修了審査に落ちる人には、はっきりした共通点があります。
そして意外に思われるかもしれませんが、その多くは操縦が下手だから落ちているのではありません。
この記事では、減点がどこで積み上がるのかを、採点票の構造に沿って整理します。
「合格基準は何点か」ではなく、「何をすると何点引かれるのか」の話です。
まず構造を知る:持ち点100からの引き算
修了審査は加点式ではありません。
100点の持ち点から引いていく減点式です。
| 区分 | 合格ライン |
|---|---|
| 一等 | 各試験科目の終了時点で80点以上 |
| 二等 | 各試験科目の終了時点で70点以上 |
一等は20点、二等は30点しか余裕がありません。
ここで多くの方が誤解しています。この20点や30点は、実技だけの持ち点ではありません。
落ちる理由の第1位:操縦以外で削られている
審査は実技だけではありません。次の順番で進みます。
| 順 | 内容 | 減点の重さ |
|---|---|---|
| 1 | 机上審査 | 1問の誤り・未回答で5点 |
| 2 | 口述審査(飛行前点検) | 点検漏れで10点 |
| 3 | 実技審査 | 下記参照 |
| 4 | 口述審査(飛行後点検・記録) | 点検漏れ5点/飛行記録の記載漏れ・誤りで10点 |
| 5 | 口述審査(事故・重大インシデント) | 1問の誤り・未回答で5点(基本のみ) |
ここを見てください。
飛行前点検の漏れは1つで10点。飛行記録の記載漏れも10点。
この2つを落とすだけで20点です。一等なら、機体に触れる前に不合格が確定します。
操縦がどれだけ上手くても、この2つを取りこぼした時点で終わりです。
逆に言えば、ここは練習量ではなく準備で確実に取れる点数です。
飛行前点検で漏れやすいもの
飛行前点検は、声に出して確認していく形式です。
項目は13あります。機体全般・プロペラ・フレーム・通信系統・推進系統・電源系統・自動制御系統・操縦装置・バッテリー・機体識別表示・リモートID・灯火・カメラ。
このうち、基本の審査で漏れやすいのが灯火とカメラです。
飛行記録で最も多い記載漏れ
飛行記録に書く項目は決まっています。
飛行年月日・氏名・飛行概要・離着陸場所・離着陸時刻・飛行時間・総飛行時間・安全に影響のあった事項。
ここで頻出するのが登録記号の書き漏れです。「JU」から始まる記号です。
年月日を和暦で書いてしまうのもよくあります。西暦で記入してください。
落ちる理由の第2位:一発不合格を踏む
減点の積み上げとは別に、その時点で終わる項目があります。
審査の冒頭で、審査員から必ず告知される内容です。
- 航空法等の違反
- 危険な飛行
- 墜落・機体の損傷・制御不能
- 不合格区画への進入
- 制限時間の超過
- 審査員による操作介入
- 不正行為
制限時間の超過と不合格区画への進入です。どちらも「操縦ミス」というより、時間感覚と位置感覚の問題です。
基本の飛行区域は21m×13m。
経路から1.5mを超えると減点区画、2.5mを超えると不合格区画です。
機体の半分以上が不合格区画に入った時点で終了します。
落ちる理由の第3位:5点減点を重ねる
実技の減点は、5点と1点に分かれています。
| 減点 | 項目 |
|---|---|
| 5点 | 飛行経路の逸脱 |
| 指示と異なる飛行(指示と明らかに異なる高度を含む) | |
| 離着陸の不良 | |
| 監視不足 | |
| 安全確認不足 | |
| 1点 | ふらつき |
| 不円滑 | |
| 機首方向の不良 |
ここで注目してほしいのは、「ふらつき」は1点にすぎないという点です。
受講生の多くは、機体が揺れることを気にします。
しかし1点の減点を10回積んでも10点です。一等でもまだ合格圏内にいます。
本当に怖いのは5点の方です。とくに「監視不足」と「安全確認不足」は、操縦技量とは別の話です。
高度のズレが5点になった
2026年6月5日施行の改正で、「指示と明らかに異なる高度」が5点減点の対象として明記されました。
従来は「指示と異なる飛行」という包括的な書き方でしたが、高度が明示的に含まれる形になっています。
スクエア飛行は指定高度を保って回る科目です。角で高度が落ちる癖がある方は、ここを意識してください。
2026年6月5日の改正で変わったこと
現行の実施細則は2026年6月5日施行のものです。
受験する方に影響が大きい変更を挙げます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 経路逸脱からの復帰 | 「速やかに」→「概ね2秒以内」に明確化。逸脱の通知は試験員が行う |
| 保護具 | ヘルメット・保護メガネ等の着用が義務化 |
| 緊急着陸 | 2段階手順に変更(緊急事態宣言→その場ホバリング→着陸指示→高度維持で最短経路→着陸) |
| 口述・机上の減点 | 減点基準を第II章に集約し、新設・細分化。複数発生時は最高減点のみ適用と明文化 |
| 同日完了 | 全科目を同じ日に完結させることが明文化 |
| 風速基準 | 「以下」→「未満」に変更 |
科目ごとの注意点
一等・高度変化を伴うスクエア飛行
ATTIモード(GNSS支援なし)で、1.5mから3.5mへ高度を変えながら四角に飛びます。
一等・ピルエットホバリング
高度3.5mで1回転します。目安は20秒程度です。
16秒未満または26秒以上で5点減点になります。
減点されるのは回転の速さそのものよりも、回転中に位置がずれることです。機首が回っても機体の位置は動かさない、という感覚を作ってください。
二等・異常事態における飛行
ATTIモードで直線を1往復以上してから、緊急着陸します。
改正後は2段階手順になっているので、宣言のあと一度その場でホバリングして待つ流れを覚えておいてください。すぐ降ろそうとすると手順が違ってしまいます。
合格する人がやっていること
ここまでを踏まえると、対策の優先順位は自然に決まります。
1.飛行前点検と飛行記録を完璧にする(合計20点。準備だけで取れる)
2.一発不合格の7項目を暗記する(踏んだら終わり)
3.5点減点の5項目を体に入れる(とくに監視・安全確認)
4.最後にふらつきを減らす(1点なので優先度は最も低い)
多くの方は4番から練習を始めます。
気持ちはよく分かります。機体が揺れると下手に見えるからです。
しかし採点票の構造上、1番と2番を落とすと4番がどれだけ上手くても届きません。
登録講習機関で審査を担当していると、実技は危なげないのに口述と記録で崩れてしまう方を見かけます。もったいない落ち方です。
指定試験機関の実地試験との違い
混同されやすいので整理しておきます。
| 修了審査 | 実地試験 | |
|---|---|---|
| 実施 | 登録講習機関 | 指定試験機関(日本海事協会) |
| 位置づけ | 講習の修了を判定 | 技能証明のための試験 |
| 合格すると | 実地試験が免除される | そのまま技能証明の申請へ |
| 学科試験 | どちらのルートでも別途必要 | |
ネット上の体験談は、この2つが混ざっていることがあります。
減点基準は同じ実施細則に基づきますが、受ける場所も申込方法も別です。読むときは区別してください。
まとめ
修了審査で落ちる理由は、大きく3つに整理できます。
操縦以外(点検・記録)で20点を落とす。一発不合格を踏む。5点減点を重ねる。
このうち最初の1つは、練習しなくても防げます。
審査の前夜にやるべきことは、飛行練習ではなく点検項目と記録様式の確認かもしれません。
修了審査に合格しても、学科試験は別途必要です。2026年7月14日から教則第5版に切り替わりました。
登録講習機関講師 フライトデスク 監修



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