令和8年(2026年)6月5日、一等無人航空機操縦士の実地試験実施細則が改正・施行されました。この実地試験の改正は、当日の合否にも直結する重要な内容です。本記事は、登録講習機関の講師・修了審査員の視点から、改正のポイントをわかりやすく整理したものです。受験を控える方はもちろん、指導にあたる講師・審査員の方もご確認ください。
対象は、一等無人航空機操縦士(基本/目視内限定変更・昼間限定変更・25kg未満限定変更)です。以下、章ごとに「改正前 → 改正後」と実務上の注意点をまとめます。
実地試験 改正の全体像
まず、今回の実地試験の改正は大きく3つの領域に分かれます。すなわち、I章(総則)、II章(減点適用基準)、そしてIII〜VII章(各実技試験・準用)です。
- I章 総則:補助員の報告先変更、風速基準の厳格化、受験者補助員制度の新設、当日完了の規定、保護具着用の義務化。
- II章 減点適用基準:飛行前後点検の減点新設・集約、復帰基準の数値化、「高度のズレ」の新設、8の字・円周飛行の不合格基準明確化。
- III〜VII章:緊急着陸の2段階化、目視外飛行での着陸明確化、夜間机上試験の出題変更、表構成の整理、問題の標準化。
I章 総則|試験運営ルールの変更
補助員の報告先が「試験員のみ」に【変更】
改正前は、補助員が「試験員と受験者」の両方へ区画進入を知らせていました。しかし改正後は、「試験員だけ」に知らせます。つまり受験者のヒント依存をなくす狙いです。そのため、受験者は自分で機体位置を把握する必要があります。
風速基準が「以下」→「未満」に【厳格化】
改正前は、基準値「以下」であれば実施できました。一方で改正後は、基準値「未満」でないと実施できません。たとえば基準5m/sの場合、改正前は5.0m/sでもOKでした。しかし改正後は、4.9m/s以下でなければNGです。
受験者補助員の制度・資格要件【新設】
改正前は、補助員に関する明確な規定がありませんでした。改正後は、「受験者補助員」が正式に定義されています。緊急時には、試験員の判断で受験者に代わって操縦できます。配置するのは受験者自身です。
さらに資格要件も明文化されました。具体的には、直近2年間で「6か月以上の飛行経験」かつ「50時間以上の飛行実績」が必要です。つまり、緊急時に実際に機体を扱える人材であることが求められます。
I章 総則|安全対策の強化(新設規定)
試験はその日のうちに完了【新設】
改正前は、日跨ぎについて明文規定がありませんでした。改正後は、やむを得ない事由を除き、各試験科目をその日に完了させます。たとえば「口述は来週」という運用はできません。なぜなら、別日への持ち越しは公平性を保てないためです。
保護具着用の義務化【新設】
改正前は、着用義務の明文規定がありませんでした。改正後は、機体作動を伴う実技・口述で全員が保護具を着用します。対象はヘルメットや保護メガネ等です。しかも受験者だけでなく、試験員・補助員も対象です。したがって、全員分の準備が必要になります。
II章 減点適用基準|採点ルールの明確化
飛行前・飛行後の減点基準を集約【新設】
改正前は、減点基準が各章(III〜VI)に分散していました。改正後は、II章に集約されています。なお、複数に該当する場合は、最も高い1つだけを適用します。
復帰基準が「速やか」→「概ね2秒以内」【変更】
改正前の「速やかに」という表現は曖昧でした。そこで改正後は、「概ね2秒以内」と数値で明確化されました。たとえば2秒以内なら、初回のみ減点はありません。一方で3秒では5点減点です。さらに2回目以降は猶予がありません。
「高度のズレ」が新たな減点項目に【新設】
改正前は、高度逸脱に関する明示的な規定がありませんでした。改正後は、指示と明らかに異なる高度で飛行させると5点減点です。特にスクエア飛行の高度変化指示(1.5m→3.5m等)には注意してください。
8の字・円周飛行の不合格基準を明確化【変更】
改正前は「飛行経路中心より手前で周回」という感覚的な表現でした。改正後は「設定された円形経路の中心を含まず周回」が不合格です。つまり、中心点を含まない小さな円は不合格になります。一方で、中心を通過していれば、多少のルートずれは減点にとどまります。
III〜VI章|緊急着陸が「2段階手順」に【最重要】
今回の改正で最も注意すべき点です。緊急着陸の手順が、1段階から2段階に変わりました(基本・夜間・25kg限定変更で共通)。
改正前:「緊急着陸してください」という1回の指示で、最短ルートで一気に着陸していました。
改正後:まず試験員が「緊急事態発生!」と宣言します。次に受験者は、その場でホバリングします。続いて試験員が「緊急着陸してください」と指示します。そして高度を維持し、最短経路で移動して着陸します。
このように、「宣言 → ホバリング → 指示 → 移動・着陸」という流れに変わりました。操作順序の確認が必須です。
V〜VII章|目視外飛行・書類整理・準用規定
目視外飛行で「機体を見ない状態で着陸」を明記【変更】
改正前は「移動完了後、着陸を行う」とされ、目視禁止が不明確でした。改正後は「機体を見ない状態で着陸を行う」と明記されています。したがって、着陸の瞬間も振り返って機体を見てはいけません。見た場合は不合格です。
夜間限定 机上試験の出題内容が変更【変更】
改正前は「立入管理措置を講じない条件での夜間飛行計画」を問いました。改正後は「昼間・目視内、立入管理措置なし」の模擬計画から、夜間との違いを問います。つまり、昼間との違いの理解を問う構成です。テキストと問題の再確認が必要です。
表が「減点基準」→「制限時間」列に整理【変更】
改正前は、III〜VI章の表に「実施要領」と「減点適用基準」の列がありました。改正後は、各章が「実施要領」と「制限時間」のみになります。なぜなら、減点基準はII章に集約されたためです。こうして役割分担が明確になりました。
問題は国・指定試験機関提供のものを使用【新設】
改正前は明文規定がありませんでした。改正後は、机上審査・口述審査の問題に、国または指定試験機関が提供するものを使用します。そのため、独自作成の問題は使用できません。結果として、全国的な公平性が向上しました。
改正後の主な減点一覧
| 場面 | 減点細目 | 減点 | 主な適用事項 |
|---|---|---|---|
| 飛行前 口述 | 点検漏れ | 10点 | 必要な点検を1つでも行わなかったとき |
| 飛行前 口述 | 日常点検記録の記載漏れ・誤り | 5点 | 必要な記載項目を1つでも記載しなかった・誤りがあったとき |
| 飛行前 口述 | 日常点検記録の軽微な誤り | 1点 | 記入方法に従わず、日時・場所等を誤記したとき |
| 実技試験 | 飛行経路逸脱 | 5点 | 機体の半分以上を減点区画に進入(各区間で初回2秒以内復帰は除外) |
| 実技試験 | 指示と異なる飛行 | 5点 | 指示と異なる手順・方向・高度で飛行(高度逸脱が今回新設) |
| 飛行後 口述 | 飛行記録の記載漏れ・誤り | 10点 | 飛行日誌の必要項目の記載漏れ・飛行時間の計算誤り |
| 飛行後 口述 | 飛行後の点検漏れ | 5点 | 飛行後の状態確認に必要な点検を1つでも行わなかったとき |
| 全場面 共通 | 危険な飛行・墜落・不合格区画進入・制限時間超過 など | 不合格 | 該当した時点で試験を中止し、受験者を不合格とする |
受験・指導前の対応チェックリスト
- 補助員が要件(6か月以上・50時間以上)を満たす人材か
- 受験者・試験員・補助員の全員がヘルメット・保護メガネを着用しているか
- 試験スケジュールを「その日に完了」できるか
- 机上・口述審査の問題が、国または指定試験機関提供の最新のものか
- 緊急着陸の「2段階手順」を全員が理解しているか
まとめ:実地試験 改正の要点
今回の実地試験の改正は、安全と公平性の強化が一貫したテーマです。特に、緊急着陸の2段階化と風速基準の厳格化は、当日の合否に直結します。受験者は手順と数値基準を、講師・審査員は採点の統一運用を、それぞれ早めに確認しておきましょう。
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本記事は、一等無人航空機操縦士(基本/目視内・昼間・25kg未満の各限定変更)で登録講習機関講師・修了審査員のフライトデスクが監修しています。内容は施行時点の情報に基づくものであり、実際の運用にあたっては必ず国土交通省 無人航空機の操縦ライセンス制度(公式)の最新情報をご確認ください。
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