前回は「機体の種類」の話でした。今回は同じ機体で、飛ばし方が変わったら何が変わるのかという話です。取り上げられるのは2つ、夜間飛行と目視外飛行。どちらも承認が必要な特定飛行で、技能証明の限定にも出てくる飛び方です。
教則のこの節は全体で1,000字ほどしかありません。ですが、書かれているのは「その飛び方をするなら、機体にこれが付いていないと駄目です」という装備の話で、実務では申請書の中身そのものになります。今回は教則の短い箇条書きが実際の審査でどう見られているのかまで、一次情報をたどって並べてみます。日の入りの時刻が地域でどれくらい違うのかも、実際の数字で確かめました。
教則第5版 4.2 無人航空機の機体の特徴(飛行方法別)(全文)
出典:国土交通省「無人航空機の飛行の安全に関する教則(第5版)」(令和8年7月7日公布・令和8年7月14日適用)。読みやすさのためレイアウトを再構成し、原本で混在している英数字の全角・半角を半角にそろえています。本記事は国土交通省の公式なものではありません。
夜間飛行
- (1) 夜間飛行と昼間(日中)飛行の違い
航空法では原則として無人航空機は日出から日没までの間において飛行させることになっている。これ以外の夜間(日没から日出までの間)に飛行させる場合は承認が必要である。日没及び日出時刻は地域により異なるため、事前に確認すること。地形や人工物等の障害物も視認できないため、離着陸地点や計画的に用意する緊急着陸地点、飛行経路中の回避すべき障害物も視認できるように地上照明を当てる。機体に搭載されたビジョンセンサーが夜間に対応していない場合は、衝突回避・姿勢安定などの安全機能が使用できない可能性があることに注意が必要である。
- (2) 夜間飛行のために必要な装備
夜間飛行のための必須装備として、無人航空機の姿勢及び方向が正確に視認できる灯火を有することが求められる。ただし、無人航空機の飛行範囲が照明等で十分照らされている場合は、この限りではない。また、送信機については、操縦者の手元で位置、高度、速度等の情報が把握できるものを使用することが望ましい。
目視外飛行
- (1) 目視外飛行と目視内飛行の違い
目視外飛行では機体の状況や、障害物、他の航空機等の周囲の状況を直接肉眼で確認することができないので、機体に設置されたカメラや機体の位置、速度、異常等の状態を把握することが必要である。
- (2) 目視外飛行のために必要な装備
目視外飛行では周囲の安全を確認する補助者が配置された場合に必要な装備がある。なお、補助者を配置しない場合には追加される装備がある。主なものは、以下のとおり。
- ① 目視外飛行では周囲の安全を確認する補助者が配置された場合に必要な装備
- ⚫ 自動操縦システム及び機体の外の様子が監視できる機体
- ⚫ 搭載カメラや機体の高度、速度、位置、不具合状況等を地上で監視できる操縦装置
- ⚫ 不具合発生時に対応する危機回避機能(フェールセーフ機能)、電波断絶時の自動帰還や空中停止機能、GNSS電波異常時の空中停止や安全な自動着陸、電池異常時の発煙発火防止等の機能がある。
- ② 補助者を配置しない場合に追加する必要のある装備
- ⚫ 航空機からの視認性を高める灯火、塗色
- ⚫ 機体や地上に設置されたカメラ等により飛行経路全体の航空機の状況が常に確認できるもの
- ⚫ 第三者に危害を加えないことを、製造事業者等が証明した機能
- ⚫ 機体の針路、姿勢、高度、速度及び周辺の気象状況等を把握できる操縦装置
- ⚫ 計画上の飛行経路と飛行中の機体の位置の差を把握できる操縦装置
ここからは私の解説です
この節がいちばん言いたいこと
ひとことで言うと、「見えないぶんを、機械で埋める」という節です。
夜間は暗くて見えない。目視外は遠くて見えない。どちらも、操縦者の目が届かなくなる飛び方です。そこで教則は、目の代わりになる装備を機体と送信機に求めます。夜間なら灯火、目視外ならカメラと監視機能とフェールセーフ。装備の一覧が、そのまま「何が見えなくなるのか」の裏返しになっていると読むと、丸暗記しなくても順番に出てきます。
まず「夜間」は何時からなのか
教則は「日出から日没までの間」が原則で、それ以外の夜間(日没から日出までの間)に飛行させる場合は承認が必要と書いています。そして、こう付け足しています。
日没及び日出時刻は地域により異なるため、事前に確認すること。
この一文、読み飛ばしがちですが、実際の差はかなり大きいです。国立天文台の暦計算室で2026年8月31日を調べてみました。
| 場所 | 日の出 | 日の入り |
|---|---|---|
| 根室(北海道) | 4:40 | 17:56 |
| 東京 | 5:12 | 18:10 |
| 鹿児島 | 5:53 | 18:43 |
同じ日でも、日の出は根室と鹿児島で1時間13分、日の入りは47分違います。「だいたい18時くらいまでなら昼間」と体で覚えていると、場所を変えたときに簡単にずれます。しかも境目は、1分でも過ぎれば夜間飛行です。
加えて、日の入りの時刻は日ごとにも動きます。夏至の頃と冬至の頃では、同じ場所でも2時間以上違う。「その日、その場所」で調べる——教則がわざわざ書いているのは、そういう意味だと思います。私は国立天文台の暦計算室の各地のこよみを使っていますが、DIPS2.0で飛行計画を立てるときにも必ず突き合わせています。
夜間の必須装備は、灯火が1つだけです
意外に思われるかもしれませんが、教則が「必須装備」と呼んでいるのは1つだけです。
無人航空機の姿勢及び方向が正確に視認できる灯火を有することが求められる。ただし、無人航空機の飛行範囲が照明等で十分照らされている場合は、この限りではない。
大事なのは「姿勢及び方向が正確に視認できる」という条件です。ただ光っていればよいのではありません。どちらが前で、いま機体がどう傾いているかが分かること。市販の機体に前後で色の違うLEDが付いているのは、飾りではなくこの要件のためです。
そしてただし書き。飛行範囲が照明で十分に照らされているなら灯火は要りません。屋内に近い明るさの現場や、投光器を並べた工事現場のような場面が想定されています。「灯火」と「照明」はどちらか、という関係です。
送信機については、教則は「操縦者の手元で位置、高度、速度等の情報が把握できるものを使用することが望ましい」と書いています。必須ではなく「望ましい」——ここは書き分けられているので、そのまま覚えておくとよいと思います。
教則が書いていない、夜間の実務
ここからは、国土交通省の「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」(令和7年12月12日 最終改正)を読んで見つけたことです。教則の装備の話の後ろに、体制の条件がきちんと並んでいます。
| 誰/何について | 審査要領が求めていること |
|---|---|
| 機体 | 姿勢及び方向が正確に視認できる灯火(教則と同じ。照明で十分照らされている場合を除く) |
| 操縦者 | 夜間、意図した飛行経路を維持しながら飛行させることができること。 できない場合は、第三者が立ち入らないよう措置された場所で夜間飛行の訓練を実施する |
| 体制 | 日中のうちに、飛ばす経路と周辺の障害物件を事前に確認する/ 飛行経路全体を見渡せる位置に補助者を置く/ 離着陸を予定している場所が照明の設置等により明確になっている |
私がいちばん現場的だと思うのは、真ん中の行と「日中のうちに下見をする」という条件です。夜に着いて夜に飛ばす、では通らない。明るいうちに一度その場所を見ておくことが、承認の前提として書かれているわけです。
標準マニュアル②(令和7年12月26日版)にも、同じ趣旨が並んでいます。「日中、飛行させようとする経路及びその周辺の障害物件等を事前に確認し、適切な飛行経路を選定する」「操縦者は、夜間飛行の訓練を修了した者に限る」、そして「夜間の離発着場所において車のヘッドライトや撮影用照明機材等で機体離発着場所に十分な照明を確保する」。車のヘッドライトが例に挙がっているところに、現場の生々しさがあります。
「ビジョンセンサーが夜に効かない」という一文の重み
教則の夜間のところに、装備の話とは別に、こんな一文があります。
機体に搭載されたビジョンセンサーが夜間に対応していない場合は、衝突回避・姿勢安定などの安全機能が使用できない可能性があることに注意が必要である。
ここは「操縦者が見えない」だけでなく「機体も見えなくなる」という話です。前方の障害物を避ける機能も、地面を見て位置を保つ機能も、多くはカメラで下や前を見ています。暗くなると、その目が閉じる。
昼間なら勝手に止まってくれた壁の前で、夜は止まりません。ホバリングも流れやすくなります。「昼間と同じ感覚で飛ばせる」と思っていることが、いちばん危ない——この一文は、そう言っていると私は読んでいます。お手持ちの機体の取扱説明書で、暗所での対応を一度確認しておいてください。
目視外飛行——装備の一覧は「何が見えないか」の裏返し
目視外の説明は、まずこう始まります。
機体の状況や、障害物、他の航空機等の周囲の状況を直接肉眼で確認することができないので、機体に設置されたカメラや機体の位置、速度、異常等の状態を把握することが必要である。
そのうえで、装備が「補助者を配置した場合」と「補助者を配置しない場合に追加するもの」の2段構えで並びます。ここが、この節の骨格です。
補助者を配置した場合に必要なのは3つ。
- 自動操縦システム及び機体の外の様子が監視できる機体——機体側の目
- 搭載カメラや機体の高度、速度、位置、不具合状況等を地上で監視できる操縦装置——地上側の計器
- フェールセーフ機能——目も計器も駄目になったときの受け皿
フェールセーフは「何が壊れたか」で3つに分かれています
教則は3つの異常をひとまとめの文章で書いていますが、審査要領を読むと異常の種類ごとに、どうなればよいかが整理されています。並べるとこうなります。
| 何が起きたか | 機体がすべきこと |
|---|---|
| 電波が切れた | 離陸地点まで自動的に戻る(自動帰還)、または電波が復帰するまで空中で位置を維持する |
| GNSS(GPS等)の電波に異常 | 復帰まで空中で位置を保持する、安全な自動着陸ができる、またはGPS等以外で位置情報を取得できる |
| 電池の電圧・容量・温度に異常 | 発煙・発火を防止する。加えて、離陸地点まで自動的に戻るか、安全な自動着陸ができる |
覚え方としては、「電波・位置・電池」の3つ。そして共通しているのは、どれも「その場で止まる」か「帰る」か「降りる」のどれかだという点です。そのまま飛び続ける、という選択肢はどこにもありません。
補助者を置かないと、条件が一段跳ね上がります
教則が挙げている追加装備は5つです。
- 航空機からの視認性を高める灯火、塗色
- 機体や地上のカメラ等で飛行経路全体の航空機の状況が常に確認できるもの
- 第三者に危害を加えないことを、製造事業者等が証明した機能
- 機体の針路、姿勢、高度、速度及び周辺の気象状況等を把握できる操縦装置
- 計画上の飛行経路と飛行中の機体の位置の差を把握できる操縦装置
この5つ、審査要領の5-4(1)d)のア)〜オ)と順番までそのまま一致します。教則は審査要領を要約しているわけです。
ただし、審査要領にはもう1つ、カ)があります。
想定される運用により、十分な飛行実績を有すること。なお、この実績は、機体の初期故障期間を超えたものであること。
装備ではなく実績を求めているので、教則の「装備」の一覧からは外れたのだと思います。ですが実務では重い条件です。買ったばかりの機体で、いきなり補助者なしの目視外はできないということですから。
そして操縦者側にも条件が付きます。審査要領は、補助者を配置しない場合、モニターを見ながら意図した経路を維持できることに加えて、「遠隔からの異常状態の把握、状況に応じた適切な判断及びこれに基づく操作等に関し座学・実技による教育訓練を少なくとも10時間以上受けていること」としています。10時間——教則には出てこない数字です。
夜間と目視外は、重ねると別扱いになります
ここは実務でつまずきやすいところです。夜間の目視外飛行は、単に「2つの承認を取る」では済みません。
標準マニュアル②(令和7年12月26日版)は、はっきり書いています。
- 人又は家屋が密集している地域の上空では夜間飛行は行わない
- 人又は家屋が密集している地域の上空では目視外飛行は行わない
- 夜間の目視外飛行は行わない
- 夜間飛行においては目視外飛行は実施せず、機体の灯火が容易に認識できる範囲内での飛行に限定する
つまり、標準マニュアルをそのまま使う限り、夜間の目視外飛行はできません。やるなら独自マニュアルを作って個別に審査を受けることになります。
審査要領の側も、扱いを分けています。申請書に飛行の日時を特定して書かなければならないのは、「人又は家屋の密集している地域の上空で夜間における目視外飛行」と「催し場所の上空における飛行」の2つだけ。ほかは期間と時間帯でよいことになっています。いつ飛ぶかまで名指しさせるのは、それだけリスクが高いと見られているということです。
型式認証の一覧で、夜間と目視外を数えてみました
前回使った国土交通省の「型式認証を取得している無人航空機一覧」(令和8年6月19日現在)には、「飛行の方法」という欄があります。記号の意味は脚注で決まっていて、a=夜間、b=目視外、c=30m未満、d=催し場所、e=危険物輸送、f=物件投下です。第二種型式認証の13件を数えてみました。
| 飛行の方法 | 件数 | 付いている機体の傾向 |
|---|---|---|
| a 夜間 | 8 | ヤマハ発動機の5件(25kg以上の産業用ヘリ)と、DJI・イームズの機体 |
| b 目視外 | 8 | マルチローターに広く付いている |
| c 30m未満 | 6 | —— |
| d 催し場所 | 2 | DJIの2件のみ |
| e 危険物輸送/f 物件投下 | 各5 | ヤマハ発動機の5件のみ(農薬散布の系譜) |
並べてみると、夜間と目視外は、型式認証の世界ではもう珍しくないことが分かります。13件中8件ですから、半数を超えています。一方で催し場所(d)は2件だけ。この節で読んだ「夜間と目視外」が、制度の中でどのあたりに置かれているのかが、数字で見えてきます。
この回の数字まとめ
- 昼間=日出から日没まで/夜間=日没から日出まで。夜間飛行は承認が必要
- 日出・日没は地域で違う。2026年8月31日の実測値で、日の出は根室4:40・鹿児島5:53(1時間13分差)、日の入りは根室17:56・鹿児島18:43(47分差)
- 夜間の必須装備=姿勢及び方向が正確に視認できる灯火。飛行範囲が照明等で十分照らされている場合は不要
- 送信機は位置・高度・速度等が手元で分かるものが望ましい(必須ではない)
- 目視外・補助者ありの装備=3つ(自動操縦とカメラ/地上で監視できる操縦装置/フェールセーフ)
- フェールセーフは電波・位置(GNSS)・電池の3つの異常に対応
- 目視外・補助者なしの追加装備=教則は5つ(灯火や塗色/飛行経路全体の航空機の状況/第三者に危害を加えない証明/針路・姿勢・高度・速度・気象/計画経路と実位置の差)。審査要領にはさらに「十分な飛行実績(初期故障期間を超えたもの)」がある
- 補助者なしの目視外は、操縦者に座学・実技の教育訓練10時間以上(審査要領)
- 標準マニュアル②では夜間の目視外飛行は行わない。密集地の上空での夜間飛行・目視外飛行も行わない
- 申請書に日時の特定が要るのは「密集地上空での夜間の目視外飛行」と「催し場所上空の飛行」の2つ
- 型式認証(第二種13件)で夜間8件・目視外8件・催し場所2件
おわりに
この節は分量が短いので、つい読み流してしまいます。私も最初はそうでした。でも、装備の箇条書きは、そのまま申請書の中身です。「うちの機体は目視外の装備を満たしているのか」を確かめるとき、最後に開くのはここになります。
覚え方は、「夜は灯火、目視外はカメラとフェールセーフ、補助者を外すならさらに5つ」。この3段だけ頭に入れておいて、細かい文言は必要なときに開き直せば十分だと思います。
そして今回いちばんお伝えしたかったのは、日の入り時刻の47分です。制度の話ではなく、うっかりの話です。同じ機体、同じ操縦、同じ気持ちで飛ばしていても、場所と日付が変われば境目が動く。飛ばす前にその日の時刻を確認する——それだけで防げる違反があります。
次回は「4.3 無人航空機の飛行原理と飛行性能」。いよいよ、なぜ飛ぶのかという話に入ります。
出典
- 国土交通省「無人航空機の飛行の安全に関する教則(第5版)」令和8年7月7日公布・令和8年7月14日適用
- 国土交通省航空局「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」平成27年11月17日制定・令和7年12月12日最終改正(夜間飛行5-3、目視外飛行5-4の各基準、フェールセーフの例示、補助者を配置しない場合の追加基準と教育訓練10時間以上、申請書で日時の特定が必要な飛行)
- 国土交通省航空局「標準マニュアル②(令和7年12月26日版)」場所を特定しない申請について適用(夜間飛行・目視外飛行を行う際の体制、夜間の目視外飛行を行わないこと)
- 国土交通省「型式認証を取得している無人航空機一覧」令和8年6月19日現在(飛行の方法の記号a〜fと、第二種13件の内訳を集計)
- 国立天文台 暦計算室「各地のこよみ 日の出入り」2026年8月(根室・東京・鹿児島の日の出・日の入り時刻)
本記事の内容は2026年8月時点のものです。審査要領や標準マニュアルは改正されることがありますので、申請の前には必ず国土交通省の公式サイトで最新版をご確認ください。日の出・日の入りの時刻は、飛行させる日と場所のものを都度お調べください。
この章を、問題で確認する
ここは学科試験では「無人航空機のシステム」の分野にあたります。読んだ直後に解くと、取り違えていた箇所がその場で分かります。
分野別に数をこなすなら(登録講習機関講師が作問・全問解説つき・買い切り)
二等 演習250問/演習250問+模試5セット 一等 演習261問/演習261問+模試10セット
登録講習機関講師 フライトデスク 監修



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