技能証明を取ったのに、夜は飛ばせない。目視の外にも出せない。25kgの機体は載せられない。
これは不具合ではなく、制度がそう作られています。技能証明には最初から「限定」が付いていて、外すには別の手続きが要ります。それが限定変更です。
ところが、この手続きは講習・試験・申請の3者にまたがっていて、どこで何を払い、何を待つのかが分かりにくい。講習を修了した時点で終わったと思い込み、技能証明書が古いまま特定飛行に出てしまう方もいます。
この記事では、限定変更で何が変えられるのかという整理から、2つのルートの選び方、実地講習の時間数、実地試験の決まり、身体検査の落とし穴、費用の全体像、そしてDIPS2.0の申請7ステップまでを、一次情報だけを根拠にして一本でたどれるようにまとめます。
限定変更とは何か——技能証明に最初から付いている限定
技能証明は、合格した試験の範囲でだけ特定飛行を認める仕組みになっています。指定試験機関である日本海事協会は、限定される事項を次のように整理しています。
| 限定の区分 | 内容 |
|---|---|
| 機体の種類 | 回転翼航空機(マルチローター)/回転翼航空機(ヘリコプター)/飛行機 |
| 機体の重量 | 機体の種類それぞれに対して最大離陸重量25kg未満 |
| 飛行の方法 | 目視内飛行/昼間飛行 |
つまり、何も限定を外していない技能証明は「25kg未満のマルチローターを、昼間に、目視内で飛ばす」範囲のものです。ここから外へ出るために行うのが限定変更です。
国土交通省の無人航空機レベル4飛行ポータルサイトは、限定変更で可能になることを次のように説明しています。
限定変更を行うことで、操縦する無人航空機(ヘリコプター/マルチローター/飛行機)の追加、最大離陸重量の拡大(25kg以上)、昼間飛行に加えて夜間飛行、目視内飛行に加えて目視外飛行が可能になります
言い方に注意してください。夜間飛行の限定変更は「昼間に加えて夜間」であり、昼間が飛ばせなくなるわけではありません。限定変更は範囲を広げる手続きで、置き換える手続きではありません。
どこまでが限定変更で、どこからが新規申請か
ここは実務で最も取り違えられる箇所です。国土交通省の「無人航空機操縦者技能証明に関する事務処理要領」は、申請の種類をはっきり分けています。
限定変更申請にあたるのは、次の2つです。
- 現に有効な技能証明(一等または二等)を持つ人が、その資格区分の中で機体の種類または飛行方法の限定を変更する場合
- 現に有効な一等技能証明を持つ人が、二等技能証明に係る機体の種類または飛行方法の限定を変更する場合
2つめが分かりにくいのですが、要領は理由まで書いています。一等技能証明は同限定の二等技能証明を包含するため、一等を持っている人が二等側の限定に手を入れる手続きは、新規申請ではなく限定変更に含める、という整理です。
一方、二等技能証明を持っている人が一等技能証明を取る手続きは、限定変更ではなく新規申請です。要領の新規申請の項に、そのまま書かれています。ここを取り違えるとDIPS2.0で押すボタンから間違えることになります。
ルートは2つ——登録講習機関か、指定試験機関か
限定変更で必要になる実地の技能の確認には、2つの道があります。
| ルート | やること | 費用の払い先 |
|---|---|---|
| 登録講習機関 | 限定変更の実地講習を受け、修了審査に合格する。修了審査に合格すると、その内容に応じた実地試験が免除される | 登録講習機関(金額は機関ごと) |
| 指定試験機関 | 日本海事協会の限定変更に係る実地試験を直接受験して合格する | 日本海事協会(金額は公表されている) |
どちらを選んでも、そのあとに指定試験機関から技能証明合格証明書を受け取り、DIPS2.0で限定変更申請を行う、という流れは共通です。国土交通省も「必ずしも登録講習機関の無人航空機講習を受講する必要はありませんが、修了した無人航空機講習の内容に応じた実地試験が免除となります」と案内しています。
登録講習機関ルートは、練習の時間が確保できることと、試験機関の日程に振り回されにくいことが利点です。指定試験機関ルートは、機体・試験場・立会いの体制を自前で用意できる方にとっては費用を抑えられる道になります。実技試験は、25kg未満のマルチローターを除いて、機体も試験場も受験者が準備することになっている点に注意してください。
登録講習機関ルート——実地講習の時間数
限定変更の講習時間は、国土交通省の「登録講習機関の教育の内容の基準等を定める告示」の別表第一に定められています。数字はここが根拠で、各機関が勝手に決めているものではありません。
| 限定変更の種類 | 一等(初学者/経験者) | 二等(初学者/経験者) |
|---|---|---|
| 目視内飛行の限定変更(目視外へ) | 7時間以上/5時間以上 | 2時間以上/1時間以上 |
| 昼間飛行の限定変更(夜間へ) | 1時間以上/1時間以上 | 1時間以上/1時間以上 |
| 最大離陸重量25kg未満の限定変更 | 2時間以上/1時間以上 | 2時間以上/1時間以上 |
「経験者」とは、有効な民間技能認証などを持つ方向けの講習区分です。すでに技能証明を持っている方が限定変更に進む場合は、通常この経験者向けの時間数が適用されます。
ここで押さえておきたいのは、告示の別表第一には限定変更の学科講習という区分が存在しないことです。定められているのは実地講習の時間だけで、限定変更は実技中心の講習になります。この点は、学科講習の時間まで求められる新規取得の課程と大きく違います。
修了審査と実地試験——同じ基準で行われる
登録講習機関の修了審査は、指定試験機関の実地試験とは別物のように見えますが、根拠は同じです。「無人航空機操縦士実地試験実施基準」の第7章が、実地試験の規定を修了審査に準用すると定めており、「試験員」を「修了審査員」に、「実地試験」を「修了審査」に読み替えることになっています。
この実施基準は、令和7年12月5日に改正され、令和8年6月5日から適用されています。限定変更を今から受ける方は、改正後の内容が適用されます。
実施基準のうち、限定変更を受ける人が知っておくべき規定を抜き出します。
- 学科試験の合格が先。「受験者は、実地試験に先立ち、学科試験に合格していなければならない」と明記されています。
- すでに技能証明を持っていれば「基本」は不要。基本の実地試験が先に必要になるのは、その資格区分・機体の種類の技能証明を持っていない受験者です。
- 目視外は本当に目視できない状態で行う。目視内飛行の限定変更に係る実技試験は、細則で目視内での実施が認められる場合を除き、受験者が機体を目視できない状態で実施されます。
- 飛行機の25kg解除は目視外も問われる。飛行機の最大離陸重量25kg未満の限定変更に係る実地試験は、25kg以上の操縦能力に加えて目視外飛行の操縦能力を問うものとされ、目視内飛行の限定変更と同時に実施しているものとして扱うことができます。
- ヘリコプターは基本を挟まずに25kg解除ができる。ヘリコプターについての限定をする技能証明に係る実地試験では、基本を行わずに25kg未満の限定変更を行うことができ、この場合は同時実施として扱われます。
- 同じ日にまとめて受けられる。基本と各限定変更は同一日に実施できますが、基本が不合格の場合は限定変更も不合格になります。
身体検査——25kgの解除だけ扱いが違う
限定変更でも、技能証明合格証明書を出してもらうためには身体検査の合格証明番号が必要です。そして、ここに一つだけ例外があります。
国土交通省のよくある質問は、こう書いています。
一等技能証明の資格に係る25kg未満の限定解除以外については、条件の付いていない自動車運転免許証の提示をもって身体検査の代替とすることが可能です
裏を返すと、一等の25kg限定解除だけは、運転免許証では代替できないということです。指定試験機関の案内でも、一等25kg以上は「無人航空機操縦者身体検査証明書」に加えて「別紙」の提出が必要とされ、申請前6か月以内に受けた検査の結果を、指定の様式で医師に記載してもらうことになっています。
さらに同機関は、この検査について「一部航空医学に関する専門的な知識を必要とすることから、すべての医師又は医療機関において対応可能なものではありません」と注意を添えています。国土交通省は身体検査に対応する機関の一覧を公表していますが、受検できることを保証するものではないとしており、事前に医療機関へ問い合わせるよう求めています。
講習を担当していると、25kgの限定解除を検討している方に身体検査の話を最後に持ってくると、たいてい驚かれます。講習の予約より先に、まず受けられる医療機関を押さえるほうが安全です。
費用の全体像
限定変更にかかるお金は、払い先が3つに分かれます。
| 払い先 | 内容 | 金額 |
|---|---|---|
| 国土交通省 | 限定変更申請の交付手数料(一等・二等とも同額) | 2,850円 |
| 国土交通省 | 登録免許税 | 限定変更では不要 |
| 指定試験機関 | 実地試験(限定変更)/マルチローター | 一等20,800円・二等19,800円 |
| 指定試験機関 | 実地試験(限定変更)/ヘリコプター | 一等21,200円・二等20,300円 |
| 指定試験機関 | 実地試験(限定変更)/飛行機 | 一等22,400円・二等20,900円 |
| 指定試験機関 | 身体検査 | 書類5,200円・会場19,900円 |
| 登録講習機関 | 限定変更の講習受講料 | 機関ごとに異なる |
登録免許税について補足します。DIPS2.0の操作マニュアルに載っている一覧では、登録免許税3,000円が必要なのは一等の新規申請のみで、限定変更申請・更新申請・再交付申請はいずれも一等・二等とも不要です。一等の限定変更なのに登録免許税の納付通知が来ない、と心配される方がいますが、来ないのが正しい状態です。
登録講習機関の講習を修了して実地試験の免除を受ける場合は、上の表のうち実地試験の手数料が発生しません。その代わりに講習受講料がかかります。どちらが安く上がるかは、限定の種類と手持ちの機材によって変わります。
DIPS2.0での限定変更申請——7つのステップ
講習の修了または実地試験の合格が済み、指定試験機関から技能証明合格証明書を受け取ったら、DIPS2.0で申請します。以下は国土交通省の操作マニュアル「02.技能証明申請の限定変更申請方法」(Ver2026/6/22)に沿った手順です。
先に手元に用意するものを確認しておきます。
- 技能証明合格証明書番号と、そのファイル(pdf・jpg・pngのいずれか、2MB以内)
- 講習修了証明書の情報とファイル(登録講習機関ルートの場合)
- 申請する資格種別・機体の種類・限定種別
- 拒否に関する条件および欠格事由の情報
ここから操作です。
- DIPS2.0にログインする。ログインIDは英字3文字+数字6文字の形式です。
- 技能証明メニューから「技能証明書の限定変更」を押す。トップページを下へスクロールし、「航空法に基づく無人航空機関係手続の一覧」の中にある機体認証・技能証明の取得手続から入ります。
- 申請者情報を確認する。技能証明申請者番号に登録されている情報が表示されます。直したい場合は「技能証明申請者番号の登録情報確認/変更」から先に直します。
- 合格者情報を入力する。技能証明合格証明書番号を確認し、技能証明合格証明書のファイルをアップロードします。講習修了証明書がある場合はそれもアップロードします。この画面では、今の限定内容と変更後の限定内容が並べて表示され、今回変更する項目が赤字になります。番号が表示されないときは指定試験機関に問い合わせます。
- その他情報を入力する。拒否に関する条件と欠格事由の情報を選択し、補足があれば備考欄に書きます。
- 申請情報を確認して「限定変更申請」を押す。誤りがあれば各情報の下の「修正」から戻ります。
- 到達確認をする。登録したメールアドレスに確認メールが届くので、宛先が本人であることを確かめてからURLを押します。認証が終わったら申請画面に戻り、「申請完了」が表示されていることを確認します。
申請したあと——手数料を払って技能証明書を受け取るまで
申請そのものは、手続き全体の1番目にすぎません。マニュアルは、限定変更申請から完了までを4つの手順で示しています。
- 限定変更申請を実施する
- 手数料を支払う
- 「技能証明書発行通知」メールを受領する
- 技能証明書を郵送で受領する
手数料の納付番号と納付用URLは、航空局での確認が終わったあとにメールで届きます。届く前に払おうとしても払えません。納付方法は、事務処理要領によりクレジットカードによる納付と、Pay-easy(ペイジー)による納付(銀行ATMまたはインターネットバンキング)の2つが定められています。
申請の状況は、DIPS2.0の「申請状況確認/取下げ/支払い」でいつでも確認できます。表示される状態の意味は次のとおりです。
| 申請状況 | 意味 |
|---|---|
| メール到達確認中 | 申請時のメール到達確認待ち |
| 手続き内容確認待ち | 航空局にて審査中 |
| 修正対応中 | 申請不備による修正対応中 |
| 手数料納付中 | 申請者による手数料納付中 |
| 手続待ち | 航空局にて決裁手続き中(この状態になると申請の取下げはできない) |
| 手続完了 | 手続きが完了し、航空局にて技能証明書の印刷・発送 |
| 取消済 | 「手続中止」「修正対応中」のまま一定期間が経過したため取り消し |
技能証明書は1人につき1枚です。国土交通省のよくある質問は「一等と二等の両方の技能証明を取得した場合は、両方の情報(限定項目等)が記載された1枚の技能証明書(カード)が発行されます」としています。限定変更をすると、新しい限定が書かれたカードが届き、古いカードは使わなくなります。
よくある誤解の整理
| よくある理解 | 実際 | 根拠 |
|---|---|---|
| 二等を持っていて一等を取るのも限定変更 | 新規申請にあたる | 技能証明に関する事務処理要領 2(1) |
| 限定変更にも学科講習がある | 告示に限定変更の学科講習の区分はなく、実地講習のみが定められている | 登録講習機関の教育の内容の基準等を定める告示 別表第一 |
| 一等の限定変更には登録免許税がかかる | かからない。登録免許税が必要なのは一等の新規申請のみ | DIPS2.0操作マニュアル 06 |
| 修了審査に合格すれば限定が外れる | DIPS2.0で限定変更申請をして新しい技能証明書を受け取るまで外れない | DIPS2.0操作マニュアル 02 |
| 25kgの解除も運転免許証で身体検査に代えられる | 一等の25kg限定解除だけは代替できず、医師の診断書が要る | 国土交通省 よくある質問 |
| 夜間・目視外を解除すれば申請なしで飛ばせる | 技能証明の話にすぎない。実際に許可・承認が不要になるかは機体認証と立入管理措置の組み合わせで決まる | 技能証明・機体認証の各制度 |
限定変更を検討するときの順番
最後に、実際に動くときの順番をまとめます。
- 手元の技能証明書を見て、今の限定を確認する。外したい限定がどれなのかをはっきりさせます。
- 有効期限を確認する。更新の時期が近いなら、限定変更と更新のどちらを先に進めるかを決めます。
- 25kgを外すなら、身体検査から手を付ける。一等の25kg解除は医師の診断書が要るうえ、対応できる医療機関が限られます。
- 学科試験の合格証明番号の残り期間を見る。有効期間は2年です。期限が近い、あるいは切れている場合の扱いは、指定試験機関に確認してください。
- ルートを決める。登録講習機関で講習を受けるか、指定試験機関で実地試験を受けるかを選びます。
- 講習機関を変えるなら、DIPS2.0の登録講習機関情報を先に直す。
- 合格・修了後にDIPS2.0で限定変更申請を行い、2,850円を納付する。
- 新しい技能証明書が届いてから、その限定の飛行を始める。
まとめ
限定変更は、技能証明を取り直す手続きではありません。今持っている技能証明の範囲を横に広げる手続きです。だから学科講習の区分はなく、実地が中心で、登録免許税もかかりません。費用は国への2,850円と、講習または実地試験の費用、そして身体検査の費用の合計です。
一方で、25kgの解除だけは身体検査の扱いが違い、飛行機の25kg解除は目視外の能力まで問われます。夜間と目視外は、手続きは軽くても現場のリスクは重い飛行方法です。限定が外れることと、安全に飛ばせることは別の話だという前提は、外さないでください。
そして何より、修了審査に合格した日ではなく、新しい技能証明書が届いた日からです。講習を担当していると、修了証明書を受け取った時点で限定が外れたと思って帰られる方がときどきいます。最後のひと手間であるDIPS2.0の申請まで、忘れずに進めてください。
限定変更は技能証明を持っている方の手続きです。まだ取得前で、最初の交付申請から確認したい方は技能証明の交付申請ガイドをご覧ください。有効期限が近い方は技能証明の更新2026を、うっかり切らしてしまった方は失効・再取得の手続きへどうぞ。
限定を外しても、実際に許可・承認が不要になるかどうかは別の判断です。その線引きは飛行カテゴリーⅠ・Ⅱ・Ⅲで整理していて、機体側の要件は機体認証ガイド、申請が必要な場合の手順はDIPS2.0 飛行許可・承認申請ガイドにまとめています。
一等と二等でどこまでできるのかを比べたい方は一等でできることと二等でできることを、DIPS2.0の操作でつまずいたときはDIPS2.0で困った集25選をどうぞ。
限定変更でも、実地の前提として学科試験の合格が求められます。教則第5版の改正点を無料で確かめたい方は教則第5版チェック20問から始めてみてください。
登録講習機関講師 フライトデスク 監修
技能証明の限定、夜間飛行と目視外飛行の注意点、25kg以上の大型機の運航リスクは、一等・二等とも繰り返し問われる範囲です。まず無料分で今の実力を測り、足りない科目を本編で埋めるのが最短です。いずれも全問解説つき・買い切りです。
▶ 一等:無料演習20問/無料模試70問/演習261問(1,280円)/演習+模試10セット バンドル(1,980円)
▶ 二等:無料演習20問/無料模試50問/演習250問(980円)/演習+模試5セット バンドル(1,480円)



コメント