もし目の前で機体が落ちて、人がいたら。最初に何をしますか。
教則の2.3は短い節ですが、やることの順番が決まっています。 そして「事故」と「重大インシデント」の違いなど、教則には書かれていない大事な線引きもあります。今回はそこまで含めて整理します。
教則第5版 2.3 事故が起きた時の対応(全文)
出典:国土交通省「無人航空機の飛行の安全に関する教則(第5版)」(令和8年7月7日公布・令和8年7月14日適用)。読みやすさのためレイアウトを再構成し、原本で混在している英数字の全角・半角を半角にそろえています。本記事は国土交通省の公式なものではありません。
事故を起こしたら
- ① 慌てず落ち着いて、ケガの有無や、ケガの程度など、人の安全確認を第一に行う。
- ② 機体が墜落した場合には、地上又は水上における交通への支障やバッテリーの発火等により周囲に危険を及ぼすことがないよう、機体が通電している場合は電源を切るなど速やかに措置を講ずる。プロペラがまだ回転している場合は不用意に機体に接近せず十分に注意する。
- ③ 事故の原因究明、再発防止のために飛行ログ等の記録を残す。
通報先
無人航空機の飛行による人の死傷、第三者の物件の損傷、飛行時における機体の紛失又は航空機との衝突若しくは接近事案が発生した場合には、事故の内容に応じ、直ちに警察署、消防署、その他必要な機関等へ連絡するとともに、国土交通大臣に報告する。
保険
無人航空機の保険は、車の自動車損害賠償責任保険(自賠責)のような強制保険はなく、すべて任意保険であるが、万一の場合の金銭的負担が大きいので、保険に加入しておくとよい。無人航空機の保険には、機体に対する保険、賠償責任保険などいろいろな種類や組合せがあるので自機の使用実態に即した保険に加入することが推奨される。なお、カテゴリーⅡ飛行のうち一部の飛行(総重量 25kg 以上の無人航空機を飛行させる場合又は 3.1.2(2)4)c.レベル 3.5 飛行の場合)にあたっては、不測の事態が発生した場合に十分な補償が可能な第三者賠償責任保険に加入していることが求められる。
ここからは私の解説です
順番が決まっています
2.3は短い節ですが、順番そのものが問われます。 教則が示す順は、次のとおりです。
- 人の安全確認を第一に行う(慌てず落ち着いて、ケガの有無や程度を確認)
- 危険を防ぐ措置(通電していれば電源を切る。プロペラが回っていれば不用意に近づかない)
- 記録を残す(原因究明と再発防止のために飛行ログ等)
機体の回収や写真撮影が先に来る選択肢は、この順番と合いません。人・危険の除去・記録、この並びで覚えてください。
「プロペラがまだ回転している場合は不用意に機体に接近せず」という一文も、実際に読み飛ばされがちです。墜落した機体に駆け寄るのは自然な反応ですが、教則はそこを止めています。
通報先は「関係機関」と「国土交通大臣」の2本立て
教則は、人の死傷・第三者の物件の損傷・機体の紛失・航空機との衝突または接近が起きた場合には、事故の内容に応じて直ちに警察署、消防署その他必要な機関へ連絡するとともに、国土交通大臣に報告するとしています。
片方だけではありません。現場の通報(警察・消防)と、制度としての報告(国土交通大臣)は別物で、両方必要です。
「事故」と「重大インシデント」は違う(教則には区分が書かれていない)
2.3は「事故」という言葉を使っていますが、航空法上は「事故」と「重大インシデント」が区別されています。 その区分は教則には書かれていません。国土交通省航空局の資料「事故・重大インシデントについて」に、次のように整理されています。
| 区分 | 該当する事態 |
|---|---|
| 事故 | 無人航空機による人の死傷(重傷以上の場合)/第三者の所有する物件の損壊/航空機との衝突または接触 |
| 重大インシデント | 無人航空機による人の負傷(軽傷の場合)/ 無人航空機の制御が不能となった事態/ 無人航空機が飛行中に発火した事態/ 航空機との衝突または接触のおそれがあったと認めた時 |
人のけがは重傷以上なら事故、軽傷なら重大インシデント。航空機とは当たれば事故、おそれなら重大インシデント。この2組の対応を押さえておくと、区分で迷わなくなります。
報告はドローン情報基盤システム(DIPS 2.0)の事故等報告機能から行います。
「制御不能」は、思っているより狭い
同じ資料には、重大インシデントとして報告されたが「制御が不能となった事態」には該当しなかった事例が挙げられています。ここが実務ではいちばん誤解されるところです。
- 操縦ミス(飛行経路の設定ミス、目測誤り等)による墜落は、制御不能ではない
- 自動帰還機能が正常に動いたうえで、帰還経路や高度を飛行前に確認していなかったために樹木へ衝突した場合も、制御不能ではない
- 飛行前点検が不十分だったことが原因と明確な場合も、制御不能ではない
つまり「墜落した=制御不能」ではありません。 機体が言うことを聞かなくなったのか、それとも自分の準備や操作が原因だったのか——ここが分かれ目です。
ただし資料は、こう注意も付けています。人の負傷、飛行中の発火、航空機との衝突・接触のおそれが生じた場合は、制御不能に該当しなくても重大インシデントに分類されるので、報告が必要です。
実際にどれくらい報告されているか
同資料によれば、令和5年度に報告されたのは事故65件・重大インシデント21件・非該当事案361件、合計447件です(令和5年度末時点)。令和4年度は、12月5日の航空法改正以降で合計75件でした。
非該当事案が361件と圧倒的に多いことに注目してください。報告されたけれど事故にも重大インシデントにも当たらなかった、という事案が大半です。裏を返せば、迷ったら報告するという運用が定着しつつあるということでもあります。
保険は「強制ではない」が、義務づけられる場面がある
教則は、無人航空機の保険について自動車の自賠責のような強制保険はなく、すべて任意保険であるとはっきり書いています。「加入が義務化された」という選択肢は誤りです。
ただし第5版で、ここに但し書きが加わりました。カテゴリーⅡ飛行のうち総重量25kg以上の無人航空機を飛行させる場合、またはレベル3.5飛行の場合は、不測の事態に十分な補償が可能な第三者賠償責任保険への加入が求められるとされています。
第4版では「レベル3.5飛行を参照」とだけ書かれていた部分です。第4版で勉強された方は、ここを上書きしておいてください。
試験対策としての読みどころ
- 事故時の順番は①人の安全確認 ②危険を防ぐ措置 ③記録
- 通報は警察・消防等と国土交通大臣の両方
- けがは重傷以上=事故/軽傷=重大インシデント
- 航空機とは衝突・接触=事故/おそれ=重大インシデント
- 保険はすべて任意。ただし25kg以上またはレベル3.5飛行では第三者賠償責任保険が求められる
おわりに
2.3は教則でいちばん短い節のひとつですが、実際に事故が起きたときにその場で思い出せるかどうかが問われる内容です。順番だけでも、頭に入れておいてください。
次回からは第3章に入ります。教則でいちばん量の多い「3.1 航空法全般」を、6回に分けて読んでいきます。
出典
- 国土交通省「無人航空機の飛行の安全に関する教則(第5版)」令和8年7月7日公布・令和8年7月14日適用
- 国土交通省航空局無人航空機安全課「事故・重大インシデントについて」(区分・非該当事例・令和5年度末時点の件数)
- 国土交通省「無人航空機の事故等の報告及び負傷者救護義務」
本記事の内容は2026年8月時点のものです。制度は改正されることがありますので、最新の情報は必ず国土交通省の公式サイトでご確認ください。
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