「なぜドローンは飛ぶのか」。今回はその話です。そしてこの節には計算式が出てきます——ただし、その多くは〔一等〕のマークが付いた、二等の範囲外です。
二等を目指す方がここを開くと、いきなり𝜌や𝜔といった記号が並んでいて、手が止まると思います。私も最初はそうでした。ですので今回は、まずどこが二等の範囲で、どこが範囲外なのかをはっきり分けます。そのうえで、〔一等〕の計算のほうも数字の意味だけ——「重さが2倍になると何が2倍で、何が1.4倍なのか」——を持ち帰れる形にしてみます。じつは最後の式は、二等の実務で必ず出てくる立入管理措置の考え方そのものです。
教則第5版 4.3 飛行原理と飛行性能(全文)
出典:国土交通省「無人航空機の飛行の安全に関する教則(第5版)」(令和8年7月7日公布・令和8年7月14日適用)。読みやすさのためレイアウトを再構成し、原本で混在している英数字の全角・半角を半角にそろえています。本記事は国土交通省の公式なものではありません。
無人航空機の飛行原理
無人航空機が飛行するためには、重力に対抗する上向きの力を必要とする。飛行機では主翼に発生する揚力で重力に対抗する。一方、飛行機には飛行速度と逆向きに空気抵抗である抗力が働くが、それに抗するために回転翼であるプロペラ等による推力が必要である。一方、回転翼航空機(ヘリコプター)及び回転翼航空機(マルチローター)においては、重力に対抗する上向きの力はプロペラ(ローター)による推力によって生み出される。機体が運動すると、機体には飛行機と同様に抗力も作用するが、推力の大きさを重力以上にし、機体姿勢を変化させてこれに抗する。これら機体に働く力が釣り合ったとき、機体は速度と姿勢を一定とする定常飛行(釣り合い飛行)を行う。
飛行中の航空機に流入する空気の機体に対する角度を迎角と横滑り角で表す。機体の前後・上下を含む面に空気流入の向きを投影したときに、前後軸とのなす角を迎角という。下方から空気が流入するときに迎角は正である。また、機体の前後・上下を含む面と空気流入の向きの面のなす角を横滑り角という。機体右側から空気流入するときに横滑り角は正である。機体に作用する揚力と抗力などの空気力、モーメントは流入空気の速さとともに、迎角、横滑り角で決まる。
航空機の姿勢はピッチ、ロール、ヨーとよばれる角度で表現する。機体の機首を上げ下げする回転がピッチ、機体を左右に傾ける回転がロール、機体を上から見たときの機首の左右の回転がヨーである。水平状態からのそれぞれの角度をピッチ角、ロール角(バンク角)、ヨー角(方位角)とよび、それらの角速度をピッチ角速度(ピッチング)、ロール角速度(ローリング)、ヨー角速度(ヨーイング)とよぶ。
一般に、飛行機はプロペラによる推力によって速さを制御し、また、ピッチ、ロール、ヨーの姿勢を変化させることで飛行速度の向きを制御する。基本的に、ピッチを変化させるための舵が水平尾翼にあるエレベーター(昇降舵)、ロールを変化させるための舵が主翼にあるエルロン(補助翼)、ヨーを変化させる舵が垂直尾翼にあるラダー(方向舵)である。
揚力発生の特徴
流れる空気の中に翼のような流線形をした物体が置かれると物体には空気力が作用するが、流れと垂直方向に作用する力を揚力、流れの方向に働く力を抗力とよぶ。翼の前縁と後縁を結ぶ翼弦と流れのなす角を迎角といい、空気が下方から流入する時に迎角は正である。一般に迎角が増すと揚力、抗力ともに増加する。翼の断面形状が上面の湾曲が下面より大きな翼型は、効率よく揚力を発生できるので翼型やローター断面に利用される。しかしながら、あまり大きな迎角にすると、流れは翼の表面から剥離し、揚力は減じ、抗力が増大し、失速を招く。飛行中の飛行機が失速状態に陥ると、機体は急降下を始める。
プロペラは、2枚以上のブレードとよばれる翼が回転して推力を発生する。プロペラの回転にはトルクが必要であり、プロペラを回転させる原動機には反トルクが作用する。
回転翼航空機(マルチローター)はプロペラからの反トルクを相殺するために、偶数個のプロペラを半数ずつ異なる向きに回転させるのが一般である。各プロペラの回転数を変化させ、推力とトルクを変化させてピッチ、ロール、ヨーの運動を行う。一方、一般的に、回転翼航空機(ヘリコプター)はメインローターの反トルクをテールローターで相殺する。メインローターは 1 回転する間にブレードのピッチ角を周期的に変化させる可変ピッチ機構を持ち、これによって機体のピッチ、ロールの姿勢制御を行い、テールローターの推力を変化させてヨーの姿勢制御を行う。
無人航空機の飛行性能〔一等〕
カテゴリーⅢ飛行を行うにあたっては、無人航空機の飛行性能(離陸性能、上昇性能、加速性能、巡行性能、旋回性能、降下性能、着陸性能等)及びこれに影響を与える要因(機体重量、飛行速度、空気密度や風などの大気状態等)について理解することが必要となる。
無人航空機へのペイロード搭載
無人航空機には、ペイロードを搭載できない機体を除き、機体ごとに安全に飛行できるペイロードの最大積載量が定められている。ただし、ペイロードの最大積載量とペイロード搭載時の飛行性能は飛行高度、大気状態によっても異なり、また飛行機の場合は離着陸エリアの広さによっても異なる。機体重量が変化すると航空機の飛行特性(安定性、飛行性能、運動性能)は変化するため注意が必要である。機体の重心位置の変化は飛行特性に大きな影響を及ぼすため、ペイロードの有無によって機体の重心位置が著しく変化しないようにしなければならない。
飛行性能の基本的な計算〔一等〕
ここから計算式が出てきます。原本のPDFは式を図のように組んでいるため、文字にすると行が入れ替わってしまいます。この記事では式を1行に組み直し、上付きの数字(2乗・3乗など)を復元し、分数の線を「/」で表しました。また、分数の分子が抜け落ちていた2か所(tan 𝛾 の「1」と、𝛾 = tan−1 の「1/15」)は、教則第5版のPDFを見て補っています。式の中身は原本と同じです。
カテゴリーⅢ飛行を行うにあたっては、無人航空機の飛行性能に関わる以下のような基本的な計算(機体重量、揚力、推力、空気密度、飛行速度、高度、回転翼の回転角速度の関係等)について理解しておく必要がある。
- (1) 飛行機の揚力・回転翼航空機の推力
飛行機の水平定常飛行においては、機体重量𝑊 、揚力𝐿 、空気密度𝜌、飛行速度𝑉 の間に以下の関係がある。
𝑊 = 𝐿 ∝ 𝜌𝑉2
プロペラなどの回転翼の推力𝑇 は、空気密度𝜌、回転角速度𝜔の間に以下の関係がある。
𝑇 ∝ 𝜌𝜔2
回転翼航空機(ヘリコプター)及び回転翼航空機(マルチローター)のホバリング時には、機体重量𝑊と推力𝑇 の間に以下の関係がある。
𝑊 = 𝑇
また、回転翼の消費パワー(仕事率)𝑃 は、空気密度𝜌、回転角速度𝜔、推力𝑇 の間に以下の関係がある。
𝑃 ∝ 𝜌𝜔3 ∝ 𝑇𝜔
大気には標準大気が定められており、空気密度は高度に対して以下の表のように変化する。高度が1000m 増加すると、空気密度は約 0.9 倍になる。
| 高度 [m] | 空気密度 [kg/m3] | 高度 0m との比 |
|---|---|---|
| 0 | 1.2250 | 1.00000 |
| 500 | 1.1673 | 0.95287 |
| 1000 | 1.1116 | 0.90746 |
| 1500 | 1.0581 | 0.86373 |
| 2000 | 1.0065 | 0.82162 |
| 2500 | 0.95686 | 0.78111 |
| 3000 | 0.90912 | 0.74214 |
| 3500 | 0.86323 | 0.70468 |
例えば、高度 3000mでの空気密度は高度 0m と比べると、0.74 倍になる。そのため、飛行機が同じ飛行速度で飛行するならば揚力は 0.74 倍になる。そこで√1/0.74 ≒1.16 倍の飛行速度が必要である。回転翼航空機の場合も、同じ回転角速度で発生するプロペラの推力は 0.74 倍になり、同じ機体重量の回転翼航空機を飛行させるためには√1/0.74 ≒1.16 倍のプロペラの回転角速度が必要であり、そのために必要な消費パワーは 0.74×√(1/0.74)3 ≒1.16 倍になる。
ペイロードが搭載されるなどして飛行機の機体重量が 2 倍になると、2 倍の揚力が必要となり、高度などの他の条件が同じであれば、√2 ≒1.4 倍の機体速度が必要である。回転翼航空機の場合、機体重量が 2 倍になると、2 倍の推力が必要となり、高度などの条件が同じであれば、√2 ≒1.4 倍のプロペラ回転角速度が必要で、消費パワーは√23 ≒2.8倍になる。
飛行機において、機体重量が2倍になると、揚力が2倍必要になり、同じ迎角で飛行するためには√2 ≒1.4 倍の飛行速度が必要になる。飛行中に速度を落としていくと、揚力を得るためには迎角を大きくしなければならない。しかし、迎角が大きくなりすぎると失速する。すなわち、飛行機には最低飛行速度(失速速度)が存在する。飛行速度の増加が必要ということは最低速度もそれに比例して増加することを意味する。すなわち、飛行機の機体重量が 2 倍になると、最低速度は 1.4 倍となる。
- (2) 飛行機の旋回半径
飛行機がバンク角(ロール角)𝜙の定常旋回飛行を行うためには、力のつり合いから、水平定常飛行と比べて1/ 𝑐𝑜𝑠𝜙 倍の揚力が必要であり、飛行速度𝑉 、旋回半径𝑟 、重力加速度𝑔 の間に以下の関係がある。
𝑉2 / 𝑟 = 𝑔 tan 𝜙
例えば、飛行速度 10m/s、バンク角 20°の場合の旋回半径𝑟 は、重力加速度𝑔 ≒ 9.8m/𝑠2、tan 20° ≒ 0.36であるので、以下のように求められる。
𝑟 = 𝑉2 / (𝑔 tan 𝜙) = 102 / (9.8 × 0.36) ≒ 28 m
また、cos 20° ≒ 0.94であるので、1.06 倍の揚力が必要である。
- (3) 飛行機の滑空距離
飛行機の滑空時に飛行経路が水平面となす角を滑空角(降下角)とよぶ。無推力の定常滑空飛行状態での滑空角𝛾は、揚力𝐿 、抗力𝐷 によって以下のように求められる。
tan 𝛾 = 1 / (𝐿/𝐷)
よって、ある高度ℎ からの滑空距離𝑑 は以下のように求められる。
𝑑 = ℎ / tan 𝛾 = ℎ ⋅ 𝐿/𝐷
ここで、𝐿/𝐷 は揚抗比である。例えば、揚抗比 15 の無推力の定常滑空飛行状態であれば、滑空角𝛾 は
𝛾 = tan−1(1 / 15) ≒ 3.8°
となり、高度ℎ = 100mからの滑空距離𝑑 は、
𝑑 = 100 × 15 = 1500m
となる。
- (4) 水平到達距離(水平投射の場合)
高度ℎを飛行する飛行速度𝑣の無人航空機が、揚力を失い落下を始める場合を考える。無人航空機を質点とみなせるものとし、空気抵抗は無視できると仮定すると、落下開始地点から地上に墜落するまでの水平距離𝑥は、
𝑥 = 𝑣√(2ℎ / 𝑔)
で求めることができる。但し、𝑔は重力加速度である。
ここからは私の解説です
この節がいちばん言いたいこと
ひとことで言うと、「飛ぶ力は、条件が変わると簡単に足りなくなる」ということです。
荷物を載せれば重くなる。高い場所へ行けば空気が薄くなる。速度を落とせば揚力が減る。そのどれもが、飛ぶために必要な力を増やす方向に効きます。教則がこの節で式を並べているのは、計算をさせたいからというより、「効き方の大きさ」を知っておいてほしいからだと思っています。
まず、どこが二等の範囲外かをはっきりさせます
この節は4つの見出しでできていて、そのうち2つに〔一等〕が付いています。
| 見出し | 〔一等〕か | 二等の方の読み方 |
|---|---|---|
| 無人航空機の飛行原理 | —— | 読む。揚力・抗力・迎角・ピッチ/ロール/ヨーの基本 |
| 揚力発生の特徴 | —— | 読む。翼とプロペラ、反トルクの話 |
| 無人航空機の飛行性能〔一等〕 | 〔一等〕 | 範囲外。カテゴリーⅢ飛行の話 |
| 無人航空機へのペイロード搭載 | —— | 読む。最大積載量と重心の話 |
| 飛行性能の基本的な計算〔一等〕 | 〔一等〕 | 範囲外。ただし数字の感覚は持っておくと得 |
教則は「〔一等〕は、一等無人航空機操縦士の資格の区分を対象とした項目であることを示す」としています。二等の学科試験の範囲を考えるなら、計算式は覚えなくてよい——ここは最初にはっきりさせておきます。式を前にして固まってしまうより、範囲内のところを確実にするほうが先です。
とはいえ、あとで書くとおり最後の式だけは二等の実務に直結しますので、そこだけは目を通してみてください。
飛ぶために必要なのは「重力に対抗する上向きの力」だけです
教則の書き出しは、驚くほどそっけないのですが、全部がここから始まります。
無人航空機が飛行するためには、重力に対抗する上向きの力を必要とする。
その上向きの力を、飛行機は主翼の揚力で、回転翼航空機はプロペラ(ローター)の推力で作ります。前回の「飛行機は止まれない/マルチローターは止まれる」という違いも、元をたどればここです。翼で作る力は、空気が流れていないと出ない。プロペラで作る力は、回していれば出る。それだけの違いが、あれほど大きな差になります。
迎角と横滑り角、ピッチ・ロール・ヨー
用語が続くところなので、表にしておきます。
| 用語 | 何を表すか |
|---|---|
| 迎角 | 機体の前後・上下を含む面に空気流入の向きを投影したときの、前後軸とのなす角。下方から空気が流入するときに正 |
| 横滑り角 | 機体の前後・上下を含む面と、空気流入の向きの面とのなす角。機体右側から空気が流入するときに正 |
| ピッチ | 機首を上げ下げする回転 |
| ロール | 機体を左右に傾ける回転 |
| ヨー | 上から見たときの機首の左右の回転 |
そして飛行機の舵。ピッチは水平尾翼のエレベーター(昇降舵)、ロールは主翼のエルロン(補助翼)、ヨーは垂直尾翼のラダー(方向舵)。前回、マルチローターが同じ言葉を借りていた——という話をしましたが、本家はこちらです。舵が付いている場所まで一緒に覚えると、混ざりにくくなります。
揚力と抗力は、向きで呼び分けているだけです
流れる空気の中に翼のような流線形をした物体が置かれると物体には空気力が作用するが、流れと垂直方向に作用する力を揚力、流れの方向に働く力を抗力とよぶ。
ここ、意外と大事です。揚力は「上向きの力」ではなく「流れと垂直方向の力」と定義されています。だから機体が傾けば、揚力の向きも一緒に傾く。前回のマルチローターの前進の説明——機体が傾くと推力の合力が傾いた方向に向く——と、まったく同じ話をしています。
そして抗力は流れの方向に働く力。飛行機はこれに逆らって前へ進むために推力が要ります。揚力と抗力は別々のものではなく、同じ空気力を向きで分けているだけ——そう読むと、あとの滑空角の式(抗力と揚力の比で決まる)も自然に見えてきます。
プロペラは「回る翼」。だから反トルクが出ます
プロペラは、2枚以上のブレードとよばれる翼が回転して推力を発生する。プロペラの回転にはトルクが必要であり、プロペラを回転させる原動機には反トルクが作用する。
前回「反トルクがこの節の隠れた主役」と書きましたが、その正体がここで説明されています。プロペラは翼で、回すのに力(トルク)が要る。すると回している側に逆向きの力(反トルク)が返ってくる。
だからマルチローターは偶数個のプロペラを半数ずつ異なる向きに回すのが一般で、ヘリコプターはテールローターで打ち消す。教則はさらに、ヘリコプターの姿勢制御についてこう書いています。
メインローターは1回転する間にブレードのピッチ角を周期的に変化させる可変ピッチ機構を持ち、これによって機体のピッチ、ロールの姿勢制御を行い、テールローターの推力を変化させてヨーの姿勢制御を行う。
「1回転する間に、周期的に」——ここがヘリコプターの凄みだと思います。ブレードが前に来たときと後ろに来たときで角度を変えている。前回出てきたスワッシュプレートが、その角度を作る機構です。マルチローターが回転数の差だけで済ませているのと比べると、複雑さの理由がはっきりします。
ペイロード——最大積載量は「決まった数字」ではありません
ここは二等の範囲内で、しかも実務で毎回効くところです。
ペイロードの最大積載量とペイロード搭載時の飛行性能は飛行高度、大気状態によっても異なり、また飛行機の場合は離着陸エリアの広さによっても異なる。
カタログに「最大積載量◯kg」と書いてあっても、それは条件付きの数字だということです。標高の高い場所、気温の高い日、湿度——空気が薄くなる方向の条件では、同じ重さでも余裕がなくなります。
そして教則は重心にも触れています。機体重量が変化すると、安定性・飛行性能・運動性能が変化する。「載せた」だけでなく「どこに載せたか」で機体の癖が変わる、という話です。前回の第4章の入口で読んだ「大きくなると言うことを聞くのが遅くなる」とあわせて、重さは操縦感覚を変えると覚えておくとよいと思います。
〔一等〕の計算——数字の「効き方」だけ持ち帰りましょう
ここからは二等の範囲外です。式そのものは覚えなくて構いません。ただ、結論の数字だけは知っておくと、機体を扱う感覚が変わります。教則の例に出てくる数字を、私のほうで検算してみました(すべて教則の値と一致しました)。
| 条件が変わると | どうなるか |
|---|---|
| 高度が1000m上がる | 空気密度は約0.9倍(表のとおり。3000mでは0.74倍) |
| 高度3000mで同じ揚力を出す | 飛行速度は約1.16倍必要(√1/0.74) |
| 機体重量が2倍になる | 必要な揚力・推力は2倍。速度や回転角速度は約1.4倍(√2) |
| 同上(消費パワー) | 約2.8倍(√2の3乗) |
| 機体重量が2倍になる(失速速度) | 最低速度も1.4倍になる |
いちばん覚えておく価値があるのは、「重さが2倍でも、必要な速度は1.4倍。でも電力は2.8倍」という食い違いだと思います。重くすると、飛行時間はそれ以上に削られる。荷物を積んだときにバッテリーが思ったより早く減るのは、感覚の問題ではなく、こういう関係だからです。
旋回半径と滑空距離も、結論だけなら分かりやすい形をしています。
- 旋回半径:飛行速度10m/s、バンク角20°で約28m。速度が2倍になれば半径は4倍(速度の2乗で効く)
- 滑空距離=揚抗比 × 高度。揚抗比15の機体が高度100mから滑空すれば1500m。滑空角は約3.8°
滑空距離の式が掛け算だけになるのは、きれいなところです。「どれだけ効率よく飛べる翼か(揚抗比)」に「どれだけ高いところにいるか」を掛ける。前回、飛行機は「落ちるときも滑る」ので落下地点を狭い範囲に抑えられない、という話をしましたが、その「滑る距離」がこの式で出ます。
最後の式だけは、二等の実務に直結します
(4)の水平到達距離です。高度ℎを飛行速度𝑣で飛んでいる機体が揚力を失って落ち始めたとき、地上に落ちるまでにどれだけ前へ進むかを出す式です。
なぜこれが二等に効くのか。立入管理措置で使う落下距離が、まさにこの考え方だからです。教則は立入管理区画について、こう書いています。
飛行範囲及びその外周から製造者等が保証した落下距離の範囲内を立入管理区画として地図等に明示する。
そして審査要領は、その落下距離をこう定義しています。
飛行の高度及び使用する機体に基づき、当該使用する機体が飛行する地点から当該機体が落下する地点までの距離として算定されるもの
「飛行する地点から落下する地点までの距離」——4.3(4)の式が計算しているものと、同じです。実務で使う数字は製造者等が保証した値なので自分で計算するものではありませんが、どういう理屈でその距離が決まるのかは、この式を見れば分かります。
感覚をつかむために、いくつか計算してみました(重力加速度9.8m/s2、空気抵抗は無視)。
| 高度と速度 | 落ちるまでの時間 | 水平に進む距離 |
|---|---|---|
| 高度30m・10m/s | 約2.5秒 | 約25m |
| 高度50m・10m/s | 約3.2秒 | 約32m |
| 高度100m・15m/s | 約4.5秒 | 約68m |
| 高度150m・20m/s | 約5.5秒 | 約111m |
数字にすると、はっとします。高度30mでゆっくり飛んでいても、真下ではなく25m先まで飛んでいく。「機体の真下に人がいなければ大丈夫」ではないわけです。高さと速度の両方が効く——高く飛ぶほど落ちる時間が延びて遠くへ、速く飛ぶほど1秒あたりに進む距離が伸びて遠くへ。
この感覚は、二等の学科試験のためというより、飛ばす場所を決めるときのためのものです。カテゴリーⅢや一等の話だと思って読み飛ばすには、少しもったいない式だと思っています。
この回の数字まとめ
- この節の〔一等〕は2か所(無人航空機の飛行性能/飛行性能の基本的な計算)。二等の範囲外
- 揚力=流れと垂直方向に作用する力/抗力=流れの方向に働く力
- 迎角は下方から空気が流入するときに正
- 飛行機の舵=ピッチは水平尾翼のエレベーター/ロールは主翼のエルロン/ヨーは垂直尾翼のラダー
- プロペラは2枚以上のブレード(翼)。回すトルクの反作用が反トルク
- マルチローターは偶数個のプロペラを半数ずつ異なる向きに回すのが一般
- ヘリコプターは1回転する間にブレードのピッチ角を周期的に変える可変ピッチ機構でピッチとロール、テールローターの推力でヨーを制御
- ペイロードの最大積載量は飛行高度・大気状態で変わる(飛行機は離着陸エリアの広さでも)
- 空気密度=高度0mで1.2250kg/m3。1000m上がるごとに約0.9倍(3000mで0.74倍)
- 機体重量が2倍=必要な揚力・推力は2倍、速度や回転角速度は約1.4倍、消費パワーは約2.8倍、最低速度も1.4倍
- 旋回半径=飛行速度10m/s・バンク角20°で約28m。バンク角20°では揚力が1.06倍必要
- 滑空距離=揚抗比 × 高度。揚抗比15・高度100mで1500m、滑空角は約3.8°
- 水平到達距離=落下開始地点から墜落地点までの水平距離。立入管理区画で使う「落下距離」と同じ考え方
おわりに
この節は、二等を目指す方にとっては「読む場所と、飛ばす場所を分ける」のがいちばんの付き合い方だと思います。前半の飛行原理はしっかり読む。〔一等〕の計算は、式ではなく結論の数字だけ拾う。それで十分です。
そのうえで、もし1つだけ持ち帰るとしたら、私は水平到達距離を挙げます。高度30mで25m先。この数字を知っているかどうかで、離着陸地点の選び方も、補助者を立てる位置も変わってきます。式は忘れても、「機体は真下には落ちない」ということだけは覚えておいてください。
次回は「4.4 無人航空機の機体の構成」。フライトコントローラー、センサー、モーター、バッテリー——機体を開けて中を見ていく回になります。
出典
- 国土交通省「無人航空機の飛行の安全に関する教則(第5版)」令和8年7月7日公布・令和8年7月14日適用(4.3の本文、標準大気の空気密度の表、および立入管理区画に関する記述)
- 国土交通省航空局「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」平成27年11月17日制定・令和7年12月12日最終改正(落下距離の定義=「飛行の高度及び使用する機体に基づき、当該使用する機体が飛行する地点から当該機体が落下する地点までの距離として算定されるもの」)
本記事の内容は2026年8月時点のものです。表の数値と例の計算結果は教則第5版の記載に基づき、こちらで検算したものです。実際の立入管理措置で用いる落下距離は、製造者等が保証した値をご確認ください。
この章を、問題で確認する
ここは学科試験では「無人航空機のシステム」の分野にあたります。読んだ直後に解くと、取り違えていた箇所がその場で分かります。
この節は〔一等〕の項目が多く、旋回半径や滑空距離の計算式が出てきます。一等の演習261問には計算問題も収録しています。
分野別に数をこなすなら(登録講習機関講師が作問・全問解説つき・買い切り)
二等 演習250問/演習250問+模試5セット 一等 演習261問/演習261問+模試10セット
登録講習機関講師 フライトデスク 監修



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