一等無人航空機操縦士 25kg限定解除修了審査 完全攻略【2026年6月版】

一等無人航空機操縦士 25kg限定解除修了審査 完全攻略のアイキャッチ ドローン国家資格

ドローンの国家資格の最上位、一等無人航空機操縦士。

その技能証明には、取得時に「最大離陸重量25kg未満の機体に限る」という限定が付いています。

この限定を外すのが「最大離陸重量25kg未満の限定変更」、いわゆる25kg限定解除です。

一等の25kg限定解除は、立入管理措置を講じない、25kg以上の大型機の飛行に対応する資格です。

物流、農薬散布、災害対応。「重いものを運べる無人機」の社会実装を担う、その最前線の証明と言えます。

登録講習機関の修了審査に合格すれば、指定試験機関の実地試験が免除されます。

この記事は、その修了審査を一本で攻略しきるための決定版です。

最大の特徴は、25kg以上の大型機を、GNSSオフ(ATTI)で、高度5〜10mで飛ばすこと。

機体が変わると、操縦の常識が変わります。基本修了審査の感覚のままでは戦えません。

なお内容は2026年6月5日施行の実地試験実施細則(改正版)に対応しています。

※この記事は審査の流れと要点の解説です。机上審査で使われる試験問題そのものは掲載していません。


まず結論:25kg限定解除修了審査の基本データ

迷ったらここだけ覚えてください。

項目 内容
対象 一等・最大離陸重量25kg未満の限定変更(回転翼マルチローター)
確認する能力 立入管理措置なしで行う25kg以上の機体の飛行を安全に行う知識・能力
使用機体 最大離陸重量25kg以上のマルチローター
採点方式 100点持ち点からの減点式
合格基準 80点以上(各試験科目の終了時点)
実技科目 高度変化スクエア(GNSS OFF・8分)/ピルエットホバリング(GNSS OFF・3分)/緊急着陸を伴う円周飛行(GNSS OFF・8分)
飛行高度 基準高度5m(スクエアは5m⇄10mの高度変化)
机上審査 5問・各5点・10分(飛行計画の作成)
口述審査 飛行前点検・飛行後点検・記録(事故・重大インシデントの口述はなし)
準拠する細則 実地試験実施細則(2026年6月5日施行)
準拠する教則 飛行の安全に関する教則 第4版

合格ラインは基本と同じ80点。許される減点は20点までです。

実技は基本と同じ3科目構成。ただし8の字が「円周飛行」に変わり、スケールが一回り大きくなります。


1. 25kg限定解除とは何か

技能証明を最初に取ると、「最大離陸重量25kg未満の機体に限る」という限定が付きます。

誤解しやすいのですが、この限定が付いていても、25kg以上の機体を「飛ばすこと」自体はできます。

特定飛行に当たらない飛行なら技能証明は不要ですし、特定飛行も従来どおり個別に許可・承認を受ければ飛行できます。

できないのは、25kg以上の機体に対して一等の効力を使うことです。

つまり、立入管理措置を講じないカテゴリーIII飛行は行えず、カテゴリーII飛行で受けられる許可・承認の省略も使えません。

限定変更の講習を受け、修了審査に合格すると、この限定が外れます。

一等で25kg限定を解除する意味は大きく、立入管理措置を講じないカテゴリーIII飛行を、25kg以上の機体で行う道が開けます。

中山間地への物資輸送、大規模農地の散布、災害時の重量物搬送。大型機にしかできない仕事は確実に増えています。

つまりこの審査は「大きく重い機体でも、小型機と同じ水準で安全を保てるか」を見る試験です。

審査で使うのは実際に最大離陸重量25kg以上の機体。借り物の感覚では飛ばせない、本物の大型機です。

審査は基本と同様、机上・口述・実技を同じ日に完結させます。

2. 基本修了審査との違い(最初に頭を切り替える)

基本に受かった人ほど、ここで頭の切り替えが必要です。

違いを表にまとめます。

項目 一等基本 一等25kg限定解除
使用機体 25kg未満 25kg以上の大型機
実技科目 スクエア/ピルエット/8の字 スクエア/ピルエット/円周飛行
スクエアの高度 1.5m⇄3.5m・6分 5m⇄10m・8分
ピルエットの高度 3.5m・3分 5m・3分
緊急着陸の科目 8の字(円直径約5m) 円周飛行(円直径約10m・2周+逆回り1周以上)
離着陸地点 直径2mの円 直径5mの円
減点区画 経路から1.5m 経路から2.5m
不合格区画 経路から2.5m 経路から6m
立ち位置(機体まで) 6.5〜8.5m 11〜16m
飛行モード GNSS OFF(ATTI) GNSS OFF(ATTI)=同じ
机上審査の型 飛行シナリオのリスク判断 飛行計画の作成の留意事項
口述(事故等) あり なし

注目はすべての数字が大きくなっていることです。

高度は5〜10m。基本の約3倍の高さを飛びます。コースの許容幅も広がりますが、機体もまた大きい。

そしてATTIは継続。基本で磨いた「止める技術」を、今度は慣性の大きな機体で再現することになります。

最大の敵は「大型機の慣性」25kg超の機体は、スティックを離してもすぐには止まりません。惰性で数メートル進みます。

小型機の感覚で操作すると、止めたい場所を必ず通り過ぎる。これが本審査の本質的な難しさです。

3. 大型機の世界を知る(25kg以上の機体特性)

実技の前に、大型機が小型機とどう違うかを整理しておきましょう。

① 慣性が大きい。動き出したら止まらず、止まっていれば動き出しにくい。すべての操作に「先読み」と「早めの減速」が要ります。

② ダウンウォッシュが強烈。大型プロペラの吹き下ろしは台風並みです。離着陸時は地面効果で機体が不安定になり、地上の物を吹き飛ばすこともあります。

③ 重心と挙動が変わる。実運用ではペイロード(荷物・薬剤)の搭載が前提の機体です。急加減速や急旋回を避けた、穏やかな操舵が基本になります。

④ 必要な安全離隔が広い。衝突時の破壊力が桁違いのため、審査でも受験者は機体から11〜16m離れて立ちます。遠くて大きい機体を読む距離感が必要です。

「速度を出さない勇気」が合格への近道大型機は機体が大きいぶん、同じ速度でもゆっくり見えます。つい速度を出しがちです。

しかし危険な速度(概ね5m/s以上)は一発不合格。大きく見えても出ている速度は出ています。

「遅すぎるかな」と感じるくらいが、審査ではちょうどいい速度です。

4. 当日の流れ(全体像)

進行の順番は決まっています。

  1. 冒頭宣言 … 試験員が一発不合格の条件を告げます。
  2. 机上審査 … 25kg以上の機体の模擬飛行計画について答えます。
  3. 口述(飛行前点検) … 機体を声に出して点検します。大型機ならではの確認が増えます。
  4. 実技審査 … 3科目を飛ばします。
  5. 口述(飛行後点検・飛行記録) … 点検と記録の記入を口述します。

基本にあった「事故・重大インシデント」の口述は、限定変更にはありません。

その分、覚える知識は減りますが、実技の配点リスクは凝縮されます。

5. 合格基準と採点のしくみ

採点は「100点の持ち点から引いていく」減点方式です。

一等は80点以上で合格です。(二等は70点以上)

許される減点は20点まで。5点減点が4回でアウト、という感覚です。

減点の3段階

一発不合格(即終了)航空法等の違反、危険な飛行(概ね5m/s以上の速度を含む)、墜落・損傷・制御不能、不合格区画への進入、制限時間超過、試験員の操作介入、不正行為。

そして円周飛行に固有の基準として、円形の飛行経路の中心を含まずに周回したときも不合格です。

5点減点飛行経路の逸脱、指示と異なる飛行、離着陸不良、監視不足、安全確認不足。

「離陸前・着陸前に安全確認を声に出して伝えなかった」も安全確認不足に該当します。

1点減点ふらつき、動きの不円滑、機首方向の不良。

高度変化を伴う科目で「高度を一定の割合でなく急に変化させた」も不円滑の1点です。

区画の考え方

コースには2種類の「枠」があります。考え方は基本と同じで、距離だけ広がっています。

減点区画 … 飛行経路から2.5m離れたライン。ここに機体が半分以上入ると5点減点。

不合格区画 … 経路から6m離れたライン。ここに機体が半分以上入ると一発不合格。

減点区画の救済も同じです。飛行区画(区間)ごとの初回進入は、試験員の通知後おおむね2秒以内に経路へ戻れば減点なし。

また、ホバリングと着陸では「定められた区画」=直径5mの円(基本は直径2m)から機体が半分以上逸脱すると5点減点です。

なお、ピルエットホバリング中のずれは、この円ではなく旋回中心からの減点区画・不合格区画で判定されます。

枠は広いが、機体も大きい許容幅1.5m→2.5mと聞くと楽に思えますが、機体の全幅が2mを超えることも珍しくありません。

「機体の半分以上が区画に入ったか」で判定されるので、実質の余裕は基本とそれほど変わらない。そう考えて精度を作り込んでください。

6. 机上試験の攻略

限定変更の机上は 5問・各5点・制限時間10分 です。

基本との違いは出題の型です。リスク判断ではなく、「飛行計画の作成」が問われます。

立入管理措置を講じない25kg以上の機体の模擬飛行計画が提示され、計画作成で留意すべき事項を答えます。

細則が挙げる留意事項の例は、次の4つの系統です。

  1. 航空法等の法令遵守 … カテゴリーIII飛行の要件、許可・承認、機体認証など。
  2. 安全確保措置 … 第三者・物件への安全、運航体制。
  3. 機体の仕様・限界事項 … 最大風速・最大積載量・飛行時間・電波到達距離などの限界値。
  4. 自動飛行機能の設定 … 自動飛行する経路の設定、フェールセーフ(危機回避機能)の設定。

4つ目は重要です。自動操縦の技能は実機では試験されず、この机上だけで問われます(細則に明記)。

RTH高度の設定、通信途絶時の挙動、低バッテリー時の自動帰還、ジオフェンス。フェールセーフの種類と挙動は確実に整理しておきましょう。

そして25kgならではの視点として、機体の限界値に注意。最大積載量や重心位置の制限は、大型機の計画でこそ効いてきます。

試験問題そのものは持出厳禁の管理物です。この記事では具体的な問題文や正答は載せません。

攻略の型まず法令(カテゴリーIIIの要件・許可承認・機体認証)を確認する。

次に機体の限界値(積載量・風速・飛行時間)と気象・経路を突き合わせる。

最後に自動飛行経路とフェールセーフ設定が計画に合っているか確認する。

7. 口述(飛行前点検)の攻略

制限時間:飛行空域等の確認 3分/作動前点検+作動点検 あわせて12分

ここは満点を取りに行く場所です。

流れと減点表は基本と共通です。違いは「点検する機体が大きい」こと。それ自体が時間との勝負になります。

飛行前点検の減点表

減点細目 減点 内容
点検漏れ 10点 実技に必要な点検を一つでも行わなかったとき
日常点検記録の記載漏れ・誤り 5点 様式の記載項目を一つでも書かない、または誤り
日常点検記録の軽微な誤り 1点 記入方法に従わず、点検日時・場所等を誤記
航空法等の違反 不合格 アルコール・薬物の影響、機体の未登録、登録記号の未表示、必要な許可承認・技能証明/機体認証なし
危険な操作 不合格 安全を確保せず推進系統を作動させて点検した、など
不正行為 不合格 助言・補助を受けた、円滑な実施を妨げた

複数ミスでも最も重い1つだけが適用される、制限時間切れは「やらなかった」扱い、受験者に起因しない事由は減点しない。

この3つのルールも基本と同じです。

大型機の点検で差が出るところ

科目は昼間・目視内の飛行なので、灯火とカメラはどちらも「非該当」です。

黙って飛ばさず、「非該当です」と口に出し、日常点検記録の備考にも記載します。ここは基本と同じ作法です。

一方、大型機ならではの勘所が加わります。

  • 大径プロペラのヒビ・欠け … 枚数も面積も多く、見落としやすい。1枚ずつ声に出して確認。
  • 各機器の取付状態 … 大型機は振動も大きく、ネジ・コネクターの緩みが命取り。目視+触診で。
  • 大容量バッテリーの状態 … 膨張・発熱・端子の変形。装着のロックまで確実に。
  • モーターを回す前の周囲確認 … ダウンウォッシュが強烈なため、足元・周囲の飛散物まで確認して声に出す。
点検は「順番を体で覚える」操縦装置・機体全般・プロペラ・フレーム・機体識別表示・灯火(非該当)・カメラ(非該当)。

電源系・操縦装置・リモートID・通信系・推進系・自動制御系・操縦系。

この流れを、よどみなく言い切れるまで反復してください。12分は、大型機を一周するとあっという間です。

8. 実技の攻略(25kg限定解除の3科目)

ここが本記事の核心です。

実技は3科目。すべてGNSS等の水平方向の位置安定機能OFF(ATTI)で飛ばします。

科目の骨格は基本と同じ「スクエア・ピルエット・緊急着陸」。ただし機体は大型、高度は5〜10m、コースは一回り大きい。

記入面では、登録記号の記載忘れが定番のミスです。部位の点検に集中するあまり、欄が抜けがちです。

時間を先取りするコツ最後に行う飛行後点検・飛行記録は、あわせて5分と時間がかなり短い。

そこで飛行前のこの段階で、実施場所・実施年月日・実施者まで記載しておくと、後半に余裕が生まれます。

※先に記入してよいかは、試験員に必ず確認してください。

3科目共通の「大型機×ATTI」の感覚

大型機のATTI飛行には、小型機と違う3つの壁があります。

① 止まらない。当て舵を打ってから機体が応答するまでにタイムラグがあり、止まるまでに距離が要ります。

② 流され方が読みにくい。機体が遠く(11〜16m先)、高く(5〜10m)にいるため、風に流され始めた瞬間を見逃しやすい。

③ 修正が大きくなりがち。遅れて気づくと大きな舵で直したくなる。大型機の大舵は揺り返しを生み、ふらつき減点の温床になります。

結論はひとつ。小さい舵を、早く、先回りで。これを講習中に体へ入れてください。


8-1. 高度変化を伴うスクエア飛行

GNSS OFF(ATTI)/高度 5m⇄10m/制限8分

四角形(スクエア)の経路を、高度を変えながら一周する科目です。

コースの形は基本と同じですが、基準高度は5m、高度変化は5m⇄10m。スケールが違います。

コースの点配置(上から見た図)。

  • H:離着陸地点(上辺の中央・直径5mの円)。高度5m。
  • A:下辺の中央(Hの5m手前)。高度5m。
  • B:右下の角(高度5m)
  • C:右上の角(高度10m)
  • D:左上の角(高度10m)
  • E:左下の角(高度5m)
25kg限定解除 高度変化を伴うスクエア飛行の飛行経路(上から見た図)
上から見た飛行経路図。経路から2.5m外側が減点区画、6m外側が不合格区画です。太い矢印が進行方向(H→A→B→C→D→E→A→H)。離着陸地点Hは上辺の中央(直径5mの円)で、Aはその5m手前。右辺B→Cで5m→10mへ上昇、左辺D→Eで10m→5mへ下降します。受験者の立ち位置はA地点から16mです。

移動順。

H(離陸)→ A → B → C → D → E → A → H(着陸)。回り方は基本と同じです。

具体的には、こう進みます。

  1. Hで機首を前方に向けて離陸。高度5mまで上昇し、5秒間ホバリング
  2. 試験員の口頭指示に従い、各区間を1本ずつ直線で進む。「旋回で機首を次の地点に向ける → 前進 → 到達を報告」の繰り返し。機首は常に進行方向
  3. B→C(右辺)は5m→10mへ上昇しながら前進。
  4. C→D(上辺)は高度10mのまま。Hの真上を通過します。
  5. D→E(左辺)は10m→5mへ下降しながら前進。
  6. E→A→Hと戻り、着陸地点と周囲の安全を確認して着陸。

狙われる減点ポイント。

経路逸脱5点。ATTIの大型機は、止め遅れがそのまま行き過ぎになります。各コーナーは早めの減速で。

指示と異なる飛行5点。指示を受ける前に動き出す「フライング」も該当します。

高度の急変化1点・指示と明らかに異なる高度5点。5mの高度差を、距離に対して均等に配れているかが見られます。

安全確認不足5点。離陸前・着陸前の確認は、声に出して伝えなければ「やっていない」扱いです。

高度変化の区間(B–C間・D–E間)は止まらない「移動しながら高度を変える」のが指示内容です。止まって高さを作ってから進むと、「指示と異なる飛行」または「高度を一定の割合でなく急に変化させた」として減点されます。

5mの上昇を13m…ではなくその辺の距離全体に均等に。スロットルを当てっぱなしにする感覚で、一定の割合を作りましょう。

ここで差がつくアドバイス高度10mは、普段の審査感覚(3.5m)の3倍近い高さ。高度感が一気に曖昧になります。

パイロンや背景の構造物など、「10mの高さの目印」を講習中に決めておくと、上辺の高度維持が安定します。

そして口数を多く。「経路ヨシ」「前進します」「到達しました」。声が、減点を防ぐ最大の武器です。


8-2. ピルエットホバリング

GNSS OFF(ATTI)/高度 5m/制限3分

その場で機体を1回転させる科目です。基本と同じく、ATTIの真価が問われます。

25kg限定解除 ピルエットホバリングの飛行領域(上から見た図)
上から見た飛行領域図。H(直径5m)の真上、高度5mで回転します。旋回中心から半径2.5m(=Hの円の縁)を超えると減点区画半径6mを超えると不合格区画です。受験者は旋回中心から11mの位置に立ちます。

手順。

  1. Hで機首を前方に向けて離陸。高度5mまで上昇し、5秒間ホバリング
  2. 離陸地点の上空で、試験員の指示する方向に、20秒程度で1回転する速さで回る。
  3. 1回転したら、着陸地点と周囲の安全を確認して着陸。

狙われる減点ポイント。

回転時間5点。1回転が16秒未満または26秒以上だと「指示と異なる飛行」で5点減点。1秒で18度、4秒で90度のペースを体に刻んでください。

位置ずれ5点。旋回中心から半径2.5m(Hの円の縁)を超えて減点区画に機体が半分以上入ると5点。半径6mの不合格区画まで流されると終了です。

ふらつき・不円滑各1点。回転速度のムラも不円滑に数えられます。

大型機のピルエットは「当て舵の連続」回転中もATTIの機体は風に流され続けます。しかも大型機は、流され始めてからの修正に時間がかかる。

機首の回転はラダーに任せ、意識の8割は「中心からずれていないか」へ。エルロン・エレベーターの小さな当て舵を絶やさないことが、この科目の本体です。

直径5mの円は、大型機にとって決して広くありません。「円の真ん中に居続ける」つもりで。


8-3. 緊急着陸を伴う円周飛行

GNSS OFF(ATTI)/高度 5m/円直径 約10m/制限8分

基本の「8の字」に代わる科目です。円を描いて飛び、途中で緊急着陸に移行します。

8の字より単純に見えて、2周+逆回り1周以上という長丁場。ATTIの大型機で円を維持し続ける持久力が問われます。

25kg限定解除 緊急着陸を伴う円周飛行の飛行経路(上から見た図)
上から見た飛行経路図。円の直径は約10mで、手前側の円周上に離着陸地点H(直径5m)があります。経路から縦横2.5mが減点区画、6mが不合格区画。円の中心の△の周り(直径5m)も減点区画です。赤の点線は、緊急事態の宣言後に高度を維持したまま最短経路で離着陸地点Hへ移動し、着陸するイメージです。緊急着陸時には減点区画は無効になります。円の中心(△)を含まずに周回すると一発不合格です。

手順。工程が多いので、流れごと暗記してください。

  1. Hで機首を前方に向けて離陸。高度5mまで上昇し、5秒間ホバリング
  2. 機首を進行方向に向けた状態で、円周飛行を連続2周
  3. 機首を逆方向に向け、逆回りの円周飛行を1周以上連続で行う。
  4. 試験員から緊急事態発生の宣言。円周飛行を中断し、その場でホバリング
  5. 試験員から緊急着陸を行う旨の指示高度を維持したまま、最短の飛行経路で指定された着陸地点へ移動。
  6. 移動完了後、着陸地点と周囲の安全を確認して着陸。

狙われる減点ポイント。

円の中心を外す=一発不合格。円形の経路の中心を含まずに周回すると、その時点で終了です。円が小さく流れたときほど危ない。

経路逸脱5点。直径10mの円は、大型機にはタイトです。風上で膨らみ、風下でつぶれる。当て舵で真円を守ります。

機首方向不良1点。円周中は機首が常に進行方向(接線方向)。四分円にわたって機首がずれ続けると減点です。

指示と異なる飛行5点。緊急の宣言で「止まらずにそのまま着陸へ向かう」のが典型ミス。宣言→まず止まる→指示を待つ→移動の順です。

離着陸不良5点。大型機は降下の勢いが乗りやすく、最後にドンと降ろしがち。接地直前の強い衝撃は5点です。

緊急着陸は「高度を維持したまま」移動する2026年6月5日改正で、緊急着陸は2段階の手順になりました。宣言でその場ホバリング、指示で最短経路を移動。

このとき高度は5mのまま。降ろしながら移動すると「指示と異なる飛行」です。着陸地点の真上に着いてから、垂直に降ろします。

ここで差がつくアドバイス円周飛行は、エレベーターで前進しながらエルロン・ラダーを協調させる複合操舵。大型機では舵の遅れを見越して、ワンテンポ早く当てるのがコツです。

逆回りへの切り替えは、いったん落ち着いて。機首の向け直しが雑になると、そこからの1周が崩れます。

ちなみに私も講師として見ていますが、この科目でいちばん多い失敗は「疲れてくる3周目の雑さ」です。最後の1周こそ丁寧に。

実技全体を貫く3つのコツ

① 速度を出さない。大きい機体はゆっくり見えます。概ね5m/s以上は一発不合格。「遅すぎるかな」でちょうどいい。

② 小さい舵を先回りで。大型機の修正は遅れて効きます。大舵での修正は揺り返しと減点の元です。

③ 確認はすべて声に出す。「離陸します」「経路ヨシ」「着陸地点ヨシ」。伝えなければ「やっていない」扱いです。

9. 口述(飛行後点検・飛行記録)の攻略

制限時間:飛行後点検+飛行後の記録 あわせて5分

飛行のあとにも口述があります。ここも取りこぼしやすい場所です。

飛行後の「機体の点検」と「飛行記録の記入」の2つを確認されます。
「あわせて5分」は、やってみるとかなり短い時間です。

鍵は、飛行後点検の流れを考えずに行えるか。次の順番を体に入れておきます。

  1. 機体の電源OFF → 操縦装置の電源OFF
  2. 機器の取り付け状況の確認
  3. プロペラ・フレーム・識別表示の外観点検
  4. 発熱・ゴミの付着の確認

日常点検記録への記載は、異常なしならチェック一つで済むので心配いりません。

飛行後点検・記録の減点表

減点細目 減点 内容
飛行記録の記載漏れ・誤り 10点 飛行日誌の様式で、記載項目を一つでも書かない/飛行時間の計算に誤り
点検漏れ 5点 飛行後の状態確認に必要な点検を一つでも行わなかった
日常点検記録の記載漏れ・誤り 5点 様式の記載項目を一つでも書かない、または誤り
飛行記録の軽微な誤り 1点 飛行年月日・離着陸場所等の誤記
日常点検記録の軽微な誤り 1点 点検日時・場所等の誤記
不正行為 不合格 助言・補助を受けた、円滑な実施を妨げた

いちばん重いのは、飛行記録のミスの10点。点検(5点)より記録(10点)のほうが重い、と覚えてください。

そして基本と同じく、点検系と記録系は別カウントです。両方でミスすれば最大15点まで引かれ得ます。

大型機の飛行後点検で見るところ

各機器の取付状態、プロペラ・フレームの外観に加え、各機器の異常な発熱ゴミ等の付着を確認します。

大型機はモーターもバッテリーも大電流で働いています。発熱の確認は素通りせず、声に出して一つずつ。

強烈なダウンウォッシュは砂や草を巻き上げます。機体下面の付着物チェックも、大型機ならではの見せ場です。

記録で間違えやすい点

飛行記録の年月日は西暦で記入します。和暦は誤りに取られます。

実技は3科目ですが、審査中にバッテリーの交換が行われなければ1フライトとして数えてよいことになっています。離着陸時刻は試験員から提供されるので、飛行時間の計算ミスに注意。

計算ミスは「記載漏れ・誤り」と同じ10点です。必ず検算しましょう。

登録記号の記載漏れも定番のミスです。様式の上から順に、一つも飛ばさず埋めてください。

なお、飛行前点検ですでに減点された記載ミスは、飛行後で二重に減点されません。

飛行記録の記入はここに注意1フライトにまとめる場合、記入は登録記号・飛行年月日・氏名・飛行概要「一等25kg」で足ります。

離陸場所は迷わないよう、事前にしっかり確認しておきましょう。

複数バッテリーのフライトに分かれた場合は、総飛行時間の計算を間違えないこと。

※1フライトとして扱えるかは、試験員に必ず確認してください。

10. 2026年6月5日改正で押さえる点

改正の全体像は基本修了審査の記事で解説したとおりですが、25kg限定解除に効く点を挙げます。

緊急着陸の手順が2段階になりました。宣言→その場ホバリング→着陸指示→高度維持で最短移動→着陸。円周飛行の科目に直結します。

円周飛行の不合格基準が明確化されました。円の中心を含まずに周回すると不合格です。

保護具の着用が義務化されました。ヘルメットに加えて保護メガネも必須です。眼鏡は保護メガネの代わりにならないため、眼鏡の上から装着します。

経路逸脱の復帰が「おおむね2秒以内」に明確化されました。逸脱の通知は試験員が行います。

試験の同日完了が明文化されました。机上から口述まで同じ日に行います。

受験者補助員の制度が新設されました(直近2年で6か月以上かつ50時間以上の飛行実績が要件)。大型機の審査では運搬・設置の負担も大きく、ありがたい制度です。

風速の基準が「以下」から「未満」に変わりました。

11. 当日チェックリスト

最後に、忘れがちな項目をまとめます。

  • 使用機体の停止距離(舵を当ててから止まるまで)を体感で把握したか
  • 点検で大径プロペラ1枚ずつのヒビ・欠けまで確認したか(灯火・カメラは「非該当です」)
  • 高度5m・10mの目印(パイロンや背景)を決めたか
  • B→C・D→Eの高度変化を、移動しながら一定の割合で行えるか
  • ピルエットの20秒ペース(4秒で90度)を体に刻んだか
  • 円周は中心を巻き込んで回れているか(中心を外すと不合格)
  • 緊急の宣言→まず止まる→指示を待つ→高度維持で移動、の順を体に入れたか
  • 飛行記録は西暦・3フライト分・検算をしたか

20点しか余裕はありません。

「知っているだけで防げるミス」から潰していきましょう。

12. さいごに——登録講習機関の講師から

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

25kg限定解除の審査で、受講生を見ていて感じることがあります。

大型機の操縦は、力ではなく予測です。

小型機なら「ずれてから直す」が間に合いました。大型機は間に合いません。

ずれる前に読む。動かす前に止まり方を決めておく。一手先の操縦に切り替えられた人から、合格していきます。

幸い、科目の骨格は基本と同じです。スクエアもピルエットも、体は流れを覚えているはずです。

だから練習では、新しい科目を覚えるというより「いつものコースを、大きな機体の時間感覚で飛び直す」つもりで臨んでください。

25kg超の機体が思いどおりに止まったときの手応えは、小型機では味わえないものです。

当日は、深呼吸をひとつ。大きな機体ほど、ゆっくり丁寧に。

あなたの限定解除を、心から応援しています。


参考(公式情報)

※本記事は2026年6月5日施行の実地試験実施細則(一等・VI章 最大離陸重量25kg未満の限定変更)および教則第4版に基づきます。制度・基準は改正されることがあるため、受験前に必ず所属の登録講習機関と公式サイトで最新情報をご確認ください。机上審査で使われる試験問題そのものは、取扱いの定めにより本記事には掲載していません。

最終更新:2026年6月

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