「うっかり」で済まないことが、いちばん多く書かれている節です。飲んだ翌朝の一杯ぶん、飛ばす前の確認を一つ飛ばしたこと、落ちた機体に思わず伸ばした手。どれも、悪気のない人が普通にやってしまうことではないでしょうか。
今回は、操縦者に課されたやってはいけないことと、やらなければいけないことを通しで読みます。アルコール、飛行前の確認、衝突の予防、事故が起きたときの手順、飛行計画の通報、飛行日誌、そして罰則と行政処分まで。この節には点数表がそのまま載っていますので、何をすると何点で、何点で資格が消えるのかまで、はっきり分かります。
教則第5版 3.1 航空法全般(5)操縦者等の義務(全文)
出典:国土交通省「無人航空機の飛行の安全に関する教則(第5版)」(令和8年7月7日公布・令和8年7月14日適用)。読みやすさのためレイアウトを再構成し、原本で混在している英数字の全角・半角を半角にそろえています。本記事は国土交通省の公式なものではありません。
- (3) 無人航空機の操縦者等の義務
- 1) 無人航空機の操縦者が遵守する必要がある運航ルール
- a. アルコール又は薬物の影響下での飛行禁止
アルコール又は薬物の影響により当該無人航空機の正常な飛行ができないおそれがある間において飛行させないこと。
「アルコール」とはアルコール飲料やアルコールを含む食べ物を指し、「薬物」とは麻薬や覚せい剤等の規制薬物に限らず、医薬品も含まれる。
アルコールによる身体への影響は、個人の体質やその日の体調により異なるため、体内に保有するアルコールが微量であっても無人航空機の正常な飛行に影響を与えるおそれがあるため、体内に保有するアルコール濃度の程度にかかわらず体内にアルコールを保有する状態では無人航空機の飛行を行ってはならない。
- b. 飛行前の確認
無人航空機が飛行に支障がないことその他飛行に必要な準備が整っていることを確認した後において飛行させること。
(a) 外部点検及び作動点検による無人航空機の状況の確認
各機器の取付状況(ネジ等の脱落やゆるみ等)、発動機・モーター等の異音の有無、機体(プロペラ、フレーム等)の損傷や歪みの有無、通信系統・推進系統・電源系統・自動制御系統等の作動状況などの確認が挙げられる。
(b) 無人航空機を飛行させる空域及びその周囲の状況の確認
飛行空域や周囲における航空機や他の無人航空機の飛行状況、飛行空域や周囲の地上又は水上の人(第三者の有無)又は物件(障害物等の有無)の状況、航空法その他の法令等の必要な手続き等の状況、緊急用務空域・飛行自粛要請空域の該当の有無、立入管理措置・安全確保措置等の準備状況などの確認が挙げられる。
(c) 飛行に必要な気象情報の確認
天候、風速、視程など当該無人航空機の飛行に適した天候にあるか否かを確認する。
(d) 燃料の搭載量又はバッテリーの残量の確認
(e) リモート ID 機能の作動状況(リモート ID 機能の搭載の例外となっている場合を除く。)
- c. 航空機又は他の無人航空機との衝突防止
飛行前において、航行中の航空機を確認した場合には、飛行を行わないこと。また、飛行中の他の無人航空機を確認した場合には、飛行日時、飛行経路、飛行高度等について、他の無人航空機を飛行させる者と調整を行うこと。
飛行中において、航行中の航空機を確認した場合には、地上に降下させるなど、接近又は衝突を回避するための適切な措置を取ること。また、飛行中の他の無人航空機を確認した場合には、当該無人航空機との間に安全な間隔を確保して飛行させ、接近又は衝突のおそれがあると認められる場合には地上に降下させるなど適切な措置を取るとともに、飛行日時、飛行経路、飛行高度等について、他の無人航空機を飛行させる者と調整を行うこと。
- d. 他人に迷惑を及ぼす方法での飛行禁止
飛行上の必要がないのに高調音を発し、又は急降下し、その他他人に迷惑を及ぼすような方法で飛行させないこと。「他人に迷惑を及ぼすような方法」とは、人に向かって無人航空機を急接近させることなどを指す。
- e. 使用者の整備及び改造の義務
登録を受けた無人航空機の使用者は、整備及び必要に応じて改造をし、当該無人航空機が安全上の問題から登録を受けることができない無人航空機とならないように維持しなければならない。登録記号の機体への表示も維持しなければならない。
- f. 事故等の場合の措置
ア) 事故の場合の措置
無人航空機に関する事故が発生した場合には、当該無人航空機を飛行させる者は、直ちに当該無人航空機の飛行を中止するとともに、負傷者がいる場合にはその救護・通報、事故等の状況に応じた警察への通報、火災が発生している場合の消防への通報など、危険を防止するための必要な措置を講じなければならない。また、当該事故が発生した日時及び場所等の必要事項を国土交通大臣に報告しなければならない。なお、無人航空機の事故とは、次の事態をいう。
- a. 無人航空機による人の死傷又は物件の損壊
人の死傷に関しては重傷以上を対象とする。物件の損壊に関しては第三者の所有物を対象とするが、その損傷の規模や損害額を問わず全ての損傷を対象とする。 - b. 航空機との衝突又は接触
航空機又は無人航空機のいずれか又は両方に損傷が確認できるものを対象とする。
イ) 重大インシデントの報告
上記事故が発生するおそれがあると認める事態(重大インシデント)が発生した場合にあっても、国土交通大臣への報告が義務付けられている。重大インシデントの対象としては、飛行中航空機との衝突又は接触のおそれがあったと認めた事態、重傷に至らない無人航空機による人の負傷、無人航空機の制御が不能となった事態及び無人航空機が発火した事態(飛行中に発生したものに限る。)が含まれる。
- 2) 特定飛行をする場合に遵守する必要がある運航ルール
- a. 飛行計画の通報等
無人航空機を飛行させる者は、特定飛行を行う場合には、あらかじめ、次に掲げる事項等を記載した飛行計画を国土交通大臣に通報しなければならない(あらかじめ飛行計画を通報することが困難な場合には事後の通報でも可)。具体的には、国が提供している「ドローン情報基盤システム(飛行計画通報機能)」に入力することにより通報する。
- a. 無人航空機の登録記号及び種類並びに型式(型式認証を受けたものに限る。)
- b. 無人航空機を飛行させる者の氏名並びに技能証明書番号(技能証明を受けた者に限る。)及び飛行の許可・承認の番号(許可・承認を受けた場合に限る。)
- c. 飛行の目的、高度及び速度
- d. 飛行させる飛行禁止空域及び飛行の方法
- e. 出発地、目的地、目的地に到着するまでの所要時間
- f. 立入管理措置の有無及びその内容
- g. 損害賠償のための保険契約の有無及びその内容
無人航空機を飛行させる者は、通報した飛行計画に従って特定飛行をしなければならない。国土交通大臣は、当該飛行計画の通報を受けた場合に安全の確保のために必要と認めるときは、特定飛行の日時又は経路の変更など必要な措置を講ずるよう指示する場合があり、当該指示を受けた場合にはその指示に従わなければならない。ただし、安全を確保するためにやむを得ない場合はこの限りではない。
なお、特定飛行に該当しない無人航空機の飛行を行う場合であっても、飛行計画を通報することが望ましい。
- b. 飛行日誌の携行及び記載
無人航空機を飛行させる者は、特定飛行をする場合には、飛行日誌を携行(携帯)することが義務付けられる。飛行日誌は、紙又は電子データ(システム管理を含む。)の形態を問わないが、特定飛行を行う場合には、必要に応じ速やかに参照や提示できるようにする必要がある。
特定飛行を行う者は、無人航空機に関する情報(登録記号、種類、型式、製造者・製造番号等)に加え、次に掲げる事項等を遅滞なく飛行日誌に記載しなければならない。特定飛行に該当しない無人航空機の飛行を行う場合であっても、飛行日誌に記載することが望ましい。
- a. 飛行記録
飛行の年月日、離着陸場所・時刻、飛行時間、飛行させた者の氏名、不具合及びその対応 等 - b. 日常点検記録
日常点検の実施の年月日・場所、実施者の氏名、日常点検の結果 等 - c. 点検整備記録
点検整備の実施の年月日・場所、実施者の氏名、点検・修理・改造・整備の内容・理由 等
- 3) 機体認証を受けた無人航空機を飛行させる者が遵守する必要がある運航ルール
- a. 使用の条件の遵守
無人航空機の機体認証を行う場合は、無人航空機飛行規程に定めた無人航空機の安全性を確保するための限界事項等(最大離陸重量、飛行可能高度、飛行可能速度等)を「使用の条件」として指定し、使用条件等指定書として交付することとしている。機体認証を受けた無人航空機を飛行させる者は、当該使用の条件の範囲内で特定飛行しなければならない。
- b. 必要な整備の義務
機体認証を受けた無人航空機の使用者は、必要な整備をすることにより、当該無人航空機を安全基準に適合するように維持しなければならない。具体的には、無人航空機の機体認証を行う場合に設定される無人航空機整備手順書(機体メーカーの取扱説明書等)に従って整備をすることが義務付けられる。
- 4) 罰則
航空法令の規定に違反した場合には、次の罰則の対象となる可能性がある(技能証明を有する者は、罰則に加えて、技能証明の取消し等の行政処分の対象にもなる可能性がある)。
| 違反行為 | 罰則 |
|---|---|
| ⚫ 事故が発生した場合に飛行を中止し負傷者を救護するなどの危険を防止するための措置を講じなかったとき | 2年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
| ⚫ 登録を受けていない無人航空機を飛行させたとき | 1年以下の懲役又は50万円以下の罰金 |
| ⚫ アルコール又は薬物の影響下で無人航空機を飛行させたとき | 1年以下の懲役又は30万円以下の罰金 |
| ⚫ 登録記号の表示又はリモート ID の搭載をせずに飛行させたとき ⚫ 規制対象となる飛行の区域又は方法に違反して飛行させたとき ⚫ 飛行前の確認をせずに飛行させたとき ⚫ 航空機又は他の無人航空機との衝突防止をしなかったとき ⚫ 他人に迷惑を及ぼす飛行を行ったとき ⚫ 機体認証で指定された使用の条件の範囲を超えて特定飛行をおこなったとき 等 |
50万円以下の罰金 |
| ⚫ 飛行計画を通報せずに特定飛行を行ったとき ⚫ 事故が発生した場合に報告をせず、又は虚偽の報告をしたとき 等 |
30万円以下の罰金 |
| ⚫ 技能証明を携帯せずに特定飛行を行ったとき ⚫ 飛行日誌を備えずに特定飛行を行ったとき ⚫ 飛行日誌に記載せず、又は虚偽の記載をしたとき |
10万円以下の罰金 |
- 5) 行政処分等
技能証明を有する者が、「無人航空機操縦者技能証明に係る行政処分に関する基準」に定める処分事由に該当する行為を行った場合、処分事由に応じて技能証明の効力の取消や停止等の行政処分又は行政指導が行われる。
同基準では点数制を採用しており、技能証明に係る行政処分及び行政指導の内容は、「点数表」に掲げる処分事由に対応する点数を基本として、個別事情や過去に処分を受けているかの有無を勘案して点数の加重又は軽減を行い、当該処分事由についての点数を決定したうえで、「処分等区分表」によって決定される。
「点数表」、「処分等区分表」、「個別事情による加減表」、「過去に処分等を受けている場合の取扱表」を以下に示す。
「無人航空機操縦者技能証明に係る行政処分に関する基準」に定める「点数表」
| 処分事由 | 点数 | |
|---|---|---|
| 1 | 事故が発生した場合に危険防止措置を講じない | 15 |
| 2 | アルコール・薬物の影響下での飛行 | 15 |
| 3 | 飛行計画の変更指示に従わない飛行 | 15 |
| 4 | 限定をされた技能証明を受けた者による限定外の種類・方法での特定飛行 | 14 |
| 5 | 条件付きの技能証明を受けた者による条件の範囲外での特定飛行 | 14 |
| 6 | 飛行前確認・衝突予防措置を行わないこと | 14 |
| 7 | 他人に迷惑を及ぼすような方法での公共の場所の上空での飛行 | 14 |
| 8 | 承認を受けずに行う夜間・目視外・30m未満・催し上空飛行 | 14 |
| 9 | 承認を受けずに行う危険物輸送 | 14 |
| 10 | 承認を受けずに行う物件投下 | 14 |
| 11 | 飛行の方法について承認外での飛行 | 14 |
| 12 | 夜間・目視外・30m未満飛行において安全確保措置を講じないこと | 14 |
| 13 | 機体認証において指定された使用の条件の範囲を超えた特定飛行 | 13 |
| 14 | 整備命令に違反した特定飛行 | 13 |
| 15 | 無人航空機の飛行に影響を及ぼすおそれのある行為 | 12 |
| 16 | 飛行禁止空域での飛行等 | 11 |
| 17 | 飛行計画を通報しない特定飛行 | 10 |
| 18 | 機体登録を受けていない機体の供用 | 8 |
| 19 | 登録無人航空機の是正命令に違反した機体の供用 | 8 |
| 20 | 航空機の飛行に影響を及ぼすおそれのある行為を事前に通報しない又は虚偽の通報を行うこと | 7 |
| 21 | 事故発生時の報告をしない又は虚偽の報告を行うこと | 6 |
| 22 | 特定飛行を行う場合に飛行日誌を備えないこと | 6 |
| 23 | 特定飛行について飛行日誌の不記載・虚偽記載 | 6 |
| 24 | 立入検査の拒否等 | 6 |
| 25 | 特定飛行時に第三者が立ち入った場合に必要な措置を講じないこと | 3 |
| 26 | 登録記号の表示その他の登録記号を識別するための措置を講じていない登録無人航空機の供用 | 1 |
| 27 | 機体認証を受けずに法第 132 条の 13 第 8 項の表示又はこれと紛らわしい表示を付すこと | 1 |
| 28 | 型式認証を受けずに法第 132 条の 19 第 2 項の表示又はこれと紛らわしい表示を付すこと | 1 |
| 29 | 技能証明書不携帯での特定飛行 | 1 |
| 30 | 登録事項の変更の届出を行わない又は虚偽の届出を行うこと | 1 |
| 31 | 登録の抹消申請を行わないこと | 1 |
| 32 | 飛行に当たり非行又は重大な過失があったとき | 1~10 |
「無人航空機操縦者技能証明に係る行政処分に関する基準」に定める「処分等区分表」
| 点数 | 処分等の内容 |
|---|---|
| 1~2 | 口頭注意 |
| 3~5 | 文書警告 |
| 6~8 | 技能証明の効力の停止3月 |
| 9~11 | 技能証明の効力の停止6月 |
| 12~14 | 技能証明の効力の停止1年 |
| 15~ | 技能証明の効力の取消 |
「無人航空機操縦者技能証明に係る行政処分に関する基準」に定める「個別事情による加減表」
| 項目 | 内容 | 加重・軽減 |
|---|---|---|
| 行為者の意識 | 重大な悪意又は害意に基づく行為 | 加重3点 |
| 行為を行うにつきやむを得ない事情がある場合 | 軽減1~3点 | |
| 違反行為等の内容が軽微であり情状をくむべき場合 | 軽減1~3点 | |
| 行為の態様・結果 | 第三者の負傷の結果が生じた場合 | 加重1~3点 |
| 常習的に行っている場合 | 加重3点 | |
| 是正等の対応 | 速やかに処分事由が生じている状態の解消を自主的に行った場合 | 軽減1~3点 |
| 処分の対象となる事由につき自主的に申し出た場合 | 軽減1~3点 | |
| 社会的影響 | 刑事訴追されるなど社会的影響が大きい場合 | 加重1~3点 |
| その他 | 上記以外の特に考慮すべき事情がある場合 | 適宜加減 |
「無人航空機操縦者技能証明に係る行政処分に関する基準」に定める「過去に処分等を受けている場合の取扱表」
| 今回相当処分等 過去の処分等 |
口頭注意又は文書警告 | 技能証明の効力停止 | 技能証明の取消 |
|---|---|---|---|
| 口頭注意又は文書警告 | 加重2点 | 加重3点 | 加重4点 |
| 技能証明の効力停止 | 加重4点 | 加重5点 | 加重6点 |
| 技能証明の取消 | 技能証明の取消 | ||
ここからは私の解説です
この節がいちばん言いたいこと
ここは「知らなかった」が通らない場所です。前回までの節は「どこを飛ぶか」「どう飛ぶか」の線引きでしたが、今回は操縦者本人に課された義務の話。守らなければ罰金や懲役、そして技能証明の取消につながります。
しかも教則第5版には、行政処分の点数表がそのまま載っています。何が何点で、何点で資格が消えるのか。ここまで具体的に書かれている節は、ほかにありません。
アルコール——「濃度にかかわらず」が答えのすべて
教則の書き方を、そのまま引きます。
体内に保有するアルコール濃度の程度にかかわらず体内にアルコールを保有する状態では無人航空機の飛行を行ってはならない。
基準値はありません。 自動車の運転のような「呼気1リットル中に何ミリグラム」という線引きが、無人航空機にはないということです。理由も教則に書かれています。アルコールによる身体への影響は個人の体質やその日の体調により異なるから、微量でも正常な飛行に影響するおそれがある——だから量で線を引かない。
そしてもう一つ、見落としやすいのが「薬物」の広さです。
「薬物」とは麻薬や覚せい剤等の規制薬物に限らず、医薬品も含まれる。
市販の風邪薬や花粉症の薬も「薬物」に入ります。 眠くなる薬を飲んだ日に飛ばしてよいのか——これは実際に現場でよく出る質問です。答えは、その薬が正常な飛行に影響するおそれがあるかどうか。判断できないなら、その日は飛ばさない。それだけです。
飛行前の確認は5つ。5つ目を落とさない
教則が挙げている確認は(a)から(e)の5つです。
| 確認すること | 中身 |
|---|---|
| (a) 機体の状況 | 各機器の取付状況(ネジ等の脱落やゆるみ)、 発動機・モーター等の異音、 機体(プロペラ、フレーム等)の損傷や歪み、 通信系統・推進系統・電源系統・自動制御系統の作動状況 |
| (b) 空域と周囲の状況 | 航空機や他の無人航空機の飛行状況、 第三者や障害物の有無、 必要な手続きの状況、 緊急用務空域・飛行自粛要請空域の該当の有無、 立入管理措置・安全確保措置の準備状況 |
| (c) 気象情報 | 天候、風速、視程など |
| (d) 燃料・バッテリー | 搭載量又は残量 |
| (e) リモート ID | 機能の作動状況(搭載の例外となっている場合を除く) |
覚え方としては、「機体・場所・空・燃料・リモートID」の5つ。落としやすいのは、いちばん最後のリモートIDの作動状況です。搭載していれば済む話ではなく、飛ばす前に動いているか確かめるところまでが義務になっています。
(b)の中に緊急用務空域の確認が入っていることにも注目してください。前回の記事で書いたとおり、これは許可を持っていても飛べなくなる空域です。飛行前確認の一項目として、ここに位置づけられています。
衝突の防止——相手が「航空機」か「無人航空機」かで、やることが違う
ここは整理して覚えるのがいちばん早いところです。
| いつ | 航空機を確認したら | 他の無人航空機を確認したら |
|---|---|---|
| 飛行前 | 飛行を行わない | 飛行日時・経路・高度等について、その者と調整を行う |
| 飛行中 | 地上に降下させるなど、接近又は衝突を回避するための適切な措置 | 安全な間隔を確保して飛行。おそれがあれば地上に降下させるなど適切な措置をとり、あわせて調整を行う |
並べると、考え方の違いがはっきりします。航空機に対しては「こちらが引く」。他の無人航空機に対しては「話し合う」。 06回で読んだ進路権の話——航空機は無人航空機に対して進路権を有する——が、そのまま行動の形になっています。
事故と重大インシデント——分かれ目は「重傷以上かどうか」
教則の定義を、国土交通省航空局の資料「事故・重大インシデントについて」の整理とあわせて表にしました。
| 区分 | 該当する事態 |
|---|---|
| 事故 | 無人航空機による人の死傷(重傷以上)/第三者の所有する物件の損壊/航空機との衝突または接触 |
| 重大インシデント | 無人航空機による人の負傷(軽傷)/ 無人航空機の制御が不能となった事態/ 飛行中に発火した事態/ 航空機との衝突または接触のおそれがあったと認めた時 |
見比べると、線の引き方が2本あることが分かります。人の負傷は「重傷以上なら事故、軽傷なら重大インシデント」。航空機とは「当たったら事故、当たりそうになったら重大インシデント」。 この2本さえ握っていれば、区分で迷うことはほとんどありません。
物件の損壊についても、教則は丁寧に書いています。第三者の所有物が対象で、しかも損傷の規模や損害額を問わず全ての損傷が対象。「かすっただけだから」は通りません。
順番を間違えない。報告は最後です
事故が起きたときにやることは、教則の文のとおりに順番が決まっています。
- 直ちに飛行を中止する
- 負傷者がいる場合は救護・通報、状況に応じた警察への通報、火災があれば消防への通報
- その他危険を防止するために必要な措置
- そのうえで、日時及び場所等の必要事項を国土交通大臣に報告
報告はいちばん最後です。 人の安全が先で、届け出はそのあと。順序が逆になっている選択肢は、その一点で誤りだと分かります。
報告先は、国土交通省航空局の資料によると、許可・承認を受けた飛行なら、その許可・承認を発行した官署。許可・承認を受けていない飛行なら、飛行した場所を管轄する官署です。報告はドローン情報基盤システム(DIPS 2.0)の事故等報告機能から行います。
「制御が不能となった事態」に当たらない、よくある3つ
ここが今回いちばんお伝えしたいところです。教則には書かれていませんが、国土交通省航空局の同じ資料に、重大インシデントとして報告されたものの「制御が不能となった事態」には当たらなかった事例が3つ挙げられています。
| 事例 | 国の説明 |
|---|---|
| 操縦ミス | 飛行経路の設定ミス、目測誤り等の単純な操作の誤りによる墜落は、制御が不能となった事態には該当しない |
| フェールセーフ機能の確認不足 | 自動帰還機能が作動し、帰還中に樹木に衝突して墜落する事案が頻発。 帰還経路と帰還時の高度設定を飛行前に確認していれば回避できた場合は該当しないと考えられる |
| 飛行前の機体点検不足 | バッテリーやプロペラの装着不備、センサーのキャリブレーション未実施、経年劣化したバッテリーの使用などによる墜落。 原因が飛行前点検の不足であることが明確な場合は該当しないと考えられる |
読み方を間違えないでください。これは「報告しなくてよい」という意味ではありません。 「制御不能」という区分には入らない、というだけの話です。同じ資料には、はっきりこう書かれています。
人の負傷や飛行中に発火した事態、航空機との衝突または接触のおそれがあると認められる事態が発生した場合は、無人航空機の制御が不能となった事態に該当しない場合であっても、重大インシデントに分類されます
そして、この3つの並びが教えてくれることがあります。「機械が壊れた」より「人が確認しなかった」ほうが、ずっと多い。 自動帰還は正常に動いているのに、帰り道に木があった。バッテリーが刺さりきっていなかった。——落ちた理由の多くは、飛ばす前の数十秒で防げたものだ、ということです。
実際に、どれくらい報告されているのか
同じ資料に件数が載っています(令和5年度末時点)。
| 年度 | 事故 | 重大インシデント | 非該当事案 |
|---|---|---|---|
| 令和4年度 | 2 | 16 | 57 |
| 令和5年度 | 65 | 21 | 361 |
令和4年度の数字は、同年12月5日の航空法改正以降に報告のあったものです。合計は令和4年度が75件、令和5年度が447件。目を引くのは「非該当事案」の361件ではないでしょうか。報告はしたけれど、事故にも重大インシデントにも当たらなかったもの。上の3つの事例が「多数ある」と国が書いているのは、この数字の裏付けです。
なお、令和6年度の統計情報も国土交通省が公開しています(要因別・運航者別・飛行目的別・飛行カテゴリー別)。数字は年度ごとに更新されますので、最新のものは公式サイトでご確認ください。
落ちたときに、まずやってはいけないこと
試験には出ない話ですが、命に関わるので書いておきます。同じ資料の最後に、こう注意があります。
回転しているプロペラには絶対に手を出さない! 墜落後もプロペラが回転を続ける中、機体の電源ボタンを操作しようとして怪我をするケースが多発しています!
落ちた機体に駆け寄って、止めようとして手を切る。これが実際に多発しています。 資料は、キルスイッチなど機体の動作を強制的に停止させる操作を日頃から確認しておくことを勧めています。自分の機体のキルスイッチがどれか、いま言えるでしょうか。言えないなら、次に飛ばす前に確認しておいてください。
飛行計画の通報——7つの記載事項
特定飛行を行うときは、あらかじめ飛行計画を国土交通大臣に通報します(あらかじめが困難な場合は事後でも可)。実際にはドローン情報基盤システムの飛行計画通報機能に入力します。
記載する事項は7つ。
- 無人航空機の登録記号・種類・型式(型式認証を受けたものに限る)
- 飛行させる者の氏名・技能証明書番号(受けた者に限る)・許可承認の番号(受けた場合に限る)
- 飛行の目的・高度・速度
- 飛行させる飛行禁止空域及び飛行の方法
- 出発地・目的地・所要時間
- 立入管理措置の有無及びその内容
- 損害賠償のための保険契約の有無及びその内容
7番目に注目してください。保険に入っているかどうかまで通報します。 保険そのものは原則として任意ですが、入っているか否かは申告事項です。逆に、機体の購入金額や購入日といったものは含まれません。
通報したらその計画に従って飛ばす義務があり、国から日時や経路の変更を指示されたら従わなければなりません。特定飛行に当たらない飛行でも、通報することが望ましいとされています。
飛行日誌——「携行」と「記載」は別の義務
特定飛行をするときは、飛行日誌を携行(携帯)し、かつ記載します。この2つは別々の義務で、罰則もそれぞれにあります。
形態は紙でも電子データでも構いません。ただし、必要に応じて速やかに参照・提示できるようにしておく必要があります。「スマートフォンのアプリで付けている」でも要件は満たしますが、圏外で開けないようでは提示できません。
| 記録の種類 | 記載する内容 |
|---|---|
| 飛行記録 | 飛行の年月日、離着陸場所・時刻、飛行時間、飛行させた者の氏名、不具合及びその対応 等 |
| 日常点検記録 | 日常点検の実施の年月日・場所、実施者の氏名、日常点検の結果 等 |
| 点検整備記録 | 点検整備の実施の年月日・場所、実施者の氏名、点検・修理・改造・整備の内容・理由 等 |
そして教則は、特定飛行に該当しない飛行でも記載することが望ましいと書いています。義務ではないが望ましい——このニュアンスのまま覚えてください。
罰則——航空法は「懲役」のまま
罰則の表は全文パートに載せたとおりです。数字だけ並べておきます。
- 2年以下の懲役又は100万円以下の罰金=事故時に飛行を中止し負傷者を救護するなどの危険防止措置を講じなかったとき
- 1年以下の懲役又は50万円以下の罰金=登録を受けていない機体を飛行させたとき
- 1年以下の懲役又は30万円以下の罰金=アルコール又は薬物の影響下で飛行させたとき
- 50万円以下の罰金=登録記号の表示又はリモート ID の搭載をせずに飛行させたとき ほか
- 30万円以下の罰金=飛行計画を通報せずに特定飛行を行ったとき ほか
- 10万円以下の罰金=技能証明を携帯せずに特定飛行を行ったとき ほか
いちばん重いのが事故のときに何もしなかった場合だという並びに、この法律の考え方が出ています。飛ばし方の違反より、起きたあとに人を助けなかったことが重い。
もう一つ、混同しやすいところを先に潰しておきます。航空法の罰則は「懲役」と書かれています。 次回以降に出てくる小型無人機等飛行禁止法のほうが「拘禁刑」です。教則第5版で拘禁刑に改まったのは小型無人機等飛行禁止法の側で、航空法ではありません。どちらの法律の話かを、まず確かめる癖をつけてください。
行政処分——15点で、資格が消える
技能証明を持っている人には、罰則とは別に行政処分があります。点数制です。仕組みは4つの表でできています。
- 点数表……処分事由ごとの基本点数(32項目)
- 個別事情による加減表……悪質さや自主的な是正で加重・軽減
- 過去に処分等を受けている場合の取扱表……前歴があれば加重
- 処分等区分表……最終的な点数から処分を決める
結論から言うと、15点で技能証明の取消です。そして1回で15点に届く行為が3つあります。
| 処分事由 | 点数 |
|---|---|
| 事故が発生した場合に危険防止措置を講じない | 15 |
| アルコール・薬物の影響下での飛行 | 15 |
| 飛行計画の変更指示に従わない飛行 | 15 |
この3つは、一度で資格が消えます。 前歴も加重も要りません。逆に言えば、国がこの3つを同じ重さに置いているということです。飲んで飛ばすことは、事故のときに人を助けないことと、同じ扱いなのです。
処分の段階も押さえておきましょう。
| 点数 | 処分等の内容 |
|---|---|
| 1~2 | 口頭注意 |
| 3~5 | 文書警告 |
| 6~8 | 技能証明の効力の停止3月 |
| 9~11 | 技能証明の効力の停止6月 |
| 12~14 | 技能証明の効力の停止1年 |
| 15~ | 技能証明の効力の取消 |
効力の停止は3月・6月・1年の3段階。教則第5版では、第4版にあった「いずれか以内」という言い方が改まり、「いずれか」になりました。細かいところですが、変わった点です。
救いもあります。個別事情による加減表には、速やかに処分事由が生じている状態の解消を自主的に行った場合と処分の対象となる事由につき自主的に申し出た場合が、それぞれ軽減1~3点として挙げられています。気づいたら自分から直す、自分から言う。 それが点数の上でも評価される仕組みになっています。
この回の数字まとめ
- アルコール=濃度の程度にかかわらず禁止(基準値は無い)/「薬物」に医薬品も含む
- 飛行前の確認=5つ(機体・空域と周囲・気象・燃料/バッテリー・リモート ID の作動)
- 航空機を確認したら=飛行前は飛ばさない/飛行中は降下
- 事故=人の重傷以上・第三者の物件の損壊・航空機との衝突接触
- 重大インシデント=人の軽傷・制御不能・発火・衝突接触のおそれ
- 事故時の順序=中止 → 救護・通報 → 危険防止措置 → 国土交通大臣へ報告
- 飛行計画の記載事項=7つ(保険の有無まで含む)
- 罰則の最高=2年以下の懲役又は100万円以下の罰金(事故時の危険防止措置を講じないこと)
- 行政処分=15点で取消。1回で15点になるのは3つ
- 効力の停止=3月・6月・1年
おわりに
この節は、読んでいて気持ちのよい内容ではありません。罰金の額や処分の点数が並びますから、当然です。
ただ、点数表を最後まで眺めると、国が何をいちばん重く見ているかが見えてきます。15点が付いているのは、飲んで飛ばすこと、指示に従わないこと、そして事故のときに人を助けなかったこと。技術の巧拙ではなく、人の安全に対する姿勢が問われているのだと私は受け取っています。
次回は「3.1 航空法全般(6)運航管理体制と技能証明制度」。安全確保措置、リスク管理、そして技能証明の取り方・限定・更新の話に入ります。
出典
- 国土交通省「無人航空機の飛行の安全に関する教則(第5版)」令和8年7月7日公布・令和8年7月14日適用
- 国土交通省航空局 無人航空機安全課「事故・重大インシデントについて」(令和5年度末時点の件数、制御不能に該当しなかった事例、報告先官署、墜落時の注意)
- 国土交通省「無人航空機の事故等の報告及び負傷者救護義務」(事故等報告一覧・令和6年度統計情報各種)
- 国土交通省「無人航空機操縦者技能証明に係る行政処分に関する基準」(教則第5版に点数表・処分等区分表として掲載)
本記事の内容は2026年8月時点のものです。制度は改正されることがありますので、最新の情報は必ず国土交通省の公式サイトでご確認ください。
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ここは学科試験では「無人航空機に関する規則」の分野にあたります。読んだ直後に解くと、取り違えていた箇所がその場で分かります。
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