教則第5版を開いて、最初の関門が第2章です。数字も計算も出てこないのに、なぜか点が取りにくい。「常識で答えられそう」と読み飛ばして、あとで失点する——そんな経験はありませんか。
私は登録講習機関で学科を教えています。第2章でつまずく方の多くは、内容が難しいからではなく、「教則が何を求めているか」を自分の言葉に直せていないだけです。今回は「2.1 操縦者の役割と責任」を読みます。
教則第5版 2.1 操縦者の役割と責任(全文)
出典:国土交通省「無人航空機の飛行の安全に関する教則(第5版)」(令和8年7月7日公布・令和8年7月14日適用)。読みやすさのためレイアウトを再構成し、原本で混在している英数字の全角・半角を半角にそろえています。本記事は国土交通省の公式なものではありません。
操縦者としての自覚
- ① 無人航空機の運航や安全管理などに対して責任を負うこと。
- ② 知識と能力に裏付けられた的確な判断を行うこと。
- ③ 操縦者としての自覚を持ち、あらゆる状況下で、常に人の安全を守ることを第一に考えること。
役割分担の明確化
- ① 無人航空機操縦者技能証明(以下単に「技能証明」という。)の保有者が複数いる場合は、誰が意図する飛行の操縦者なのか飛行前に明確にしておくこと。
- ② 補助者を配置する場合は、役割を必ず確認し、操縦者との連絡手段の確保など安全確認を行うことができる体制としておくこと。
準備を怠らない
無人航空機の事故は、飛行前の様々な準備不足が直接的又は間接的な原因となっていることが多いことから、事前の準備を怠らないこと。レクリエーション目的で飛行する場合でも、業務のために飛行する場合でも、安全に飛行するためのルールに関する情報、リソース、ツールを入手すること。
ルール・マナーの遵守
- ① 安全のために、法令やルールを遵守すること。
- ② 空域は、無人航空機のみでなく航空機も利用している。航空機と無人航空機との間で飛行の進路が交差し、又は接近する場合には、航空機の航行の安全を確保するため、無人航空機側が回避する行動をとること。
- ③ 飛行させる場所ごとのルールや遵守事項に従い、一般社会通念上のマナーを守るとともに、モラルのある飛行を行うこと。
- ④ 飛行に際しては、騒音の発生に注意をすること。
無理をしない
- ① 自然を侮らず、謙虚な気持ちで、無理をしないこと。
- ② 計画の中止や帰還させる勇気を持つこと。危険な状況を乗り切ることよりも、危険を事前に回避することの方が重要である。
社会に対する操縦者の責任
操縦者は、飛行を開始してから終了するまで、全てに責任を問われる。操縦者の最も基本的な責任は、飛行を安全に成し遂げることにある。したがって、飛行の全体にわたって安全を確保するための対策を実施する必要があり、その責任は操縦者が負っていることを自覚すること。
第三者及び関係者に対する操縦者の責任
第三者や関係者が危険を感じるような操縦をしない、第三者が容易に近付くことのないような飛行経路を選択するなど、常に第三者及び関係者の安全を意識すること。
事故を起こしたときに操縦者が負う法的責任
衝突や墜落等の事故を起こした場合に、操縦者は、「刑事責任」「民事責任」を負うことがあり、また「行政処分」を受けることがある。
- (1) 刑事責任
衝突や墜落により死傷者が発生した場合、事故の内容により「業務上過失致死傷」などの刑事責任(懲役、罰金等)を負う場合がある。
- (2) 民事責任
操縦者は、被害者に対して民法に基づく「損害賠償責任」を負う場合がある。
- (3) 行政処分等
航空法(昭和 27 年法律第 231 号)への違反や無人航空機を飛行させるに当たり非行又は重大な過失があった場合には、次のような行政処分等の対象となる。
- ① 技能証明の効力の取消
- ② 技能証明の効力の停止(期間は1年、6 月、3 月のいずれか)
- ③ 文書警告
- ④ 口頭注意
ここからは私の解説です
この節がいちばん言いたいこと
2.1を通して読むと、ひとつの考え方が繰り返し出てきます。「安全の責任は、機体ではなく人が負う」ということです。
「操縦者としての自覚」の3項目も、「社会に対する操縦者の責任」も、主語はすべて操縦者です。どれだけ高性能な機体でも、自動で戻ってくる機能が付いていても、責任の所在は動きません。ここを押さえておくと、この節の細かい記述がひとつながりに見えてきます。
「誰が操縦者か」を決めておく、という地味で大事な話
「役割分担の明確化」は、読み飛ばされやすいところです。けれど現場ではいちばん起きます。
たとえば、技能証明を持った方が3人いる現場。「今日は誰が飛ばす?」があいまいなまま準備が進み、機体の点検は誰かがやったはず、申請の確認も誰かがしたはず——という状態で離陸してしまう。これは実際に起こります。教則が「飛行前に明確にしておくこと」とわざわざ書いているのは、そういう空白ができるからです。
補助者についても同じです。「見ていてください」だけでは役割を決めたことになりません。教則は役割の確認と操縦者との連絡手段の確保をセットで求めています。声が届かない距離に立ってもらうなら、無線やインカムをどうするかまで決めて、はじめて体制が整ったといえます。
「準備不足が原因のことが多い」は、実際に数えられている
教則は「事故は飛行前の準備不足が直接的又は間接的な原因となっていることが多い」と書いています。これは印象論ではありません。航空法では事故や重大インシデントが起きたときの国土交通大臣への報告が義務づけられていて、報告された事案は国土交通省のサイトで一覧として公表されています(無人航空機の事故等の報告及び負傷者救護義務|国土交通省)。発生日時、機体の型式、事案の概要、再発防止策までが並んでいます。
一度ご覧になることをおすすめします。自分が事故を起こせば、同じ形式でそこに載る——そう思って読むと、「社会に対する操縦者の責任」という言葉の手触りが変わります。
行政処分は「点数」で決まる(教則には書かれていない部分)
教則2.1は、行政処分として「取消」「効力の停止(1年、6月、3月)」「文書警告」「口頭注意」の4つを挙げるだけで、どの違反がどれに当たるのかは書いていません。
その部分は、国土交通省航空局が別に定めた基準にあります。無人航空機操縦者技能証明に係る行政処分に関する基準(令和7年1月6日制定・国空無機第76233号)です。ここには違反ごとの点数表があり、合計点で処分が決まる仕組みになっています。
まず、点数と処分の対応です。
| 点数 | 処分等の内容 |
|---|---|
| 1〜2 | 口頭注意 |
| 3〜5 | 文書警告 |
| 6〜8 | 技能証明の効力の停止3月 |
| 9〜11 | 技能証明の効力の停止6月 |
| 12〜14 | 技能証明の効力の停止1年 |
| 15〜 | 技能証明の効力の取消 |
教則が挙げていた4つの処分が、そのままこの表に並んでいるのが分かると思います。「1年、6月、3月」という順番も一致します。
次に、点数表から主なものを抜き出します。
| 処分事由 | 点数 |
|---|---|
| 事故が発生した場合に危険防止措置を講じない | 15 |
| アルコール・薬物の影響下での飛行 | 15 |
| 飛行計画の変更指示に従わない飛行 | 15 |
| 限定をされた技能証明を受けた者による限定外の種類・方法での特定飛行 | 14 |
| 飛行前確認・衝突予防措置を行わないこと | 14 |
| 承認を受けずに行う夜間・目視外・30m未満・催し上空飛行 | 14 |
| 飛行禁止空域での飛行等 | 11 |
| 飛行計画を通報しない特定飛行 | 10 |
| 機体登録を受けていない機体の供用 | 8 |
ここで気づいていただきたいことが2つあります。
ひとつめ。アルコールの影響下での飛行は、それだけで15点です。 表に戻ると、15点は「取消」です。事故を起こしたかどうかに関係なく、一度で技能証明を失いかねない扱いになっています。教則が第2章から一貫して飲酒に厳しいのは、こういう裏づけがあるからです。
ふたつめ。「飛行前確認・衝突予防措置を行わないこと」が14点——つまり効力の停止1年に届く重さで置かれています。飛行前の確認は、事故が起きて初めて問題になるものではなく、やらなかったこと自体が処分の対象だということです。「準備を怠らない」という節の言葉が、制度の側からも裏打ちされています。
さらにこの基準には、点数を動かす条件もあります。重大な悪意や害意に基づく行為は3点加重、常習的に行っている場合も3点加重。逆に、速やかに是正した場合や、自分から申し出た場合は1〜3点の軽減があります。そして、第三者の死亡・重傷、または複数の第三者の負傷という結果が生じた場合は、点数にかかわらず取消または停止の処分を行うことができるとされています。
過去5年以内に処分を受けていると点数が加重される仕組みもあります。運転免許の点数制度に似た考え方だ、と捉えるとイメージしやすいかもしれません。
試験対策としての読みどころ
2.1は、覚える数字がほとんどありません。数字らしい数字は「効力の停止は1年、6月、3月のいずれか」くらいです。ここは押さえておいてください(「6月」は6か月のことです)。
それ以外は、次の考え方さえ通っていれば、初めて見る言い回しでも判断できます。
- 責任を負うのは操縦者。機体の性能や自動化に委ねる選択肢は正しくない
- 役割は飛行前に決める。飛びながら決めるという選択肢は正しくない
- 航空機と近づいたら無人航空機側が避ける
- 迷ったらやめる・戻す。危険を乗り切ることより、事前に避けるほうが重要
- 趣味の飛行でも準備は同じように必要
逆に、「技量に自信があれば多少の悪条件でも計画どおり完遂する」「高性能な機体なら判断を任せてよい」「補助者の役割は現場で決めればよい」——このような向きの記述は、2.1の考え方と逆になります。
おわりに
2.1は、精神論のように見えて、実は制度の入口です。ここに書かれた「責任」は、行政処分の点数表という形で具体的に運用されています。読み飛ばさずに一度きちんと通しておくと、第3章の規則が「なぜそう決まっているのか」まで含めて頭に入りやすくなります。
次回は「2.2 安全な飛行の確保」を取り上げます。
出典
- 国土交通省「無人航空機の飛行の安全に関する教則(第5版)」令和8年7月7日公布・令和8年7月14日適用
- 国土交通省航空局安全部無人航空機安全課長「無人航空機操縦者技能証明に係る行政処分に関する基準」令和7年1月6日制定(国空無機第76233号)
- 国土交通省「無人航空機の事故等の報告及び負傷者救護義務」
本記事の内容は2026年8月時点のものです。制度は改正されることがありますので、最新の情報は必ず国土交通省の公式サイトでご確認ください。
この章を、問題で確認する
ここは学科試験では「操縦者の心得」の分野にあたります。読んだ直後に解くと、取り違えていた箇所がその場で分かります。
分野別に数をこなすなら(登録講習機関講師が作問・全問解説つき・買い切り)
二等 演習250問/演習250問+模試5セット 一等 演習261問/演習261問+模試10セット
登録講習機関講師 フライトデスク 監修



コメント