今回から第6章「運航上のリスク管理」です。そして6.1は、この連載でいちばん〔一等〕の比重が大きい節でもあります。
ですので、最初に正直に申し上げます。二等の方が読むべきところは、この節の前半だけです。後半のSORAだのSAILだのOSOだのという英語の略語が並ぶあたりは、一等(カテゴリーⅢ飛行)の世界です。今回はその境目をはっきりさせたうえで、二等の方には前半をじっくり、一等を目指す方には後半の地図をお渡しします。
そして前半には、二等の方にこそ知っておいてほしい数字が1つあります。危険半径——「高度と同じ数値、または30m。長いほう」。この数字の意味から始めましょう。
教則第5版 6.1 運航リスクの評価及び最適な運航の計画の立案の基礎(全文)
出典:国土交通省「無人航空機の飛行の安全に関する教則(第5版)」(令和8年7月7日公布・令和8年7月14日適用)。読みやすさのためレイアウトを再構成し、原本で混在している英数字の全角・半角を半角にそろえています。本記事は国土交通省の公式なものではありません。
安全に配慮した飛行
無人航空機の飛行にあたっては、法令等に基づく基準や要件に適合させるのは当然だが、様々な要素により、飛行中、操縦が困難になること、又は予期せぬ機体故障等が発生する場合があることから、運航者は運航上の「リスク」を管理することが安全確保上非常に重要である。
すなわち、運航者は行おうとする運航の形態に応じ、事故等につながりかねない危険性のある要素(ハザード)を具体的に可能な限り多く特定し、それによって生じる「リスク」を評価したうえで、「リスク」の発生確率を低減させたり、「リスク」の結果となる被害を軽減したりする措置を講じることで、「リスク」を許容可能な程度まで低減する必要がある。
このようなリスク管理の考え方は、特にカテゴリーⅢ飛行において重要となるが、その他の飛行においても十分に理解したうえで、安全に配慮した計画や飛行を行うことが求められる。
- (1) 安全確保のための基礎
- 1) 安全マージン
飛行を行う際は、原則として飛行空域に安全マージンを加えた範囲で実施する。
- ⚫ 飛行経路を考慮し、周辺及び上方に障害物がない水平な場所を離着陸場所と設定する。
- ⚫ 緊急時などに一時的な着陸が可能なスペースを、前もって確認・確保しておく。
- ⚫ 飛行領域に危険半径(高度と同じ数値又は 30mのいずれか長い方)を加えた範囲を、立入管理措置を講じて無人地帯とした後に、飛行する。
- 2) 飛行の逸脱防止
飛行の逸脱を防止するためには、以下の事項を行うことが有効である。
- ⚫ ジオフェンス機能を使用することにより、飛行禁止空域を設定する。
- ⚫ 衝突防止機能として無人航空機に取り付けたセンサを用いて、周囲の障害物を認識・回避する。
- 3) 安全を確保するための運航体制
安全を確保するための運航体制として、操縦と安全管理の役割を分割させる目的で操縦者に加えて、安全管理者(運航管理者)を配置することが望ましい。
飛行計画
- (1) 飛行計画策定時の確認事項
飛行計画では、無人航空機の飛行経路・飛行範囲を決定し、無人航空機を運航するにあたって、自治体など各関係者・権利者への周知や承諾が必要となる場合がある。離着陸場は人の立入りや騒音、コンパスエラーの原因となる構造物がないかなどに留意する。飛行経路の設定は高圧電線などの電力施設が近くにないか、緊急用務空域に当たらないか、ドクターヘリなどの航空機の往来がないかなどを考慮に入れる必要がある。着陸予定地点に着陸できないときに、離陸地点まで戻るほどの飛行可能距離が確保できないなどのリスクがある場合、別途事前に緊急着陸地点を確保しておくべきである。
飛行計画の全ての工程において安全管理が優先され、離陸前、離陸時、計画経路の飛行、着陸時、着陸後の状況に応じた安全対策を講じ、飛行の目的を果たす飛行計画の策定が求められる。
飛行計画策定時は、機体の物理的障害や飛行範囲特有の現象、制度面での規制、事前に予想しうる状況の変化などを想定した確認事項の作成が求められる。
予定される飛行経路や日時において緊急用務空域の発令など、一時的な飛行規制の対象空域の該当となっていないかなど計画策定時に確認する必要がある。
- (2) 事故・インシデントへの対応
無人航空機の運航中に万が一事故やインシデントが発生した場合を想定し、事前に緊急連絡先を定義しておく。負傷者や第三者物件への物損が発生した場合は、直ちに当該無人航空機の飛行を中止するとともに、人命救助を最優先に行動し、消防署や警察に連絡するなど危険を防止するための必要な措置を講じなければならない。また、「無人航空機の事故及び重大インシデントの報告要領」に従って、速やかに国土交通大臣に事故等の報告をしなければならない。
- (3) カテゴリーⅢ飛行において追加となる安全確保〔一等〕
カテゴリーⅢ飛行の飛行形態に応じたリスク評価において、機体選定に関して考慮する注意点の例としては以下のとおり。
- ⚫ 地上の第三者への被害の可能性を低減させる対策として、必要最低限の数より多くのプロペラ及びモーターを有するなど、適切な冗長性を備えた機体を使用すること。
- ⚫ 地上の第三者への被害を軽減させる対策として、パラシュートを展開するなど、落下時の衝撃エネルギーを軽減できる機能を有する機体を使用すること。
経路設定
- (1) 飛行経路の安全な設定
飛行経路は、無人航空機が飛行する高度と経路において、障害となる建物や鳥などの妨害から避けられるよう設定する。障害物付近を飛行せざるを得ない経路を設定する際は機体の性能に応じて安全な距離を保つように心がける。
操縦者の目視が限界域付近となる飛行では、付近の障害物との距離差が曖昧になりやすいため、事前に飛行経路付近の障害物との距離を現地で確認し、必要と判断した場合は補助者を配置する。
- (2) カテゴリーⅢ飛行において追加となる経路設定の注意点〔一等〕
カテゴリーⅢ飛行においては、飛行形態に応じてリスクの分析及び評価を行い、その結果に基づくリスク軽減策を講じる必要がある。経路設定に当たっては、地上リスクと空中リスクの両方に関し、逸脱や墜落などの異常事態時におけるリスク軽減策を講じる必要があるが、具体的な対策の例は以下のとおりである。なお、これらに必要となる機体の機能や安全対策は事前に検証が必要である。
- ⚫ 可能な限り第三者の立入りが少ない飛行経路を設定する。
- ⚫ 飛行経路付近に緊急着陸地点や不時着エリアを予め設定する。
- ⚫ 飛行経路からの逸脱を防止するためのジオフェンス機能を設定する。
- ⚫ ジオフェンス機能の設定において、当日の他の航空機との空域調整結果が反映されていることを確認する。
無人航空機の運航におけるハザードとリスク
無人航空機の運航において、「ハザード」は事故等につながる可能性のある危険要素(潜在的なものを含む。)をいう。「リスク」は無人航空機の運航の安全に影響を与える何らかの事象が発生する可能性をいう。発生事象のリスクは、予測される頻度(被害の発生確率)と結果の重大性(被害の大きさ)により計量する。
無人航空機の運航リスクの評価
無人航空機の飛行にあたって、リスク評価とその結果に基づくリスク軽減策の検討は安全確保上非常に重要である。
すなわち、運航形態に応じ、事故等につながりかねない具体的な「ハザード」を可能な限り多く特定し、それによって生じる「リスク」を評価したうえで、リスクを許容可能な程度まで低減する。リスクを低減するためには、①事象の発生確率を低減するか、②事象発生による被害を軽減するか、の両方を検討したうえで必要な対策をとる。例えば、機材不具合というハザードによる墜落というリスクに対しては、機材不具合の可能性を低減するために信頼性の高い機材を使用(上記①)したり、墜落時にパラシュートにより地上の被害を低減(上記②)したりなどの対策が考えられる。
カテゴリーⅢ飛行におけるリスク評価〔一等〕
第三者上空を飛行するカテゴリーⅢ飛行は、万一墜落等の事故が生じた場合には、人の生命及び身体に甚大な被害をもたらすリスクの高い飛行となることから、より一層の安全に配慮すべきである。このため、一等無人航空機操縦士の技能証明を受けた者が第一種機体認証を受けた無人航空機を飛行させることに加え、あらかじめ、その運航の管理が適切に行われることについて国による飛行の許可・承認を受けることが必要となる。
具体的には、飛行形態に応じてリスクの分析及び評価を行い、その結果に基づくリスク軽減策を講じる必要がある。また、無人航空機を飛行させる際の適切な運航管理の体制を維持するため、リスク評価の結果に基づくリスク軽減策の内容等を記載した飛行マニュアルを作成・遵守することが求められる。
(1)において「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅢ飛行)」におけるリスク評価の基本的な考え方を、(2)においてリスク評価手法の 1 つである「安全確保措置検討のための無人航空機の運航リスク評価ガイドライン」(公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構 福島ロボットテストフィールド発行)(以下「リスク評価ガイドライン」という。)の概要をそれぞれ示す。
- (1) カテゴリーⅢ飛行におけるリスク評価の基本的な考え方〔一等〕
- 1) リスク分析及び評価において考慮すべき事項
「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅢ飛行)」においては、国による飛行の許可・承認を受けるための申請を行う場合には、飛行形態に応じてリスクの分析及び評価を行い、その結果を提出することを求めている。リスクの分析及び評価において考慮すべき事項は少なくとも以下を含むこととしている。
- ① 次の事項を含む運航計画
- ・飛行の日時
- ・飛行する空域及びその地域
- ・無人航空機を飛行させる者及び運航体制
- ・使用する無人航空機
- ・飛行の目的
- ・飛行の方法
- ② 飛行経路における人との衝突リスク(地上リスク)及び航空機との衝突リスク(空中リスク)
- ③ 電波環境(無線通信ネットワークを利用して操縦を行う場合に限る。)
- ④ 使用条件等指定書で指定された使用の条件等、使用する無人航空機の情報
- ⑤ 無人航空機を飛行させる者の無人航空機操縦者技能証明及び訓練の内容
- ⑥ 無人航空機を飛行させる者を補助する者等を含めた運航体制
- 2) リスク軽減策を記載した飛行マニュアル
無人航空機を飛行させる際の適切な運航管理の体制を維持するため、リスク評価の結果に基づくリスク軽減策の内容を記載した飛行マニュアルの作成・遵守をすることが求められる。当該飛行マニュアルに記載する事項として例えば以下のようなものがある。
- ① 無人航空機の点検・整備無人航空機の機能及び性能に関する基準に適合した状態を維持するため、次に掲げる事項に留
意して、機体の点検・整備の方法を記載する。
- ・機体の点検・整備の方法
- ・機体の点検・整備の記録の作成方法
- ・整備の実施・責任体制の明確化
- ② 無人航空機を飛行させる者の訓練
無人航空機を飛行させる者の飛行経歴、知識及び能力を確保・維持するため、次に掲げる事項に留意して、無人航空機を飛行させる者の訓練方法等を記載する。
- ・無人航空機を飛行させる者の資格に関する事項
- ・知識及び能力を習得するための訓練方法
- ・知識及び能力を維持させるための訓練方法
- ・飛行記録(訓練を含む。)の作成方法
- ・無人航空機を飛行させる者が遵守しなければならない事項
- ・訓練の実施・管理体制の明確化
- ③ 無人航空機を飛行させる際の安全を確保するために必要な体制次に掲げる事項に留意して、安全を確保するために必要な体制を記載する。
- ・飛行前の安全確認の方法
- ・無人航空機を飛行させる際の安全管理体制
- ・事故等の報告要領に定める事態への対応及び連絡体制
- (2) リスク評価ガイドラインによるリスク評価手法〔一等〕
「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅢ飛行)」においては、リスク評価ガイドラインによるリスク評価手法を活用することが推奨されている。リスク評価ガイドラインは、JARUS(Joint Authorities for Rulemaking of Unmanned Systems) の SORA (SpecificOperations Risk Assessment)を参考に作成したものである。
ここでは、リスク評価ガイドラインによるリスク評価手法の概要を記載するが、詳細についてはリスク評価ガイドラインを参照すること。
- 1) リスク評価のための基本的なコンセプト
- a. セマンティックモデル(想定飛行空間と想定外飛行空間)
「想定飛行空間」は、無人航空機の飛行の目的や、機体やシステムの性能、環境に応じて設定される飛行範囲である。機体や外部システムの異常・外乱の影響で想定飛行空間を外れて飛行してしまうことに備える空間として「想定外飛行空間」を設定する。
無人航空機の運航が正常に制御できている正常運航時は、標準運航手順に従って飛行を行う。機体や外部システムの異常・外乱の影響で想定飛行空間から外れてしまうおそれ、又は外れてしまった異常事態では、直ちに「異常対応手順」へと移る。異常対応手順により想定飛行空間へと復旧するのに必要な飛行空間を想定外飛行空間として確保する。
想定飛行空間と想定外飛行空間を合わせたものが「オペレーション空間」であり、その空間から万一外れてしまった緊急事態では、直ちに「緊急時対応手順」と「緊急時対応計画」を実行する。
飛行の地上リスクを検討する際には、オペレーション空間からさらに安全マージンとしての「地上リスク緩衝地域」を合わせた範囲を検討し、そのリスクを一定の範囲まで低減するように計画する。飛行の空中リスクを検討する際には、オペレーション空間からさらに任意で「空中リスク緩衝空域」を合わせた範囲を検討し、そのリスクを一定の範囲まで低減するように計画する。
「隣接エリア」は、オペレーション空間並びに地上リスク緩衝地域及び空中リスク緩衝空域に隣接する区域であり、無人航空機が制御不能な形で進入してしまった場合に高いリスクが想定される場合には、隣接エリアに進入しないための対策を検討する。
- b. ロバスト性(安全確保に必要とされる安全性の水準及び保証の水準)
安全確保措置を計画するに当たって、ロバスト性は重要な概念であり、安全確保措置により得られる「安全性の水準」(安全性の増加)と、計画されている安全性の確保が確実に実施されることを示す「保証の水準」(証明の方法)の双方を勘案して評価される。
安全確保措置に必要とされるロバスト性の水準は、運航形態のリスクに応じて検討し、低、中、高の3つの異なる水準があり、安全性の水準と保証の水準の低い方に準じて評価する。例えば、中レベルの安全性の措置が、低レベルの水準で保証された場合には、その安全確保措置は低レベルと評価される。
- c. 総合リスクモデル
リスク評価における「総合リスクモデル」とは、無人航空機の運航に伴うリスク、ハザード、脅威、安全確保措置の一般的な枠組みである。
- 2) リスク評価手法
リスク評価ガイドラインによるリスク評価手法は、次に掲げる6ステップにより構成される。ここでは、当該手法の概要を記載するが、詳細についてはリスク評価ガイドラインを参照すること。
- a. Step 1:運航計画(CONOPS)の説明
リスク評価の最初のステップとして「運航計画(CONOPS)」を明確にする。なお、リスク評価の結果要求される対策や安全確保措置のロバスト性の要求により修正が必要な場合がある。
- b. Step 2:地上リスクの把握
無人航空機の最大寸法及び運動エネルギーと、想定する運航形態に基づき、判定表を用いて地上リスククラスを判定し、地上リスクの軽減策とロバスト性により調整し、調整後の地上リスククラスを決定する。
- c. Step 3:空中リスクの把握
想定する飛行空域において航空機と遭遇する確率について定性的に「空中リスククラス」として判定し、必要により戦略的対策を講じることにより低減し、残留する空中リスククラス(ARC-a/ARC-b/ARC-c/ARC-d)を決定する。
「戦略的対策」とは、飛行前に航空機との遭遇確率やリスクにさらされている時間を低減するための任意の対策であり、特定の時間帯や特定の境界内での飛行などが挙げられる。一方で、「戦術的対策」とは、飛行中に航空機との衝突を回避するための対策であり、残留する空中リスククラスに応じて対策の要求レベルとロバスト性のレベルが割り当てられる。
- d. Step 4:運航に関わる安全目標の確認
これまでのステップで特定された地上リスククラスと空中リスククラスを用いて「安全性と保証のレベル(SAIL)」を決定する。
その SAIL に基づき、「運航に関わる安全目標(OSO)」とその安全目標に対するロバスト性が決定される。運航者は、安全確保措置の安全性の水準と保証の水準により、運航に関わる安全目標(OSO)に対するロバスト性を満たしていることを確認する。
- e. Step 5:隣接エリアの考慮
オペレーション空間に隣接するエリアについても評価し、そのリスクが高い場合には、逸脱を防止するための対策を講じる。
- f. Step 6:評価結果に対する対応
これまでのステップで評価されたリスクに対する要求事項を十分満足することを確認し、各対策や安全目標を達成するため、リスク評価結果に基づき飛行マニュアルを作成する。
なお、リスク評価の結果必要とされる対策や安全目標を達成することができない場合は、運航計画(CONOPS)を修正する。
ここからは私の解説です
この節がいちばん言いたいこと
教則の書き出しに、この章の姿勢が全部入っています。
法令等に基づく基準や要件に適合させるのは当然だが、様々な要素により、飛行中、操縦が困難になること、又は予期せぬ機体故障等が発生する場合があることから、運航者は運航上の「リスク」を管理することが安全確保上非常に重要である。
「適合させるのは当然だが」。——ここまでの5章ぶん、私たちはルールを読んできました。第6章の冒頭で教則は、それは出発点にすぎないと言っています。
許可も取った、点検もした、飛行計画も出した。それでも落ちるときは落ちる。だから「落ちたときにどうなるか」を先に考えておく——それがリスク管理です。
まず、どこからが〔一等〕かをはっきりさせます
この節は6,800字あり、その半分以上が〔一等〕です。読む前に線を引いておきましょう。
| 項目 | だれが読むところか |
|---|---|
| 安全に配慮した飛行/(1) 安全確保のための基礎(安全マージン・逸脱防止・運航体制) | 一等・二等とも |
| 飛行計画(1) 策定時の確認事項/(2) 事故・インシデントへの対応 | 一等・二等とも |
| 飛行計画(3) カテゴリーⅢ飛行において追加となる安全確保〔一等〕 | 一等のみ |
| 経路設定(1) 飛行経路の安全な設定 | 一等・二等とも |
| 経路設定(2) カテゴリーⅢ飛行において追加となる経路設定の注意点〔一等〕 | 一等のみ |
| ハザードとリスク/運航リスクの評価 | 一等・二等とも |
| カテゴリーⅢ飛行におけるリスク評価〔一等〕(1)(2)=審査要領とリスク評価ガイドライン | 一等のみ |
二等の方は、上から6行目まで。それで十分です。以下、まず二等の範囲をていねいに読み、そのあと一等の世界を「地図」としてご案内します。
二等の方に覚えていただきたい数字は、1つです
安全マージンの3つ目に、この節で唯一の具体的な数字が出てきます。
飛行領域に危険半径(高度と同じ数値又は30mのいずれか長い方)を加えた範囲を、立入管理措置を講じて無人地帯とした後に、飛行する。
危険半径=高度と同じ数値、または30m。長いほう。実際の数字を入れてみます。
| 飛行高度 | 危険半径 |
|---|---|
| 10m | 30m(30mのほうが長い) |
| 30m | 30m(同じ) |
| 50m | 50m(高度のほうが長い) |
| 100m | 100m |
考え方はシンプルです。機体が落ちるとき、真下に落ちるとは限らない。横に流れながら落ちれば、高いところから落ちるほど遠くまで届きます。だから高度と同じだけの半径。そして低く飛んでいても最低30mは見ておく——というのが、この数字の意味です。
「飛行領域+危険半径」を無人地帯にしてから飛ぶ。これは、目視内で30m以上離して飛ばしている普段の飛行でも、そのまま使える考え方です。高度50mで飛ばすなら、半径50mに人がいない状態を作る。——現場に立ったとき、この数字を思い出せるかどうかで景色が変わります。
安全マージンの残り2つは、「落ちたあと」の話です
教則が挙げる安全マージンの3項目を並べると、順番に意味があることが分かります。
| 教則の項目 | 何のためか |
|---|---|
| 飛行経路を考慮し、周辺及び上方に障害物がない水平な場所を離着陸場所と設定する | いちばん危ない離着陸を、安全にする |
| 緊急時などに一時的な着陸が可能なスペースを、前もって確認・確保しておく | 降ろせる場所を先に決めておく(前回5.2の「戻すことを前提とせず近くの安全な無人地帯へ」がここにつながる) |
| 飛行領域に危険半径を加えた範囲を、立入管理措置を講じて無人地帯とした後に飛行する | 落ちても人に当たらない状態を作る |
3つとも「飛ぶ前にやること」です。飛んでからでは、どれもできません。
逸脱を防ぐ2つの機能
教則が挙げるのはジオフェンス機能と衝突防止機能の2つです。
- ジオフェンス機能=飛行禁止空域を設定する。出ていかないようにする仕組み
- 衝突防止機能=機体に取り付けたセンサで周囲の障害物を認識・回避する。ぶつからないようにする仕組み
どちらも機体側の機能です。ここで前回(5.2)の話を思い出してください。自動操縦のヒューマンエラーは「ウェイポイント設定時の障害物の確認不足」でした。機能があっても、設定するのは人です。ジオフェンスも、設定を忘れれば働きません。
「操縦と安全管理を分ける」——ここも人の話です
操縦と安全管理の役割を分割させる目的で操縦者に加えて、安全管理者(運航管理者)を配置することが望ましい。
前回(5.4)で読んだ補助者と、少し役割が違います。補助者は飛行経路や第三者の管理を担う人。ここで言う安全管理者(運航管理者)は、安全管理そのものを担当する人です。
操縦する人が、同時に「やめる判断」をするのは難しい。——教則が5.3で書いていた「疲労を感じても飛行を継続してしまう傾向」を思い出せば、この配置の意味が分かります。止める役を、別の人にする。これも「自分を信じない」ための仕組みです。
飛行計画で見るもの——教則の並びが実用的です
飛行計画(1)は文章で書かれていますが、見る場所ごとに分けると、そのままチェックリストになります。
| どこを見るか | 教則が挙げていること |
|---|---|
| 関係者 | 自治体など各関係者・権利者への周知や承諾が必要になる場合がある |
| 離着陸場 | 人の立入り/騒音/コンパスエラーの原因となる構造物がないか |
| 飛行経路 | 高圧電線などの電力施設が近くにないか/緊急用務空域に当たらないか/ドクターヘリなどの航空機の往来がないか |
| 降りる場所 | 着陸予定地点に降りられないとき、離陸地点まで戻る飛行可能距離が確保できないなら、別途緊急着陸地点を確保しておく |
| 当日の規制 | 予定の経路・日時で緊急用務空域の発令など一時的な飛行規制の対象になっていないか |
「コンパスエラーの原因となる構造物」——これは連載の17回目(4.5)で読んだ地磁気の話です。鉄材の多い建物、高圧線、鉄板。離着陸場を選ぶ段階で、磁気のことまで考える。章をまたいで同じ話が出てくるのは、それだけ実務で効くということだと思います。
そしてドクターヘリ。教則が具体名を挙げているのはここくらいです。低い高度を、予告なく飛んでくる航空機——というのは、無人航空機の運航者にとって現実的な脅威です。
ハザードとリスクは、別のものです
ここが6.1のいちばんの山だと思います。日常語では混ざりがちですが、教則ははっきり分けています。
| 用語 | 教則の定義 |
|---|---|
| ハザード | 事故等につながる可能性のある危険要素(潜在的なものを含む) |
| リスク | 無人航空機の運航の安全に影響を与える何らかの事象が発生する可能性 |
ハザードは「もの・状態」、リスクは「可能性」。——たとえば高圧線があることがハザード、そこに接触する可能性がリスクです。
そして教則は、リスクの測り方まで書いています。
発生事象のリスクは、予測される頻度(被害の発生確率)と結果の重大性(被害の大きさ)により計量する。
「どのくらい起きやすいか」×「起きたらどのくらいひどいか」。この2つでリスクの大きさを測る、というのが基本の考え方です。めったに起きないが起きたら重大なことと、よく起きるが軽いことを、同じ物差しに乗せるための道具です。
だから、リスクの下げ方は2つしかありません
測り方が「確率×大きさ」なら、下げ方も2つです。教則もそう書いています。
リスクを低減するためには、①事象の発生確率を低減するか、②事象発生による被害を軽減するか、の両方を検討したうえで必要な対策をとる。
教則が挙げている例が分かりやすいので、そのまま表にします。
| ハザード/リスク | 2つの下げ方 |
|---|---|
| ハザード=機材不具合 リスク=墜落 |
① 発生確率を下げる=信頼性の高い機材を使用 ② 被害を軽減する=パラシュートで地上の被害を低減 |
「落ちにくくする」と「落ちても被害を小さくする」。この2本立てが、第6章を貫く考え方です。そして「両方を検討したうえで」と書かれています。片方だけでは足りない、ということです。
じつはこの考え方、ここまで読んできた教則の内容が全部当てはまります。点検も訓練も気象の確認も①。立入管理措置も危険半径もプロペラガードも②。教則全体が、この2列の表なのだと気づくと、章のつながりが見えてきます。
ここからは一等の世界です(地図としてご覧ください)
ここから先はカテゴリーⅢ飛行——立入管理措置を講じずに、第三者の上空を飛ぶ飛行の話です。二等の方は「こういう世界がある」と眺めていただければ十分です。
まず、国が求めているものが2つあります。
- リスクの分析及び評価を行い、その結果を提出する(審査要領)
- その結果に基づくリスク軽減策を記載した飛行マニュアルを作成・遵守する
審査要領が求めるリスク分析の考慮事項は6つです。
| # | 考慮すべき事項 |
|---|---|
| ① | 運航計画(飛行の日時/空域及びその地域/飛行させる者及び運航体制/使用する機体/飛行の目的/飛行の方法) |
| ② | 飛行経路における人との衝突リスク(地上リスク)及び航空機との衝突リスク(空中リスク) |
| ③ | 電波環境(無線通信ネットワークを利用して操縦を行う場合に限る) |
| ④ | 使用条件等指定書で指定された使用の条件等、使用する無人航空機の情報 |
| ⑤ | 飛行させる者の技能証明及び訓練の内容 |
| ⑥ | 補助する者等を含めた運航体制 |
そして飛行マニュアルに書くことは3本柱です。①無人航空機の点検・整備/②飛行させる者の訓練/③安全を確保するために必要な体制。——機体・人・体制の3つ。この連載で読んできた4章・5章が、そのまま項目になっているのが分かります。
リスク評価ガイドラインとSORA——名前だけ押さえる
教則が名指ししているのが、「安全確保措置検討のための無人航空機の運航リスク評価ガイドライン」(公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構 福島ロボットテストフィールド発行)です。
これは実在の文書で、文書番号RTF-GL-0006、初版が2022年12月2日、現在はEdition 1.2。本編に加えて付録1〜7(リスク評価作業シート、CONOPSの説明に必要な事項、地上リスク軽減策、戦術的対策の性能要件、運航に係わる安全目標、リスク評価適用例など)がそろっていて、福島ロボットテストフィールドのサイトから無償でダウンロードできます。一等を目指す方は、一度目次だけでも見ておく価値があります。
そして、このガイドラインの元になっているのがSORAです。
リスク評価ガイドラインは、JARUS (Joint Authorities for Rulemaking of Unmanned Systems) の SORA (Specific Operations Risk Assessment)を参考に作成したものである。
SORA=特定運航のリスク評価という、国際的な枠組みです。日本独自の発明ではなく、世界で使われている手法を持ち込んでいるということです。
空間の入れ子——ここは絵で覚える
セマンティックモデルは、用語が4つ出てきますが入れ子構造になっています。
| 空間 | 何のための空間か |
|---|---|
| 想定飛行空間 | 飛行の目的・機体やシステムの性能・環境に応じて設定される飛行範囲。正常運航時は標準運航手順で飛ぶ |
| 想定外飛行空間 | 異常・外乱で想定飛行空間を外れたときに備える空間。異常対応手順で想定飛行空間へ戻るのに必要な空間 |
| オペレーション空間 | 想定飛行空間+想定外飛行空間。ここからも外れた緊急事態では緊急時対応手順と緊急時対応計画を実行 |
| 地上リスク緩衝地域/空中リスク緩衝空域 | オペレーション空間にさらに加える安全マージン(空中側は任意) |
| 隣接エリア | その外側。制御不能な形で進入すると高いリスクが想定される場合は、進入しないための対策を検討 |
内側から順に、手順が変わる。想定飛行空間なら標準運航手順、想定外飛行空間なら異常対応手順、オペレーション空間の外なら緊急時対応。「どこにいるかで、やることが決まっている」——これがこのモデルの狙いです。
ロバスト性——「低いほうに合わせる」
ここは1点だけ、教則が明示している原則を押さえておけば十分です。
安全性の水準と保証の水準の低い方に準じて評価する。例えば、中レベルの安全性の措置が、低レベルの水準で保証された場合には、その安全確保措置は低レベルと評価される。
安全性の水準(どれだけ安全になるか)と保証の水準(それを証明できるか)の低いほう。——いくら良い対策でも、証明できなければ低評価ということです。やっていることと、示せることは違う。これは一等に限らず、書類仕事の本質を突いた原則だと思います。
リスク評価の6ステップ
| Step | やること |
|---|---|
| 1 | 運航計画(CONOPS)の説明——何をどう飛ばすかを明確にする |
| 2 | 地上リスクの把握——機体の最大寸法と運動エネルギー、運航形態から地上リスククラスを判定し、軽減策とロバスト性で調整 |
| 3 | 空中リスクの把握——航空機と遭遇する確率を判定し、戦略的対策で低減する。 残留する空中リスククラス(ARC-a/ARC-b/ARC-c/ARC-d)を決定 |
| 4 | 運航に関わる安全目標の確認——地上と空中のリスククラスからSAIL(安全性と保証のレベル)を決める。 OSO(運航に関わる安全目標)とロバスト性が決まる |
| 5 | 隣接エリアの考慮——リスクが高ければ逸脱防止策を講じる |
| 6 | 評価結果に対する対応——結果に基づき飛行マニュアルを作成。目標を達成できない場合は運航計画(CONOPS)を修正する |
Step 3で出てくる2つの対策の違いは、押さえておくと理解が進みます。
| 対策 | いつ・何をするか |
|---|---|
| 戦略的対策 | 飛行前に、航空機との遭遇確率やリスクにさらされる時間を低減する任意の対策(特定の時間帯や特定の境界内での飛行など) |
| 戦術的対策 | 飛行中に、航空機との衝突を回避するための対策(残留する空中リスククラスに応じて要求レベルとロバスト性が割り当てられる) |
戦略=飛ぶ前、戦術=飛んでいる最中。——言葉が難しいだけで、中身はこれだけです。
そしてStep 6の最後の一文が、私はこの節でいちばん誠実だと思っています。「目標を達成できない場合は、運航計画を修正する」。計画を通すためにリスク評価をするのではなく、リスク評価の結果で計画のほうを変える。順番が逆にならないよう、教則がわざわざ書いているのだと読みました。
この回の数字まとめ
- この節は半分以上が〔一等〕。二等の範囲=安全確保のための基礎/飛行計画(1)(2)/経路設定(1)/ハザードとリスク/運航リスクの評価
- 危険半径=高度と同じ数値又は30mのいずれか長い方。飛行領域にこれを加えた範囲を立入管理措置を講じて無人地帯にしてから飛ぶ
- 安全マージンの3つ=障害物がない水平な離着陸場所/一時的な着陸が可能なスペースの事前確保/危険半径を加えた無人地帯
- 逸脱防止=ジオフェンス機能(飛行禁止空域の設定)と衝突防止機能(センサで障害物を認識・回避)
- 運航体制=操縦と安全管理を分けるため安全管理者(運航管理者)の配置が望ましい
- ハザード=危険要素(潜在的なものを含む)/リスク=事象が発生する可能性
- リスクの計量=予測される頻度(発生確率)×結果の重大性(被害の大きさ)
- リスクの下げ方は2つ=①発生確率を低減/②被害を軽減。両方を検討する
- 〔一等〕審査要領の考慮事項=6項目/飛行マニュアルの柱=点検整備・訓練・安全体制の3つ
- 〔一等〕リスク評価ガイドライン=福島ロボットテストフィールド発行(RTF-GL-0006・初版2022年12月2日・Edition 1.2・本編+付録1〜7・無償)。JARUSのSORAを参考に作成
- 〔一等〕空間の入れ子=想定飛行空間+想定外飛行空間=オペレーション空間、その外に緩衝地域・緩衝空域、さらに外が隣接エリア
- 〔一等〕ロバスト性=安全性の水準と保証の水準の低い方に準じて評価。水準は低・中・高の3つ
- 〔一等〕リスク評価は6ステップ。空中リスククラスはARC-a/ARC-b/ARC-c/ARC-d。戦略的対策=飛行前/戦術的対策=飛行中
おわりに
英語の略語が並ぶ節でしたが、二等の方に持ち帰っていただきたいのは2つだけです。
1つは危険半径。高度と同じ数値、または30m、長いほう。次に飛ばすとき、自分がどのくらいの範囲を空けているか、一度測ってみてください。意外と足りていないことに気づくかもしれません。
もう1つは「落ちにくくする」と「落ちても被害を小さくする」の2本立て。教則がここまで書いてきたことは、全部このどちらかに入ります。点検も訓練も気象確認も前者、立入管理も危険半径もプロペラガードも後者。——この2列の表を頭の中に持っておくと、新しい知識が入ってきたときに、どちらの引き出しに入れればいいかが分かります。
一等を目指す方は、リスク評価ガイドラインが無償で読めることをぜひ覚えておいてください。教則の数ページで説明されている内容が、本編と7つの付録でていねいに書かれています。
次回は「6.2 気象の基礎知識及び気象情報を基にしたリスク評価及び運航の計画の立案」。連載でいちばん分量の多い節で、風、雲、雷、そして気象情報の読み方まで入ります。飛ばす日を決めるための回です。
出典
- 国土交通省「無人航空機の飛行の安全に関する教則(第5版)」令和8年7月7日公布・令和8年7月14日適用
- 公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構 福島ロボットテストフィールド「安全確保措置検討のための無人航空機の運航リスク評価ガイドライン」RTF-GL-0006(初版2022年12月2日・Edition 1.2・本編+付録1〜7)
本記事の内容は2026年8月時点のものです。リスク評価ガイドラインの版は改訂されることがありますので、実際に使うときは福島ロボットテストフィールドのサイトで最新版をご確認ください。
この章を、問題で確認する
ここは学科試験では「運航上のリスク管理」の分野にあたります。読んだ直後に解くと、取り違えていた箇所がその場で分かります。
この節は〔一等〕の項目が中心で、二等の出題範囲外の記述が多く含まれます。
分野別に数をこなすなら(登録講習機関講師が作問・全問解説つき・買い切り)
二等 演習250問/演習250問+模試5セット 一等 演習261問/演習261問+模試10セット
登録講習機関講師 フライトデスク 監修



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