の安全に関する教則(第5版・公布 令和8年7月7日/適用 令和8年7月14日)、国土交通省航空局 標準マニュアル②(令和4年6月20日版)、気象庁の公表資料(予報用語「風」、風について、数値予報モデル、ナウキャスト)、およびメーカー公表仕様に基づく解説です。教則および標準マニュアル②からの引用は原文で確認しています。催し場所上空に関する記載は標準マニュアル①に基づくもので、本記事では原文での確認を行っていません。気象・電波の状況や機体の状態は現場ごとに異なり、本記事の内容は特定の飛行の安全を保証するものではありません。最終的な飛行可否の判断は機長の責任において行ってください。
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登録講習機関講師 フライトデスク 監修

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