前回の記事では、一等無人航空機操縦士の「基本」について解説しました。
その最後に触れたとおり、一等に合格しても、そのままでは「できない飛行」があります。
それを解決するのが限定解除(限定変更)です。
この記事では「限定解除って何?」「どうやって取るの?」「費用は?」を解説します。
そもそも「限定」とは?
一等無人航空機操縦士に合格すると、技能証明書が交付されます。
ただし最初の状態では、次の3つの「限定」が付いています。
| 限定の種類 | そのままだとできないこと |
|---|---|
| 目視内限定 | 目視外飛行(機体を直接見ないでカメラ映像だけで飛ばす) |
| 昼間限定 | 夜間飛行(日没後も飛行可能となる) |
| 25kg未満限定 | 最大離陸重量25kg以上の機体の飛行 |
つまり基本の技能証明だけでは「昼間・目視内・25kg未満」の飛行しかできません。
車の免許でいう「AT限定」のようなイメージです。
この限定を外す手続きが限定変更(いわゆる限定解除)です。
一等を取るなら限定解除はほぼ必須
一等の最大の意味は、カテゴリーⅢ飛行(第三者上空の補助者なし目視外飛行=レベル4)ができることです。
ところが目視内限定が付いたままだと、肝心の目視外飛行ができません。
つまり一等を活かすなら、少なくとも目視内限定の解除はセットと考えてください。
物流や点検など夜間の運航を見据えるなら昼間限定の解除も。
物流用の大型機を扱うなら25kg未満限定の解除も必要になります。
限定解除の方法は2つ
限定解除のルートは基本の技能証明と同じく2つあります。
① 登録講習機関ルート(実地試験免除)
登録講習機関で限定変更講習を受け、修了審査に合格する方法です。
ほとんどの方がこちらを選びます。
② 直接試験ルート
指定試験機関(ClassNK)で限定変更の実地試験を直接受ける方法です。
講習費用は抑えられますが、試験のハードルは高めです。
学科試験は限定変更では不要です(基本の技能証明で合格済みのため)。
講習時間はどれくらい?
登録講習機関ルートの場合、航空局が定める最低講習時間(実地)はこちらです。
| 限定変更 | 一等・初学者 | 一等・経験者 |
|---|---|---|
| 目視内(目視外飛行) | 7時間 | 5時間 |
| 昼間(夜間飛行) | 1時間 | 1時間 |
| 25kg未満(25kg以上) | 2時間 | 1時間 |
「経験者」は民間技能認証などの飛行経験がある人の区分です。
目視内だけ時間が長いのは、カメラ映像だけで操縦する技術の習得に時間がかかるためです。
ちなみに私も3つとも解除しましたが、体感の難易度も目視内 > 25kg > 昼間の順でした。
費用の目安
講習費用は機関によって差がありますが、一例として登録講習機関の一般料金はこのくらいです(税別)。
| 限定変更 | 初学者 | 経験者 |
|---|---|---|
| 目視内 | 14万円 | 10万円 |
| 昼間 | 2.5万円 | 2.5万円 |
| 25kg | 5万円 | 2.5万円 |
このほか修了審査の費用や、技能証明書の書換え手数料がかかります。
昼間限定の解除は講習1時間・数万円なので、コスパは抜群です。
実技ではどんなことをやるの?
修了審査(実地試験)の内容は、実地試験実施細則で限定変更ごとに決まっています。
ポイントは、科目によってGNSS等の位置安定機能を使うか(ON)/切るか(OFF)が変わることです。
OFF(ATTIモード)だと機体が風で流れるので、当て舵が必要になります。
昼間限定の解除(夜間飛行)
照度150ルクス以下の夜間相当の環境で飛行します。
機体の灯火を頼りに、姿勢と位置を把握する力が問われます。
科目はすべて位置安定機能OFF。基本飛行と同じくATTIモード中心です。
目視内限定の解除(目視外飛行)
機体を直接見ずに、送信機のカメラ画像のみで操縦します。
画面越しだと距離感が大きく変わるので、ここが最大の山場です。
通常の飛行科目は位置安定機能ON、異常事態の科目だけOFFという構成です。
目視外でいきなりATTIは危険なので、まずONで飛ばす設計になっています。
25kg未満限定の解除(25kg以上)
最大離陸重量25kg以上の大型機で飛行します。
飛行区域が広くなり、高度も5〜10mと高めの設定になります。
科目はすべて位置安定機能OFF。大型機をATTIで扱うことになります。
大型機は挙動がゆったりしている分、止まらない・流される感覚への対応が必要です。
25kg限定解除だけの注意点:身体検査
意外と知られていないポイントです。
通常の身体検査は運転免許証などの書類提出でOKです。
しかし25kg未満限定の解除には専用様式の医学的検査(診断書取得には数万円)が必要です。
この診断書の取得には、医療機関で数万円程度の費用がかかります。
医療機関での受診が必要になるので、スケジュールに余裕を持ってください。
実は私自身、ここでつまずきました。
実地審査に合格したあと航空身体検査を受けたところ、まさかの不合格。
そこから約1か月かけて数値を改善し、再検査でようやく通りました。
ここで見落としがちなのが、お金の話です。
航空身体検査に数万円、講習と修了審査にも数万円かかります。
そして身体検査と修了審査のどちらか一方でも通らなければ、25kgの限定解除はできません。
せっかく実技に受かっても、身体検査で止まれば先に進めないのです。
だからこそ、普段からの体調管理も立派な「試験対策」だと痛感しました。
取得の流れ(登録講習機関ルートの一例)
- DIPS2.0で技能証明申請者番号を確認(基本取得時のものを使用)/無料
- 登録講習機関で限定変更講習を受講
- 修了審査に合格(実地試験免除に)/審査費用は講習料金に含むことが多い
- 身体検査(25kg解除のみ専用様式の診断書が必要)/25kg解除は診断書取得に数万円。昼間・目視内は書類提出でOK
- ClassNKから試験合格証明書の発行
- DIPS2.0で技能証明書の書換え交付申請/手数料2,850円
申請から交付まで2週間弱が目安です。
新規取得と違い、限定変更では登録免許税はかかりません。
まとめ:一等+限定解除で初めて「フル規格」
ポイントをおさらいします。
- 一等に合格しただけでは、昼間・目視内・25kg未満の飛行しかできない
- 一等の本領(カテゴリーⅢ/レベル4)を発揮するには目視内限定の解除が事実上必須
- 昼間限定の解除は講習1時間と手軽。迷ったら一緒に取るのがおすすめ
- 25kg解除は専用の診断書が必要なので注意
夜間の点検案件、目視外の長距離飛行、大型機での物流実証。
どれも限定解除があって初めて受けられる仕事です。
これから一等を目指す方は、ぜひ限定解除までセットで計画してみてください。
質問があればコメント欄でどうぞ。
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※講習時間・費用は2026年6月時点の情報です。最新の情報は各登録講習機関・国土交通省の公表資料をご確認ください。



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