飛ばすか中止か|ドローンの耐風性能はどこまで信じられるか 風速の見積もりと限界

飛ばすか中止か|ドローンの耐風性能はどこまで信じられるか 風速の見積もりと限界のアイキャッチ画像 現場の判断

「この機体は耐風12m/sだから、今日の風なら大丈夫です」

講習でも現場でも、この言い方をよく聞きます。数字の出どころは正しい。メーカーの公式仕様に、確かにそう書いてあります。

ただ、この一文には二つの飛躍が入っています。ひとつは、その数値がどんな条件で測られたものかを確認していないこと。もうひとつは、機体が耐えられることと、その日その現場で安全に作業できることを同じものとして扱っていることです。

そして2025年3月の航空局標準マニュアル改正で、風速の扱いは一段ややこしくなりました。「5m/s以上では飛ばさない」という有名な一行に、ただし書きが付いたからです。

最初に一番大事なこと風速の限界は、ひとつの数字では決まりません。許可・承認の条件、機体の公表値、自分と現場の余力という三つの数字があり、実際に守るべき線はそのうち一番低いものです。耐風性能が12m/sの機体でも、標準マニュアルで申請していれば縛りは別にあります。そして催し場所上空については、改正後も緩和されていません。

5m/sの縛りは、2025年の改正で性格が変わった

まず現行の条文を確認します。国土交通省航空局が公開している航空局標準マニュアル(令和7年12月26日版)の「3-1 無人航空機を飛行させる際の基本的な体制」には、次のように書かれています。①(場所を特定した申請)と②(場所を特定しない申請)で同じ文言です。

(2)風速5m/s以上の状態では飛行させない。ただし、風速5m/s以上の状態で飛行可能であることを、製造者等が定める取扱説明書等にて確認している場合は、その条件による。

後段のただし書きが、2025年3月31日版で追加された部分です。同じ改正で、遵守事項「2-3(3)」の突風に関する規定にも同趣旨のただし書きが入りました。

(3)5m/s以上の突風が発生するなど、無人航空機を安全に飛行させることができなくなるような不測の事態が発生した場合には即時に飛行を中止する。ただし、5m/s以上の突風で飛行可能であることを、製造者等が定める取扱説明書等にて確認している場合は、その条件による。

改正前は、機体が何であっても5m/sで一律に線が引かれていました。改正後は、線を引く位置が機体ごとに変わる設計になっています。実務としては合理的な変更です。同時に、判断の責任が運航者側に寄ってきたということでもあります。

申請済みの方はご注意ください過去に取得した許可・承認は、そのとき添付したマニュアルの版に紐づいています。手元の許可書がどの版のマニュアルで通ったものかは、申請時の添付書類を確認してください。判断に迷う場合は、無人航空機ヘルプデスク(050-3385-4717)に確認するのが確実です。

「取扱説明書等にて確認している場合」とは何を確認することか

ここが今回いちばん考えどころです。条文は「製造者等が定める取扱説明書等にて確認している場合」としか書いていません。何をもって確認したことになるのかは、条文からは読み取れません。

私が講習でこの質問を受けたときは、「仕様表に耐風性能の数字がある」ことと「取扱説明書等でその風速での飛行が可能だと確認できている」ことは、同じとは限りませんと答えています。理由は次の項で書くとおり、耐風性能という数値の測定条件が機種によって違うからです。

実務上、確認しておきたいのは次の点です。

  • その数値がメーカーの公式資料(仕様表・取扱説明書・マニュアル)に載っているか
  • 離着陸時の値なのか、飛行中の値なのか、注記まで読んだか
  • ペイロードを積んだ状態の値なのか、素の機体の値なのか
  • その資料の該当ページを、申請の根拠として手元に保存してあるか

この四つが揃っていないのに「うちの機体は12m/sまでいけるので」と運用するのは、根拠が薄いと私は考えています。この点について私は確定的な解釈を持っていません。運用の可否が判断の分かれ目になる案件では、申請先または無人航空機ヘルプデスクに直接確認してください。

催し場所上空だけは、緩和されていない

見落としやすい点です。標準マニュアル①の「3-6 催し場所の上空における飛行を行う際の体制」には、次の規定があります。

(4)風速5m/s以上の場合には、飛行を行わない。また、飛行速度と風速の和が7m/s以上の状態では飛行させない。

ここにはただし書きがありません。3-1に付いた「取扱説明書等で確認している場合はその条件による」は、催し場所上空の規定には及んでいないという読み方になります。

あわせて、教則第5版の「3.1.2 特定飛行」でも、催し場所上空について「風速5m/s以上の場合は飛行を中止することや、機体が第三者及び物件に接触した場合の危害を軽減する構造を用意していることが必要である」と記載されています。学科試験の根拠としても、催し場所上空の5m/sは残っています。

さらに「飛行速度と風速の和が7m/s」という条件は、風速だけでは判断できません。風速が4m/sなら、機体の飛行速度は3m/s未満に抑える必要があります。風が弱くても、速く飛ばせば引っかかる規定です。イベント案件でこれを見落とすと、当日その場で気づくことになります。

耐風性能という数値は、何を測ったものか

メーカーの公表値そのものは、正確な情報です。問題は、その数値が何を意味しているかが機種ごとに違うことです。DJIの公式仕様ページから、注記も含めて引くと次のようになります。

機体 最大風速耐性 公式の注記
DJI Mini 4 Pro 10.7 m/s 注記なし
DJI Matrice 4 シリーズ 12 m/s 離着陸時の最大耐風速度

同じ「最大風速耐性」という項目名でも、Matrice 4シリーズには「離着陸時の値である」という注記が付き、Mini 4 Proには付いていません。注記の有無で、数値が保証している範囲が変わります。手持ちの機体の仕様表は、数字だけでなく注記まで読んでください。

もうひとつ押さえておきたいのは、この種の数値がどういう環境で測られているかです。DJIは飛行時間や最大速度について「無風に相当する制御された風洞環境、海抜0m」と条件を明記しています。耐風性能の測定条件は仕様表に書かれていませんが、実運用の悪条件を再現した値ではないと考えておくのが安全側です。

私が確認できなかったこと耐風性能の測定方法について、DJIは公式に測定条件を公表していません。「何分間、どの飛行モードで、どういう状態を維持できれば合格としたのか」は、私が調べた範囲では確認できませんでした。ここは推測で埋めずに、わからないままにしておきます。

機体が風に耐えるとは、どういうことか

マルチローターが風に流されないのは、機体を風上に傾けて、推力の水平方向の成分で風の力とつり合わせているからです。傾きが大きいほど、風に対抗できる力は大きくなります。

ここで効いてくるのが、仕様表の最大ピッチ角です。先ほどの2機種はいずれも35°で、これはソフトウェア上の上限です。つまり機体が風に対抗できる力には、構造的な天井があるということになります。風がその天井を超えれば、あとは流されるだけです。

そして傾きを維持している間、モーターは余分に回り続けます。姿勢を保つこと自体が電力を食うので、耐風性能の限界近くでは、飛行時間の公表値はまったく当てになりません。カタログの49分は無風で計測した値です。

教則にも書かれています教則第5版の「6.2 気象の基礎知識」には「無人航空機は、運用可能な動作環境が具体的に明示されている。運用可能な範囲内であっても、低温時や高温時には大きな影響をうけることが予想される」とあります。範囲内であっても影響を受ける、という書き方です。風についても同じ読み方が要ります。

予報の数字から、現場の風を見積もる

次に、事前の見積もりの話です。予報サイトや気象庁が出している「風速」が何を指しているかを、まず正確に押さえます。

教則第5版の「6.2 気象の基礎知識」には、次のように書かれています。

風速は空気の動く早さで、メートル毎秒(m/s)で表す。風は必ずしも一定の強さで吹いているわけではなく、単に風速と言えば、観測時の前10分間における平均風速のことをいう。また、平均風速の最大値を最大風速、瞬間風速の最大値を最大瞬間風速という。

気象庁も同じ定義です。平均風速は10分間の平均、瞬間風速は3秒間の平均。そして瞬間風速は平均風速の1.5倍程度になることが多く、大気の状態が不安定な場合などは3倍以上になることがあると明記しています。アメダスの風速は、毎正時前10分間の平均風速を小数第1位で四捨五入した値です。

ここから見積もりの原則が出てきます。予報で5m/sと出ていたら、瞬間的には7〜8m/s、条件によっては15m/sに達しうるということです。機体が受けるのは平均値ではなく、その瞬間の風です。

気象庁の「風の強さと吹き方」の階級表から、判断に使う部分を抜き出します。

風の強さ 平均風速 おおよその瞬間風速
やや強い風 10以上15未満 m/s 20 m/s
強い風 15以上20未満 m/s 30 m/s
非常に強い風 20以上25未満 m/s 40 m/s
猛烈な風 30以上35未満 m/s 60 m/s

この表で注目してほしいのは、階級表がいちばん下の欄で「やや強い風」=平均10m/sから始まっていることです。世間の感覚で「やや強い」とされる風は、多くの機体の耐風性能の公表値とほぼ同じ水準にあります。標準マニュアルの5m/sは、この階級表にすら載らない弱い風です。

高さが変われば、風速は変わる

もうひとつ、見積もりで欠かせないのが高度差です。教則第5版には次のようにあります。

風は地面の摩擦を受けるため、一般的に上空では強く地表に近づくにつれて弱くなる。変化の度合いは地表の粗度(樹木や建物などによる凸凹の程度)や風速の大きさによって異なる。一般に地表の粗度が大きいほど、高さによる風速の変化は大きくなる。

実務上の意味は明快です。足元で風速計が示す値は、上空の値より小さい。そして地面がでこぼこしているほど、その差は大きくなります。

樹木や建物に囲まれた場所ほど、地上と上空の落差が大きいということです。市街地や林縁で「地上は穏やかだから大丈夫」と判断すると、高度を上げた瞬間に想定外の風に入ります。

教則はさらに、建物まわりの風について「ビル風は周辺の風より風速が速く継続して吹いていて、その建物群の配置や構成によって吹く風の種類が異なる」と説明し、剥離流・吹き降ろし・逆流・谷間風・街路風を挙げています。建物の近くでは、上空との差だけでなく、水平方向にも風の場が変わります。

具体的な倍率は書きません「高度100mでは地上の何倍」という換算式は存在しますが、粗度区分の設定次第で結果が大きく変わります。現場ごとの粗度を正しく当てはめられないまま数字だけ使うと、かえって危険側の見積もりになります。ここは倍率ではなく、上空のほうが強い、粗度が大きいほど差が開くという方向だけを持っておくのが実用的です。

機体を風速計として使う

現場に風速計を持っていくのは大前提として、風速計が測れるのは自分が立っている高さの風だけです。飛行高度の風は、機体自身に教えてもらうしかありません。

もっとも定量的なのは、往復の対地速度を比べる方法です。同じスティック操作で往路と復路を飛ばし、アプリに表示される速度の差を見ます。差が大きいほど風が強い。往路で25km/h、復路で15km/hしか出ないなら、その高度に無視できない風が吹いています。

判断に使える観察点をまとめます。

観察するもの 読み取れること 対応
往路と復路の対地速度の差 その高度の風の強さ 差が広がったら高度を下げる
ホバリング中の機体の傾き 風に対抗している度合い 目視で傾きがわかる時点で余力は少ない
位置保持の揺れ幅 風の変動(突風性) 揺れが不規則なら乱流を疑う
スティックを戻したときの流され方 風下側に流れる速さ 流されるなら帰路の余力を再計算

このうち私がいちばん信用しているのは、スティックを中立に戻したときの挙動です。位置を保とうとして機体が働いている量がそのまま見えます。ここで明らかに風下へ流れるようなら、帰りの燃料計算をやり直す段階です。

バッテリーの減り方が、最初に限界を教えてくれる

風の限界は、多くの場合姿勢が乱れる前に電力の問題として現れます。姿勢を保つために推力を使い続けるので、同じ飛行内容でも残量の減り方が速くなります。

現場での確認は単純です。離陸から一定時間ごとに残量を控え、いつもの現場と比べます。減りが明らかに速ければ、それが風の強さの指標です。この時点ではまだ機体は普通に飛んでいます。だからこそ気づきにくい。

そして考えるべきは、帰路が向かい風になる場合です。行きが追い風で気持ちよく飛んだ分、帰りは対地速度が落ちて時間がかかります。残量20%で折り返すという普段の運用が、風の日には成立しません。

私の運用風のある日は、機体を風下側に出さないように経路を組みます。どうしても風下側へ行く必要があるときは、折り返しの残量をいつもより高めに設定し、その値を離陸前に口に出して補助者と共有します。飛ばしながら決めると、必ず甘くなるからです。

限界は、三つの数字の一番低いところにある

ここまでを整理します。風速について、私たちは三つの別々の数字を持っています。

出どころ 数値の例 数字の性格
許可・承認の条件 標準マニュアルの5m/s 超えたら法令違反になりうる
機体の公表値 耐風性能 10.7m/s など 測定条件つきの参考値
自分と現場の余力 各自で設定する 実際に中止を決める線

この三つは互いに独立しています。そして守るべきなのは、一番低いものです。耐風12m/sの機体を持っていても、標準マニュアルで申請していれば、その条件が先に効きます。逆に、条件上は飛ばせても自分の余力が足りなければ、そこで止めるのが機長の判断です。

三つ目の「自分と現場の余力」は、事前に紙に落としておくものです。項目としては次のようになります。

  • 離陸を見送る予報値(平均風速と、想定される瞬間風速)
  • 離陸を見送る現地実測値(風速計の値と、測った高さ)
  • 飛行を切り上げる機体側の兆候(傾き、速度差、残量の減り方)
  • 風下側へ出る場合の折り返し残量
  • 再開の条件(一度中止したら、何をもって再開とするか)
  • 依頼主への連絡と予備日の扱い

よくある誤解の整理

よくある理解 実際のところ
耐風12m/sなら12m/sまで飛ばしてよい 測定条件つきの値。注記に「離着陸時」とある機種もある
2025年の改正で5m/sの制限はなくなった 原則は5m/sのまま。取扱説明書等で確認している場合の例外が付いた
ただし書きは催し場所上空にも使える 催し場所上空の規定にただし書きはない
予報が5m/sなら機体が受けるのも5m/s 平均風速。瞬間は1.5倍程度、不安定なら3倍以上のことも
足元の風速計の値で判断できる 測れるのは自分の高さの風。上空は一般に強い
風が強くなったら姿勢の乱れで気づける 多くの場合、電力消費の増加のほうが先に現れる
風速の条件は機体の性能で決まる 許可・承認の条件、公表値、自分の余力の最小値で決まる

記録に残すところまでが判断

飛行日誌には飛行の年月日や経路のほか、不具合や措置を記録します。ここにその日の風の状況と、自分がどう判断したかを書き添えておくことをすすめています。

理由は二つあります。ひとつは、次に同じ場所で飛ばすときの資料になること。同じ現場・同じ季節の記録が数回分たまると、予報値と実際の落差に個人的な傾向が見えてきます。これは他人の記事からは手に入りません。

もうひとつは、中止した判断を残しておくことです。飛ばさなかった日の記録は、飛ばした日の記録と同じくらい価値があります。依頼主に説明するときも、蓄積した記録があるかないかで説得力が変わります。

まとめ

この記事の要点をまとめます。

  • 標準マニュアル(令和7年12月26日版)の原則は「風速5m/s以上では飛行させない」。ただし取扱説明書等で確認している場合の例外が付いた
  • 「取扱説明書等にて確認している」の中身は条文からは読み取れない。判断が分かれる案件では申請先に確認する
  • 催し場所上空の規定にただし書きはない。加えて「飛行速度と風速の和が7m/s」の条件も同時に効く
  • 耐風性能は測定条件つきの値。注記に「離着陸時」とある機種もあるので、数字だけでなく注記まで読む
  • 機体が風に対抗できる力には最大ピッチ角という天井がある。限界近くでは飛行時間の公表値は当てにならない
  • 予報の風速は10分間平均。瞬間風速は1.5倍程度、大気が不安定なら3倍以上になることがある
  • 風は上空ほど強く、地表の粗度が大きいほど高さによる差が開く。足元の実測値だけで判断しない
  • 飛行中は往復の対地速度差、傾き、揺れ幅、バッテリーの減り方で風を測る
  • 守るべき線は、許可・承認の条件/機体の公表値/自分の余力のうち一番低いもの

耐風性能の数字は、機体が壊れずに姿勢を保てる上限の目安であって、あなたがその日その現場で安全に作業できる上限ではありません。前者はメーカーが決めますが、後者を決められるのは現場にいる機長だけです。

ご注意本記事は、国土交通省航空局 標準マニュアル①②(令和7年12月26日版・2026年8月4日に国土交通省サイトで原文を確認)、無人航空機の飛行の安全に関する教則(第5版・公布 令和8年7月7日/適用 令和8年7月14日)、気象庁の公表資料(予報用語「風の強さと吹き方」、よくお寄せいただくご質問「風について」)、およびDJI公式仕様ページの記載に基づく解説です。標準マニュアルと教則からの引用は原文で確認しています。耐風性能の測定条件については、メーカーが公表していないため確認できていません。気象・電波の状況や機体の状態は現場ごとに異なり、本記事の内容は特定の飛行の安全を保証するものではありません。最終的な飛行可否の判断は機長の責任において行ってください。
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登録講習機関講師 フライトデスク 監修

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