今回は「飛ばしていないときの話」です。整備、点検、保管、交換、廃棄——教則の中でいちばん短い節のひとつで、量は900字ほどしかありません。
ですが、ここに書かれている内容は、そのまま火災の予防につながっています。消防庁が令和8年3月に公表した調査によると、リチウムイオン電池等から出火した火災は令和7年の1年間で1,297件。しかも出火原因の上位は「外部衝撃」と「高温下での使用」でした。——教則が「衝撃を与えないこと」「35度を超える環境で保管しないこと」と書いているのと、ぴたり同じです。今回はそこを数字で確かめていきます。
教則第5版 4.6 機体の整備・点検・保管・交換・廃棄(全文)
出典:国土交通省「無人航空機の飛行の安全に関する教則(第5版)」(令和8年7月7日公布・令和8年7月14日適用)。読みやすさのためレイアウトを再構成し、原本で混在している英数字の全角・半角を半角にそろえています。本記事は国土交通省の公式なものではありません。
電動機における整備・点検・保管・交換・廃棄
- (1) 運航者が実施すべき、定期的な整備・点検項目
運航者(無人航空機を運航する者をいう。以下同じ。)は飛行前後だけではなく、無人航空機毎に定められた一定の期間や一定の総飛行時間ごとに整備点検を行う必要がある。そのため、各機体メーカーが設定する整備内容を熟知し、必要なタイミングで修理等の整備を行う必要がある。
- (2) リチウムポリマーバッテリーの保管方法
リチウムポリマーバッテリーの保管方法における主な留意点は以下のとおり。
- ⚫ バッテリーの劣化を遅らせるため、長期間使用しない時は充電 60%を目安に保管すること。満充電の状態での保管又は飛行後の放電状態での保管は、電池の劣化が進みやすく電池が膨らみ、使用不可になることが多いので行わないこと。
- ⚫ 短絡すると発火する危険があるため、バッテリー端子が短絡しないように細心の注意を払うこと。機体コネクタとバッテリーを接続したままにしないこと。
- ⚫ 万が一発火しても安全を保てる不燃性のケースに入れ、突起物が当たってバッテリーを傷つけない状態で保管すること。
- ⚫ 落下させるなど衝撃を与えないこと。
- ⚫ 水に濡らさないこと。
- ⚫ バッテリーを高温(35°c 超)になる環境で保管しないこと。
- (3) リチウムポリマーバッテリーの交換
交換時期のチェックが特に重要なものとして、リチウムポリマーバッテリーが挙げられる。リチウムポリマーバッテリーが膨らんでいる場合は、過充電などでバッテリー内部に可燃性ガスが発生している可能性があるため、早めに交換を行う。
- (4) リチウムポリマーバッテリーの廃棄方法
無人航空機の運航で生じる廃棄物は、各地方自治体のルールに従って廃棄しなければならない。事業で用いたリチウムポリマーバッテリーを廃棄する場合は、法律に則り「産業廃棄物」として廃棄する。
エンジン機における整備・点検
エンジン機においては、飛行前後以外に一定の期間又は一定の総飛行時間毎に、機体メーカーが定めた整備項目を整備手順に従って実施する。運航者のエンジンの整備に関する知識及び技能が不足している場合は、専門の整備業者に依頼する。
ここからは私の解説です
この節がいちばん言いたいこと
ひとことで言うと、「飛行の前後だけでは足りない」ということです。
教則の(1)の書き出しは、こうです。
運航者は飛行前後だけではなく、無人航空機毎に定められた一定の期間や一定の総飛行時間ごとに整備点検を行う必要がある。
「飛行前後だけではなく」——ここが全部です。日常点検(様式2)は毎回やる。それとは別に、時間で区切った点検がある。この節は、そのもう一段深い整備と、バッテリーとの付き合い方の話をしています。
分量は900字ほどで、この連載でも短いほうから2番目の回です。そして〔一等〕は1か所もありません。全部が二等の範囲です。短いぶん、一つひとつの文が試験でも実務でも効いてきます。
「一定の総飛行時間ごと」とは、具体的に何時間か
教則は「一定の期間や一定の総飛行時間ごと」としか書いていません。機体メーカーが決めることだからです。教則も、そう続けています。
各機体メーカーが設定する整備内容を熟知し、必要なタイミングで修理等の整備を行う必要がある。
ただし、許可・承認を受けて飛ばす場合には、具体的な数字があります。航空局の標準マニュアル(①②とも)の1-1(3)に、こう書かれています。
(3)20時間の飛行毎に、以下の事項について無人航空機の点検を実施する。
20時間ごとです。見る場所は4つ。
| 20時間ごとに見るもの | 飛行前後の点検との違い |
|---|---|
| 交換の必要な部品はあるか | これが20時間点検にしかない項目。飛行前後の点検は「異常がないか」を見るのに対し、20時間点検は「そろそろ替えどきか」を見る |
| 各機器は確実に取り付けられているか(ネジの脱落やゆるみ等) | 飛行前後の点検にもある |
| 機体(プロペラ、フレーム等)に損傷やゆがみはないか | 飛行前後の点検にもある |
| 通信系統、推進系統、電源系統及び自動制御系統は正常に作動するか | 飛行前後の点検にもある |
並べてみると、1つ目だけが飛行前後の点検にない項目だと分かります。「壊れていないか」ではなく「替えどきではないか」を見るのが、時間で区切った点検の役目——そう理解しておくと、教則の(1)と(3)(交換の話)が1本につながります。
やったことは、様式3に書きます
標準マニュアルは、点検のすぐあとに記録の話を置いています。
飛行の前後及び20時間の飛行毎に無人航空機の点検・整備を行った際には、「無人航空機の飛行日誌の取扱要領」に従い、点検・整備記録を作成し管理する。
飛行日誌は3つの様式でできています。様式1が飛行記録、様式2が日常点検記録、そして様式3が点検整備記録です。前回(4.4)で見た9項目の日常点検は様式2。今回の話は様式3のほうです。
取扱要領によると、点検・整備そのものの記録として書くのは次の6つです(このほかに、機体の登録記号や種類などの概要を記録の冒頭にまとめて書きます)。
- 実施の年月日及び場所
- 実施者の氏名
- 点検、修理、改造及び整備の内容(部品を交換した場合は交換部品名を含む)
- 実施の理由
- 最近の機体認証後の総飛行時間
- その他特記事項
注目していただきたいのは「実施の理由」と「総飛行時間」です。なぜ替えたのか、何時間飛んだ時点だったのか。この2つが残っていると、次に同じ部品がどのくらいもつかが読めるようになります。記録は、提出のためではなく、次の判断のためにある——私はそう説明しています。
バッテリーの保管6か条を、「何を防いでいるか」で束ねる
ここからが(2)です。教則は6つ並べていますが、目的で分けると3つになります。
| 何を防ぐか | 教則の要件 |
|---|---|
| 劣化を防ぐ | 長期間使用しないときは充電60%を目安に保管。満充電での保管も、飛行後の放電状態での保管もしない |
| 発火を防ぐ | 端子を短絡させない(機体コネクタとバッテリーを接続したままにしない)/不燃性のケースに入れる/突起物で傷つけない |
| 損傷を防ぐ | 落下などの衝撃を与えない/水に濡らさない/高温(35度超)の環境で保管しない |
(原本では最後の項目が「高温(35°c 超)」と表記されています。摂氏35度を超える環境という意味です。)
この6つの中で、私がいちばん抜けやすいと思っているのは「機体コネクタとバッテリーを接続したままにしないこと」です。飛び終わって片づけるとき、次にすぐ飛ばすつもりで挿しっぱなしにする——やってしまいがちですが、教則ははっきり禁じています。理由は短絡による発火です。
「60%」の意味は、教則の文の中に書いてあります
なぜ満充電でも空でもなく、真ん中あたりの60%なのか。教則は理由を説明していないように見えますが、じつは同じ文の後半に書いてあります。
満充電の状態での保管又は飛行後の放電状態での保管は、電池の劣化が進みやすく電池が膨らみ、使用不可になることが多いので行わないこと。
満充電もダメ、空もダメ。だから真ん中。——それが60%という数字です。
ここで大事なのは、「飛行後の放電状態での保管」も禁止されているという点です。飛ばし終わってヘトヘトのバッテリーを、そのまま箱に入れて棚にしまう。これも劣化を進めます。「使い切ったから安全」ではないのです。
火災の統計が、教則の6か条をそのまま裏づけています
ここで、教則の外の数字を見てみます。消防庁が令和8年3月26日に公表した「リチウムイオン電池等から出火した火災の調査結果(令和7年)」です。
| 年 | リチウムイオン電池等から出火した火災 |
|---|---|
| 令和4年 | 601件 |
| 令和5年 | 739件 |
| 令和6年 | 982件 |
| 令和7年 | 1,297件 |
4年で2倍以上になっています。そして、この調査が挙げている出火原因を見てください。
モバイルバッテリーは外部衝撃・高温下での使用、携帯電話機は外部衝撃・分解、電動工具は非純正バッテリーの使用が多くなっています。
外部衝撃。高温。非純正。——教則が禁じているのは「落下させるなど衝撃を与えないこと」「35度超で保管しないこと」であり、(3)で言っているのは「膨らんだら早めに交換」です。教則の6か条は、実際に火事になっている原因を、そのまま裏返したものだと分かります。
教則を「試験に出るから覚える項目」と思って読むと、ただの箇条書きです。「これをやると火が出た事例が年に千件以上ある」と知って読むと、まったく違うものに見えてきます。
膨らんだバッテリーは、戻りません
(3)は短い節ですが、覚えることは1つです。
リチウムポリマーバッテリーが膨らんでいる場合は、過充電などでバッテリー内部に可燃性ガスが発生している可能性があるため、早めに交換を行う。
膨らみ=内部に可燃性のガスがたまっているサイン。だから早めに交換する。ここで気をつけたいのは、「放電させれば戻る」わけではないということです。発生してしまったガスは抜けません。
そして、膨らませないための方法は(2)に全部書いてあります。満充電で置かない、空で置かない、高温にしない。(2)と(3)は原因と結果の関係で並んでいる、と読むと頭に入りやすいと思います。
交換するとき、「純正かどうか」は火災の話でもあります
教則は交換用バッテリーの純正・非純正について書いていません。ただ、先ほどの消防庁の調査では電動工具の出火原因の上位が「非純正バッテリーの使用」でした。同じ理屈は、無人航空機のバッテリーにも当てはまりそうです。
安いからと社外品を選ぶ前に、その機体のメーカーが認めているものかを確かめる。教則(1)が「各機体メーカーが設定する整備内容を熟知し」と書いているのは、部品選びも含めた話だと私は読んでいます。
廃棄——「産業廃棄物」と書いてあるのは、事業で使った場合です
(4)は2文しかありませんが、2つのことを分けて書いています。
| どんな場合か | 教則の指示 |
|---|---|
| 無人航空機の運航で生じる廃棄物一般 | 各地方自治体のルールに従って廃棄する |
| 事業で用いたリチウムポリマーバッテリー | 法律に則り「産業廃棄物」として廃棄する |
ポイントは「事業で用いた」という条件です。仕事で飛ばした機体のバッテリーは、家庭ごみでも、家電量販店の回収ボックスでもありません。環境省も、こう書いています。
事業所や工場から出る場合は、分別して、処理が可能な産業廃棄物処理業者に委託してください。
そして、これを守らないと何が起きるか。先ほどの消防庁の調査には、もう1つの統計が載っています。ごみとして捨てられたリチウムイオン電池等から、回収中のごみ収集車や、ごみ処理施設で火災が起きている——その件数です。
令和7年は、ごみ処理関連施設とごみ収集車(塵芥車)を合わせて213件。令和4年の161件から増え続けています。この数字は、先ほどの1,297件とは別に集計されているものです。捨て方を間違えると、燃えるのは自分の倉庫ではなく、回収する人の車の中だということです。教則の(4)が「法律に則り」とわざわざ書いている重さは、ここにあります。
エンジン機——教則が「やるな」と書いている珍しい箇所
最後の一段落です。
運航者のエンジンの整備に関する知識及び技能が不足している場合は、専門の整備業者に依頼する。
教則は基本的に「〜しなければならない」「〜する必要がある」という書き方をしますが、ここは「できないなら人に頼め」と書いています。私はこの一文が好きです。
整備は、やる気があれば誰でもやっていい作業ではありません。分からないまま開けて、分からないまま閉じるのがいちばん危ない。「自分の手に負えるかどうかを判断すること」も整備の一部——そう読むと、この短い一文の意味が変わってきます。
この回の数字まとめ
- この節に〔一等〕は1か所もない。全部が二等の範囲
- 整備点検は飛行前後だけではなく、一定の期間や一定の総飛行時間ごとにも行う
- 標準マニュアル①②では20時間の飛行毎に点検(交換の必要な部品/取付け/損傷・ゆがみ/4系統の作動の4項目)
- 記録は飛行日誌の様式3(点検整備記録)。書くのは年月日と場所・実施者・内容(交換部品名を含む)・理由・総飛行時間・特記事項
- バッテリーの長期保管は充電60%を目安。満充電も放電状態もダメ
- 機体コネクタとバッテリーを接続したままにしない/不燃性のケース/衝撃・水濡れを避ける/高温(35度超)で保管しない
- 膨らんでいたら過充電などで可燃性ガスが発生している可能性があるため早めに交換
- 廃棄=各地方自治体のルールに従う。事業で用いたものは産業廃棄物として
- エンジン機は知識・技能が不足していれば専門の整備業者に依頼
- (教則の外)リチウムイオン電池等の火災=令和7年に1,297件(令和4年601件)。原因の上位は外部衝撃・高温下での使用・非純正バッテリー
おわりに
この節は、試験に出る項目としては地味です。数字も60%と35度と20時間くらいしかありません。
でも、私がお伝えしたかったのは「教則の箇条書きは、誰かが実際に痛い目に遭った跡だ」ということです。年に1,297件の火災。その原因の上位が、教則の禁止事項とそのまま重なっている。あの6か条は、机の上で考えられたものではありません。
今日からできることを1つだけ挙げるなら、飛び終わったバッテリーを機体から抜くことです。それだけで、教則が禁じている状態を1つ減らせます。
次回からは第5章に入ります。「5.1 操縦者の行動規範及び遵守事項」。機械の話から、人の話へ移っていきます。
出典
- 国土交通省「無人航空機の飛行の安全に関する教則(第5版)」令和8年7月7日公布・令和8年7月14日適用
- 国土交通省航空局「無人航空機 飛行マニュアル」(標準マニュアル①②)令和7年12月26日版 1-1(3)・1-2
- 国土交通省航空局安全部無人航空機安全課「無人航空機の飛行日誌の取扱要領」(様式3 点検整備記録の記載事項)
- 総務省消防庁「リチウムイオン電池等から出火した火災の調査結果の公表(令和7年)」令和8年3月26日
- 環境省「リチウムイオン電池関係」(事業所や工場から出る場合の取扱い)
本記事の内容は2026年8月時点のものです。整備の周期や交換部品は機体によって異なりますので、実際の運用ではお使いの機体の説明書とメーカーの案内をご確認ください。廃棄の方法は自治体によって異なります。
この章を、問題で確認する
ここは学科試験では「無人航空機のシステム」の分野にあたります。読んだ直後に解くと、取り違えていた箇所がその場で分かります。
分野別に数をこなすなら(登録講習機関講師が作問・全問解説つき・買い切り)
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