教則第5版をやさしく読む23|6.2 気象の基礎知識とリスク評価【全文+講師の解説】

教則第5版をやさしく読む23|6.2 気象の基礎知識とリスク評価【全文+講師の解説】 ストック記事

今回は気象です。アプリに入っている問題も、この節がいちばん多い(73問)——それだけ扱う範囲が広い節です。

そして、この節には〔一等〕が1か所もありません。全部が二等の範囲です。天気図の読み方、前線の種類、雲の分類、風の種類。覚えることは多いのですが、丸暗記しなくてもいいように、意味とつながりで整理していきます。

途中で、教則が「風力0から12までの13階級」としか書いていないところに、気象庁の実際の風速をあてはめてみます。すると——私たちが運航で使っている「風速5m/s」「7m/s」が、風力でいうとどのあたりなのかが見えてきます。

教則第5版 6.2 気象の基礎知識とリスク評価(全文)

出典:国土交通省「無人航空機の飛行の安全に関する教則(第5版)」(令和8年7月7日公布・令和8年7月14日適用)。読みやすさのためレイアウトを再構成し、原本で混在している英数字の全角・半角を半角にそろえ、原本の一部の見出しで使われている異体字(康熙部首)を常用の字体に直しています。本記事は国土交通省の公式なものではありません。

気象の重要性及び情報源

  • (1) 無人航空機における気象の重要性

無人航空機を安全に飛行させるための重要な要素の一つが気象である。航空法では「当該無人航空機及びその周囲の状況を目視により常時監視して飛行させること。」とされている。これは目視可能な距離外での無人航空機の飛行を禁止するだけではなく、近距離であっても無人航空機の飛行状況や他の物件との安全な距離が確保されていることを目視で確認できない雲中や濃霧等の気象状態では無人航空機を飛行させてはならないことを意味する。

安全な飛行を実施するためには、まず一般的な天気予報だけではなく、どのような気象情報や予報が提供されているかを理解する必要がある。そして、自らの作業内容、時間、環境に応じて、雲や視程障害、風向風速及び降水等、自ら行う飛行に影響する気象情報を適切に入手、分析して、離陸から着陸に至るまで支障のある気象状況にならないことを確認した後に飛行を開始しなければならない。

  • (2) 安全な飛行を行うために確認すべき気象の情報源

参考となる気象情報には、以下が挙げられる。

  • ⚫ アメダス
  • ⚫ 気象レーダー
  • ⚫ 実況天気図、予報天気図、悪天解析図

インターネットを活用した気象情報の入手も有効である。

  • (3) 天気図の見方

天気図には、各地で観測した天気、気圧、気温、風向、風力や高気圧、低気圧、前線の位置及び等圧線などが描かれている。実況天気図、予想天気図から気圧配置、前線の位置、移動速度などを確認する。等圧線の間隔から風の強弱を知ることができ、等圧線の間隔が狭いほど風は強まる。

  • 1) 天気記号

快晴・晴・曇・雨・雪・霧などを表す記号である。

  • 2) 風

天気記号に付いた矢の向きが風向を表す。風が吹いてくる方向に矢が突き出しており、観測では 16又は 36 方位を用いているが、予報では 8 方位で表す。矢羽根の数が風力(気象庁風力階級表による風力の尺度)を表す。風力0~12 までの 13 段階で表す。

  • 3) 気温

天気記号の左上の数字で、摂氏の度数を表す。

  • 4) 気圧

大気の圧力をいい、単位はヘクトパスカル(hPa)で標準大気圧(1気圧)は、1013hPa である。

  • 5) 等圧線

気圧の等しい点を結んだ線をいう。

  • 6) 高気圧

周囲よりも相対的に気圧が高いところを高圧部といい、その中で閉じた等圧線で囲まれたところを高気圧という。北半球では時計回りに等圧線と約 30 度の角度で中心から外へ向かって風を吹き出している。高気圧の中心部では下降気流が発生し一般的に天気はよい。

  • 7) 低気圧

周囲よりも相対的に気圧が低いところを低圧部といい、その中で閉じた等圧線で囲まれたところを低気圧という。北半球では反時計回りに低気圧の中心に向かって周囲から風が吹き込む。中心部では上昇気流が起こり、雲が発生し一般的に天気は悪い。

  • 8) 冬の天気

冬の悪い天気の代表は「雪」と「風」である。シベリア高気圧が優勢になり冬の季節風の吹き出しが始まると、まず気象衛星の雲写真に沿海州から日本海へ流れる帯状の雲が現れる。冬型の天気の典型は西高東低といわれるもので、天気図では西側に高気圧、東側に低気圧という気圧配置で、日本海側に雪をもたらす。

  • 9) 春と秋の天気

日本の天気を支配するのは冬のシベリア高気圧と夏の太平洋高気圧であり、春と秋は両高気圧の勢力が入れ替わるときである。このとき日本付近に両気団の境界ができ、前線が停滞し、広い範囲に悪い天気をもたらし、1週間くらい雨が降り続き、低い雲高や視程障害をもたらす。

  • 10) 前線

温度や湿度の異なる気団(空気の塊)が出会った場合、二つの気団はすぐには混ざらないで境界ができる。境界が地表と接するところを前線という。

  • a. 寒冷前線

発達した積乱雲により、突風や雷を伴い短時間で断続的に強い雨が降る。前線が接近してくると南から南東よりの風が通過後は風向きが急変し、西から北西よりの風に変わり、気温が下がる。

  • b. 温暖前線

層状の厚い雲が段々と広がり近づくと気温、湿度は次第に高くなり、時には雷雨を伴うときもあるが、弱い雨が絶え間なく降る。通過後は北東の風が南寄りに変わる。

  • c. 閉塞前線

寒冷前線が温暖前線に追いついた前線で、閉塞が進むと次第に低気圧の勢力が弱くなる。

  • d. 停滞前線

気団同士の勢力が変わらないため、ほぼ同じ位置に留まっている前線で、長雨をもたらす梅雨前線や秋雨前線がこれにあたる。

  • e. 梅雨前線

梅雨前線とは、四季の変わり目に出現する長雨(菜種梅雨、梅雨、秋霖など)のうち、とくに顕著な長雨、大雨をもたらす停滞前線のことである。

気象の影響

  • (1) 安全な飛行のために知っておくべき気象現象
  • 1) 雲と降水

雲には10種雲形と呼ばれる10種類の雲の形がある。上層雲として巻雲・巻層雲・巻積雲が、中層雲として高層雲・乱層雲・高積雲が、低層雲と下層から発達する雲として積雲・積乱雲・層積雲・層雲がある。このうち層雲系の雲では連続的な降水が、積雲系であれば断続的でしゅう雨性の降水を伴う傾向がある。

  • 2) 風
  • a. 風と気圧

風とは、空気の水平方向の流れをいい、風向と風速で表す。空気は、気圧の高いほうから低いほうに向かうが、この流れが風である。等圧線の間隔が狭いほど風は強く吹く。

  • b. 風向

風向は、風が吹いてくる方向で、例えば、北の風とは北から南に向かって吹く風をいう。風向は 360度を 16 等分し、北から時計回りに北→北北東→北東→東北東→東のように表す。

  • c. 風速

風速は空気の動く早さで、メートル毎秒(m/s)で表す。風は必ずしも一定の強さで吹いているわけではなく、単に風速と言えば、観測時の前 10 分間における平均風速のことをいう。

また、平均風速の最大値を最大風速、瞬間風速の最大値を最大瞬間風速という。風は地面の摩擦を受けるため、一般的に上空では強く地表に近づくにつれて弱くなる。変化の度合いは地表の粗度(樹木や建物などによる凸凹の程度)や風速の大きさによって異なる。一般に地表の粗度が大きいほど、高さによる風速の変化は大きくなる。

  • d. 突風

低気圧が接近すると、寒冷前線付近の上昇気流によって発達した積乱雲により、強い雨や雷とともに突風が発生することがある。日本付近では、天気は西から東に変わるため、西から寒冷前線を伴う低気圧が接近するときは、突風が発生する時間帯を予測することができる。

  • e. 海陸風

気温差があると、気圧差が生じて風が吹く。海陸風は海と陸との気温差によって生じる局地的な風で、日本では、日差しの強い夏の沿岸部で顕著に見られる。地表付近において、日中は、暖まりやすい陸上に向かって風が吹き、夜間は、冷めにくい海上に向かって風が吹く。風が入れ替わるときには、ほぼ無風状態になり、「朝凪」「夕凪」と呼ばれる。

  • f. 山谷風

山岳地帯に現れる風の一種。昼間は、日射で暖められた空気が谷を這い上がる谷風が吹き、夜間は冷えた空気が山から降りる山風が吹く。

  • g. 風力

風力は、気象庁風力階級表(ビューフォート風力階級)により、風力0から風力 12 までの 13 階級で表す。

  • h. ビル風

高層ビルや容積の大きい建物などが数多く近接している場所及び周辺に発生する風で、強さや建物周辺に流れる風の特徴により分類される(剥離流、吹き降ろし、逆流、谷間風、街路風などがある)。

ビル風は周辺の風より風速が速く継続して吹いていて、その建物群の配置や構成によって吹く風の種類が異なる。

  • i. ダウンバースト

ダウンバーストとは、積乱雲や積雲内に発生する強烈な下降流が地表にぶつかり、水平方向にドーナツ状に渦を巻きながら四方に広がってゆく状態をいう。その大きさは数百 m から10km にもおよぶ。その中でマイクロバーストと呼ばれるものは、直径が4km程度以下の下降流で、範囲は小さいが下降流はダウンバーストより強烈なものがある。発生時間は数分から10分程度のものが多く、通常の観測網では探知されない局地的なものである。

  • (2) 気象に関する注意事項

無人航空機は、運用可能な動作環境が具体的に明示されている。運用可能な範囲内であっても、低温時や高温時には大きな影響をうけることが予想される。特に気温の低い場合はバッテリーの持続時間(飛行可能時間)が普段より短くなる可能性があるため注意が必要である。

地表面が暖められると上昇気流が発生するため、広い面積の太陽光パネルやアスファルト・コンクリートの地面が多い市街地は注意が必要である。また、広い運動場のような場所では、強い日射により上昇気流がおこりつむじ風が発生する可能性がある。

安全のための気象状況の確認及び飛行の実施の判断

  • (1) 気象状況の把握と飛行の実施の判断

安全のため気象条件を考慮した判断をする場合、降雨時、降雪時、霧の発生時や雷鳴が聞こえる時は飛行の延期や中止が望ましい。

ここからは私の解説です

この節がいちばん言いたいこと

ひとことで言うと、「気象は、飛ぶか飛ばないかを決める外部要因」だということです。

機体は整備できます。技量は訓練で上げられます。許可も申請すれば取れます。でも、天気だけはこちらで変えられません。だから教則は、天気を「読む」技術を1つの節にしているのだと思います。

そして、この節の書き出しが法令の話から始まっているところに注目してください。

近距離であっても無人航空機の飛行状況や他の物件との安全な距離が確保されていることを目視で確認できない雲中や濃霧等の気象状態では無人航空機を飛行させてはならないことを意味する。

雲の中や濃霧では飛ばしてはならない。これは「危ないからやめましょう」ではなく、航空法の「目視により常時監視」を満たせないから、という理屈です。気象の話は、法令の話でもある。——この節の入り口として、押さえておきたいところです。

情報源は3つ。ただし「全部で風が測れる」わけではありません

教則が挙げる情報源はアメダス/気象レーダー/実況天気図・予報天気図・悪天解析図の3つ。加えてインターネットの活用も有効としています。

このうちアメダスについて、気象庁の説明を見ておくと、実務で効く事実が1つ出てきます。

アメダスで観測しているもの 観測所の数
降水量 約1,300か所(約17km間隔)
風向・風速、気温、湿度 約840か所(約21km間隔)
積雪の深さ(雪の多い地方) 約330か所

雨は約1,300か所で測っているけれど、風は約840か所。——つまり「近くのアメダスに風のデータがない」ことがあるのです。しかも間隔は約21km。飛行現場から20km離れた地点の風速を見て「今日は穏やかだ」と判断するのは、けっこう乱暴だということになります。

アメダスは1974年11月1日から運用されている、50年以上の歴史がある仕組みです。信頼できるが、密ではない。——現地で自分の目と肌で確かめることの大切さは、ここから来ています。

天気図で見る6つのもの

教則は天気図の要素を6つ挙げています。ここは覚え方より、1つだけ数字があることに注目してください。

要素 教則が書いていること
天気記号 快晴・晴・曇・雨・雪・霧などを表す記号
風 矢の向きが風向(風が吹いてくる方向に矢が突き出す)。
観測は16又は36方位、予報は8方位。
矢羽根の数が風力(0〜12の13段階)
気温 天気記号の左上の数字で摂氏の度数
気圧 単位はヘクトパスカル(hPa)。標準大気圧(1気圧)は1013hPa
等圧線 気圧の等しい点を結んだ線。間隔が狭いほど風は強まる
高気圧・低気圧 下の表で整理します

観測は16または36方位、予報は8方位。——この違いは覚えておくと混乱しません。予報のほうが大まかになるのは、先の話ほど細かくは言えないからです。

風力階級を、実際の風速に直してみます

教則は「風力0から風力12までの13階級」としか書いていません。では、風力3とは何m/sなのか。気象庁の風力階級表(ビューフォート風力階級)を当ててみます。

風力 相当風速(m/s)
0 0.0〜0.3未満
1 0.3以上1.6未満
2 1.6以上3.4未満
3 3.4以上5.5未満
4 5.5以上8.0未満
5 8.0以上10.8未満
6 10.8以上13.9未満
7 13.9以上17.2未満
8 17.2以上20.8未満
9 20.8以上24.5未満
10 24.5以上28.5未満
11 28.5以上32.7未満
12 32.7以上

ここで、運航の基準になっている数字を重ねてみます。

  • 風速5m/s(教則の催し場所上空/標準マニュアル①②3-1の飛行中止の基準)=風力3の上のほう
  • 飛行速度と風速の和が7m/s(標準マニュアル①3-6の催し場所)=風力4のあたり
  • 5m/s以上の突風で即時中止(標準マニュアル①②2-8)=風力3を超えたら

私たちが「もう無理」と判断している風は、天気予報の世界ではまだ風力3や4。——予報で「やや強い風」と言われるのは風力5〜6くらいからですから、天気予報が穏やかだと言っている日でも、無人航空機には十分強いということになります。この感覚のズレは、覚えておく価値があると思っています。

高気圧と低気圧は、4つセットで覚える

高気圧
定義 周囲より相対的に気圧が高い高圧部のうち、閉じた等圧線で囲まれたところ
風 北半球では時計回りに、等圧線と約30度の角度で中心から外へ吹き出す
気流 中心部では下降気流
天気 一般的によい
低気圧
定義 周囲より相対的に気圧が低い低圧部のうち、閉じた等圧線で囲まれたところ
風 北半球では反時計回りに中心に向かって吹き込む
気流 中心部では上昇気流
天気 一般的に悪い

この4つは、1本の理屈でつながっています。高気圧は空気が降りてくるから、外へ吹き出す。降りてくる空気は雲を作らないので天気がよい。低気圧は空気が吸い込まれて上がるから、周囲から吹き込む。上がる空気は冷えて雲になるので天気が悪い。

「気流の向き」から全部が決まります。丸暗記より、この順で思い出すほうが確実です。

なお、高気圧の「等圧線と約30度の角度で」という数字は、教則が具体的に書いている数少ない角度です。まっすぐ外向きではなく、少し斜めに吹き出す——ここは押さえておきたいところです。

前線は5つ。現場で分かるのは寒冷前線です

前線 教則が書いていること
寒冷前線 発達した積乱雲により突風や雷を伴い、短時間で断続的に強い雨。
接近時は南から南東よりの風、通過後は風向きが急変し西から北西よりに変わり気温が下がる
温暖前線 層状の厚い雲が段々と広がる。近づくと気温・湿度が次第に高くなる。時に雷雨もあるが弱い雨が絶え間なく降る。
通過後は北東の風が南寄りに変わる
閉塞前線 寒冷前線が温暖前線に追いついた前線。閉塞が進むと次第に低気圧の勢力が弱くなる
停滞前線 気団同士の勢力が変わらずほぼ同じ位置に留まる。長雨をもたらす梅雨前線や秋雨前線がこれ
梅雨前線 長雨(菜種梅雨、梅雨、秋霖など)のうちとくに顕著な長雨、大雨をもたらす停滞前線

実務でいちばん役に立つのは寒冷前線の風向変化です。南寄りの風が、急に西〜北西に変わって、気温が下がる。——これは飛ばしている最中に、体で分かる兆候です。教則が風向の変化まで書いているのは、そういう意味だと私は読んでいます。

そして寒冷前線=短時間で強い/温暖前線=弱い雨が長くという対比。「寒いほうが激しい」と覚えると混ざりません。

10種雲形は、3つの層に分けるだけです

層 雲の名前
上層雲 巻雲・巻層雲・巻積雲(すべて「巻」がつく)
中層雲 高層雲・乱層雲・高積雲
低層雲と下層から発達する雲 積雲・積乱雲・層積雲・層雲(4つ)

上層は3つ、中層は3つ、下層は4つ。合わせて10種類です。上層の3つはすべて「巻」で始まるので、そこを手がかりにすると思い出しやすくなります。

そして、飛行に直結するのが降水のしかたです。

層雲系の雲では連続的な降水が、積雲系であれば断続的でしゅう雨性の降水を伴う傾向がある。

層=連続、積=断続。「しゅう雨性」というのは降ったりやんだりする雨のことです。もくもくした雲(積雲系)は、急に降って急にやむ。——飛行の合間を狙えるように見えて、次にいつ降るか読めないのが積雲系の怖さでもあります。

風の種類は9つ。「どこで吹くか」で分けると覚えやすい

教則が挙げる風の項目は、a〜iの9つあります。吹く場所で束ねてみます。

どこで吹くか 教則が挙げるもの
どこでも(基本の性質) 風と気圧(気圧の高いほうから低いほうへ・等圧線が狭いほど強い)
風向(吹いてくる方向・360度を16等分)
風速(m/s)/風力(0〜12の13階級)
前線のそば 突風(寒冷前線付近の上昇気流で発達した積乱雲により、強い雨や雷とともに発生)
海のそば 海陸風(日中は陸に向かって、夜間は海に向かって。入れ替わるとき朝凪・夕凪)
山のそば 山谷風(昼間は谷を這い上がる谷風、夜間は山から降りる山風)
建物のそば ビル風(剥離流、吹き降ろし、逆流、谷間風、街路風など。周辺の風より速く継続して吹く)
積乱雲の下 ダウンバースト(強烈な下降流が地表にぶつかりドーナツ状に四方へ)

この中で、教則が数字を出しているものを拾っておきます。

項目 数字
風速の定義 単に風速といえば観測時の前10分間における平均風速。平均風速の最大値が最大風速、瞬間風速の最大値が最大瞬間風速
風向 360度を16等分し、北から時計回りに北→北北東→北東→東北東→東…
ダウンバースト 大きさは数百mから10kmにもおよぶ
マイクロバースト 直径4km程度以下の下降流。範囲は小さいが下降流はダウンバーストより強烈なものがある。
発生時間は数分から10分程度のものが多く、通常の観測網では探知されない

ここで混ざりやすい点を1つ。「数分から10分程度」なのはマイクロバーストのほうです。ダウンバーストの数字は「数百mから10km」という大きさだけ。4kmも、数分〜10分も、マイクロバーストの数字——ここは分けて覚えてください。

そして「通常の観測網では探知されない」。先ほどのアメダスの話とつながります。約21km間隔の観測網に、直径4km以下・数分の現象は映りません。気象情報を見ても分からない現象がある、ということです。

風の高さによる変化——「上空ほど強い」の理由

風は地面の摩擦を受けるため、一般的に上空では強く地表に近づくにつれて弱くなる。変化の度合いは地表の粗度(樹木や建物などによる凸凹の程度)や風速の大きさによって異なる。一般に地表の粗度が大きいほど、高さによる風速の変化は大きくなる。

粗度(そど)という言葉が出てきます。地面のデコボコの程度のことです。

実務に直すと、こうなります。木立や建物の多い場所ほど、地上と上空の風の差が大きい。——足元では無風に感じるのに、高度を上げたら急に流されたという経験のある方は多いと思います。あれは、粗度の大きい場所で起きやすいのです。

離陸地点の風速だけで判断しない。これがこの一文の実務的な意味だと考えています。

意外な落とし穴——晴れた日のアスファルトと運動場

気象に関する注意事項(2)は、他とは毛色が違います。悪天候ではなく、良い天気の日の話だからです。

地表面が暖められると上昇気流が発生するため、広い面積の太陽光パネルやアスファルト・コンクリートの地面が多い市街地は注意が必要である。また、広い運動場のような場所では、強い日射により上昇気流がおこりつむじ風が発生する可能性がある。

太陽光パネル、アスファルト、広い運動場。——どれもドローンの飛行現場としてよく選ばれる場所です。パネルの点検、市街地の空撮、運動会の撮影。晴れて風のない日ほど、地面が暖まって上昇気流が立つ。

そしてもう1つ、この項の冒頭にはこう書かれています。

特に気温の低い場合はバッテリーの持続時間(飛行可能時間)が普段より短くなる可能性がある

連載の16回目(4.4)で読んだ「冬季の飛行では飛行時間が半減することがある」と同じ話です。気温はバッテリーの話でもある。気象の節と機体の節が、ここでつながります。

最後の一文が、いちばん実務的です

安全のため気象条件を考慮した判断をする場合、降雨時、降雪時、霧の発生時や雷鳴が聞こえる時は飛行の延期や中止が望ましい。

雨・雪・霧・雷鳴。この4つが並んでいます。

注目していただきたいのは「雷鳴が聞こえる時」という書き方です。雷が見えるとき、ではありません。音が聞こえるということは、すでに雷雲が届く範囲にいるということです。「まだ遠いから大丈夫」という判断の余地を、教則は残していません。

3,600字の節の結論が、この1文というのは象徴的だと思います。天気図を読めるようになるのは、この判断を早く正確にするため。——知識の使いどころが、ここに書いてあります。

この回の数字まとめ

  • この節に〔一等〕は1か所もない。全部が二等の範囲
  • 雲中や濃霧等では飛行させてはならない(目視により常時監視できないため)
  • 情報源=アメダス/気象レーダー/実況天気図・予報天気図・悪天解析図+インターネット
  • (気象庁)アメダス=降水量約1,300か所(約17km間隔)、風向・風速・気温・湿度は約840か所(約21km間隔)、積雪は約330か所
  • 風向=吹いてくる方向。観測は16又は36方位、予報は8方位。360度を16等分
  • 風力=0〜12の13階級(気象庁風力階級表/ビューフォート風力階級)。風力3=3.4〜5.5m/s未満、風力4=5.5〜8.0m/s未満
  • 気温=天気記号の左上/気圧の単位=hPa/標準大気圧(1気圧)=1013hPa
  • 等圧線の間隔が狭いほど風は強まる
  • 高気圧=時計回りに等圧線と約30度で吹き出す・下降気流・天気よい/低気圧=反時計回りに吹き込む・上昇気流・天気悪い
  • 冬型=西高東低(シベリア高気圧・日本海側に雪)/春と秋=両高気圧の勢力が入れ替わる時期で前線が停滞し1週間くらい雨
  • 前線は5つ。寒冷前線=積乱雲・突風や雷・短時間で強い雨。通過後は西〜北西の風に急変し気温が下がる
  • 10種雲形=上層3(巻雲・巻層雲・巻積雲)/中層3(高層雲・乱層雲・高積雲)/下層4(積雲・積乱雲・層積雲・層雲)。層雲系=連続的な降水、積雲系=断続的でしゅう雨性
  • 風速=観測時の前10分間における平均風速。上空ほど強く、地表の粗度が大きいほど高さによる変化が大きい
  • 海陸風=日中は陸へ、夜間は海へ。入れ替わるとき朝凪・夕凪/山谷風=昼は谷風(這い上がる)、夜は山風(降りる)
  • ダウンバースト=数百m〜10km/マイクロバースト=直径4km程度以下・発生時間は数分から10分程度・通常の観測網では探知されない
  • 注意=低温でバッテリーの持続時間が短くなる/太陽光パネル・アスファルトの市街地は上昇気流/広い運動場ではつむじ風
  • 判断=降雨時・降雪時・霧の発生時・雷鳴が聞こえる時は飛行の延期や中止が望ましい

おわりに

覚えることの多い節でしたが、意味でつながっているのが分かっていただけたでしょうか。

気流が降りるか上がるかで高気圧と低気圧が決まり、そこから風の向きと天気が決まる。地面がデコボコしているほど、上空と地上の風の差が大きくなる。地面が暖まれば上昇気流が立つ。ぜんぶ「空気は暖まると上がり、冷えると下がる」から出発しています。

そして、この節を読んだあとにもう一度見ていただきたい数字があります。風力3が3.4〜5.5m/s。私たちが中止する風は、天気予報の世界ではまだ「弱い風」に分類される領域です。予報が「穏やかな一日でしょう」と言っている日でも、飛ばせないことがある。——現場で自分の風速計を見る習慣が、いちばんの武器になります。

次回は「6.3 機体の種類に応じた運航リスクの評価及び最適な運航の計画の立案」。飛行機・回転翼(ヘリコプター)・回転翼(マルチローター)それぞれで、どんなリスクを見るかという話に入ります。

出典

  • 国土交通省「無人航空機の飛行の安全に関する教則(第5版)」令和8年7月7日公布・令和8年7月14日適用
  • 気象庁「風の強さと吹き方/気象庁風力階級表」(風力0〜12の相当風速)
  • 気象庁「地域気象観測システム(アメダス)」(観測所数と観測要素、1974年11月1日運用開始)
  • 国土交通省航空局「無人航空機 飛行マニュアル」(標準マニュアル①②)令和7年12月26日版 2-8・3-1、①3-6(風速5m/s・飛行速度と風速の和7m/s)

本記事の内容は2026年8月時点のものです。風力階級の相当風速は気象庁の風力階級表によるもので、飛行の可否は機体の仕様と現地の状況によって判断してください。

この章を、問題で確認する

ここは学科試験では「運航上のリスク管理」の分野にあたります。読んだ直後に解くと、取り違えていた箇所がその場で分かります。

▶ 二等:無料 練習20問/無料 模試50問

▶ 一等:無料 練習20問/無料 模試70問

分野別に数をこなすなら(登録講習機関講師が作問・全問解説つき・買い切り)
二等 演習250問/演習250問+模試5セット  一等 演習261問/演習261問+模試10セット

登録講習機関講師 フライトデスク 監修

コメント

タイトルとURLをコピーしました