更新申請の締め切りは、有効期間が満了する日の1か月前です。
ここを過ぎると更新はできません。技能証明は失効します。
「もう一度ゼロから取り直しか」と思った方に、先に結論をお伝えします。ゼロからではありません。ただし、楽になる部分と、まったく楽にならない部分がはっきり分かれています。
3年以内なら学科試験・実地試験が免除される
航空法施行規則第236条の54により、次の条件をすべて満たす場合、技能証明の新規申請にあたって学科試験および実地試験が免除されます。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 有効期間の更新を行わず、技能証明の効力が失われた者であること |
| 2 | 有効期間の満了日から3年を経過していないこと |
| 3 | 技能証明書返納証明書の交付を受けていること |
| 4 | 登録講習機関の技能証明書返納証明書交付者講習を修了していること |
満了日から3年を過ぎると、この救済は使えません。まっさらな新規取得と同じ扱いになります。
どれだけ短くなるのか
ここが記事の核心です。告示の別表第一(通常の新規取得)と別表第二(失効者向けの課程)を並べると、差は歴然としています。
学科講習
| 課程 | 一等 | 二等 |
|---|---|---|
| 通常・初学者向け | 18時間以上 | 10時間以上 |
| 通常・経験者向け | 9時間以上 | 4時間以上 |
| 失効者向け | 105分以上 | 80分以上 |
実地講習
| 課程 | 一等マルチ(基本) | 二等マルチ(基本) |
|---|---|---|
| 通常・初学者向け | 50時間以上 | 10時間以上 |
| 通常・経験者向け | 10時間以上 | 2時間以上 |
| 失効者向け | 15分以上 | 11分以上 |
時間で言えば、二等マルチローターの実地講習は10時間が11分になります。
免除されるもの・されないもの
ネット上には「再試験なしで再取得できる」という要約が出回っていますが、正確ではありません。
| 項目 | 扱い |
|---|---|
| 指定試験機関の学科試験(CBT) | 免除 |
| 指定試験機関の実地試験 | 免除 |
| 登録講習機関の学科講習 | 受講が必要(大幅に短縮) |
| 学科講習の修了確認試験 | 受験が必要(対面) |
| 登録講習機関の実地講習 | 受講が必要(大幅に短縮) |
| 実地講習の修了審査 | 受審が必要(実機・新規と同内容) |
| 身体検査 | 必要 |
免除されるのは、指定試験機関(日本海事協会)で受ける学科試験と実地試験です。スクールでの講習と審査は一通り必要です。
ステップ1:技能証明書を返納して返納証明書を受け取る
このルートの入口が技能証明書返納証明書です。これがなければ免除は受けられません。
- DIPS2.0で技能証明書の返納手続きを行う
- 国による内容確認を経て、審査完了の通知を受け取る
- 通知を受けたら、速やかに技能証明書を指定された宛先に郵送する
- 航空局から技能証明書返納証明書が交付される
返納証明書には、氏名・生年月日、技能証明の区分と限定、返納した技能証明書番号、その技能証明の有効期間が記載されます。
ステップ2:技能証明書返納証明書交付者講習を受ける
受講先は登録講習機関です。更新講習を行う登録更新講習機関ではありません。両方の登録を持つスクールもありますが、制度としては別物なので確認してください。
学科講習
| 科目 | 一等 | 二等 |
|---|---|---|
| 技能証明制度の概要/遵守すべき事項/最近の制度改正/事故・重大インシデント事例/運航ルール・事故防止 | 50分以上 | 50分以上 |
| 一等無人航空機操縦士が留意すべき事項 | 25分以上 | — |
| 失効した者が再確認すべき事項 | 30分以上 | 30分以上 |
| 合計 | 105分以上 | 80分以上 |
最後の「失効した者が再確認すべき事項」は、この課程だけにある科目です。操縦者に求められる役割と責任、安全な飛行のための留意事項、事故発生時に取るべき対応、規制対象となる空域と飛行方法を扱います。
学科講習の修了時には修了確認試験があります。これは対面で行うことが告示で定められています。
なお学科講習は機体の種類によらず共通です。一等と二等の両方を持っていた場合は、一等の学科講習だけ受ければ足ります。
実地講習
| 機体の種類・区分 | 科目 | 講習時間 |
|---|---|---|
| マルチローター・一等 | 緊急着陸を伴う八の字飛行 | 15分以上 |
| マルチローター・二等 | 異常事態における飛行 | 11分以上 |
| ヘリコプター・一等 | 高高度飛行 | 25分以上 |
| ヘリコプター・二等 | 異常事態における飛行 | 15分以上 |
| 飛行機・一等 | 緊急着陸を伴う八の字飛行 | 20分以上 |
| 飛行機・二等 | 八の字飛行 | 20分以上 |
この時間には操縦演習と、それに基づく講師の指導・質疑応答が含まれます(別表第二・第二号)。学科と違い、複数の機体の種類について技能証明を持っていた場合は種類ごとに受講が必要です。
実地講習は操縦シミュレーターで行うこともできます(基準を満たすシミュレーターに限る)。
限定を戻すなら審査が増える
直近に持っていた技能証明が、昼間飛行・目視内飛行・最大離陸重量25kg未満の限定をしていないものだった場合、つまり夜間や目視外、25kg以上に対応していた場合は、それらの限定変更に係る修了審査も併せて受ける必要があります。
限定を解除していた人ほど、受け直す審査が増えます。
ただしこれは「同じ状態まで戻す」場合の話です。今回は昼間・目視内・25kg未満の限定付きでよいと割り切るなら、その分の審査は不要です。実務で夜間や目視外を使っていないなら、あえて限定付きで取り直すのも一つの判断です。
ステップ3:DIPS2.0で新規申請する
更新申請ではなく新規申請です。
- DIPS2.0の技能証明申請者番号の申請情報で、受講する登録講習機関の事務所コードが登録されているか確認する
- 講習を受講する
- 試験合格証明書の交付申請を行う。このとき修了証明書に加えて技能証明書返納証明書を添える
- 技能証明申請システムに「試験合格証明書」「講習の修了証明書」「技能証明書返納証明書」の3点をアップロードする
- 手数料を納付する
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 技能証明書の新規申請手数料 | 3,000円 |
| (参考)更新申請の場合 | 2,850円 |
| 一等を取得する場合 | 上記に加えて登録免許税が必要 |
審査完了後、登録された住所へ技能証明書が郵送されます。二等は審査完了から、一等は登録免許税の納付から、いずれも10開庁日程度が目安です。
3つのタイムリミット
免除には期限があります。講習を受けたまま放置すると、免除が消えます。
| 何の期限か | 期間 |
|---|---|
| この救済ルート自体 | 有効期間の満了日から3年 |
| 学科試験の免除 | 講習を修了した日から3か月 |
| 実地試験の免除 | 講習を修了してから1年 |
厳しいのは学科試験の3か月です。講習を修了したら3か月以内に申請まで進めてください。
更新と再取得はどれだけ違うか
| 更新(期限内) | 再取得(失効から3年以内) | |
|---|---|---|
| 受講先 | 登録更新講習機関 | 登録講習機関 |
| 学科講習 | 一等75分/二等50分 | 一等105分/二等80分 |
| 学科の試験 | なし | 修了確認試験あり(対面) |
| 実地講習 | 原則なし | あり(11〜25分) |
| 実地の審査 | なし | 修了審査あり(実機・新規と同内容) |
| 限定変更 | 区分けなし | 限定を戻すなら審査が追加 |
| 国への手数料 | 2,850円 | 3,000円 |
講習時間そのものは、実は大きく変わりません。決定的に違うのは修了審査があるかどうかです。
更新なら、期限内に手続きするだけで技能は問われません。失効させると、新規と同じ審査に合格しなければ資格は戻りません。
よくある誤解の整理
| 誤解 | 実際 |
|---|---|
| 失効したらゼロから取り直し | 3年以内なら講習は大幅に短縮される |
| 再試験なしで再取得できる | 免除は指定試験機関の学科・実地試験のみ。修了審査は受ける |
| 修了審査も簡略化される | 新規取得と同様の内容。実機で実施 |
| 身体検査も免除される | 免除されない |
| 更新講習機関で受ければよい | 受講先は登録講習機関。制度が別 |
| 限定はそのまま戻ってくる | 限定を解除していた分は修了審査が追加 |
| 講習を受ければいつでも申請できる | 学科試験の免除は修了から3か月で切れる |
いま確認してほしいこと
- 技能証明書を手元に出し、有効期間満了日を確認する
- まだ有効なら、満了日の1か月前を申請の締め切りとしてカレンダーに入れる
- すでに失効しているなら、満了日から3年を過ぎていないか数える
- 3年以内なら、DIPS2.0で返納手続きに進む
- 失効中に操縦から離れていたなら、審査までに実機で飛ぶ時間を確保する
まとめ
失効しても、3年以内なら救済ルートがあります。学科試験と実地試験は免除され、講習時間は10時間が11分になります。
ただし修了審査は新規取得と同じです。減点基準も不合格基準も変わりません。
登録講習機関で修了審査を担当していると、久しぶりに操縦桿を握る方の手つきはすぐに分かります。制度が短縮してくれるのは座学と練習の時間であって、腕ではありません。
更新できるうちに更新する。それがいちばん安く、いちばん確実です。
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登録講習機関講師 フライトデスク 監修



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