教則第5版をやさしく読む20|5.2 操縦者に求められる操縦知識【全文+講師の解説】

教則第5版をやさしく読む20|5.2 操縦者に求められる操縦知識【全文+講師の解説】 ストック記事

今回は手を動かす話です。離陸、ホバリング、降下、着陸。そして手動操縦と自動操縦、緊急時の対応。

この節でおもしろいのは、教則が「離陸と着陸」にこれだけの分量を割いていることです。マルチローター、ヘリコプター、飛行機——3種類それぞれについて、注意点が並びます。飛んでいる最中の話はほとんど出てきません。危ないことは、地面の近くに集まっているからです。

そして最後に、教則がはっきり書いている一文があります。「離陸地点などに戻すことを前提とせず、速やかに近くの安全な無人地帯へ不時着させる」。——「帰還ボタン」を押したくなる気持ちとは逆のことが書かれています。なぜなのかも見ていきます。

教則第5版 5.2 操縦者に求められる操縦知識(全文)

出典:国土交通省「無人航空機の飛行の安全に関する教則(第5版)」(令和8年7月7日公布・令和8年7月14日適用)。読みやすさのためレイアウトを再構成し、原本で混在している英数字の全角・半角を半角にそろえています。本記事は国土交通省の公式なものではありません。

離着陸時の操作

  • (1) 離着陸時に特に注意すべき事項(回転翼航空機(マルチローター))
  • 1) 離陸

回転翼航空機(マルチローター)はコントローラー等によるスロットル操作によって高速に回転する翼から発せられる揚力が重力を上回ることにより離陸する。

機体重量 1.5kg ほどの回転翼航空機(マルチローター)を例にすると、離陸直後から対地高度1m程度までの間は、回転翼から発せられる吹きおろしの気流が地面付近で滞留し、揚力が増す現象「地面効果」が起こりやすくなる。

  • 2) ホバリング

離陸後、任意の対地高度で一定の高度と位置を継続的に維持することをホバリングという。ホバリング状態の機体は回転翼から発せられる揚力と、重力のバランスが保たれている状態を維持している。

回転翼航空機(マルチローター)には飛行時に高い安定性を確保するために方位センサ、地磁気センサや GNSS 受信機、気圧センサが用いられている。

緊急時にはセンサ類に頼らない手動操作によるホバリングも要求される。

  • 3) 降下

機体を降下させるには、スロットル操作を徐々に弱め揚力を減少させる。機体を垂直降下させる時に、吹きおろした空気が再び吸い込まれ、回転翼の上下で空気の再循環が発生し急激に揚力を失う現象「ボルテックス・リング・ステート」が発生する。降下の際は水平方向の移動を合わせて操作することで墜落防止対策となる。

  • 4) 着陸

降下を継続し着陸を行う際には、対地高度に応じて降下速度を減少させる。着地後にコントローラーでローターの回転を停止させる。

  • 5) GNSS を使用しない操作

緊急時には GNSS 受信装置による機体位置推定機能を使用しない機体操作が求められる。

  • 6) GNSS を使用しないホバリング

ホバリング中 GNSS 受信機能を無効にすると、機体周辺の気流の影響で水平位置が不安定となるためエレベーター操作及びエルロン操作により水平位置を安定させホバリング飛行を維持させる。

  • 7) GNSS を使用しない着陸

上述の操作によりホバリングを安定させながら、スロットル操作により機体を降下させ着陸させる。機体を垂直降下させる時に発生する「ボルテックス・リング・ステート」や、「地面効果」を抑制するために、細かくエレベーター又はエルロン操作などを行いながら、機体を着地させ着陸を完了させる。

  • (2) 離着陸時に特に注意すべき事項(回転翼航空機(ヘリコプター))
  • 1) 離着陸地点の選定
  • ⚫ 水平な場所を選定すること。離着陸直前は、機体が水平となるため、傾斜地ではテール部などが地面に接触する恐れがある。
  • ⚫ 滑りやすい場所を避けること。離陸前は、ヨー軸まわりの制御が不十分な場合があり、ヨー軸を中心に回転する恐れがある。
  • ⚫ 砂又は乾燥した土の上は避けること。ローターのダウンウォッシュによる砂埃等が飛散し、視界を遮るおそれがある。
  • 2) 離陸方法
  • ⚫ 十分にローター回転が上昇してから、離陸すること。ローター回転が低い状態で無理に離陸させると、機体の反応が遅れることがあり、危険である。
  • ⚫ テールローターの作用で、離陸時に機体が左右いずれかに傾く場合がある。傾く方向はローターの回転方向により異なる。予め傾く方向を確認した上で、離陸させること。
  • ⚫ ローター半径以下の高度では、地面効果の影響が顕著となり、機体が不安定になる。離陸後は速やかに地面効果外まで機体を上昇させること。
  • ⚫ やむを得ない場合を除き、垂直方向の急上昇は避けること。ローター回転が低下し、機体が不安定になるおそれがある。
  • 3) 着陸方法
  • ⚫ 地面に近づくにつれ、降下速度を遅くし、着陸による衝撃を抑えること。衝撃が大きい場合、脚部が変形又は破損するおそれがある。
  • ⚫ 地面効果範囲内のホバリングは避け、速やかに着陸させること。
  • ⚫ 接地後、ローターが停止するまで、機体に近づかないこと。
  • (3) 離着陸時に特に注意すべき事項(飛行機)
  • 1) 離着陸地点の選定
  • ⚫ 滑走路は水平で草などが伸びていない場所を選定すること。傾斜地では滑走中に不安定になり、また草などが伸びているとプロペラに接触し飛行ができないおそれがある。
  • ⚫ 飛行機の離着陸は風向が重要である。離着陸の方向は向かい風を選ぶのが原則である。横風であってもできる限り向かい風方向を選択する。追い風で行うと失速の危険性が生じ、失速しない速度にすると滑走路を逸脱する危険が生じる。
  • 2) 離陸方法
  • ⚫ 向かい風方向に滑走できるエリアを確保できたら離陸操縦に入る。
  • ⚫ 風速を考慮し適切なパワーをかけてエレベーターによる上昇角度をとり離陸する。
  • ⚫ 上昇角度は失速しないように設定する。安全な高度まで機体を上昇させる。
  • 3) 着陸方法
  • ⚫ 向かい風方向に滑走できるエリアを確保できたら着陸操縦に入る。
  • ⚫ 地面に近づくにつれ、降下速度を遅くし、滑空着陸による衝撃を抑えること。衝撃が大きい場合、脚部が変形又は破損するおそれがある。
  • ⚫ 目測の誤りにより滑走路を逸脱することがあるので、厳重に注意が必要である。
  • (4) カテゴリーⅢ飛行において追加で必要となる離着陸の注意点〔一等〕

カテゴリーⅢ飛行は立入管理措置を講ずることなく行うものであるため、その飛行形態に応じて第三者の立入りがあるものと認識したリスク評価において、離着陸に関して考慮する注意点の例としては以下のとおり。

  • ⚫ 離着陸に際しては、第三者及び第三者の物件と機体が接触するなど第三者の安全が損なわれるおそれがないようにする。
  • ⚫ 離着陸時ローターから発せられる風の影響を受け、物などが飛ばされ、第三者及び第三者の物件に危害を加えることがないようにする。
  • ⚫ 第三者の物件等が多いエリアでの離着陸が考えられることから、家屋の壁面などの構造物の近接による機体のタウンウォッシュの跳ね返り等により、離着陸時に機体が不安定になることが考えられるような環境はあらかじめ離着陸エリアから除外する。
  • ⚫ 第三者の物件等が多いエリアでは、離着陸エリア上空周辺に電線などの障害物がない、又はこれを回避できる空域をあらかじめ選定する。

手動操縦及び自動操縦

  • (1) 手動操縦・自動操縦の特徴とメリット
  • 1) 無人航空機の操縦方法(自動操縦と手動操縦)

無人航空機は優れた安定性と高い飛行性能から、人による手動操縦だけでなく、アプリケーションなどにより事前に設定した飛行経路を正確に飛行することが可能となっている。

飛行自体は自動で飛行し、機体に付属している撮影用カメラなどのみ人が操作するような複合的な操縦も行える。

空中写真測量などによる飛行では測地エリアを指定するのみで自動的に飛行経路や撮影地点をプランニングする機能も備えられている。

手動操縦は送信機のスティックにより機体の移動を命令して行う。操縦者の操縦技量によって飛行の安定性に差が生じるが、操縦技量が向上すると自動操縦では実現できない複雑で変化に対応した機体の操作が行える。

  • 2) 手動操縦の特徴とメリット

無人航空機の安定飛行に必要な GNSS 受信機やセンサを用いた機体を、コントローラースティックで意図した方向に飛行させるが、その制御は全て人が行う。

操縦者の習熟度によって飛行高度の微調整や回転半径や飛行速度の調整、遠隔地での高精度な着陸など細かな操作が行え、複雑な構造物の点検作業や耕作地の農薬散布、映画のような芸術性を要求される空撮などでは手動操縦で行われることもある。

安定した飛行に使われている GNSS 受信機や電子コンパス、気圧センサなどが何らかの原因により機能不全に陥ったときには手動操縦による危険回避が求められる。

定められた航路を高精度に飛行をするなど、高い再現性を求められる操縦には不向きである。

  • 3) 自動操縦の特徴とメリット

飛行を制御するアプリケーションソフトに搭載されている地図情報に、予め複数の飛行時のウエイポイント(経過点)を設定し飛行経路を作成する。ウェイポイントは地図上の位置情報の設定だけでなく、機体の向きや高度、速度など詳細な設定が可能である。

手動操縦に比較して、再現性の高い飛行を行うことができるため、経過観察が必要とされる用地や、離島への輸送、生育状況を把握する耕作地などの飛行に利用される。

  • (2) 自動操縦におけるヒューマンエラーの傾向

ウェイポイント設定時、飛行経路上の障害物等の確認不足によって衝突や墜落が発生することが想定できる。設定した飛行経路上の障害物等は事前に現地確認を行うこと。

  • (3) 手動操縦におけるヒューマンエラーの傾向

手動操縦は無人航空機を精密に制御できる反面、操縦経験の浅い操縦士が操作を行うと様々な要因で意図しない方向に飛行してしまう場合がある。

これは操縦者の視線と回転翼航空機の正面方向が異なる場合に発生しやすい。さらに機体と操縦者との距離が離れると機体付近の障害物などとの距離差が掴みにくくなり接触しやすい状況となる。

これらのリスク回避には、機体をあらゆる方向に向けても確実に意図した方向や高度に制御できる訓練や、指定された距離での着陸訓練などが有効となる。

  • (4) 自動操縦と手動操縦の切り替えにおける操作上の注意と対応

自動操縦中、下記のような状況下で手動操作に切り替える場合がある。

  • ⚫ 作業指示による手動操作
  • ⚫ 何らかの原因で不安定な飛行と判断した場合

手動操縦に切り替えた後は、急な飛行速度の低下や失速に備えた操作準備や、障害物への接近を避けるための機体方向の確認、ホバリングしての機体の安定性や周囲の安全の確認などが必要となる。また、必要に応じ、鳥などの野生動物からの妨害を想定した防御等、手動操縦への切り替えを速やかに行える等の体制を整えておくこと。

  • (5) カテゴリーⅢ飛行において追加となる自動操縦の注意点〔一等〕

カテゴリーⅢ飛行は立入管理措置を講ずることなく行うものであるため、その飛行形態に応じて第三者の立入りがあるものと認識したリスク評価において、自動操縦に関して考慮するべき注意点の例としては以下のとおり。

  • ⚫ 可能な限り第三者の立入りが少ない飛行経路及び送電線や構造物が障害とならない飛行範囲を事前に確認し設定すること。
  • ⚫ 飛行経路付近に地上の第三者の立入りが少ないこと等の条件を考慮した緊急着陸地点や不時着エリアを予め設定すること。
  • ⚫ 第三者がいる地上の状況が想定と異なる場合等に備え、手動操縦への切り替えも含め、状況変化に速やかに対応できる体制を整えておくこと。

緊急時の対応

緊急時には、離陸地点などに戻すことを前提とせず、速やかに近くの安全な無人地帯へ不時着させる。

  • (1) 機体のフェールセーフ機能

送信電波や電源容量の減少などにより飛行が継続できない場合、又は継続できないことが予想される場合は、予め飛行制御アプリケーションのフェールセーフ機能により、自動帰還モードへ切り替わり、離陸地点へ飛行する。さらにバッテリー残量が極端に少ない場合などはその場で自動着陸を試みる。フェールセーフ機能発動時、機体の動作をホバリング、その地点での着陸、自動帰還などの設定を行うことができる機体もある。

フェールセーフ機能発動中にバッテリー残量不足等により飛行が継続できない場合、又は予想される場合、機体は着陸動作に遷移し着陸を試みる。

  • (2) 事故発生時の運航者の行動

運航者は、事故発生時においては、直ちに無人航空機の飛行を中止するとともに、負傷者がいる場合には、第一にその負傷者の救護及び緊急通報、事故等の状況に応じた警察への通報、火災が発生している場合の消防への通報など、危険を防止するための必要な措置を講じ、次に当該事故が発生した日時及び場所等の必要事項を国土交通大臣に報告しなければならない。

  • (3) カテゴリーⅢ飛行において追加となる緊急時対応手順〔一等〕

カテゴリーⅢ飛行は立入管理措置を講ずることなく行うものであるため、その飛行形態に応じて第三者の立入りがあるものと認識してリスクの分析及び評価を行い、その結果に基づくリスク軽減策を講じる必要がある。例えば、カテゴリーⅢ飛行の際に緊急対応が求められる場合に備えて、予め対応手順を設定するとともに、速やかに当該対応が実施できるよう訓練を実施することが考えられる。その際に考慮すべき項目の例を以下に示す。

  • ⚫ GNSS による位置の安定機能を用いない飛行訓練
  • ⚫ 機体寸法に応じた緊急着陸地点の確保
  • ⚫ フェールセーフ機能が動作しない飛行距離等の把握
  • ⚫ 墜落時の安全優先順位の明確化
  • ⚫ 機体が発火した際の消火方法
  • ⚫ 緊急連絡網の作成

ここからは私の解説です

この節がいちばん言いたいこと

ひとことで言うと、「危ないことは、地面の近くで起きる」ということです。

この節の前半は、まるごと離着陸の話です。マルチローター、ヘリコプター、飛行機の3種類について、それぞれ注意点が並びます。一方で、巡航中の操作についてはほとんど書かれていません。

理由は単純だと思っています。地面が近いと、逃げ場がない。高度がある場所なら立て直せる異常も、対地1mでは間に合いません。教則が離着陸にこれだけの文字数を使っているのは、そういうことだと読んでいます。

〔一等〕は3か所。やはりカテゴリーⅢの話です

この節の〔一等〕は(4)離着陸/(5)自動操縦/(3)緊急時対応手順の3つで、いずれもカテゴリーⅢ飛行で追加される注意点です。それ以外——3機種の離着陸も、手動と自動の話も、フェールセーフも、全部が二等の範囲になります。

マルチローターは、2つの現象を覚えれば足ります

教則がマルチローターの離着陸で名前を挙げている現象は2つだけです。そしてどちらも地面の近くで起きます。

現象 いつ起きて、どうなるか
地面効果 離陸直後から対地高度1m程度まで(機体重量1.5kgほどの機体の例)。吹きおろしの気流が地面付近で滞留し、揚力が増す
ボルテックス・リング・ステート 垂直に降下させたとき。吹きおろした空気を再び吸い込み、回転翼の上下で空気が再循環して急激に揚力を失う

この2つ、効き方が逆です。地面効果は揚力が増える、ボルテックス・リング・ステートは揚力が減る。片方は「浮きすぎる」、もう片方は「落ちる」。

そして、ボルテックス・リング・ステートには教則が対策を1行で書いています。

降下の際は水平方向の移動を合わせて操作することで墜落防止対策となる。

まっすぐ降ろさない。少し横に流しながら降ろす。それだけで、自分が吹きおろした空気の中に入り込まずに済みます。「垂直降下は避ける」——この一言が、この節でいちばん実務に効く知識だと私は思っています。

「センサに頼らないホバリング」は、なぜ求められるのか

ホバリングの項に、さらっとこう書かれています。

緊急時にはセンサ類に頼らない手動操作によるホバリングも要求される。

そのすぐ前の文で、教則は安定飛行に使われているものを4つ挙げています。方位センサ、地磁気センサ、GNSS受信機、気圧センサ。前回・前々回で読んだものばかりです。

つまり、こういうことです。いつも機体が勝手に止まってくれているのは、この4つが働いているから。どれかが不調になれば、その分を人が引き受けることになります。

教則は、GNSSを使わないときの具体的な操作まで書いています。

ホバリング中GNSS受信機能を無効にすると、機体周辺の気流の影響で水平位置が不安定となるためエレベーター操作及びエルロン操作により水平位置を安定させホバリング飛行を維持させる。

エレベーター(前後)とエルロン(左右)で位置を保つ。スロットルは高さ、ラダーは向き。流された分を戻し続けるのがGNSSなしのホバリングです。

その訓練は、標準マニュアルに書いてあります

「では、どのくらい練習すればいいのか」。教則は答えていませんが、航空局の標準マニュアル(①②とも)の2-1に、具体的な内容があります。

段階 内容
基本的な操縦技量
(10時間以上の操縦練習)
離着陸=操縦者から3m離れた位置で3mの高さまで離陸し指定の範囲内に着陸、5回連続
ホバリング=目線の高さで半径1mの範囲内にとどまる
左右方向・前後方向の移動=20m離れた着陸地点へ、各5回連続
水平面内での飛行=一定の高さを維持し指定地点を順番に、5回連続
業務のために必要な操縦技量 対面飛行(左右・前後・水平面内を円滑に)
飛行の組合せ=10m離れた地点で水平飛行と上昇下降、5回連続
8の字飛行、5回連続

ホバリングは「半径1mの範囲内」。この数字を知っておくと、練習のときの目標がはっきりします。目線の高さで、1mの円から出ない。意外と難しいのですが、それができて初めて基本ができたことになります。

ヘリコプターは、マルチと注意点が別物です

二等の方も、機体の種類ごとの特徴は範囲に入っています。マルチとの違いで覚えると整理しやすいので、並べてみます。

ヘリコプター特有の注意 理由(教則が書いていること)
水平な場所を選ぶ 離着陸直前は機体が水平になるため、傾斜地ではテール部などが地面に接触する恐れ
滑りやすい場所を避ける 離陸前はヨー軸まわりの制御が不十分な場合があり、ヨー軸を中心に回転する恐れ
砂・乾燥した土を避ける ローターのダウンウォッシュで砂埃が飛散し、視界を遮る
十分にローター回転が上昇してから離陸 回転が低いと機体の反応が遅れる
離陸時に左右いずれかに傾くことを想定 テールローターの作用。傾く方向はローターの回転方向により異なるので、あらかじめ確認しておく
ローター半径以下の高度は速やかに抜ける 地面効果の影響が顕著で機体が不安定になる
垂直方向の急上昇を避ける ローター回転が低下し、機体が不安定になるおそれ
接地後、ローターが停止するまで近づかない (教則は理由を書いていませんが、大型のローターは止まるまで時間がかかります)

ここで気づいていただきたいのが、地面効果の範囲の書き方の違いです。マルチローターでは「1.5kgほどの機体で対地高度1m程度まで」と重量を挙げて説明していますが、ヘリコプターでは「ローター半径以下の高度」という書き方になっています。

地面効果の範囲は、機体の大きさで決まる。——だから小さな機体では数十cm、大きな機体ではもっと高いところまで効く、ということです。数字を絶対値で覚えず、「ローターの大きさ次第」と覚えておくほうが、実際の機体に当てはめやすくなります。

飛行機は、風向きがすべてです

飛行機の項でいちばん強く書かれているのは向かい風です。

飛行機の離着陸は風向が重要である。離着陸の方向は向かい風を選ぶのが原則である。横風であってもできる限り向かい風方向を選択する。追い風で行うと失速の危険性が生じ、失速しない速度にすると滑走路を逸脱する危険が生じる。

ここは論理をたどっておくと忘れません。飛行機の揚力は翼にあたる空気の速さで決まります。追い風だと、地面に対して速く走っていても翼にあたる空気は遅い。だから失速しやすい。

では失速しないように速く走ればいいかというと、今度は地面に対する速度が出すぎて滑走路をはみ出す。どちらを取っても危ない——だから向かい風なのです。

もう1つ、地味ですが草の話が入っています。「草などが伸びているとプロペラに接触し飛行ができないおそれがある」。滑走路は水平で、草が伸びていない場所。これも覚えておきたいところです。

手動と自動——教則は「どちらが上」とは書いていません

ここからは(1)手動操縦・自動操縦の話です。教則の書き方をそのまま表にすると、きれいに裏返しの関係になっているのが分かります。

教則が書いていること
手動操縦 制御はすべて人が行う。習熟度によって高度の微調整・回転半径・飛行速度の調整・遠隔地での高精度な着陸など細かな操作が行える。
用途=複雑な構造物の点検、農薬散布、芸術性を要求される空撮など。
センサが機能不全に陥ったときの危険回避も手動。
ただし高い再現性を求められる操縦には不向き
自動操縦 地図情報にウェイポイントを設定して経路を作る。位置だけでなく機体の向き・高度・速度まで設定できる。
再現性の高い飛行ができる。
用途=経過観察が必要な用地、離島への輸送、生育状況を把握する耕作地など

手動は「変化に対応できるが、同じことを繰り返せない」。自動は「同じことを繰り返せるが、変化に対応できない」。——この一対で覚えるのが、いちばんすっきりすると思います。

ヒューマンエラーの傾向も、きれいに逆です

(2)と(3)を並べると、間違え方まで正反対だと分かります。

どちらの操縦か 教則が挙げる間違え方と、その対策
自動操縦 ウェイポイント設定時、飛行経路上の障害物等の確認不足による衝突や墜落。
対策=設定した飛行経路上の障害物等は事前に現地確認を行う
手動操縦 操縦者の視線と回転翼航空機の正面方向が異なる場合に意図しない方向へ飛びやすい。
機体と操縦者の距離が離れると障害物との距離差がつかみにくい。
対策=あらゆる方向に向けても意図した方向・高度に制御できる訓練と指定された距離での着陸訓練

自動のエラーは飛ばす前(机の上)で起きます。手動のエラーは飛ばしている最中(現場)で起きます。だから対策も、片方は「事前の現地確認」、もう片方は「訓練」になっているのです。

そして手動のほうは、先ほどの標準マニュアルの訓練項目とぴたり対応しています。「あらゆる方向に向けても意図した方向に制御できる訓練」=対面飛行。「指定された距離での着陸訓練」=3m離れた位置から3mの高さ、指定範囲内に着陸。教則が言っている訓練は、抽象論ではなく、あの練習メニューのことだと分かります。

自動から手動へ切り替えるとき、何をするか

(4)は、実務でいちばん緊張する場面の話です。教則が挙げる切り替えの理由は2つ。作業指示による手動操作と、何らかの原因で不安定な飛行と判断した場合。

そして、切り替えた「後」にやることが4つ書かれています。

  • 急な飛行速度の低下や失速に備えた操作準備
  • 障害物への接近を避けるための機体方向の確認
  • ホバリングして機体の安定性や周囲の安全を確認
  • 必要に応じ、鳥などの野生動物からの妨害を想定した防御等

3つ目に注目してください。切り替えたら、まず止まる。いきなり動かすのではなく、ホバリングで機体と自分の状態を合わせる。——これは実際の現場でも、そのまま使える手順だと思います。

そして教則は、この項をこう締めています。「手動操縦への切り替えを速やかに行える等の体制を整えておくこと」。切り替えは、その場の反射ではなく、あらかじめ整えておく体制だという位置づけです。

緊急時——教則は「戻すな」と書いています

「緊急時の対応」の書き出しが、この節でいちばん強い一文です。

緊急時には、離陸地点などに戻すことを前提とせず、速やかに近くの安全な無人地帯へ不時着させる。

戻すことを前提としない。ここは、多くの方の感覚と逆かもしれません。何かあったら帰還ボタン、と考えがちだからです。

ですが、考えてみてください。異常が起きている機体を、自分のいる場所まで長い距離飛ばして連れ帰る——その途中で落ちたら、どこに落ちるか分かりません。いま真下が安全なら、いま降ろすほうが確実です。

その直後に書かれている(1)のフェールセーフ機能は、機体側の自動的な動きの説明です。

状況 機体がすること
送信電波や電源容量の減少などで飛行が継続できない(と予想される) フェールセーフ機能により自動帰還モードへ切り替わり、離陸地点へ飛行する
さらにバッテリー残量が極端に少ない その場で自動着陸を試みる
フェールセーフ発動中に飛行が継続できない(と予想される) 着陸動作に遷移し着陸を試みる

教則は、機体によってはホバリング/その地点での着陸/自動帰還を設定できるとも書いています。

つまり、「戻す」は機体が自動でやること、「戻さず降ろす」は人が判断すること。この2つは矛盾していません。機体の初期設定が自動帰還だからといって、それが常に最善とは限らない——教則の書き出しは、そう読むのが自然だと私は考えています。設定を確認しておくこと自体が、飛行前の準備の一部です。

事故が起きたときの行動は、何度も同じことが書かれています

(2)の事故発生時の行動は、2.3でも、5.1の表でも読んだ内容です。

直ちに飛行を中止 → 第一に負傷者の救護と緊急通報 → 状況に応じて警察へ通報/火災なら消防へ → 次に国土交通大臣へ報告。

教則が3回も書いているということは、ここだけは順番まで含めて体に入れておけという意図だと受け取っています。報告より先に、人を助ける。

この回の数字まとめ

  • この節の〔一等〕は3か所(離着陸/自動操縦/緊急時対応手順)。すべてカテゴリーⅢ。3機種の離着陸も手動・自動もフェールセーフも二等の範囲
  • 地面効果=離陸直後から対地高度1m程度まで(機体重量1.5kgほどの例)。吹きおろしが滞留して揚力が増す
  • ボルテックス・リング・ステート=垂直降下で空気が再循環し急激に揚力を失う。対策=水平方向の移動を合わせる
  • ホバリングの安定に使われるもの=方位センサ・地磁気センサ・GNSS受信機・気圧センサ
  • GNSSなしのホバリング=エレベーター操作及びエルロン操作で水平位置を安定させる
  • ヘリコプター=水平な場所(テール接触)/滑りやすい場所を避ける(ヨー軸で回転)/砂・乾燥した土を避ける(ダウンウォッシュで砂埃)/ローター半径以下の高度で地面効果が顕著/テールローターで左右に傾く(方向はローターの回転方向による)/接地後はローターが止まるまで近づかない
  • 飛行機=向かい風が原則。追い風は失速の危険、失速しない速度にすると滑走路を逸脱。滑走路は水平で草が伸びていない場所
  • 手動=細かな操作ができるが再現性に不向き/自動=再現性が高い
  • ヒューマンエラー=自動はウェイポイント設定時の障害物確認不足(対策=事前の現地確認)/手動は視線と機体の正面方向が異なるときと距離が離れたとき(対策=訓練)
  • (標準マニュアル)基本的な操縦技量=10時間以上。ホバリングは半径1mの範囲内、離着陸は3m離れて3mの高さ、左右・前後の移動は20m、飛行の組合せは10m、いずれも5回連続
  • 緊急時=離陸地点に戻すことを前提とせず、近くの安全な無人地帯へ不時着

おわりに

この回でいちばん持ち帰っていただきたいのは、「垂直に降ろさない」と「戻すことを前提としない」の2つです。

どちらも、やってしまいがちな操作を名指しで止めているのが共通点です。まっすぐ降ろすのはいちばん簡単な操作ですし、異常時に帰還ボタンを押すのはいちばん安心できる操作です。その「簡単で安心な操作」が、条件によっては危ない——教則がわざわざ書いているのは、そこだと思います。

そして、この節の裏側にはずっと訓練があります。センサに頼らないホバリング、対面飛行、指定距離での着陸。教則が求めているのは知識ではなく、手が覚えていることです。ぜひ、次に飛ばすときに1つでも試してみてください。

次回は「5.3 操縦者のパフォーマンス」と「5.4 安全な運航のための意思決定体制(CRM等の理解)」。疲れ、ストレス、そしてチームで飛ばすときの話です。機械でも操作でもなく、人そのものを扱う短い2節を、まとめて読みます。

出典

  • 国土交通省「無人航空機の飛行の安全に関する教則(第5版)」令和8年7月7日公布・令和8年7月14日適用
  • 国土交通省航空局「無人航空機 飛行マニュアル」(標準マニュアル①②)令和7年12月26日版 2-1 無人航空機を飛行させる者の訓練

本記事の内容は2026年8月時点のものです。フェールセーフの動作や設定できる項目は機体によって異なりますので、実際の運用ではお使いの機体の説明書でご確認ください。なお、教則の(4)の本文には「タウンウォッシュ」という表記がありますが、直前の(2)で使われている「ダウンウォッシュ」(ローターが吹きおろす風)のことと読めます。全文パートは原本の表記のまま掲載しています。

この章を、問題で確認する

ここは学科試験では「操縦者及び運航体制」の分野にあたります。読んだ直後に解くと、取り違えていた箇所がその場で分かります。

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